カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Manmadan Ambu】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2011/01/19 01:00   >>

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 K・S・ラヴィクマール監督、カマル・ハーサン主演のタミル映画。
 このお二方は過去4度コンビを組み、その作品はすべてヒットしているらしい。近作では【Dasavathaaram】(08)の成功が記憶に新しい。アクション系の大作だった【Dasavathaaram】に対し、本作【Manmadan Ambu】はロマンティック・コメディーという触れ込みだった。【Dasavathaaram】同様、カマル・ハーサンは主演以外にストーリー、脚本、台詞などを担当している。
 このお二方に加え、ヒロインはトリシャ、それにマーダヴァンやラメーシュ・アラウィンド、サンギータらが脇を固めるということで、注目の1作ではあった。
 題名の「Manmadan Ambu」は「マンマダン(神様の名前)の矢」という意味で、西洋文化では「キューピッドの矢」に当たるものだが、これにはまた3人の主要登場人物の名前(Mannar,Madan,Ambu)が掛けられている。(映画本編での題字は「Man Madan Ambu」と分かち書きになっていた。)
 まったく予想外のことであったが、本作には英語字幕が付いていた。

【Manmadan Ambu】 (2010 : Tamil)
物語・脚本・台詞・歌詞 : Kamal Haasan
監督 : K.S. Ravikumar
出演 : Kamal Haasan, Trisha, R. Madhavan, Sangeetha, Ramesh Aravind, Urvashi, Kunjan, Manju Pillai, Kitty, Usha Uthup, Caroline, Oviya, Sriman, Surya(特別出演)
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : Manush Nandan
編集 : Shaan Mohammed
制作 : Udhayanidhi Stalin

《あらすじ》
 人気女優のアンブ(アンブジャクシ:Trisha)には実業家で富豪のマダン(マダナゴーパール:Madhavan)という恋人がいたが、マダンは疑り深くやきもち焼きだったため、絶えずアンブには映画業界人の恋人がいると疑い、女優業を止めるよう要求していた。この態度はアンブを苛つかせ、彼女はとうとうマダンと距離を置く決意をする。
 アンブは休暇を取って、親友のディーパ(Sangeetha)と共にヨーロッパ旅行へと出かける。ディーパは離婚して独り身だったが、2人の子供がいた。この旅行にはその子たちも連れていた。マダンはアンブが必ず浮気をすると思い、その証拠を掴むため、軍人のマンナール(Kamal Haasan)を探偵として雇い、ヨーロッパへと送り込む。マンナールは、癌で入院している親友ラージャン(Ramesh Aravind)の治療費を工面する必要があったため、この調査を引き受けていた。
 アンブの一行は南仏のマルセイユから豪華客船に乗り、地中海クルーズに出る。マンナールも同船し、アンブの行動を注視する。この船にはまたアンブと顔見知りの映画プロデューサー、クルップ夫妻(Kunjan & Manju Pillai)も乗っていた。
 調査の結果、マンナールはアンブの行動にまったくやましいところがないことを確認し、マダンに電話でそのとおり報告する。だがマダンは納得せず、まだ調査は終わっていないとして、調査費を出し渋る。ラージャンの医療費の支払いが迫っていたため、困惑したマンナールは、アンブは確かに何者かと逢引きしているようだと、ウソの報告を開始する。
 そうこうしているうちに、マンナールはアンブやディーパらと行動を共にすることになる。マンナールはアンブと親しくなり、自分にはかつてフランス人の妻ジュリエット(Caroline)がいたが、3年前に交通事故で失ったことを話す。その話を聞いてアンブはショックを受ける。事故の起きた状況から、加害者の車を運転していたのは他ならぬ自分であることを悟ったからである。
 旅先からの電話のやり取りで、アンブはマダンとの関係が終わったと認識する。そしてマンナールに、交通事故を引き起こしたのは自分だと、正直に告白する。この態度はマンナールを感動させ、彼もアンブに、マダンがアンブの行動調査のために探偵を送っていると打ち明ける。だがアンブは、話を全部聞き終わらないうちに、プロデューサーのクルップがその探偵だと勘違いしてしまう。
 マンナールは、マダンを納得させる辻褄合わせをするために、ディーパやクルップ夫妻にも一役買ってくれるよう依頼する。ところが、実際にマダンがヨーロッパまで飛んで来てしまったため、現地で大混乱が起きる、、、。

   *    *    *    *

 このブログでも何度か言ってきたことだが、近ごろのタミル映画は本当にどうかしている。なかなか直球勝負してくれず、変なところで変なふうに曲げてくる作品が多い。本作もそうで、上映時間は2時間50分ほどもあったのだが、ラスト40分ぐらいで突然映画の雰囲気が変わり、椅子からずり落ちそうになった。
 そこに至るまでは典型的なロマンティック・コメディーと言え、しかも出来はかなり良かった。多くのレビューで指摘されているように、展開はゆっくりとしていて、やや退屈な感じはあるが、丁寧な脚本、繊細な演技、気の利いた台詞で、昨年のヒット作【Vinnaithaandi Varuvaayaa】に匹敵する出来になるのでは、と期待した。ヨーロッパを舞台にしたオシャレなロマンスということで、通常のタミル映画とはずいぶん雰囲気が違うのだが、新感覚のタミル映画として、4ツ星を付けてもいいのでは、と思えた。それが、突然のひっくり返しがあり、ドタバタ・コメディーになってしまったのである。

 カマル・ハーサンほどの人なら脚本の落ち度ということはないだろう。意図的にこういう展開にしたと思うのだが、その意図というのが何なのか? 前部でアッパークラス向けに洗練されたものを見せ、後部で大衆向けにドタバタ喜劇を見せるという、二側面映画にしたかったのか、それとも、前部のオシャレな雰囲気に酔っている観客に意地悪して、「タミル映画はそうじゃないんだよ」と異化効果をぶつけてきたのか? なんであれ、私が見た限りでは、それまでの展開は何だったんだと、ぶち壊しに近いものを感じた。
 例えば、トリシャは美しく、【Vinnaithaandi Varuvaayaa】に匹敵する演技を見せていたのだが、後部ではストーリーの要請上、姿を隠してしまっている。また、マーダヴァンは、疑り深い性格の富豪の男を嫌らしく演じ、助演男優賞ものだったのだが、結局は愛すべき金持ちのバカぼんぼんになってしまった。
 こういう変化球がいつも必ずダメだというわけではないが、本作は失敗と言え、ロマンスとしてもコメディーとしても中途半端になっている。

 なお、本作はアメリカ映画【There's Something About Mary】(98:邦題「メリーに首ったけ」)からアイデアを取っているという指摘があるが、ある女性の身辺調査のために雇われた探偵がその女性を愛してしまうということ以外、まったく共通点はない。

◆ 演技者たち
 本作でも監督以外オールラウンドな働きをしたカマル・ハーサンだが、演技面でもさすがに素晴らしい。カマルの演技者的技量が際立つ仕掛けが随所にあったのだが、アトラクション的要素として、バルセロナでの闘牛シーンは面白かった(これはカマルが闘牛士で、マーダヴァンが牛だった。)

 上でも書いたが、トリシャがまた美しく、上手い。アイドルから実力派美人女優への脱皮に成功したことがはっきりと見て取れる。
 しかも、本作での特記事項は、トリシャ自身がアフレコしているということだ。声は役のイメージにぴったり合い(まぁ、本人の声だから当たり前とも言えるのだが)、タミル語のセリフ回しのニュアンスなど感知できない私の耳でも、下手くそ、耳障りという印象はまったくなかった。
 (写真下:カマル・ハーサンとトリシャ。トリシャのお気楽バカンスルックにも注目。)

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 マーダヴァンは、嫌な男を非常に上手く演じていたのだが、上で書いたとおり、「マダン」という人物像に一貫性がなかったのが残念だ。

 バツイチ人生を送る女、ディーパ役のサンギータは、開き直った感じの演技が良かった。トリシャとの会話もデリケートで良い。ヴェニスのゴンドラの上でマーダヴァンと展開するコメディーはなんだか微笑ましかった。
 (写真下:マーダヴァンとサンギータ。)

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 カンナダ俳優のラメーシュ・アラウィンドが、癌患者として、ハゲ頭で登場している。彼の演じたラージャンとその妻(Urvashi)、およびマンナール(Kamal Haasan)との会話は、情感たっぷりなもので、タミル映画らしかった。

 【Kalavaani】(10)でタミル映画デビューしたオーヴィヤちゃんが、マダンの従妹(婚約者候補)役でちらっと登場している。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はデヴィ・シュリー・プラサード。映画のイメージに合わせて、西洋音楽(ジャズやクラシック音楽)の要素を多く取り入れているのだが、それでもタミルっぽい味は加味されていた。
 1曲目の音楽シーンは、女優のアンブがスーリヤ(スーリヤ本人が登場)とコダイカナルでダンス・シーンを撮影しているという劇中劇スタイルだったが、この場面は従来のタミル映画の音楽シーンをパロっているように見えた。

 ‘Neela Vaanam’という曲は、マンナールがジュリエットと出会い、結婚し、彼女が事故死するまでの経緯を数分間にまとめたものだが、逆回し(つまり、妻の死から出会いまでを遡る形)で見せられていて、しかも映像は逆回転なのに歌を歌うカマル・ハーサンの口は歌詞にぴったり合っているという、非常に凝った趣向だった。

 ロケ地はチェンナイとコダイカナルとヨーロッパ各地。アンブたちの旅の足取りは、パリからリヨン経由の鉄道でマルセイユ、マルセイユから船でバルセロナ、ローマ、ヴェニスに至るというものだった。
 それぞれの地は美しくカメラに収められ、上で触れたとおり、ご当地の名物(バルセロナの闘牛やヴェニスのゴンドラなど)も面白くストーリーに取り込まれている。

◆ 結語
 失敗作だとは思うが、カマル・ハーサン、トリシャ、マーダヴァン、サンギータらの演技は良く、映画的ガジェットも面白い。それぞれの俳優のファンなら楽しめるだろうし、近ごろの「タミル映画病」を知る上でも興味深いサンプルかもしれない。

・満足度 : 2.5 / 5

《 見ても害なし・勝手トレイラー 》
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カマル「マディー、どないしてん? えらいシブい顔して。」
マディー「いえ、夕べね、酔うてションベンしたら、チャックにナニを挟んでしまいましたんや。」
カマル「ナニて、何やねん。」
マディー「そやから、ナニですがな。」
カマル「あ〜ぁ。赤チンでもつけとけや。」





 

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