カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Huduga Hudugi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/11/19 22:34   >>

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 インドラジット・ランケーシュ監督のカンナダ映画。
 インドラジット・ランケーシュは、有名な作家・ジャーナリストだった故P・ランケーシュの息子。自身もジャーナリストだが、時おり思い出したように映画を撮り、【Monalisa】(04)や【Aishwarya】(06)などのヒット作をものにしている。作風はスタイリッシュかつ娯楽に徹したもので、私はけっこう好きだ。ちなみに姉(or妹?)のカヴィタ・ランケーシュもよく知られた映画監督で、こちらは【Deveeri】(99)や【Avva】(08)などのアート系作品を撮っている。
 そのインドラジット監督が久々にメガホンを取るということで何かと話題を集めていたが、最大の話題は大物アイドル女優のイリアナが初カンナダ映画出演するということだった。イリアナだけでなく、本作にはサダーやレーカ・ワシントン、サンジャナ、アニタ・ハーサナンダーニ、ビアンカ・デーサーイらの女優陣が名を連ね、なんだかけばけばした作品になりそう。
 「Huduga Hudugi」は「ボーイ&ガール」という意味のくさい題名だが、インドラジット監督は、内容はまったく革新的なラブストーリーなので、あえてこういうくさい題名にした、とわざわざ注釈していた。さて、監督の狙い通り、題名を裏切るような作品となっているかどうか?
 本作はさらに、公開に先立って、「Huduga Hudugi Talent Hunt」(こちら)や「Huduga Hudugi Cup」(こちら)などのイベントが行われ、プロモーションにも力を入れていた。

【Huduga Hudugi】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Indrajith Lankesh
出演 : Dhyan, Lekha Washington, Sada, Pramod Hegde, Sharan, Rangayana Raghu, Rekha V. Kumar, Ramakrishna, Chidanand, Sadhu Kokila, M.S. Umesh, (以下、カメオ出演)Ileana, Sanjana, Anita Hassanandani, Bianca Desai, Indrajith Lankesh
音楽 : Joshua Sridhar
撮影 : Gundulpet Suresh
編集 : K.M. Prakash
制作 : Sandesh Nagaraj

《あらすじ》
 サチン(Dhyan)とソニア(Lekha Washington)は人気テレビ番組「トゥンタ・トゥンティ」の人気司会者。この番組は、視聴者の恋や結婚の悩みを聞いて、司会者がコメントを与えるというものだった。
 ある日、ソニアは富豪の息子ラージ(Pramod Hegde)と見合いをする。ソニアはすっかり気に入るが、ラージは縁談を断る。理由はソニアが「平凡」だということだった。
 落ち込んだソニアはサチンに相談する。サチンはまずソニアがゴージャスに見えるよう改造し、ラージの前に送り込む。ラージはソニアのことを見直し、交際を始める。そのデートの場でも、サチンはテレビ番組よろしく、ソニアにこと細かな指示を与える。その甲斐あって、ソニアとラージの婚約が決まる。
 しかし、交際を続けるうちに、ソニアはラージの横柄な態度に嫌気がさし、彼との結婚に懐疑的になる。ソニアはそのことをサチンに打ち明けるが、サチンは自分がかつて医学生のマーヤー(Sada)と恋をし、振られた経験談を聞かせて、ソニアに思い留まるよう諭す。だが、ソニアは心優しいサチンに惹かれていることに気付く。
 そんな時に、サチンの友人サントーシュが自殺騒ぎを起こす。サントーシュは2人の女性を同時に愛してしまい、混乱して自殺しようとしたのであった。サチンはサントーシュに、目を閉じて虚心になったとき、脳裏に現れた人が本当に愛している人だ、とアドバイスする。おかげでサントーシュは迷いから抜け出すことができる。その話を聞いたソニアは、サチンに同じことをさせ、マーヤーの姿が現れるかどうか実験させる。ところが、脳裏に現れたのがソニアだったため、サチンは驚く。
 サチンは‘National Television Awards’の賞をもらうことになる。その授賞式でのスピーチで、サチンはソニアに感謝の気持ちを伝える。その夜、二人は好いムードになる。ソニアはサチンに「I love you」と伝えるが、その声は彼の耳に届かない。逆にサチンは、ソニアがラージとホテルの同じ部屋にいるところを目撃し、ショックを受ける。
 「トゥンタ・トゥンティ」が終了し、サチンとソニアは会わなくなる。ほどなく、ソニアの結婚式の日となるが、サチンの友人シャラン(Sharan)がやって来て、ソニアに自分の気持ちに正直になるべきだと訴える。ソニアは結婚式場を飛び出し、サチンの居場所まで車を走らせるのであったが、、、。

   *    *    *    *

 嫌いじゃないですけどね、私、こういうコミック調のラブストーリーは。明るいムードの作品で、インドラジット監督らしい、せっかく金払ったんだから、楽しんでくださいな、といった感じのサービス精神があり、好感が持てた。ただ、本当に面白かったか、ということになると、そうでもないのが苦しいところだ。
 インドラジット監督はまったく新しいラブストーリーになるはずだと豪語していたが、観た感じはそんな印象でもなく、「ボーイ&ガール」のタイトルに見合った通俗的なロマンス物だったと思う。

 レビューで一斉に批判されている点は、本作にはきちんと構成されたストーリーがなく、ボリウッド、ハリウッドの複数のヒット映画からシーンを寄せ集めたものにすぎないということで、作品名として【Kuch Kuch Hota Hai】(98)、【Jaane Tu... Ya Jaane Na】(08)、【3 Idiots】(09)、それにハリウッド映画の【The Ugly Truth】(09:邦題「男と女の不都合な真実」)が挙げられている。
 それはごもっともな批判で、実はインドラジット監督は前作【Aishwarya】でもタミル映画の【Ghajini】(05)とテルグ映画の【Manmadhudu】(02)を器用に繋ぎ合わせたストーリーを作っていた。この点、インドラジット監督の創作姿勢には疑問を感じないこともないが、しかし、彼の場合、ストーリーや脚本は方便にすぎず、彼の本領はジャーナリストらしい風刺精神で、それが映画のあちこちに時事風刺ネタとして仕込まれているのを見逃してはならないだろう。(これが分からないと、【Aishwarya】の本当の面白さも分からない。)
 この【Huduga Hudugi】でも、メインストーリーのサチンとソニアのロマンス展開の他に、物語の舞台がテレビ局ということで、テレビ番組を風刺したコメディー・シーンがたっぷり組み込まれていて、それがけっこう面白いらしい。(「らしい」としか言えないのは、具体的なカンナダ語チャンネルの番組や実在するキャスターに対する皮肉も、私はネタ元の番組を見ていないので、よく分からない。)

 メインのラブストーリー面でキーとなる考え方は、「素直に好きと思える人と一緒になるのが一番良い」ということだったと思う。サチンもソニアもサントーシュも、ステータスやカーストや周囲の声ではなく、虚心に自分の心を見つめた結果、誰を愛しているか(また誰を愛すべきか)確信を持つに至るのである。
 日本人の感覚では、「こんなこと何を今さら」と思えるような考え方なのだが、インドの一般的な家庭では、子供たちが結婚に関して聞き従うべきは親や年長者やコミュニティーの意思であり、自己の内面の声に聞き従うというのはちとまずいのである。そういった点では、こうした考えを当たり前のように表明している本作は、ちょっと新しいような気もする。

◆ 演技者たち
 主人公サチンを演じたのはディヤーン。このブログで紹介した作品ではカンナダ映画の【Neene Neene】(08)がある。北インドの俳優だが、カンナダ映画界でより成功しており、ナーガティハッリ・チャンドラシェーカル監督の【Nanna Preethiya Hudugi】(01)と【Amrithadhare】(05)、本作のインドラジット監督の【Monalisa】など、ヒット作もある。もちろんヒンディー映画にも出演しており、最近作では【Well Done Abba】や【I Hate Luv Storys】などがあるが、北インドでの注目度はまったく低いようである。(なお、Dhyanというのはカンナダ映画限定の芸名で、ヒンディー映画などではおそらく本名のSammir Dattaniという名前を使っている。)
 俳優としての力量は、はっきり言って大根で、あまり多くを語りたくない。本作でもあっぷあっぷしながら、なんとか最後まで漕ぎ着けたといった感じだった。

 さて、インドラジット監督というのは【Aishwarya】でディーピカ・パドゥコーネを銀幕デビューさせた人物だが、どうも女優に顔が利くのか、冒頭で触れたとおり、本作には6人のきれいどころが名を連ねている。で、映画を観るまでは誰がヒロインか分からなかったのだが、レーカ・ワシントンがそうだった。

 レーカ・ワシントンは、基本的にチェンナイ生まれのタミル女優と見なしていいと思うが、やや異色で、インド人(マラーティー)とイタリア人とビルマ人の混血らしい。モデル、テレビ番組のビデオ・ジョッキー、彫刻家の顔も持つようだ。
 映画のキャリアはまだ多くないが、タミル映画の【Unnale Unnale】(07)、【Jayamkondaan】(08)、【Va (Quarter Cutting)】(10)、テルグ映画の【Vedam】(10)など、ニューウェーブ系の作品に出ている。出演作品が物語っているように、てんからサリーなど似合わないような、今風な女の子の雰囲気が彼女の持ち味だろう。
 典型的なロバ面で、私はあまり好きでもなかったのだが、本作のソニアはなかなか可愛いと思った。
 (写真トップ:ディヤーンくんとワシントンさん。)

 サダーは、私はてっきりこの人がヒロインだと予想していたが、10分程度の回想シーンに出て来るだけだった。この回想シーンはストーリー上重要なのだが、あまり上手い作りではなかったし、サダーの資質が生かされているものでもなかった。なお、彼女は【Monalisa】でインドラジット監督、及びディヤーンと一緒に仕事をしている。
 (写真下:【Monalisa】でもそうだったが、なぜかインドラジット監督はサダーにヒョウ柄の衣装を着せたがる。)

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 呼び物のイリアナは、音楽シーンの一つでダンスをしているだけだった。その名も‘イリヤナ・イリヤナ’という、もろイリアちゃん賛美の曲で、悪くはないのだが、彼女目当てで劇場に足を運んだ人には物足りないだろう。
 ちなみに、この1曲のための彼女のギャラは300万ルピーで、バンガロール滞在のために宛がわれたホテルが1泊2万8千ルピーの部屋だったらしい。プロデューサー(サンデーシュ・ナーガラージ)は「この出費もイリアちゃんなら回収できるさ」と強気だったが、今ごろきっと後悔しているに違いない。

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 ビアンカ・デーサーイもクライマックスの音楽シーンでアイテム出演しているだけ。サンジャナさんとアニタ・ハーサナンダーニはちらっと顔を出した程度で、監督が目論んだ女優6人によるキャット・ウォークは不発だったと思う。

 逆に、ランガーヤナ・ラグ、MS・ウメーシュ、サードゥ・コーキラらオヤジ陣によるテレビ番組のパロディーは効果的だった。特にランガーヤナ・ラグのシャンカル・ナーグの物まねは、元ネタを知っていると笑える。

◆ 音楽・撮影・その他
 ジョシュア・シュリーダルの音楽は悪くはない。
 グンドゥルペート・スレーシュのカメラは良かったが、撮影はテレビスタジオやゴアのビーチなどで行われ、いわゆる「汚い所」がまったく写されていなかった。

◆ 結語
 インドラジット・ランケーシュ監督の久々の作品だが、残念ながら中途半端なやっつけ仕事になってしまったと思う。若者層を当て込んで企画されたものに違いないが、彼らにどれだけアピールするかも疑問だ。ヒットは難しいだろう。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Dev S/o Muddegowda】 (Kannada)
 インドラジット・ランケーシュ監督のカンナダ映画。  インドラジット・ランケーシュについては、前作の【Huduga Hudugi】(10)評の中でやや詳しめに紹介しておいた。本業はジャーナリズムのはずだが、こと映画監督業となると、ごちゃごちゃ難しいことは言わず、美人女優を配した趣味の悪い、もとい、きらびやかな作品を作りたがる人で、どうも道楽で映画を撮っているという印象を受ける。  また彼は、単にカメラの後ろで演出に専念する職人監督とは違って、プロモート活動やインタビューの受け答えな... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/04/26 21:21

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