カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Nagaram】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2010/11/24 21:55   >>

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 スンダル・C監督・主演のタミル映画。
 スンダル・Cといえば、日本のタミル映画ファンの中にも【Arunachalam】(97:邦題「アルナーチャラム 踊るスーパースター」)の監督として記憶している方もいると思う。著名な映画監督であるにもかかわらず、どういう理由でか、2006年の【Rendu】を最後に監督業をストップし、もっぱら俳優として活躍している。この【Nagaram】は、そんな彼がほぼ5年ぶりにメガホンを取り、さらには初の監督兼主演作ということで、話題になっていた。
 ところで、私は以前からスンダル・Cのことをこのブログで取り上げたいと思っていたが、巡り合わせが悪く、作品を鑑賞する機会がなかったので、書けなかった。取り上げたかった理由というのは、彼が徹底して大衆志向の娯楽映画にこだわっているからだ。このブログでも紹介してきたとおり、今のタミル映画界はリアリズム映画が注目を集める時代で、従来のマサラ映画は「Five Songs, Four Actions, No Story」と揶揄され、時代遅れなものと評されることが多い。そんな風潮に対して、スンダル・Cは堂々と「そりゃ、錯覚だ。タミル映画業界人の99.9パーセントはチェンナイ辺りに住んでるので、そういうことになるわけだが、村や地方都市じゃあ、大衆娯楽映画は立派に生きてる!」と至極もっともなことを述べている(こちらの記事)。こういう一本気なエンターテイナーというのは、インド映画を観ていく標的の一つとして、やっぱり押さえておきたい。
 ちなみに、スンダル・Cの奥さんは女優のクシュブーで、本作のプロデューサーを務めている。
 ヒロインは、タミル人でもないのになぜかタミル人のみに愛され、なぜか私も好きなアヌヤーさん。本作ではスンダル・Cとの長めのキスシーンもあるらしい(こちら)。

【Nagaram】 (2010 : Tamil)
脚本・監督 : Sundar C
出演 : Sundar C, Anuya, Bose Venkat, G. Sreenivasan, Vadivelu, Chitra Shenoy, George, Vichu, Ponnambalam, Besant Ravi, Nalini, Maria
音楽 : S.S. Thaman
撮影 : Chelladurai
編集 : Praveen K.L, Srikanth N.B
制作 : Kushboo

《あらすじ》
 ヤクザのセルワム(Sundar C)は逮捕され、獄に繋がれるが、幼なじみの警官サッカラ(Bose Venkat)の尽力により、釈放される。セルワムはこれを機にヤクザ稼業から足を洗い、堅気の生活を始めようと決意する。ボスのカーダル・バーイ(G. Sreenivasan)もそれを認め、支援する。
 セルワムはサッカラの勧めでチェンナイ港の荷揚げ品運送の仕事に就く。ところが、実はサッカラは警官であると同時に密貿易にも手を染めており、セルワムを都合よく利用しようとしていたのであった。また、この港にはカーシー率いる密輸組織も出入りしており、セルワムはカーシーらと衝突することなり、きな臭い環境からなかなか抜け出せない。
 そんな中でセルワムは、映画のバックダンサーをしているバーラティ(Anuya)に出会い、惚れる。やがて相思相愛となった二人は結婚する決意をする。
 セルワムとサッカラは、あるホテルでカーシーのグループとぶつかり、乱闘となる。その過程で、サッカラとセルワムは車を奪って逃走するが、その車はたまたまカーダル・バーイの一味が麻薬取り引きに使っていた車で、中には大量の麻薬が積まれていた。それに気付いたサッカラはその麻薬を横取りするが、このことはセルワムには隠していた。
 やがてサッカラに物を奪われたことを知ったカーダル・バーイの一味は、サッカラを脅迫する。サッカラは平和的交渉のために、セルワムにカーダル・バーイとの仲介役になってくれるよう依頼する。その日はちょうどセルワムとバーラティの結婚式の日であったが、それを差し置いて、セルワムはサッカラとポンディシェリーまで赴く。バーラティはひどく失望する。
 だがポンディシェリーで、サッカラはカーダル・バーイに会うなり、彼を射殺してしまう。この行為に激怒したセルワムは、サッカラと袂を分かつ決意をする。サッカラはその後カーダル・バーイの一味に襲われ、大けがを負って入院する。
 セルワムはなんとかバーラティをなだめる。また、セルワムの前に中央捜査局員が現れ、腐敗警官サッカラを逮捕するための協力をセルワムに要請する。だが彼はその要請を退ける。
 セルワムはハイダラーバード行きの列車の切符をバーラティに渡し、チェンナイ・セントラル駅で待つよう指示する。そして自分はサッカラの入院している病院に行き、カーダル・バーイの一味がサッカラを射殺するのを手伝う。
 セルワムは駅へと急ぐが、折悪しくカーシーの一味に追われることになる。彼はなんとかセントラル駅に到着するが、そこで彼らと銃撃戦を展開することになる、、、。

   *    *    *    *

 ヤクザが足を洗い、堅気になろうとするが、過去のしがらみとの格闘に苦労するという、暗黒街映画の定番ストーリー。
 題名の「Nagaram」は「街」という意味だが、これに「Marupakkam」という言葉が掛かっていて、併せて「街の裏側」または「暗黒街」という意味になるらしい。この場合の街はチェンナイで、主役ペアのセルワムとバーラティの暮らす下町が「Gandhi Street」という皮肉な名前になっているのが、インド映画らしくて良い。

 なかなか気の利いたストーリーと作りで、けっこう楽しめた。ただし、スンダル・C監督はどこにも断っていないが、ストーリーは完璧にブライアン・デ・パルマ監督のアメリカ映画【Carlito's Way】(93:邦題「カリートの道」)をなぞっている。それは残念なことだが、しかし、音楽シーンやコメディーが適当に配置され、作品の質感や情感がうまく「タミル映画化」されていて、ハリウッド映画のリメイク(翻案)としてはよくできているほうだと思う。

 この種の映画で重要なのは、主人公の葛藤がどう表現されているかだが、本作ではそれがセルワムのカーダル・バーイに対する恩義、サッカラに対する友情、バーラティに対する愛情の三つ巴としてうまく描かれている。また、堅気になろうとしても、悪が蔓草のようにまとわり付き、なかなか抜け出せないセルワムの焦りも加味されていた。
 結局、サッカラへの友情が裏切られたと分かったとき、セルワムはすべてを決する覚悟をするのだが、その原動力としてバーラティへの愛情だけでなく、カーダル・バーイへの忠義を絡ませた点が、ヤクザ映画らしい硬質な感動を生む理由となっていたと思う。

◆ 演技者たち
 主役のスンダル・Cに関しては、こういう役柄はお手の物で、見せ方を知り尽くしている感があるので、安心して見ていられた。だが、本作ではいつものスンダルとは違って、あまり誇張されていない、ぐっと抑えたヒーロー像となっているようだ。これはアメリカ映画のリメイクによる影響か、または、近ごろのタミル映画のリアル路線を意識したものか。

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 ヒロインのアヌヤーは、下町の恵まれない娘役というのが効いていた。ただし、映画のバックダンサーという設定は、ストーリー上で機能している場面もあったが、特に生かされているとは思えなかった。
 芝居の上手さは相変わらずだが、本作ではお色気面にも力を入れており、けっこう肌を露出させていた。事前に話題となっていたスンダルとのキスシーンは、まったくの誇大宣伝で、普通のちょっとしたキス程度だったので、安心(?)した。
 (写真下:こうやって腰をひねって、皮下脂肪のねじれを強調するのがタミル的お色気の基本なんです。)

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 ヴァディヴェールのコメディーは、ストーリーとはほぼ絡むことなく別個に突っ走るというものだった。下の写真のとおり相変わらずの路線で、「田舎の人でも笑うのかなぁ?」と疑問を誘うお下劣ネタもあったが、非常に面白いシーンもあった。

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 悪役のサッカラ役はボース・ウェンカットという人。おそらく何度か見ていると思うが、作品名は思い出せない。なかなか良かった。
 マフィアのドン、カーダル・バーイ役のお爺さんはG・シュリーニヴァースという俳優で、実に80歳らしい。かくしゃくとしていて、こちらも良かった。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は、テルグ映画の【Kick】(09)や【Brindaavanam】(10)なども担当したSS・タマン。まずまずだったと思う。

 アクションはそれほど高度なものではなかったが、前半終盤のホテルのシーンとクライマックスの駅のシーンは面白かった。コンセプトは、悪漢が5メートルほどぶっ飛んだり、くるくると宙を回転したり、わざとらしく大ガラスが割れるといったものではなく、やはりリアル路線を意識しているようだ。

◆ 結語
 アメリカ映画のなぞりではあるが、まずまず楽しめるインド的暗黒街映画になっている。庶民派のスンダル・Cだが、近ごろのタミル映画のトレンドも意識しており、田舎だけでなく都市部でもけっこう受けるのではないかと思われる。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Theeya Velai Seiyyanum Kumaru】 (Tamil)
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カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/06/20 23:32

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