カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sri Nagashakthi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/01/14 21:26   >>

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 神様映画というのは南インドでも斜陽なジャンルとなっているが、カンナダ映画界ではまだ細々と作られている。といっても、ほとんど1人の監督の個人技に近いのだが、その監督というのがオーム・サーイプラカーシュだ。
 サーイプラカーシュは、監督作品本数が85本を越えるベテラン監督で、以前はお涙ちょうだいの家族物や神様物でヒット作も多かったようなのだが、最近は作風の古めかしさ、地味さが敬遠されて、客の呼べない監督となっている。それで、起死回生を狙って2009年に【Devaru Kotta Thangi】を発表したのだが、あえなくフロップ、監督は借金苦で自殺未遂を図るという悲劇が起きた。
 この【Sri Nagashakthi】はそんなサーイプラカーシュ監督の出直し第1作で、ナーガ(コブラ)信仰を扱った神様物。サーイプラカーシュ監督はナーガ物に特にこだわっているようで、2000年には【Nagadevathe】という物凄いイメージの作品を撮っているし、【Vijayadasami】(02)でも【Navashakthi Vaibhava】(08)でもナーガは重要なモチーフとして挿入されていた。
 自殺未遂から立ち直った1作目が、やはりヒットしそうにないナーガ物かと、やや心配しなくもない。しかし、私はサーイプラカーシュ監督の倫理性を愛しており、また、三途の川を見た男が作る神様映画はさぞや凄みがあるだろうと、監督への敬意も込めて、謹んで鑑賞させていただくことにした。

【Sri Nagashakthi】 (2011 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Om Saiprakash
出演 : Ramkumar, Shruthi, Chandrika, Shivakumar, Baby Krithika, Sangeetha, Tennis Krishna, Shobharaj, Ramesh Bhat, Chitra Shenoy, M.S. Umesh, Bullet Prakash
音楽 : Sri Ganesh
撮影 : C. Narayan
制作 : K.J. Bharathi

《あらすじ》
 カルナータカ州のとある村に信心深い夫婦(Ramesh Bhat & Chitra Shenoy)がいた。妻はなかなか懐妊しなかったため、僧侶の勧めに従ってナーガ神にプージャを捧げたところ、2人の男児を授かる。長男のナーガンナ(Shivakumar)は、夫婦が神に立てた誓いに従い、ナーガ神に仕える聖職者となる。次男のシェーシャンナ(Ramkumar)は家督を受け継ぎ、ナーガラトナ(Shruthi)という女性と結婚し、女児をもうけ、ナーガスンダリ(Baby Krithika)と名付ける。
 ある日、この村にカナカワッリ(Sangeetha)という旅回りの踊り子がやって来る。ナーガンナは聖職者として純潔を守っていたが、カナカワッリに誘惑され、交わってしまう。翌朝、ナーガンナは穢れた体でプージャに臨もうとしたため、ナーガ神の怒りを買い、コブラに咬み殺されてしまう。これに憤った弟のシェーシャンナは、ナーガ信仰を捨てる決意をする。
 ある時、シェーシャンナの娘ナーガスンダリは、大鷲に襲われて怪我をした雌コブラを助け、家で飼うことにする。その雌コブラは実はナーガ国の女王ナーガチャンドリカ(Chandrika)であった。大鷲は、邪まな黒魔術師(Shobharaj)がナーガチャンドリカの貴石を奪い取るために放ったものであった。
 シェーシャンナは娘が飼っているコブラを発見し、ヘビ使いに売ってしまう。さらに村人がコブラに咬まれて死んだのに激怒し、村のヘビ塚を焼いてしまう。このヘビ塚にいた雌コブラは憤り、復讐のために、ナーガスンダリをライ病患者に変えてしまう。
 シェーシャンナとナーガラトナは嘆き悲しみ、僧侶の指図どおり、ナーガスンダリを連れて各地のナーガ寺院を参拝して回る。しかし、その過程でナーガスンダリは黒魔術師に誘拐されてしまう。
 ナーガチャンドリカがシェーシャンナ夫婦の前に現れ、黒魔術師の棲家まで導く。シェーシャンナは黒魔術師と闘い、最後はナーガチャンドリカが黒魔術師を咬み殺す。シェーシャンナとナーガラトナはナーガチャンドリカの指示に従って、ナーガ神に対するプージャとヘビ塚の供養を行う。ナーガチャンドリカは、ヘビ塚を焼かれた雌コブラに対し、復讐を止めるよう諭す。ナーガスンダリの病気が治り、シェーシャンナは信仰心を取り戻す。

   *    *    *    *

 ぎりぎりの低予算しか組めなかったとは思うが、自殺未遂から立ち直り、再起を期する1作としては、新しさも力強さもない作品だった。こういうジャンルの映画に進歩とか進化とかは本質的でないのかもしれないが、サーイプラカーシュ監督自身が作った【Nagadevathe】や【Navashakthi Vaibhava】と比べても、イメージの豊かさやエネルギーでは落ちる。かなり寂しいものを感じた。
 興行成績など度外視しているのかもしれないし、観客もサーイプラカーシュ監督からハリウッド映画が出て来るとは期待していないと思うが、それでも主要キャラクターの女神(ナーガチャンドリカ)がこのイメージ(写真下)では、観に行こうという気が起こらないだろう。得意だったヘタウマ特撮も影を潜めている。

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 ただし、さすがはベテラン監督、ストーリーは陳腐とはいえ、見せ方は上手く、主役のシュルティとラームクマールの誠実な演技もあって、感じの好い映画ではある。デヴォーショナル物らしく、音楽が適宜入るのもにぎやかで楽しいし、クライマックスの歌には緊張感がある。
 (写真下:ヘビ神の恐ろしさを思い知った一家。左よりShruthi@ナーガラトナ、Baby Krithika@ナーガスンダリ、Ramkumar@シェーシャンナ。)

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 【Navashakthi Vaibhava】のように、本作でも巡礼的要素が加味されていて、カルナータカ州にある知られたナーガ寺院が紹介されている。
 ・Sri Mukthi Naga Temple (バンガロール近郊)
 ・Kukke Subramanya Tample (ダクシナ・カンナダ)
 ・Naga Devatha Temple in Vidurashwatha (バンガロール東方100キロ)
 ・Ghati Subramanya Temple (バンガロール北方50キロ)
 映画は主にSri Mukthi Naga Templeで撮影されたらしい。

 私的に面白いと思ったのは、本作の物語を動かしているのが女性または雌コブラということだった。もっとも、これは本作に限らず、インド(南インド)で作られる女神崇拝映画は(サーイプラカーシュ監督の作品も含めて)すべて同じことなのだが、この女性中心主義は頭に置いておくべきだろう。というのも、インド(南インド)映画というのは「ヒーロー(男性)中心主義」だと言われるが、そのヒーローというのは、実は女性(主に「母」)にがっちり抱きかかえられ支えられた存在であり、単純な男性至上主義ではないと思われるからだ。この点を押さえておかないと、南インド映画で表現される倫理観や情念は理解できないだろう。

 女性/母性ということでは、インドでも大地は「母なる大地」として女性的に理解されるが、モグラやミミズなどと同様に、ヘビのような大地(土壌)と密接な関係にある生き物は、それ自身が大地の代理であり、土壌の健全さを示すバロメーターとなる。そういうヘビを畏れ、大切にするという考え方は、宗教だけでなく、エコロジーの観点からも面白いと思った。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Sri Kshetra Aadichunchanagiri】 (Kannada)
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カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/07/26 22:54

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