カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Anwar】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2010/10/27 21:17   >>

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 アマル・ニーラド監督のマラヤーラム映画。
 アマル・ニーラドといえば、マラヤーラム映画にあるまじき(?)スタイリッシュなハードボイルド映画の作り手として知られている。元々は撮影監督として出発し、ランジット監督の【Black】(04)やラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督のヒンディー語作品【Shiva】(07)などでカメラを回している。監督としては、これまで【Big B】(07:マンムーティ主演)と【Sagar Alias Jacky Reloaded】(09:モーハンラール主演)の2本が公開され、【Big B】のヒットのおかげで、気鋭の映画監督として注目を集めることとなった。
 作風は、ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督作品に似ている。優れた技術力を駆使し、視覚的・聴覚的にスリリングな映像世界を作り上げている一方、中身(ストーリー、脚本)は貧困という批判もある。ところが、私は【Big B】をDVDで鑑賞しただけだが、そんなに内容がないという印象は受けず、いたく気に入っている。そんな訳で、同監督の第3作、この【Anwar】も楽しみだった。

【Anwar】 (2010 : Malayalam)
物語・監督 : Amal Neerad
脚本・台詞 : Amal Neerad, R. Unni
出演 : Prithviraj, Prakash Raj, Lal, Mamta Mohandas, Salim Kumar, Sai Kumar, Geetha, Nithya Menon, Sampath Raj
音楽 : Gopi Sundar
撮影 : Satheesh Kurup
編集 : Vivek Harshan
制作 : Rajesh Zacharias

《あらすじ》
 タミルナードゥ州コインバトールのショッピング・モールで爆弾事件が起きる。スターリン・マニマラン(Prakash Raj)率いる警察の捜査チームはこれをイスラーム過激派によるテロだと断定し、容疑者を片っ端から逮捕する。その中にはテロ組織のリーダーと思しきバブ・セート(Lal)も含まれていた。また、スターリン・マニマランはアエシャ(Mamta Mohandas)というイスラーム教徒の女性も逮捕する。彼女は化学薬品工場に勤めており、テロ組織に爆弾の材料を流した疑いが持たれたからである。
 その1年後、ケーララ州グルヴァーユールで、アンワル(Prithviraj)というイスラーム教徒の青年が違法送金の罪で逮捕される。
 アンワルはバブ・セートと同じ刑務所に収監される。バブ・セートは獄中でのアンワルの振る舞いを見てすっかり気に入り、彼をジハードに加わるよう洗脳を始める。バブ・セートは裏から手を回し、アンワルを保釈させる。
 娑婆に出たアンワルは、バブ・セートが拠点とするコーチンに滞在し、バブ・セートの思い通りの行動を取る。やがてバブ・セート自身も釈放され、彼はアンワルにテロリストとしての訓練を授ける。アンワルは組織の指示を受け、警察署を爆弾で吹き飛ばす。
 バブ・セートはアンワルを信頼し、ムンバイに拠点を置くバシール・バーイ(Sampath Raj)という大物テロリストに紹介する。アンワルはバシール・バーイが計画する大規模爆弾テロの重要な役割を任されることになる。
 ある日、アンワルはマッタンチェリー・パレスの前で爆弾事件を起こす。アジトに戻ったアンワルはテレビでこの事件のニュースを見る。バブ・セートは喜び、自身が起こしたコインバトールでのショッピング・モール爆弾テロの映像をアンワルに見せる。ところが、この映像を見るなり、アンワルの表情は変わる、、、。

   *    *    *    *

 サスペンス仕立ての作品なので、あらすじは6割ぐらいのところで止めた。この後、アンワルは一体何者なのか、イスラーム女性のアエシャとはどんな関係があるのか、が明かされる。

 【Big B】と【Sagar Alias Jacky Reloaded】は暗黒街のドンが主人公の映画だが、本作では目先を変え、イスラーム教徒のテロリストを主人公にしている。前2作で「内容がない」と批判された汚名を挽回するためか、監督は今回はストーリー・脚本にも力を入れたようで、メッセージとして力強く反テロリズムを訴えている。それは評価したい。
 ところが、どこかのレビューで、本作はテロをテーマにした映画として特に新しいものを見せていない、といった批評を目にしたが、まったくそのとおりだと思った。こういう映画は2,3年ぐらい前にインド映画(主にヒンディー映画)で頻繁に作られ、秀作も多い。それらのいくつかを鑑賞した人からすれば、この【Anwar】は別段素晴らしい作品には見えないだろう。
 上でアマル・ニーラド監督の作風をRGV監督に似ていると書いたが、【Big B】に比べると、本作はさらにその傾向が強くなっているように見えた。これならRGV監督の映画を観ていればいいじゃん、と思わないこともない。ただ、こういうストーリーとメッセージの映画を、比較的イスラーム教徒が多く住み、旅行者を含め有象無象の外国人が多く出入するコーチンを舞台にして撮ったというのは、もしかして意義のあることなのかもしれない。(コーチンは監督の生地らしい。)
 
 まずは否定的なコメントから入ったが、しかし、私的にはけっこう楽しめた。やはりテクニカル面での充実が大きい。
 相変わらず大胆なカメラワーク、スローモーションを多用したアクション・シーン、シャープな編集と、視覚面の出来栄えには目を見張るものがある。単純にカメラを置いて、その前で呑気に芝居をしているというような場面はなく、1カット1カットに至るまで監督の手が行き届いている。
 しかし、DVDで【Big B】を観たときは気付かなかったのだが、今回映画館で本作を観て、アマル・ニーラド監督は視覚面だけでなく、聴覚面にも強いこだわりを持っていることが分かった。劇場の椅子ががたがた振動するような重低音と鋭いパーカッションの音、無常観漂うキリスト教宗教音楽風のヴォーカルなど、こうしたBGMと効果音が絶えず鳴り響き、忘れがたい雰囲気を作り出している。
 中毒性の強い映像と音だと思った。

◆ 演技者たち
 アマル・ニーラド監督はキャスティングと登場人物の造形の上手さでも定評があるが、本作もその強みが生きている。
 まず、主人公アンワル役のプリトヴィラージだが、含みのある青年テロリストを上手く演じている。「ヤング・スーパースター」として、周りが無理からスターに祀り上げようとする動きはどうかと思うが、俳優として成長していることは確かなようだ。(写真トップ)

 アエシャ役のマムタ・モーハンダースは、ヒロインといっても出番が少なく、ほとんど後半にしか見せ場はないのだが、印象的ではあった。しかし、この人のダンスの下手さはなんとかならないものだろうか。(下:この大きな目、緑色の瞳を見ると、エキゾチックだなぁ、と思う。)

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 しかし、この主役ペアを食った感じだったのは2人のオヤジ俳優、警官スターリン・マニマラン役のプラカーシュ・ラージとイスラーム原理主義者バブ・セート役のラールだった。
 (下:傾いた黒縁メガネに芸の細かさを感じる。)

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 (下:この人も渋すぎる、バブ・セート役のラール。)

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 ニティヤ・メノンが本作に出ていたのだが、彼女の出演のことは知らなかったので、びっくりした(実は事前に聞き知っていたはずだが、映画を観ている時点ではすっかり忘れていた)。小さい役だったが、カメオとして十分効いていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はGopi Sundarという人の担当で、2,3曲音楽シーンがあった。歌よりも、上で書いたとおり、効果音やBGMが優れている。
 なお、映画のエンドロールのところでプリトヴィとマムタの歌う歌があるはずだったが、例によって物語が終わるなりぶちっと切られてしまったので、観る(聴く)ことができなかった。失礼千万なことだ。

 撮影はSatheesh Kurupという人の担当で、この人は新人らしい。非常に素晴らしいカメラだったと思う。

 アクション・シーンは上手くできているのだが、スローモーションが多すぎる嫌いはあった。

 主な撮影地はコーチンだと思うが、アンワルやバブ・セートが入れられる刑務所が気に掛かる。おそらくベカル・フォートかどこかの、海辺に立つ要塞の遺跡を牢獄に見立てたものだと思うが、面白いアイデアだった。(下)

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◆ 結語
 ストーリーに腰砕け感があるものの、ハードボイルドな映画が好きな人なら楽しめると思う。こういう作品はマラヤーラム映画には多くないので、新鮮さから客を集めると思われるが、同系統のボリウッド作品を観慣れた人には凡作に見えるかもしれない。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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