カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Hoo】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/06/11 22:02   >>

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 ‘クレイジー・スター’ラヴィチャンドラン監督・主演のカンナダ映画。
 ラヴィチャンドランは、間違いなくサンダルウッドの重要人物なのだが、このブログには彼の出演作は【Rajkumari】(09)しか登場していない。それもそのはず、彼自身ここ数年不振にあえいでおり、監督作、主演作、ヒット作がめっきり少なくなっているからだ。しかし、出世作の【Premaloka】(87)以降、90年代末まで、その旺盛な創造力を以ってして彼がカンナダ映画界に及ぼした影響は大きい。

 ラヴィチャンドランは作話、脚本、台詞、監督、主演、作詞、音楽監督、編集、制作と、ほぼ映画制作に関することなら何でもこなすマルチタレントだが、そこから想像されるとおり、彼の作品は徹頭徹尾「ラヴィ美学」で統一されている。作風は視覚的・聴覚的にリッチなイメージを持つ楽しいマサラ映画で、追求しているテーマは一貫して「愛」。若かりし頃の彼は、セクシー・ロマンススターとして多くのカンナダ娘を熱狂させたらしい。そのせいか、当時娘だったオバサマたちの中には、今もラヴィチャンドランを見ると腰が砕ける人がいると言う。ちなみに、冠タイトルの‘クレイジー・スター’は、女性ファンをクレイジーにさせたという意味で、別にラヴィチャンドラン自身がクレイジーというわけではない。

 そんな彼なのであるが、今世紀に入ってからは「オヤジ・スター」への移行に失敗し(見かけはしっかりオヤジなのだが)、創造力も萎み、もっぱらテルグ映画やタミル映画のリメイク作品に出演するに留まっている。
 しかし、報道によると、どうも彼は本格的な巻き返しを開始したらしく、いくつかの野心的な企画の実現に取り組んでいるようだ。

 その前哨となるのがこの【Hoo】で、久々にラヴィチャンドランがフル稼働している作品。ヒロインはミーラ・ジャスミンとナミター。これにプラカシュ・ラージも特別出演するという異色な顔ぶれ。
 ただし、これも実はリメイクで、オリジナルはVikraman監督のタミル映画【Priyamana Thozhi】(03)とそのテルグ語版の【Vasantham】(03)。この2作はおそらく同時制作されたものと思われるが、面白いことに、タミル版はフロップだったのに対し、テルグ版はヒットしたらしい。
 (写真上:左よりMeera Jasmine、Namitha、Ravichandran。)

【Hoo】 (2010 : Kannada)
脚本・監督 : V. Ravichandran
出演 : V. Ravichandran, Meera Jasmine, Namitha, Prakash Rai, Rangayana Raghu, Pavitra Lokesh, Sharan, Bullet Prakash, Dharma, Chitra Shenoy
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : C.S.V. Seetharam
編集 : V. Ravichandran
制作 : Dinesh Gandhi

《あらすじ》
 アーナンド(Ravichandran)とジャスミン(Meera Jasmine)は子供の時より永遠の友情を誓い合った親友。二人の友情は恋愛より強かった。
 ジャスミンはバイオリン教師をしており、アーナンドはチェスの競技者を目指していた。生活費の稼げないアーナンドは家族から冷たくあしらわれていたが、ジャスミンとその父(Rangayana Raghu)は彼の才能を信じ、サポートしていた。
 アーナンドは州レベルのチェス競技会に参加し、ライバルのマイケル(Prakash Rai)を破って優勝する。この時、マイケルはジャスミンを目撃し、惹かれるものを感じる。
 アーナンドとクリスチャンのジャスミンがあまりにも親しいので、心配したアーナンドの家族は彼の嫁選びを始める。しかしそんな時に、アンジュ(Namitha)という女性が現れ、アーナンドと相思相愛になる。アンジュの姉のパヴィトラ(Pavitra Lokesh)もアーナンドに惚れるが、彼はアンジュを選ぶ。アンジュは最初アーナンドとジャスミンの仲を疑うが、後に二人の友情を理解するようになる。
 そんな時に、ジャスミンの父が急死する。アーナンドは身寄りのなくなったジャスミンを家に連れて来、一緒に生活させる。家族はこれに不快感を示すが、ジャスミンの人柄に感心し、受け入れる。しかし、二人の女性を巡る複雑な人間関係をはっきりさせるために、アーナンドはアンジュと結婚する。
 ところで、マイケルとジャスミンはその後接近し、恋仲となっていた。それを知ったアーナンドとアンジュは二人を結婚させようと考える。
 ちょうどその頃、全国レベルのチェス競技会が始まろうとしていた。勝者は国際大会の出場権を得ることになる。アーナンドも参加予定だったが、ここにマイケルの父が介入し、マイケルとジャスミンの結婚を認める代わりに、競技会から降り、マイケルに道を譲るよう、アーナンドに迫る。ジャスミンの幸せを考えたアーナンドはこの要求を呑む。
 マイケルとジャスミンの結婚が決まる。アーナンドはジャスミンとの友情を断ち切るため、わざと彼女に辛く当たり、家から追い出す。
 晴れてマイケルはインド代表に選ばれる。だがその後、彼は父の計略を知ることになる。記者会見の場で、マイケルはある決意を持ってスピーチを始める、、、。

   *    *    *    *

 「友情」と「愛」を巡るセンティメンタルな映画なのだが、ラヴィチャンドラン(49歳&推定90キロ)とミーラ・ジャスミン(公称28歳)が深い友情で結ばれた「幼なじみ」で、ラヴィチャンドランのロマンスのお相手はナミター(推定95キロ)、片やミーラ・ジャスミンはプラカシュ・ラージ(45歳)と、南インド映画を知る人たちからすれば、「サンダルウッドは一体どんな映画を作っとるんや!?」となりそうな作品だが、実際にご想像どおりののけ反り映画であった。しかし、B級というわけでもなく、さすがにラヴィチャンドランはしっかり作っており、しかも随所に彼の遊び心が散りばめられた、なかなか楽しい作品だった。
 (写真下:RavichandranとNamitha。)

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 内容的には、古めかしい感は否めない。特に後半のセンティメントの描き方がそうなのだが、「友情は恋愛よりも貴し」というアイデアはいいとして、こういう底なし沼に落ちたような、ずぶずぶとセンティメントの深みにはまって行くという展開の映画は近ごろでは珍しいのではないか。
 ただし、ラビチャンドランにしてみれば、画期的に新しい映画を作ろうなどという意図はなかっただろうし、私が重たく感じた上の点を除けば、オーソドックスなマサラ映画的要素がうまく調合された作品だったと思う。

 リメイクとは言っても、かなりラヴィ化されているようだ。
 オリジナルは観ていないので確かなことは言えないが、一応、知り得たことを基に書いておくと、、、
 本作のラヴィチャンドランとプラカシュ・ラージの役は、タミル語版オリジナルではマーダヴァンとヴィニート、テルグ語版ではウェンカテーシュとアーカーシュ。ミーラ・ジャスミンとナミターのツインヒロインは、タミル語版ではシュリーデーヴィ・ヴィジャヤクマールとジョーティカ、テルグ語版ではカリヤニとアールティ・アガルワル。
 男二人が争う競技はオリジナルではクリケットだが、本作ではチェスに置き換わっている。(そりゃあ、オジサン二人にクリケットは辛かろう。)
 本作のジャスミン役(Meera Jasmine)をバイオリン教師と設定したのはラヴィチャンドランらしいアイデアだ(オリジナルではバイオリン教師ではないと聞いている)。おかげで、聴覚的に非常に楽しい作品になっている。(その父親役を「ケーキ職人」としたのもラヴィのセンスっぽいのだが。)
 もう一つ、ラヴィチャンドラン(アーナンド)のロマンス相手(アンジュ)にパヴィトラ・ロケシュ演じる姉(パヴィトラ)を設定し、アーナンドの尻を追いかけさせるという展開もラヴィチャンドランの付け加えだろう。これは実はラヴィチャンドラン自身が監督・主演した【Malla】(04)のセルフ・パロディーで、同作品中のマッラー(Ravichandran)とナンジー(Pavitra Lokesh)のコメディー・シーンを再現したものだ。私は腹を抱えて笑ったが、【Malla】を観ていない人には何のことかさっぱり分からないだろう。

◆ 演技者たち
 伝統的にインド映画ではオヤジ俳優が年齢不明の独身男を演じ、はるか年下の女優とのロマンスを見せるというのも珍しくないのだが、本作のラヴィチャンドランはちょっと無理があった。彼自身の外見とイメージがあまり役柄に合っていなく、最後まで違和感を感じた。ここは監督のミスキャストを責めたい(あ、ラヴィか、監督も)。
 ただし、存在感はさすがに大したものだった。

 片や、ジャスミン役のミーラ・ジャスミンは役柄にもぴったり合い、良かった。上で批判した「底なし沼のセンティメント」も、彼女が泣いたおかげで、なんとか鑑賞に耐え得るものになったと思う。
 (写真下:Meera JasmineとRavichandran。)

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 アンジュ役のナミターは本作の見どころだ。お色気&コメディーの担当なのだが、日本人の正常な感性からすると彼女のお色気はコメディーにしか見えないので、コメディー・パート担当としておこう。はっきりした上手い使い方だ。笑えた。

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 ナミターとカンナダ映画といっても、あまりピンと来ないかもしれないが、実は過去に【Neelakanta】(06)と【Indra】(08)という2作に出演しており、カルナータカ州でも結構人気は高い。(【Neelakanta】ではラヴィチャンドランと共演している。)

 プラカシュ・ラージはほとんどサプライズ出演なのだが、少ない出番でおいしいところをさらっていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はハリクリシュナの担当。あまり良い評価はもらっていないようだが、悪くはないと感じた。

 興味深いのは、アーナンドとジャスミンの子供時代のシーンで、二人がウペンドラの【A】(98)のポスターの前で誓いをするという場面があるのだが、こういうのを見ると、ラヴィチャンドランの中に90年代への郷愁があるのかなぁ、と思えた。

◆ 結語
 【Hoo】は、タミル/テルグ映画のリメイクとはいえ、ラヴィチャンドラン作品らしい、また、カンナダ映画らしい作品。アホくさいところがなかなか良かったりして、ちょっとお勧めかも。こういう映画がヒットするようならカンナダ映画界も安泰なのだが、さて、どうだろう?

・満足度 : 3.0 / 5
 

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