カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Appu Pappu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/09/23 23:31   >>

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 今回紹介するカンナダ映画の【Appu Pappu】は、子供向け映画にもかかわらず観に行ったのは、オランウータンが重要な役回りで登場するという珍しい作品だからだ。かつて【ムトゥ・踊るマハラジャ】が日本で公開されたとき、宣伝チラシのキャスト欄に「象多数」と書いてあるのを見て、「さすがインド映画は違うなぁ」と思ったものだが、本作にはカンボジアのオランウータンが登場し、クレジットにもちゃんと「Orangutan」と書いてある。
 しかし、私が本作を観る決定的な動機となったのはオランウータンではない。「どうせまた女優目当てやろ」とお思いの方、ハズレ。今回は「若おっちゃん」で、その名も「アッバース」である。
 アッバースといえば、タミル映画【Kadhal Desam】(96)でデビューし、世紀の変わり目ごろまでは「クセあり二枚目」として結構活躍していた俳優だが、その後ビジネスのほうに力を入れ、鳴りを潜めていた。【Kadhal Desam】は、私が初めてインドを訪れた際に観た映画であり、その懐かしさに応じて、アッバースの名前も懐かしく記憶されている。最近になって再び映画出演にも力を入れ始めたようだが、それでも「あの人は今?」みたいな状態だったので、こうしてカンナダ映画に、たとえ共演者がオランウータンであっても、出演している姿を見て安心した。
 (写真下:オランウータンと仲良く記念撮影のアッバース氏。左のジェニファーも加えて、いやに獣臭い並びだ。)

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 主人公の少年を演じたのはスネーヒトくんで(写真トップ)、本作のプロデューサー、サウンダラヤ・ジャガディーシュの息子。子役として実質的なデビューとなる。
 生きたオランウータンを使っているということで、上映には動物保護局の認可が必要なのだが、それがなかなか下りず、公開が大きく遅れてしまった、と報道されている。

【Appu Pappu】 (2010 : Kannada)
脚本・監督 : Anantharaju
出演 : Master Snehith, Orangutan, Abbas, Rekha, Vijayakumar, Rangayana Raghu, Komal Kumar, Raju Thalikote, Jennifer Kotwal, Madhuri, Ravi & Harish
音楽 : Hamsalekha
撮影 : S. Krishna
制作 : Soundaraya Jagadish

《あらすじ》
 アップ少年(Master Snehith)は母(Rekha)と祖父(Vijayakumar)との3人暮らし。父(Abbas)は、アップがまだ赤ん坊のときに母と喧嘩をして、別居していた。母はアップに父のことを話したがらなかったが、祖父はアップに父の写真を見せ、現在カンボジアで高級ホテルの支配人をしていることを教える。
 アップの母が仕事でカンボジアへ行くことになる。アップは祖父とひと芝居打って、まんまと母と一緒にカンボジアへ行くことになる。
 同じ飛行機にコーナナケリ(Raju Thalikote)という悪党が2人の手下(Ravi & Harish)を連れて乗っていた。彼はインドの防衛機密を保存したUSBメモリーを持っており、それを免税店で買った車のおもちゃの中に隠し入れていた。カンボジアの空港でコーナナケリは、発覚を恐れて、自分の免税店の袋をアップが持っていた同じ袋とすり替える。ところが、後にそれを取り戻し損ねてしまう。
 アップと母は、偶然父が働いているホテルにチェックインする。母が仕事に出ている間、親類のジョッキー・チャン(Rangayana Raghu)がアップの面倒を見ることになる。アップは、免税店で買ったおもちゃが替わっているのに気付くが、仕方なくそれで遊ぶ。
 一方、コーナナケリは、地元のコソ泥アントニー(Komal Kumar)にアップからおもちゃの車を取り返すよう依頼する。アントニーは女アシスタント(Madhuri)とオランウータンのパップとでチームを組んでいた。アントニーから指示を受けたパップは、アップの部屋に忍び込み、首尾よく車を盗むが、逃げる際に感電してしまい、気絶したところをアップに救われる。恩を感じたパップは、アントニーの許には戻らず、アップと行動を共にすることにする。
 アップは父と対面し、親交を深める。ところが、母はこの事態を受け入れず、父に悪態をつく。
 そうこうしているうちに、母とアップがインドに帰る日となる。空港には父やジョッキー・チャンも見送りに来るが、アップとパップは誘拐されてしまう。警察に捜査を依頼したものの、手掛かりはなかった。しかし、父と母がアップを捜す過程で、二人は縒りを戻すことになる。
 実は、アップとパップを誘拐したのはジョッキー・チャンで、指示を出したのは祖父だった。彼らは、父と母を仲直りさせるために、この狂言誘拐を仕組んだのであった。計画はうまく行ったため、ジョッキー・チャンは両親に電話で連絡する。
 ところが、両親が駆け付ける前にコーナナケリとアントニーらがやって来、アップを誘拐しようとする。アップとパップは、逃走する途中で、スチュワーデスのサンジャナ(Jennifer Kotwal)に救われる。サンジャナはアップとパップを自分の家に匿う。
 アップはおもちゃの車の中にUSBメモリーがあるのを見付ける。データをチェックしたサンジャナは、それが大変な機密であることを知り、地元の警察に届ける。しかし、対応した警官が悪者で、アントニーにこの事実を連絡し、サンジャナを署内に留める。サンジャナはアップに悪党たちがやって来ることを電話で伝える。
 アップとパップは家に罠を仕掛け、コーナナケリやアントニーらを苦しめる。しかし、逃げる過程でアップは高所から転落してしまい、意識を失う。悪党たちはアップを襲おうとするが、ちょうどその時、アップ誘拐の知らせを聞いた祖父がアンジャネヤ神に祈願していたため、パワフルになったパップが悪党たちをやっつける。また、アンジャネヤ神から授かったペンダントのおかげで、アップの意識も回復する。
 一同はパップに感謝し、パップを家族のいる森に帰らせることにする。

   *    *    *    *

 純粋に子供向けの映画だが、なかなか面白かった。「大人が観ても唸れる」というわけにはいかないが、おおらかな気持ちで観る分には問題なく、下手すりゃ大人向けに作られたカンナダ映画よりよっぽど感心できる面もあった。

 オリジナル作品ではあるが、ハリウッド映画の【Dunston Checks In】(96)や【Home Alone】シリーズからかなりパクっているようだ。しかし、テイストはこてこてとした南インド風になっている。(ちなみに、【Dunston Checks In】はヒンディー語ダビング版が作られ、インドでヒットしたらしい。)
 面白いと思ったのは、こういう子供向け映画でも南インド映画のフォーミュラをきちんとなぞっていることだ。まずヒーロー(アップ少年)はやはりアクション・シーンと共に登場し、音楽シーンが続く。物語の盛り上がりには悪漢とのチェイスがあり、クライマックスは神様映画のノリにまでなって、驚いた。ないのはヒロインとのロマンス展開だが、その代わりにオランウータンとの友情が描かれていた。テーマ的にも「家族の紐帯」と、南インド映画(南インドに限らないが)で非常に好まれるものが扱われている。猿を使ったということで、アンジャネヤ(ハヌマーン)神に関連付けたことも注目される。
 そんな次第で、本作は非常に教育的だと思ったが、それは子供に倫理教育を授けるという点だけでなく、南インド映画の様式を植え付けるという点でもそうである。

 それと関連して、興味深い経験をした。
 私が本作を観たショーは学校(SSLC)の鑑賞会とぶつかり、観客の9割が学童たちで占められた(たぶん1学年から10学年まで揃っていたと思う)。それで、子供たちのリアクションを観察する良い機会になった。
 まず、ヒーロー(アップ少年)の登場では学童たちから大声援が上がり、悪童と格闘するシーンでは大拍手が起きていた。さらに、音楽シーンが始まるときにはいちいち声援が飛んでいた。これからすると、インド人が銀幕のスターに声援を送るという行動パターンは、成人してから始まるものではなく、彼らの発達段階のごく初期に獲得されるのではないか、とも推測できる(もしかしたら、それは胎教から始まっているのかもしれない)。とすると、日本人がインド映画を観て騒ぐのとは、年季の入り方が違うわけである。
 コメディーは、「これが面白いのかなぁ」と思えるようなネタでも子供らしく素直に笑っていたが、バナナの皮ですべって壁にぶつかるといった程度では誰も笑わないことが分かった。
 お色気ネタ(こんなのも一応あったのだが)でも指笛が随所で聞こえ、子供のくせに一人前にスケベだということが分かった。

 蛇足として、映画本編開始前にマハトマ・ガンディーのスライド写真がスクリーンに映し出されたのであるが、その時も割れるような歓声が起きていた。「おお、さすがインド、愛国思想教育がしっかりしている」と感心していたら、次の「ナルタキ劇場へようこそ」と書いたスライドでも同じぐらいの歓声が起きた。さらに次の「禁煙」のスライドでも同じことで、要するに彼らは何か映ればうれしかったみたいだ。

◆ 演技者たち
 主人公アップを演じたスネーヒトくんには合格点をあげたい。ただ、子供が一生懸命頑張っているのに水を差すつもりはないが、そんなに可愛いとも優秀な子役だとも思えなかった。(現地の人、特に同世代の子にはどう見えるのだろうか。)

 対して、パップ役のオランウータン(ジュディーという名前らしい)はよく調教されていて良かった。

 注目の父親役のアッバースは、良かったとかどうだったとかいう次元の役柄でもなかったのだが、下の音楽シーンを見られただけでも得した気分になった。
 http://www.youtube.com/watch?v=NLEF1ydcA-M&NR=1

 母親役のレーカちゃんは、まともな役で見たのはずいぶん久しぶりだが、しばらく見ないうちに額が一段と広くなっていて、祖父役のヴィジャヤクマールと父娘だという設定が妙にリアルだった。
 (写真下:左より母親役のRekha、祖父役のVijayakumar、アップ役のSnehith。)

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 脇役陣では、ランガーヤナ・ラグは上手かったが、「ジョッキー・チャン」といういい加減な役名がいただけなかった。
 スチュワーデス役のジェニファーはOK。
 コソ泥アントニー役のコマルクマールは結構いけた。この人は常の映画では笑える率が低いのだが、本作では相方が猿だったのが幸いしたのかどうか、、、。また、「お色気たっぷり、おつむはさっぱり」といった女アシスタントを演じた女優(Madhuriという人らしい)も、適当に安物くさいところが良かった。
 (下:泥棒チーム。Komal KumarとMadhuri。)

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 コーナナケリ役のラージュ・ターリコーテは珍しく悪役だった(といっても、結局はコメディーなのだが)。悪くはなかったが、やはり彼はジャケットを着て飛行機に乗るようなキャラではなく、財布には200ルピー以上入っていたことがないといった、ボロボロの庶民オヤジがよく似合うと思う。
 なお、そのコーナナケリには2人の部下が付いていたのだが、それは「ラヴィとハリシュ」という、共にボディー・ビルディングのミスター・インディアになったことのある兄弟がやっていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 ハムサレーカの音楽はまずまず。
 クライマックスのアンジャネヤに捧げるデヴォーショナル・ソング風の曲を紹介したいのだが、動画が見つからなかったので、とりあえずはアップとパップの友愛ソングでも。
 http://www.youtube.com/watch?v=VY8sw5i7p58

 映画の大半はカンボジアのリゾート地、コーコンでロケが行われている。

◆ 結語
 【Appu Pappu】はインド映画の子供向け作品としてはまずまず楽しめる出来。ハリウッド映画のパクリといった側面もあるが、生きた動物が活躍するインド映画というのも珍しいし、南インド映画のフォーミュラを興味深く踏んでいるし、アッバースも出ているしで、マニアックにインド映画を楽しみたい方にはお勧めかもしれない。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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【Sachin... Tendulkar Alla】 (Kannada)
 このカンナダ映画【Sachin... Tendulkar Alla】は、クリケットが大好きな自閉症の少年を主人公にした作品という触れ込みで、おそらくお涙ちょうだいの、取って付けたようなメッセージが飛び出す映画だと予想され、敬遠したいところだったが、それでも観ることにしたのは、こんな映画の中にインド人を理解する鍵があるのではないかと思われたからである。  というのも、私がインドにいるのは、観光や就学、研究、または古典ダンスやヨーガなどの修練のためではなく、あくまでも雇用ビザをもらって... ...続きを見る
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2014/07/16 19:05

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