カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Deadly-2】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/09/03 21:42   >>

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 今年上半期のカンナダ映画産業は、60本も公開されたにもかかわらず、ブロックバスターは【Aaptha Rakshaka】のみ、これに【Raam】(昨年末の公開だが)、【Porki】【Prithvi】【Naanu Nanna Kanasu】のヒットが続いたぐらいで、不振といえば大不振だった。ところが、下半期に入ってちょっと調子付いてきたようで、2ヶ月で早くも【Krishnan Love Story】(6月下旬の公開だが)、【Jayahe】、【Eradane Maduve】【Lift Kodla】の4本がヒットを記録し、心配されたシヴァラージクマールの【Cheluveye Ninne Nodalu】も好調、ダルシャンの【Shourya】もグッド・オープニング、また、ヒットとまで行かなかったが、【Mathe Mungaru】も注目を集めた。何よりもうれしいのは、【Krishnan Love Story】や【Eradane Maduve】のような、カンナダ映画らしい内容を持つオリジナル作品がヒット作に名を連ねていることで、ここから他映画産業との関係においてカンナダ人がカンナダ映画に何を求めているかが仄見えるようで、なかなか興味深い。

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 それはさておき、この【Deadly-2】もおかげさまでヒットとなっている。
 本作品は2005年制作の【Deadly Soma】の続編で、監督は同じラヴィ・シュリーワトサ、主演も同じくアーディティヤが務めている。(写真上は主演のAdithya。)
 【Deadly Soma】は、ブロックバスターとなった【Jogi】と同時期に公開されたにもかかわらず、大健闘し、カンナダ暗黒街映画のヒット作の1つとなった。
 ところで、【Deadly Soma】で主人公のソーマは殺されてしまったのだが、にもかかわらずどうやって続編ができたのか、それが観客の関心事の一つだった。
 なお、本作では「エンカウンター」と「フェイク・エンカウンター」ということがキーとなるのだが、この言葉を初めて聞いたというお方は、まずはこちらにある説明を読んでおいていただきたい。

【Deadly-2】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Ravi Srivatsa
出演 : Adithya, Suhasini Manirathnam, Devaraj, Ravi Kale, Meghana, その他
音楽 : Sadhu Kokila
撮影 : Mathew Rajan
編集 : Lakshman Reddy
制作 : Manjunath, Murthy

《あらすじ》
 ソーマ(Adithya)は優秀なクリケット選手で、カルナータカ州代表チームのメンバーに選ばれることが内定していた。しかし、ここに仲介者が割り込み、確定するためには100万ルピーの賄賂を払わなければならないと言われる。そんな大金はどこにもなかったため、ソーマの父と友人たちは金融業者から借金をして、仲介者に手渡す。
 ところが、その100万ルピーは徒に仲介者のポケットに入っただけで、ソーマは選出されず、しかもその金も戻ってこなかった。激昂したソーマはクリケットのバットで仲介者を殴ってしまうが、その一撃で仲介者は死亡する。
 その知らせを受けたソーマの父はショック死してしまう。ソーマは自首するが、警察署に連行される途中で、父が金を借りたヤクザの金融業者と結託していた悪徳警官が、ソーマをその金融業者の所まで連れて行く。金融業者はソーマに借用書にサインするよう迫るが、彼は拒否する。そのため、彼は衣服を剥ぎ取られ、裸同然で大通りを走らされる。屈辱に耐えかねたソーマは金融業者を殺し、逃亡する。
 ここからソーマの暗黒街人生が始まる。彼は友人たちとギャング団を組織し、暗黒街でも知られた存在となる。
 ソーマの一団は当然指名手配となり、バンガロール警察の3人のエンカウンター・スペシャリスト、アショーク(Devaraj)、ウグラッパ(Ravi Kale)、マニが担当となる。3人の警官はソーマらの家族を脅すが、逆にソーマらも3人の家族を脅迫する。しかし、結局ソーマの仲間は3人に殺され、ソーマ自身もフェイク・エンカウンターで母(Suhasini)の面前で射殺される。
 だが、ソーマの母は、息子を殺した警官の1人、マニを射殺し、自首する。裁判の場で母は、ソーマがフェイク・エンカウンターで殺されたこと、そして、現場にいた罪のないハーシニ(Meghana)という女性もアショークらに射殺されたことを証言する。
 ソーマの母は有罪判決を受け投獄されるが、アショークとウグラッパも殺人の廉で刑務所送りとなる。

   *    *    *    *

 あらすじは出来事の起きた順に書いたが、映画は回想シーンを複雑に配して、時間軸をまったく無視した構成となっている。
 まず、冒頭はソーマの母が警官マニを射殺するシーンから始まり、次に刑務所で服役中の母と2人の警官、アショークとウグラッパをテレビレポーターが訪ね、インタビューするというシーンに移る。基本的にこのインタビューによる回想が映画の主要部になっているが、この回想シーンの中にも細かな回想が入り、一瞬戸惑うが、脚本がよく練られているため、混乱することはない。そして、最後は裁判のシーンで、観客にメッセージを投げ掛ける形で終わる。

 映画序盤の回想シーンで、アショークとウグラッパが過去に行ったエンカウンターを告白するシーンが長々と続く。これは映画の主筋とほぼ関係がないのだが、実際にバンガロールで起きた凶悪犯罪者射殺事件に言及しており、面白い。ただし、【Deadly Soma】が実在したギャングをモデルにしていたのに対し、この【Deadly-2】の物語自体はフィクションのようだ。一応、オリジナル・ストーリーなのだが、ヒンディー映画の【Shootout At Lokhandwala】(07)から多くの部分を借りている。(これについて主演のアーディティヤは、たまたま似ているだけ、と述べているが、これは空トボケだろう。また、【Shootout 〜 】のヴィヴェーク・オベロイとも衣装がよく似ているのだが、これについては、カッコいいし、映画の雰囲気にも合っているので真似た、と素直に認めている。)

 【Deadly Soma】の続編ということだったが、2作の間にストーリー上の繋がりはない。関係があるとすれば、主人公の名前がどちらも「ソーマ」であること、その2人のソーマを射殺したのが同じ警官アショークであること、また、2代目(?)ソーマが最初の殺人を犯した日がたまたま映画【Deadly Soma】の公開初日だったという設定になっており、それでアショークが彼にも「Deadly Soma」のニックネームを与えた、ぐらいのことで、実質的な結びつきはない。
 しかし、テーマという点では、2作ははっきりとシリーズになっている。
 【Deadly Soma】は、過ちから殺人を犯し、暗黒街に転落した青年ソーマが、結局は警官アショークにフェイク・エンカウンターで射殺されるというストーリーで、ギャングとして恐れられた男も実は血の通う好人物であることが強調される反面、それでもやはり「犯罪者は罰すべし」という厳格な結論になっていた。【Deadly-2】も途中までは同じなのだが、「犯罪者は罰すべし。ただし、それは警官も例外ではない」と、アショークの行き過ぎたフェイク・エンカウンターの犯罪性を問題として取り上げている。

 映画の出来としては、カンナダ映画にしてはスピーディーで緊張感のあるものだった。2時間10分程度の比較的短い作品でありながら、シーン数が131もあることがスピード感の原因かもしれない。(通常は70から80シーンで、131シーンというのは、インド映画では【Mission Istanbul】(08)の148シーンに次ぐ多さらしい。)
 ラヴィ・シュリーワトサ監督の作品らしく、コメディー・シーンは一切なし。ひたすら辛口に攻めているが、母子の情愛が描かれている部分はほのぼのと甘い(ここはすこぶるカンナダ映画らしかった)。

◆ 演技者たち
 主演のアーディティヤは、カンナダ映画界の著名な監督、S・V・ラージェンドラ・シン・バーブの息子で、俳優デビュー当時は大いに期待もされたが、何故かぱっとせず、映画出演は【Snehana Preethina】(07)以来3年ぶりとなってしまった。アクション物ではダルシャンやプニートに、ロマンス・家族物ではスディープにそれぞれ抑えられてしまった感があるが、しかし本作でははっきりと好演していると言える。俳優としての資質はあるほうだと思うので、頑張ってやってもらいたい。特に、本作で見せた右の眉毛をピクピクと動かす技はこれからも使えると思う。

 アーディティヤも良かったが、本作の最大の光りどころは、ソーマの母親役のスハシニさんだった。平凡な主婦が、警官を撃ち殺し、裁判で警察を相手に正義を問うまでに変貌していく様を熱演していた。(しかし、あの拳銃はどこで手に入れたのだろう?)

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 ソーマの恋人で、アショークに撃たれてしまうハーシニを演じたのはメーガナ。【Venkata In Sankata】(09)、【Shishira】(10)、【Bengaloored】(10)と出演してきたが、まだ大衆的な人気を得るには至っていない。本作では下町の聾唖の娘を演じ、暗いトーンの映画にあって実にいい清涼剤となっていたのだが、いかんせん出番が短すぎた。期待度の高い女優だと思われるだけに、残念だった。

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 ネガティブロールのデーヴァラージ(アショーク役)とラヴィ・カーレ(ウグラッパ役)はOK。
 往年の有名なクリケット・インド代表選手で、主にカルナータカでプレーしていたサイード・キルマニ(Syed Kirmani)が特別出演していた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はサードゥ・コーキラの担当で、素晴らしかった、、、と言いたいところだが、歌は1曲しかなかった。
 実は、音楽シーンとして5場面作られたのだが、ないほうがいいと判断されて、編集段階で4曲分ばっさりと削除されたものらしい。そんな役立たずの音楽シーンを作るほうも作るほうだが、まぁ、作った本人がないほうがいいと判断したなら、この措置は正解だとしておこう。
 残された1曲は、刑務所内でシヴァ神の祭礼が行われたときのバジャンで、この場面は美しかった。

 アクション・シーンで、主人公がヤクザ相手に繁華街のど真ん中で格闘を演じ、それをヤジ馬が取り巻いて見ているという場面があったのだが、ヤジ馬が中に入って来ないように仕切ったロープまで画面に映りこんでおり、あれは間抜けだった。

◆ 結語
 【Deadly-2】は、ボリウッド映画【Shootout At Lokhandwala】に負っている部分も多いのだが、全体としてはラヴィ監督らしい、カンナダ映画らしい作品にまとめられている。こういう社会派犯罪映画が好きな方にはお勧めできるが、やはり字幕付きで観たいところだ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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