カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Mr. Theertha】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/07/15 01:48   >>

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 サドゥ・コキラ監督のカンナダ映画。
 サドゥ・コキラはサンダルウッドの人気コメディアンだが、音楽監督、映画監督としても才を見せ、監督作品としては【Raktha Kanneeru】(03)や【Anaatharu】(07)などのヒット作もものにしている。
 これら2作はリメイク作品だったが、本作【Mr. Theertha】もリメイク。元ネタはモハンラル主演のマラヤラム映画【Sphadikam】(95)で、これは傑作だと聞いている。【Sphadikam】はその後ナーガールジュナ主演のテルグ映画【Vajram】(95?)、スンダル・C主演のタミル映画【Veerappu】(07)にリメイクされたらしい。
 サドゥ・コキラは本作が【Sphadikam】のリメイクであることを公表していたのだが、映画のクレジットでは何故か「ストーリー」も彼の名前になっていた。
 (写真下:笑顔も爽やかなサドゥ・コキラ氏。)

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【Mr. Theertha】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Sadhu Kokila
出演 : Sudeep, Anant Nag, Saloni, Geetha, Sowmya, Doddanna, Avinash, Rekha V. Kumar, Shobharaj, Ashwath Neenasam, Sadhu Kokila, Rashmi
音楽 : Guru Kiran
撮影 : Dasari Srinivasa Rao
編集 : John Harsha
制作 : Kumar, Sriram, Gopalakrishna, Radha

《あらすじ》
 ナラヤナ・シャーストリー(Anant Nag)は賞を取ったこともあるほどの優秀な数学教師。彼は息子のティールタ(Sudeep)にも数学者になってほしいと願っていたが、彼は25回も刑務所に入る極道に育ってしまった。ティールタは子供の頃より機械いじりが得意で、発明の才があった。それは母や妹、クラスメートたちを喜ばせていたが、ただ一人、父だけはその才能を認めず、逆に数学ができない息子につらく当たっていた。それでティールタはグレてしまったというわけだった。
 ティールタはある時、ヤクザの男(Ashwath Neenasam)を懲らしめる。それは政治家ヨーガナンダ(Avinash)の妻(Rekha V. Kumar)の弟だったため、妻は手先の警官(Shobharaj)を使い、ティールタに復讐する。だが、ティールタも反撃に出たため、彼と警察のいざこざは大問題に発展し、そのせいでティールタの妹シャクンタラー(Sowmya)の婚約がご破算となる。激怒したシャーストリーはティールタを亡きものと見なし、葬式まで行う。
 悔悟に駆られたティールタは、シャクンタラーの婚約者に会い、妹と結婚してくれるよう懇願する。婚約者はその願いを受け入れる。
 ティールタはラーフルという男と出会う。彼は政治家ヨーガナンダの隠し子だった。ヨーガナンダの妻はラーフルに危害を加えようとするが、ヨーガナンダの依頼で、ティールタがラーフルを保護することになる。
 テレビレポーターのナイナ(Saloni)はティールタの幼なじみで、子供の頃から彼のことを愛していた。彼女は自分の番組の中で、ティールタのことを発明の天才で、超低燃費のバイクを開発したと報道し、彼を援護する。
 やがて、シャクンタラーの結婚式が行われる。シャーストリーの身内たちは、これを機に彼の頑迷な態度を改めるよう説得するが、うまく行かない。
 ヨーガナンダの妻はティールタにラーフルを引き渡すよう要求するが、拒否される。激怒した彼女は、弟と警官に命じてティールタとラーフルを襲撃させるが、彼らは逆に撃退される。しかし、ティールタは怪我を負い、入院してしまう。夜、シャーストリーが病室に一人で見舞いにやって来る。
 退院したティールタにはご褒美が待っていた。ナイナの番組のおかげで、ティールタの開発したバイクが大手メーカーに採用され、製品化されることになったのである。その発表記念式典の場で、ティールタはスピーチをする。会場の片隅では、シャーストリーもこっそりとそのスピーチを聞いていた。

   *    *    *    *

 オリジナルのマラヤラム映画【Sphadikam】は観ていないので何とも言えないが、本作はストーリー展開といい、ダンスやコメディー、アクションのテイストといい、どこをどう観てもスタンダードなカンナダ娯楽映画で、マラヤラム映画らしいところも「傑作」という風格も感じられなかった。ただ、映画としては結構面白く、チケット代ぐらいの価値は十分ある。
 オリジナルの面白さが本作の面白さの保証になったかもしれないが、スディープやアナント・ナーグら主要登場人物の好パフォーマンスも成功の要因だろう。それに、なんと言っても、サドゥ・コキラが面白い娯楽映画を作るツボを心得ているというのもあると思う。

 レビューなどの記述によると、オリジナルからは大きな変更は加えられていないようだ。ただ、クライマックスは違っているかもしれない。
 設定の変更では、主人公の家族は、マラヤラム版オリジナルではクリスチャンだが、カンナダ版では厳格なヒンドゥー教バラモン家に置き換わっている。これは土地柄が反映されていて興味深い。
 主人公の職業(カンナダ版ではバイク修理工)やヒロインのそれ(同、テレビレポーター)なども今日風なアレンジだろう。

 映画の見どころは、父と子の確執と和解のプロセスだが、そうした複雑な父子関係を生んだ背景として、教育の問題があると思う。数学教師のシャーストリーは、子供の自由な創造性というものを認めず、暗記による学習を強制し、できなければ体罰も辞さない。それが如何に子供の成長に悪影響をもたらし、困難な状況へと帰結していくかが描かれていた。鑑賞前は、15年も前に作られた映画のリメイクを作る意義があるのかという疑問もあったが、こうしたインドの教育の否定的な側面が今日的な問題であることは、ヒンディー映画【Taare Zameen Par】(07)のヒットを見てもよく分かる。

◆ 演技者たち
 ティールタ役のスディープはさすがの熱演。こういうアクションとロマンスとセンチメントがミックスしたヒーローをやらせれば、今のサンダルウッドではナンバーワンだろう。特に感情表現ではラージクマール兄弟よりずっと説得力がある。私はヴィシュヌヴァルダンの後継者はこのスディープしかいないと思っているのだが、これからも精進して、もっと上を目指してほしい。
 (写真下:スディープ氏。隣は主人公が開発したという驚異のリッター100キロ超のバイク。)

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 父親役のアナント・ナーグは、最近目立った映画出演をしていないので、もしや体でも壊したのでは?と心配したが、本作で気合いの入った芝居を見て安心した。現在公開中の【Eradane Maduve】でも好演しているようで、楽しみだ。
 (写真下:アナント・ナーグ氏。小道具の眼鏡がキラリと光る数学教師を好演。)

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 ヒロインを演じたサローニは、今日も可愛くて私的には満足したが、あまり評価する声も聞かれず、むかついた。
 カンナダ映画には【Budhivanta】(08)と【Dubai Babu】(09)に出演しているが、どちらもセカンド・ヒロインだったので、本作が初フル・ヒロイン。【Dubai Babu】でサドゥ・コキラと共演したことが本作出演に結び付いたのかもしれない。
 アイドルとしてはとうの立つ年齢になってしまい、その割にはぱっとしない経歴の続くサローニだが、S.S.ラジャモーリ監督のテルグ映画【Maryada Ramanna】で一発大逆転と行きたいところだ。
 (下:サローニさん。明日もきっと可愛いだろう。)

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 サドゥ・コキラ監督自身がストーリーとはほとんど関係のないコメディー・トラックを愉快に演じている(おそらくマラヤラム版オリジナルにはこの種のコメディー・シーンはなかったと思われるが)。これは全体的に【Duniya】(07)のパロディーになっており、同作品のヒロイン、ラシュミも特別出演していた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はグル・キランの担当。特に新鮮なものはなかったが、悪くはない。
 低予算の作品だが、音楽シーンでは一応海外ロケ(タイ)が行われていた。

◆ 結語
 特にお勧めはしないが、観たら観たで面白い。アーチストと言うよりは香具師のようなサドゥ・コキラだが、限られた予算と人材の枠内で、過去の名作のパクリであれ何であれ、とにかく退屈しない映画を作り上げ、そこそこ客を集めてちゃっかり稼ぐという手腕はバカにはできない。大衆娯楽映画の見本になるような作品として取り上げてみた。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
字幕なしのDVDで見ました。
大筋はわかったのですが、追われていた青年のあたりのいきさつがほとんどわからなかったので、とても助かりました。

ありがとうございます。

サローニとの絡みはそれほどではないのですが、その分父と子の物語に焦点が当たって作品としてまとまっていたかな、と思います。
ダンスが素敵な二人でした。

やっほー
2013/09/16 00:54
まさか私のあらすじがお役に立とうとは!

ブログ、拝見しました。
すっかり忘れていましたが、そういえばサローニの唇が切れる場面でドキッとしたのを思い出しました。
また、あの橋、タイのカンチャナブリにある橋ですよね。私も一度行きましたが、映画で見たときはまったく気が付きませんでした。
 
カーヴェリ
2013/09/16 23:00

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