カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aenoo Onthara】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/11/17 00:24   >>

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 ‘ゴールデン・スター’ガネーシュ主演のカンナダ映画。
 しばらく不振にあえいだガネーシュだが、昨年末公開の【Maleyali Jotheyali】がまさかのフィルムフェアー賞(カンナダ・カテゴリー)最優秀作品賞受賞、ガネーシュ自身も最優秀主演男優賞を獲得し、息を吹き返したかに見えた。ところが、続く【Ullasa Utsaha】はぱっとせず、すんなりとは上昇気流に乗り切れないようだ。
 【Ullasa Utsaha】はりメイク作品だったが、この【Aenoo Onthara】も2000年公開のタミル映画【Kushi】(ヴィジャイ&ジョーティカ主演)のリメイク。同作品は同タイトルでテルグ語版(2001年公開、パワン・カリヤン&ブーミカ主演)、ヒンディー語版(2003年公開、ファルディーン・カーン&カリーナ・カプール主演)とリメイクが作られ、タミル版とテルグ版は大ヒットしたが、ヒンディー版はフロップだったと伝えられている。(ちなみに、カンナダ映画にも2003年公開の【Kushi】という作品があるが、これらとはまったく無関係。)
 【Kushi】3作はすべてS・J・スーリヤが監督したが、このカンナダ版リメイクではマヘーシュが担当している。【Mussanjemaatu】(08)で成功したマヘーシュが10年前の古ネタをどう料理しているか、注目だ。
 ヒロインはプリヤーマニ。【Raam】(09)のヒットでカルナータカ州でも人気者となったプリヤちゃんだが、私もファンの一人として、再びカンナダ映画で彼女を見られるとはうれしい。
 題名の「Aenoo Onthara」は、カンナダ人の説明によると、人なり料理なり、何かについて評価を聞かれ、何とも答えにくい感覚があるときに、この表現を使うらしい。「なんだかよく分からないけど、違うね」とか「何かあるね」みたいな意味になるのだろうか。(ちなみに、この題名は「Eno Onthara」や「Yeno Onthara」とも綴られているが、映画本編の題字では「Aenoo Onthara」となっていた。読み方は「エーノー・オンタラー」。)

【Aenoo Onthara】 (2010 : Kannada)
脚本・台詞・監督 : Mussanje Mahesh
出演 : Ganesh, Priyamani, Srinivasa Murthy, Padma Vasanthi, Jai Jagadish, Vijayalakshmi Singh, Sharan, Dhandapani
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : P.K.H. Doss
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : M. Chandrasekhar

《あらすじ》
 スーリヤ(Ganesh)はデリーで生まれ育ったカンナダ人青年。彼はカナダに留学することが決まっていたが、出発の日に交通事故に遭い、入院してしまう。退院したスーリヤは、父(Jai Jagadish)の勧めでカルナータカ州マイソールの大学に入学することにする。
 一方、カルナータカ州チックマガルールで生まれ育ったマドゥ(Priyamani)は、大学に入って勉強を続けたい希望を持っていたが、父(Srinivasa Murthy)は彼女を結婚させたがっていた。父を愛するマドゥはその希望を受け入れ、見合いに応じる。しかし結婚式の日に、婚約者が他の女と駆け落ちしたことが分かり、破談となる。マドゥはまだ募集をしていたマイソールの大学に入学することにする。
 スーリヤとマドゥはマイソールの大学で出会い、良い友達となる。そしてお互いに惹かれ合うものを感じるが、ちょっとしたことが原因で仲たがいし、意地を張り合った結果、絶交状態となってしまう。
 ところで、スーリヤとマドゥには共通の友達プラサードとシャンティがいた。この二人は愛し合っていたが、シャンティの父(Dhandapani)が猛烈に反対していたため、会うことすらできない状態だった。マドゥは、二人を結び付けるために、嫌々ながらスーリヤに協力を要請する。そしてマドゥとスーリヤは、なんとかプラサードとシャンティを結婚させることに成功する。
 その過程でスーリヤはマドゥを、マドゥはスーリヤを愛していることに気付く。しかし結局は言い出せないまま、学業を終え、それぞれが故郷に帰省する日となる。二人は同じ日のほぼ同じ時刻の列車に乗ることになっていたが、スーリヤはチックマガルールへ行く列車の中でマドゥを探し、マドゥはデリー行きの列車の中でスーリヤを探す。しかし、お互いの姿が見つけられなかったため、それぞれは自分の気持ちをしたためた置き手紙を残して、自分の列車に乗り込む、、、。

   *    *    *    *

 ヒマ潰しとして3時間気楽にスクリーンに向かっているだけなら、まずまず楽しめるものだが、常識を以って考えてしまうと、映画評論家じゃなくとも、腹が立ってくる作品だろう。
 まずマヘーシュ監督に「何をやっとるんや?!」と言いたい。【Mussanjemaatu】はけっこう良かったので期待したが、失望した。

 気に食わない点は、本作がオリジナル【Kushi】のほぼ忠実なリメイクだということだ。コピー映画を作るというのはカンナダ映画ではざらなことだが、10年前の青春ラブストーリーを手も加えず今に再現するとは、手抜きもいいところだ。(舞台をバンガロールではなくマイソールにしたのは、せめてもの救いだが。)
 実は、【Kushi】という作品は、10年前にしては珍しく「エゴ・クラッシュ」をテーマとした進取的なもので、当時、南インドの若者たちの間で「イーゴー(エゴ)」という言葉が流行ったのを記憶している。このテーマ自体は今日でも映画の主題になり得るものだが、だからといって10年前と同じものを同じやり方で見せるというのはいただけない。マヘーシュ監督はこの10年をそんなに変化に乏しい時代だったと考えているのだろうか?

 本作で最も笑い種となっているのが、電話機の使われ方。10年前のオリジナルではヒーローとヒロインは固定電話でやり取りしていたが、本作でもほぼ同じ。しかし、今のインドの大学生が携帯電話を使っていないというのはあり得ない。
 もっとも、携帯電話がないおかげで、クライマックスの鉄道駅でのすれ違いや涙々の置き手紙が実現したわけだが、このために固定電話を小道具に残したというのは消極的すぎる。時を経てリメイクを作るなら、現在の人が見て違和感を感じない程度の変更は必要だろう。
 その他、オリジナルをマイナーチェンジしたせいで、オリジナルでは一貫していたのに、本作では辻褄が合わなくなっている部分が何箇所かあり、脚本の完成度は極めて低い。

 もう一つの大失敗は、主人公のイメージがガネーシュにまったく合っていなかったことだ。ヴィジャイのタミル版、パワン・カリヤンのテルグ版がうまく行ったというのは、作品のイメージとスターのイメージが一致していた、または一致するように脚色を工夫したということだろう。だが、本作の場合、ガネーシュの面白さがほぼ活かされておらず、ガネーシュが霞んでしまい、結果的にヒロイン・プリヤーマニの上手さと可愛らしさだけがやたら目立つ映画になってしまった(プリヤちゃんファンの私にとっては、それでもOKなのだが)。
 これはガネーシュの未熟さというより、脚本を書いたマヘーシュ監督の責任だろう。

◆ 演技者たち
 上で書いたとおり、精彩を欠くヒーローとなってしまったガネーシュだが、芝居自体はそれなりに上手くやっていた。ただ、本作での彼の問題を挙げると、太ってしまい、いつにも増してオッチャンくさくなってしまったことだろう。(まぁ、こんな大学生もごろごろしているが。)
 それに、言っても仕方のないことだが、やはり彼はダンスが冴えない。映画の流れの中で、音楽(ダンス)シーンが決まらないというのは、サッカーの試合に喩えると、ゴール前のチャンスにフォワードが悉くシュートミスをするようなもので、イライラが募るのである。幸い、映画はサッカーより騙しが利くものなので、なんとか見せ方を工夫してほしい。

 対して、プリヤーマニは非常に可愛らしく、色っぽく、貫禄も十分だった。さすがに芝居も上手い。私がこれまで見たプリヤちゃんの中でも良いほうだと思う。ファンだからといって贔屓目に語るわけではないが、正直のところ、本作の見どころはプリヤちゃん以外にはない。
 もしかして、プリヤーマニは子供のころに【Kushi】のどれかを観て、ジョーティカなりブーミカなりの演じるヒロインに憧れを感じていたのではないか?と思わせるほど、役に対して思い入れたっぷりな演技だった。
 (写真下:主人公に腰を盗み見され、ムッとした表情のプリヤちゃん。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 ハリクリシュナの音楽は平均的。音楽シーンは、プリヤーマニをフィーチャーしたものはよくできている。

 PKH・ダースの撮影も良い。
 ヒロイン・マドゥの田舎のシーンはきれいに撮られている。(チックマガルールと設定されていたが、実際のロケ地はどこか分からない。)

◆ 結語
 【Aenoo Onthara】は、観てつまらないというものではないが、リメイク映画の完成度という点からすると、わざとあちこちで間違いを犯したかのような、ヘボ仕事の見本。ガネーシュ、若しくはプリヤーマニの作品ならすべて観たい、という方以外には用なしだ。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Maduve Mane】 (Kannada)
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2014/11/05 00:57

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