カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jackie】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/11/02 21:26   >>

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 スーリ監督のカンナダ映画。
 自主制作映画の味わいを持つデビュー作の【Duniya】(07)、フロップに終わったが、オフビートな内容が印象的だった【Inthi Ninna Preethiya】(08)と、スーリ監督は私にとって注目の若手監督であるが、第3作の【Junglee】(09)は興行的に成功したものの、私は駄作だと見ている。さて、第4作はどうだろうか?というところだが、売れっ子のプニート・ラージクマールを主役に据え、本格的な娯楽アクション映画を撮ってくれたようだ。(写真下:スーリ監督近影)

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 プニートは、デビュー以来14作がすべてヒットという、成功率100パーセントの強運スターだが、最近では冠タイトルも‘Power Star’から‘Super Power Star’に格上げされている。いや、まったく、JAXA(宇宙航空研究開発機構)もH2Aロケットの代わりにプニートを打ち上げれば、失敗の憂慮から解放されるに違いない。
 ヒロインは、マラヤーラム女優のバーヴァナちゃんで、これも話題の一つだった。

【Jackie】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Suri
出演 : Puneeth Rajkumar, Bhavana, Harshika Poonachcha, Rangayana Raghu, Shobharaj, Sampath Raj, Sumithramma, Ravi Kale, Ravi Kiran, Petrol Prasanna, Raju Thalikote, Satyajit, M.S. Umesh, Bullet Prakash, Honnavalli Krishna, Biradar, Nisha
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Satya Hegde
アクション : Ravi Varma, Different Danny
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Parvathamma Rajkumar

《あらすじ》
 ジャーキ(Puneeth Rajkumar)は地方の小さな町に母(Sumithramma)と二人で暮らしていた。母は粉挽き屋をして生計を立てていたが、家計は苦しかった。ジャーキは貧困と勉強嫌いのせいで学校は第8学年までしか行かなかったが、野心は強く、ビジネスで一発当てようと考えていた。
 ジャーキは近所に住むヤショーダ(Harshika Poonachcha)という女性と親友だった。ヤショーダは恋人のパランギ(Ravi Kiran)と結婚したいと思っていたが、父が認めないため、ジャーキに相談する。彼はヤショーダの父を説得しようとするが、逆に説得されてしまう。ヤショーダは仕方なくパランギと駆け落ちすることにする。夜、パランギの用意した車で出発するが、その時、友達で盲目の少女プッティ(Nisha)も車に乗せられる。
 ジャーキは母とヤショーダの父に責められ、彼女を捜し出して、連れ帰る約束をする。ちょうどその頃、ジャーキは犯罪を犯して逃亡中の友人を匿っていたため、彼も連れてヤショーダ捜しに出発する。ところが、森の中で警官ラーガヴ(Sampath Raj)に捕まり、友人は射殺される。ジャーキも撃たれそうになるが、なんとか逃げ出す。
 森を逃走中に、ジャーキは宗教儀式をしている一団と遭遇し、若い女性(Bhavana)が今まさに生贄として殺されそうになるのを目撃する。ジャーキは彼女を救い出し、その場を逃げおおす。
 その女性はラクシュミという名で、早くに両親を亡くしたため、親類に育てられていた。だが、迷信深い親類たちは、彼女を疫病神と考え、殺そうとしたのであった。ジャーキはラクシュミに惹かれるものを感じ、一緒にバスに乗って、バンガロールを目指す。だが、途中のバススタンドで、ジャーキが眠っているときに、ラクシュミはバスを下車するが、そのまま置いてきぼりを食らう。
 バンガロールに到着し、目覚めたジャーキは、ラクシュミがいなくなっているのに気付く。彼は所在なくバススタンド近くの建物の屋上で眠るが、そこは警察署だった。
 翌朝、ジャーキは警官のビーマンナ(Rangayana Raghu)に起こされる。ビーマンナは、この正体不明の若者に死体回収作業の手伝いをさせる。ところが、その死体というのが友達で盲目のプッティだった。ジャーキは警察にヤショーダとプッティが何らかの事件に巻き込まれたに違いないと訴える。
 ビーマンナは当初ジャーキのことを不審人物だと思っていたが、彼が善人で、抜群の行動力があることを知り、協力員として利用する。その過程で、ジャーキはラクシュミと再会する。
 警察が指名手配していたヤクザのジューリ(Petrol Prasanna)がジャーキの活躍により逮捕される。ところが、ジューリは、女を誘拐して売春組織に売り飛ばしていたミターイ・ラーマ(Ravi Kale)と関係があり、実はヤショーダと駆け落ちしたパランギもその一味であることが分かる。
 ジャーキはミターイ・ラーマと連絡を取り、罠を張って彼のアジトに潜入しようと計画する。だが、森での一件以来ジャーキを追っていた警官ラーガヴが、ジャーキを逮捕してしまう、、、。

   *    *    *    *

 快心作とみていいだろう。
 もともと独特なセンスを見せていたスーリ監督だが、プニートというマス・ヒーローを徹底的に中心に据えて、スピーディーでスタイリッシュとも言える痛快アクション映画を撮ってくれた。他州映画産業に遅れを取っていたカンナダ・アクション映画だが、これなら近ごろ切れ味の悪いテルグ・アクションや、アク抜きされつつあるタミル・アクションと比べても、遜色がない。
 しかも、テルグ・アクション映画の真似事(というか、リメイク)ばかりしていたカンナダ映画界が、テルグでもタミルでもないテイストを持つアクション映画を遂に作ってくれたことは特筆に価する。それはアクション・シーンのコンセプトによく表れている。スタンツを担当したのはRavi VarmaとDifferent Danny。取り立てて凄いと言えるアクションでもないのだが、S. VijayanやPeter Heinとは明らかに違った見せ方をしていて、新鮮でインパクトがあった。

 ストーリーの展開は「絵に描いたようなご都合主義」で、その点を笑うことはできるかもしれない。ただ、娯楽映画としては、ロジックや必然を犠牲にしても、展開の勢いを優先したい場合もあるだろう。例えば、ジャーキ(Puneeth)が警察と共に回収した遺体がたまたま友人の盲目の少女プッティだったというのは出来すぎだが、映画的に見た場合、村人が死体を発見して警察に届けるという筋書きより、インパクトがあると思う。
 とはいうものの、森の中で一泡吹かされた警官のラーガヴが、途中で一度も出て来なかったのに、クライマックスの手前でひょっこり現れるというのはいただけない。ここはもっと工夫がほしかった。

 娯楽一辺倒というわけではなく、例によってスーリ監督らしいメッセージ性のある作品となっていた。「スーリらしさ」というのは、社会の底辺に生きる人々や、軽視されている人々への温かい眼差しということだが、本作も主人公のジャーキからしてスラムに暮らす無学の貧乏者で、その友人たちというのがまた盲目の少女だったり、ポリオ患者だったり、生き抜くために泥棒をしているオヤジだったりする。
 また、社会的弱者への眼差しということでは、本作のテーマからしてそうだ。本作で焦点を当てているのは「女性」で、女性がいかに危険な状況に陥りやすい存在であるかを、ヤショーダ(人身売買)とラクシュミ(迷信による生贄)のエピソードで語られている。と同時に、父や友人の忠告を無視して駆け落ちし、自ら困難を招いたヤショーダの姿を通して、若い女性が軽はずみな行動を取ることを諌めてもいる。

◆ 演技者たち
 主演のプニートは100点満点の演技だったと言える。
 つい2,3年前までは「生ぬるいなぁ、このヒーロー」という感じだったのに、いつの間にか余裕で映画を背負えるスターに成長したようだ。去年辺りからひと皮剥けたのか、最近作の【Raj - The Showman】(09)、【Raam】(09)、【Prithvi】(10)はまったく安心して見られる。本作もそれらに並ぶベスト・パフォーマンスだ。
 (写真下:強面にも一段と磨きのかかったプニート。)

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 ヒロイン、ラクシュミ役のバーヴァナちゃんは、大きな見せ場はなく、せっかくケーララから来ていただいたのに、やや無駄使いの感があった。しかし、出番ではしっかり仕事をしていたし、十分爽やかな雰囲気を作り出していた。

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 スーリ監督といえば、脇役の使い方の上手さでも定評があるが、レギュラー・メンバーのランガーヤナ・ラグ(警官ビーマンナ役)は今回も良かった。
 悪役のラヴィ・カーレ、警視役のショバラージはまずまず。警官ラーガヴ役のサンパト・ラージは残念ながら効果的に使われていなかった。

 名脇役女優になりつつあるハルシカ・プーナッチャ(ヤショーダ役)はOK。盲目の少女プッティ役の女の子(Nishaという名前らしい)は印象的だった。劇中では自然に見えたので、私はこの娘は本当に盲目なのだと思ったが、実はぱっちりした目の賢そうなお嬢さんだということが分かった。(下)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は売れっ子ハリクリシュナの担当。曲自体はそんなに良いわけではないのだが、ヒットしている。また、音楽シーンは面白く作られている。
 なお、歌の歌詞はスーリ監督の友人であるヨーガラージ・バットが書いている。

 スーリ監督作品のカメラといえばサティヤ・ヘグデだが、今回も完璧。
 上で書いたとおり、アクションはラヴィ・ヴァルマと‘ひと味違うぜ’ダニーの担当で、良い出来なのだが、肝心のクライマックスのアクションが平凡だったのが悔やまれる。

 劇中にラージクマールの映画からの引用映像が2箇所ほどあり。
 バーヴァナ演ずるラクシュミは歌手志望という設定で、劇中で何度か歌を口ずさむ場面があったが、それはラージクマールやヴィシュヌヴァルダンの古いカンナダ映画のヒット曲。いちいち映画館内が湧いていた。他州のあまり馴染みのない客演女優にカンナダの歌を歌わせるという趣向は正解だったようだ。

◆ 結語
 【Enthiran】に比べるとちっぽけなものだが、本作の制作費は1億ルピーと、カンナダ映画では大型予算の作品。すでにヒット宣言が出されており、海外公開も開始された。アクション映画好きの方、プニートの顔にアレルギーが出ない方なら、観ても損はないと思う。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
前半は当のプニートに苦戦しましたが、途中から引き込まれました。
面白かったです。

アクションも他のインド映画と一味違っていて新鮮でした。
本作品のアクション担当された方のほかの作品も見てみたいです。

プニートアレルギーはまだまだ克服できてませんが、いずれほかの作品も、と思っています。
ショックが和らいだころに。

やっほー
2013/11/26 13:58
>プニートアレルギーはまだまだ克服できてませんが、いずれほかの作品も、と思っています。

プニートを見て一目惚れ、という日本人はいないですよ。
カンナダ人が彼を支持するのは、やっぱりラージクマールの息子だからで、私たちの目に映るのとは違った見え方をしてるんだと思います。
強いて見ろとは言いませんが、私が好きなプニート作品は、強面なら「Prithvi」、ソフトなら「Milana」、「Paramaathma」です。
 
カーヴェリ
2013/11/27 10:19

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