カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Krishnan Love Story】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/07/04 21:40   >>

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 シャシャンク監督のカンナダ映画【Moggina Manasu】(08)は、非常に良い映画であるにもかかわらず、公開後2年経っても未だ字幕付きDVDがリリースされていない。VCDは出ているのだが、版元のAnand Videoは、このフィルムフェアー賞(カンナダ・カテゴリー)5部門受賞の秀作を、カンナダ人以外にも見せようという気前の良さはないのかね?
 もっとも、仮に日本の若者に【Moggina Manasu】を観せたとしても、ウケないこと確実なので、日本市場は無視しても構わないと思うが、インドになら、こういうラブストーリーを必要としている若者はカルナータカ州以外にもたくさんいるはずだ。ぜひとも英語字幕付きDVDを出してもらいたい。
 さて、その【Moggina Manasu】に続くシャシャンク監督の第3作目がこの【Krishnan Love Story】。やはり女性に焦点を当てたラブストーリーで、ヒロインも【Moggina Manasu】と同じラディカ・パンディットが起用されている。

【Krishnan Love Story】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Shashank
出演 : Radhika Pandit, Ajay Rao, Pradeep, Umashree, Achyuth Kumar, Padmaja Rao, Sharan, M. Chandru, B. Suresh, Ashwath Neenasam, Harsha, P.N. Satya
音楽 : V. Sridhar
撮影 : Chandrashekhar
編集 : M.K. Prakash
制作 : Uday K. Mehta, Mohan G. Nayak

《あらすじ》
 クリシュナ(Ajay Rao)はミドルクラスの陽気な若者。友人たちと小事業をして生計を立てようとしていたが、金回りは良くなかった。
 彼はある時、ギータ(Radhika Pandit)という女子大生と出会い、一目惚れする。ギータは貧しい家庭の一人娘で、父はおらず、母(Umashree)は病気がち、兄(M. Chandru)は呑んだくれのヤクザだった。それで、家族の将来はギータの肩に掛かっていた。
 クリシュナはギータに接近するが、彼のライバル、ナレンドラ(Pradeep)もギータに目を付けていた。ナレンドラは富豪の息子で、自身もホテルのオーナーをしていた。彼は財力に物を言わせてギータの気を引こうとするが、彼女はなびかない。
 そんな時に、ギータの母が入院してしまう。クリシュナは、自分の仕事を犠牲にしてまで、献身的にギータをサポートする。その甲斐あって、ギータもクリシュナの愛を受け入れるようになる。
 ところが、ギータはプラディープと駆け落ちしてしまう。しかも、二人を乗せた車は事故に遭い、プラディープは死亡、ギータは大怪我をして家に戻って来る。
 クリシュナはそれでもギータを愛しており、彼女を支えようとする。しかしギータは、事故のショックからか、心を堅く閉ざし、時には攻撃的にさえなった。精神科医(B. Suresh)はクリシュナに、ギータを転地療養させるようアドバイスする。
 クリシュナはギータを風光明媚な渓谷地へと連れて行く。そこでギータは幾分心を開くようになり、クリシュナに、プラディープと駆け落ちしたのはお金のためであり、結婚の儀式を行うためにダルマスタラの寺院へ向かう途中で事故に遭ったことなどを打ち明ける。クリシュナはその話を聞いても、ギータを受け入れる意思は変わらないと彼女に伝える。ところが、その後、ギータは忽然と姿を消してしまう、、、。

   *    *    *    *

 シャシャンク監督自身の弁によると(こちらの記事)、本作のストーリーは、監督の友人であるハルシャという人の身に実際に起きた出来事に基づいたものだそうだ。ただし、75パーセントが事実で、25パーセント(クライマックス)は監督の想像らしい。25パーセントを創作としたのは、実際の結末はとても観客には消化できないだろうから、と説明している。そして、実話のほうは映画公開後にハルシャ自身が明らかにするだろう、とも述べているのだが、今のところ私はそれを目(耳)にしておらず、また「ハルシャ」が誰のことなのかも分からない。

 テーマは、ためらいながらこの言葉を使うが、「純潔」ということだろう。
 日本でも駆け落ちをした人間が故郷に戻って来ると、白い目で見られるだろうが、それがインドなら、特に「女性」の場合、もっと厳しい視線にさらされることになる。ギータは、母の治療費の保証など現実的な理由があったとはいえ、誠実なクリシュナを捨ててプラディープと駆け落ちしてしまい、そのことで自分の純潔性を疑い、激しく苦悶することになる。映画の前半は状況設定だけのようなもので、核心的な部分は後半の自動車事故の後から始まる。ギータの苦悩とリアクションが本作の見どころで、それをラディカ・パンディットが上手く演じている。

 もう一つのテーマとしては、やはり「貧困」、「貧富の格差」というのがあるだろう。インドには(インドに限らないが)オールマイティーな富者がいる一方で、有事に対して無力な貧者も多く存在し、その格差は特にバンガロールのような都市部で大きくなっている。本作ではそうした社会的な背景がはっきり意識されており、ギータという無垢な女性が、貧しさゆえに破壊されていく悲劇的状況が描き出されている。

 シャシャンク監督の演出は巧みで、映画的になかなか面白く、主張もはっきりしている。にもかかわらず、【Moggina Manasu】ほど感動できなかったのは、作戦ミス、やはり悲劇的な結末を採ってしまったのが間違いだったと思う。
 「インド映画はハッピーエンド」という偏見に対抗してか、近ごろアンハッピーエンドの作品もよく作られ、それが批評家にウケたりもする。シャシャンク監督もその線を狙ったのかもしれないが、しかしアンハッピーエンドというのは、悲劇的状況を目にして観客が強い義憤を抱くとか、さめざめと泣いて却って心が晴れ晴れするとか、そんな効果があって初めて成功するものだ。本作のようなどんよりとした終わり方は娯楽映画としては美味しくない。私が見たところ、本作はハッピーエンドにしてもテーマは成立するし、ハッピーエンドの方が映画前半の雰囲気やクリシュナの人物像にも合っている。

◆ 演技者たち
 本作の題名は【クリシュナとラブストーリー】だが、主役はギータのほうで、クリシュナはギータの行動と心理を描き出すための鏡的な役割となっている。
 演じたアジャイは好演しており、申し分なかったが、【Prem Kahani】(09)に続いてまたもやヒロインの引き立て役に回ってしまったとは、‘ロイヤル・スター’のタイトルが泣く。しかし、その手ごろなスケールの小ささ、お人好し感が彼の魅力、使い勝手の良さであり、多くの若者の共感を集めるところだろう。

 対して、ギータ役のラディカ・パンディットはもっと熱演だった。もっとも、監督の指示通りに動いていただけなのかもしれないが、また何かの映画賞を取ったとしても不思議ではない。
 面白いことに、彼女はこれまで【Moggina Manasu】や【Love Guru】(09)など、恋愛映画にしか出ていない(つまり、アクション映画とかに出ていない)。しかし、ラディカ・パンディットという女優は、何度も同じことを繰り返して、本人にこのブログを読まれたら叱られそうだが、際立って美人というわけでも、強いお色気があるわけでもないのである。にもかかわらずラブストーリーの顔になっているというのは、つまりは彼女の体現している等身大的女性のイメージが近ごろのカンナダ・ラブストーリーにぴったり合っており、同世代女性の共感と支持を集めているということなのだろう。
 驚いたことに、彼女はドジョウ掬い程度のダンスもできなかったはずなのに、本作ではある程度様になる所作を見せている。きっと地道にレッスンしているのだろう。感心、感心。
 (写真トップと下:AjayとRadhika Pandit。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は、【Mussanjemaatu】(08)でお馴染みのV.シュリーダルの担当。なかなか良く、また音楽シーンもカンナダ映画にしては良い出来で、テレビのカンナダ語チャンネルで頻繁にリクエストされている。

 ロケ地はカルナータカ州内の魅力的な景勝の地が使われている。クライマックスの渓谷はホゲナッカル滝(Hogenakkal Falls;正確にはタミルナードゥ州に位置する)やシヴァナサムドゥラ滝(Shivanasamudra Falls)だと思われる。

◆ 結語
 【Krishnan Love Story】は興味深い作品だが、やはりカンナダ映画ウォッチャー以外は特に観る必要もないだろう。私的見解では、結末を悲劇にしてしまったのが惜しまれる。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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