カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kadha Thudarunnu】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2010/06/09 21:48   >>

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 サティヤン・アンティッカード監督のマラヤラム映画。
 本作は同監督の50本目の作品になるらしい。30年弱のキャリアで50本とは、この時代の現役監督としてはかなり多作なほうだろう。しかも、今もトップクラスの評価を維持し、コンスタントにヒット作も生んでいるというのだから、大したものだ。
 私は、この監督の作品を観たのは2007年の【Vinodayathra】が最初で、好印象を持ったのだが、続く【Innathe Chinthavishayam】(08)がイマイチに思えたので、【Bhagyadevatha】(09)は見送ってしまった。だが、後にDVDで【Bhagyadevatha】を鑑賞したら、かなり面白かったので、やっぱり見くびってはいけない人だと痛感した。
 本作はケーララ州では5月7日に公開されたが、バンガロールでは1ヶ月遅れの公開。評価も客の入りもまずまずのようで、マムタ・モハンダースが見ものとの評判が聞こえていた。

【Kadha Thudarunnu】 (2010 : Malayalam)
物語・脚本・台詞・監督 : Sathyan Anthikkad
出演 : Mamta Mohandas, Jayaram, Asif Ali, Baby Anikha, KPAC Lalitha, Innocent, Mammukoya, Chembil Ashokan, Lakshmi Priya, Sreejith Ravi
音楽 : Illayaraja
撮影 : Venu
編集 : K. Rajagopal
制作 : Thankachan Emmanuel

《あらすじ》
 ヴィディヤ(ヴィディヤラクシュミ:Mamta Mohandas)はヒンドゥー教バラモン家の娘だが、イスラム教徒のシャナヴァス(Asif Ali)と恋愛し、両家族の激烈な反対を押し切って結婚する。ほどなく二人には娘のラヤが生まれる。
 ラヤ(Baby Anikha)が4歳のときのある晩、シャナヴァスは果物を買いに出かけるが、悪漢に別人と間違えられ、切り殺されてしまう。
 夫を失い、家族とも絶縁状態だったヴィディヤは、ラヤを抱えて路頭に迷うことになる。ヴィディヤは会社勤めをしようと面接に行くが、うまく行かない。また、貴金属を売って現金を得るが、その金も引ったくりに盗られてしまう。彼女はプレーマン(Jayaram)の運転するオートリクシャに乗り込み、ラヤを幼稚園まで送り届けるが、現金を持っていなかったため、オートを乗り逃げする。プレーマンは幼稚園の前でこの母子を待ち伏せするが、発見できない。
 ヴィディヤは大家に家を追い出されたため、ラヤを連れて鉄道駅で寝泊りする。たまたま駅前で客待ちしていたプレーマンは母子を見つけ、詰め寄るが、ヴィディヤの涙混じりの事情説明を聞いて、見逃すことにする。しかしその晩、プレーマンは駅へ行き、プラットフォームにいたヴィディヤ母子を自分の居住地まで連れて帰る。
 プレーマンは低所得者のためのコロニーに住んでいた。ヴィディヤ母子はここでマッリ(Lakshmi Priya)という若い女性の部屋に居候することになる。お嬢様育ちのヴィディヤはこの貧乏コロニーでの生活に非常な苦労を味わうが、気さくな住人たちに支えられ、次第に順応していく。
 ある時、コロニーの住人のオマナクンジャンマ(KPAC Lalitha)が心臓発作で倒れる。ヴィディヤが応急処置をした後、他の住人たちと共に病院に運び込む。オマナクンジャンマは事なきを得るが、彼女の治療を担当した女医がヴィディヤのクラスメートだったことが分かり、そこから、コロニーの住人は、ヴィディヤが元医学生で、結婚のため勉強を中断していたことを知る。そこで、プレーマンの掛け声の下、住人たちが協力し、ヴィディヤは再び医学の勉強を続けることになる。
 ある時、故シャナヴァスの家族がヴィディヤ母子の所在を掴み、娘のラヤを引き取りたいと迫る。もちろん、ヴィディヤは拒絶し、コロニーの住人たちも抵抗する。そんな折にヴィディヤの元クラスメートの女医がやって来て、彼女にクウェートでの仕事のオファーを伝える、、、。

   *    *    *    *

 運命の悪戯でシングルマザーとなり、ホームレスにまで転じてしまった女性が、貧乏コロニーの人々に支えられ、自立していくという話。シングルマザーの自立という、インドでもしばしば話題となる問題が扱われているが、「女もかくかくしかじかの意思と努力により自立できる」というフェミニスト宣言のような映画ではなく、「どん底の中でも手を差し伸べてくれる人がおり、なんとかなるものさ」という、人生や人情に対する礼賛が主題だったように思う。
 サティヤン・アンティッカード監督は喜劇的な映画の作り手だと勝手に認識していたが、そうでもないようで、本作は比較的シリアスなタッチだった。

 見どころは、まず前半でヴィディヤ(Mamta Mohandas)がラヤの手を引いて都会の路頭を彷徨うシーン。何不自由なく育った者が奈落に落ちたときの焦りと浅墓さが上手く表現されていた。母の胸の中にじりじりと苦悩は募れども、そんなことは誰も知らない。孤立感を深めるヴィディヤの内面と、外部の相変わらず呑気なインドの風景との対比が面白かった。

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 前半の終わりごろ、ヴィディヤがコロニーに移ったところから第2の見せ場となる。言わずもがな、マラヤラム映画界が誇る芸達者な脇役陣がぞろぞろ登場し、人情味ある「貧乏長屋」の光景が展開されるわけだが、コロニーの住人とヴィディヤ母子という、異質な両者が互いに馴染んでいく様が面白い。へなへななヴィディヤに対して住人たちが手を差し伸べ、自分たちも金はないくせに、それでも相互扶助で何とかなっていくのがインドらしい。かといって、この集団が単純に善人の寄せ集めとして描かれていないところが監督の上手さだと思った。
 (写真下:貧乏長屋の人々。)

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 題名の「Kadha Thudarunnu」は「話は続く」という意味らしいが、実際に映画はキリの悪い形で終わっている。これは、続編を作るつもりでこうしたのか、あるいは、単にこういう変則的なエンディングにしたかっただけなのか、何とも言えないのだが、賛否は分かれると思う。

◆ 演技者たち
 主役のマムタ・モハンダースは、演技としてはそんな凄いことをしていたわけではないが、この役に彼女を持って来たのは正解だろう。
 貧乏コロニーの住人にしては化粧と服装がきれいすぎる嫌いがあるものの、片やこういう貧しい居住区が存在し、そこに元金持ちの元医学生が迷い込んで来るという、都会の皮肉な状況がよく象徴されていたと思う。
 マムタは、話題性の割にはあまり目を見張る作品もなかったのだが、ここに来てマラヤラム映画界でブレイクしたようだ。【Passenger】(09)でもそうだったが、グラマー・アイドルを飛び越して、若妻役にシフトしたのが成功の秘訣か。
 (写真下:マムタに白衣を着せたのも成功点だろう。)

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 ジャヤラームについては、映画を観る前は、またこのオッサンがお助けマンとしてあれこれ動き回り、最後はヒロインと結婚までするのでは、とも予想したが、全然違っていた。【Bhagyadevatha】では独演会に近かったが、本作ではぐっと控えた展開だった。

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 ヴィディヤの夫役は、Asif Aliという【Ritu】(09)でデビューした人。【Ritu】ではかなり印象的なプレゼンスを見せていたが、本作では殺されるためだけに出て来たようなもので、特に見せ場はなし。面白い使い方ができそうな俳優だけに、今回はちょっと残念。
 (写真トップ:左よりBaby Anikha、Mamta Mohandas、Asif Ali。)

 長屋の住人を演じた俳優たちはナイス。
 KPACラリタの「ウソ泣き」の実演が面白かった。

 もう一人 ヴィディヤの友達の女医を演じた人が、美人というわけでもないのだが、長身、色黒、陸上競技の選手でした、といった感じの精悍なオネエサンだった。こういう萌え系の女医が本当にいるなら、私、深刻な病気になってもいいな。

◆ 音楽・撮影・その他
 イライヤラージャの音楽はきれいだったが、歌よりも沈鬱な感じのBGMのほうが耳に残った。

 物語の舞台はカリカットで、ヴィディヤが寝泊りする鉄道駅は実際にカリカットの駅が使われているようだ。

 なお、本作には剽窃疑惑があるようなのだが(こちらこちら)、それについてはここでは詳述しない。

◆ 結語
 もしかしたら、本作はサティヤン・アンティッカード監督作品としては平均的な出来なのかもしれないが、マムタ・モハンダースの新生面のおかげで、一見の価値はあると思う。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
マラヤーラム語映画に典型的な人情噺のようですね。コロニーの貧乏人たちがマムターをせっせと応援する光景が目に浮かぶようです。

マムターの演技力からすれば若妻役だって難しくないでしょうが、儂としてはもう少しアイドル路線を目指して欲しいとねがっています。いや、ほんと、ヴァンプ専門でもいいから(笑
メタ坊
2010/06/10 11:30
あるでしょう、マムタのアイドル路線も。
ケーララでうまく行った手が他所でも通じるとは限らないですからね。
しかし、彼女のアイドル物はなぜかヒットしなかったんですよね。

ところで、マムタは大型バイクのライダーでもあるらしいんですが、彼女がバイクを乗り回している映画って、これまでありました?
 
カーヴェリ
2010/06/10 17:40
マムター姐のイージーライダーですか?うむむ…にわかには思い出してきません。

しかしどっかで革ジャン姿で大型バイクに跨ってる姿を見たようなぼんやりとした記憶もあります。あれはどっかの雑誌のスチルだったのかな?

寄る年波で記憶がザルのようになってますが、万が一なにか思い当たったらお知らせしましょう。
メタ坊
2010/06/10 18:51
この「マムターのイージーライダー」っつうのを見てみたいんですよねぇ。
NTRジュニアあたりと組んでやってくれないかしら。
 
カーヴェリ
2010/06/10 21:32
最新のツイッターでも購入予定の車の試乗してたなんてつぶやいてるから、かなりのメカキチであるのは間違いないようですね。
メタ坊
2010/06/14 11:53
スピード狂なんですね。

ちなみに、【Paiyaa】というタミル映画でタマちゃんが車を爆走させるシーンがあるんですが、ハンドルさばきがなかなか様になっていました。
 
カーヴェリ
2010/06/15 03:08

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