カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kaavalan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2011/02/02 22:15   >>

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 ヴィジャイ主演の新作タミル映画は【Kaavalan】。周知のとおり、マラヤーラム映画の去年のヒット作【Bodyguard】のリメイクで、監督は両作品ともシッディクが務めている。オリジナルの主役ペアはディリープとナヤンターラだったが、タミル版ではヴィジャイとアシン。アシンは【Dasavathaaram】(08)以来のタミル映画出演となる。
 私はまったく知らなかったのだが、シッディク監督とヴィジャイのコンビには【Friends】(01)というヒット作があるらしい。また、ヴィジャイとアシンのペアには【Sivakasi】(05)と【Pokkiri】(07)があり、タミル映画界では相性の良いペアだと見なされている。これら3作がヒット作ということで、このトリオによる【Kaavalan】は縁起が良さそうなものだが、実際にはゴタゴタの相次ぐ曰く付きの作品となった。
 ゴタゴタの一例は、まず「リメイク権を巡る裁判沙汰」(こちらの記事)や「作品の題名変更問題」(こちら)があった。さらに、このところ客の呼べないスターとなってしまったヴィジャイに対して、映画館主協会が起こした「何らかの補償をせん限り、お前の映画は上映せんぞ騒動」(こちら)や、昨年スリランカのコロンボで「International Indian Film Awards」が開催された際に、SIFCC(South Indian Film Chamber of Commerce)がボイコットを呼びかけ、多くのインド映画関係者(特に南インド系)が参加を自粛したにもかかわらず、アシンがのこのことサルマーン・カーンと一緒にスリランカへ渡ってしまったという「アシン、掟破りのセイロン入り事件」(こちらこちら)があり、ついでに「アシン、ガス中毒事件」(こちら)などもあった。
 こうした一連の、本作の製作・公開を直接・間接的に脅かすような出来事があったにもかかわらず、なんとか公開に漕ぎ着け、興行的にはヴィジャイの久々のヒット作となったようである。

【Kaavalan】 (2011 : Tamil)
物語・脚本・監督 : Siddique
出演 : Vijay, Asin, Raj Kiran, Mithra Kurian, Vadivelu, Roja, Krishna Kumar, M.S. Bhaskar, Livingston, Nizhalgal Ravi, Mahadevan, Guinnes Pakru
音楽 : Vidyasagar
撮影 : N.K. Ekambaram
編集 : Gowri Shankar
制作 : C. Romesh Babu

《あらすじ》
 ブーミ(ブーミナータン:Vijay)は風変わりな若者で、地元の有力者ムットゥラーマリンガム(Raj Kiran)を偏執的に尊敬していた。彼はムットゥラーマリンガムのボディーガードとして働くため、紹介状を持って、その屋敷を訪れる。ムットゥラーマリンガムは当初ブーミを退けるが、仇敵(Mahadevan)に命を狙われたところをブーミに救われたため、彼を信頼するようになる。
 ムットゥラーマリンガムにはミーラ(Asin)という大学生の娘がおり、友人のマドゥ(Mithra Kurian)と一緒にキャンパスの近くに下宿していた。ムットゥラーマリンガムの仇敵がこのミーラを殺すと脅迫したため、ムットゥラーマリンガムはブーミをミーラのボディーガードに任命し、学生として同じ大学に通わせることにする。
 四角張ったボディーガードに付き添われたミーラはキャンパスの笑い物になる。なお悪いことに、実際にミーラが悪漢に襲撃されたため、ムットゥラーマリンガムは娘に授業に出ないよう指示する。かくしてミーラとマドゥとブーミは下宿の一室で一緒に自習することになる。この窮屈な状況を嫌ったミーラは、ブーミをコントロールするためのイタズラを考える。彼女は携帯電話の番号を非通知にし、「アンムー」という名の女性になりすましてブーミの携帯に電話し、彼を困惑させる。
 この作戦は効果的だったが、ある時ミーラは、ブーミがミーラ自身と父ムットゥラーマリンガムに対して純粋な愛着を抱いているのを知り、彼に惹かれるようになる。そして、とうとう彼に「I love you」と言ってしまう。「アンムー」を意識し始めていたブーミはそれを聞いて有頂天になる。ミーラはブーミとの電話が止められなくなり、気持ちがどんどん彼に傾いていく。だがマドゥは、もしミーラとブーミが恋仲になろうものなら、ムットゥラーマリンガムは間違いなくブーミを殺すだろうと警告する。「アンムー」とブーミは会う約束をするが、約束の時間になっても彼女は現れなかったため、ブーミは落胆する。
 大学の修了試験が近付いていたが、落ち込んだブーミは試験勉強を放棄する。見かねたミーラ(アンムー)は、ブーミを励ますために彼に電話し、試験に合格したら会うと約束する。
 やがて試験が終わり、ミーラが実家に帰る前日となる。ミーラ(アンムー)は意を決してブーミに電話をかけ、今後こそ本当に姿を見せるから、明日の早朝に駅で待つようにと指示する。だがこの電話は下宿のメイドに聞かれ、メイドはミーラの実家に、ミーラとブーミが駆け落ちを企てていると連絡してしまう、、、。

   *    *    *    *

 この【Kaavalan】を観るかどうかちょっと迷ったのだが、ディリープ主演のマラヤーラム映画を、それを撮った監督本人(シッディク監督)がどうヴィジャイ主演のタミル映画にリメイクするのか興味があったので、観ることにした。
 オリジナルの【Bodyguard】は風変わりな構成の作品で、前半はコメディー・タッチでテンポもいいのだが、物語が終盤に進むにつれ、シリアス度、センティメンタル度がどんどん増し、スローテンポになる。序破急というドラマの理想からすると破格になり、だれてしまうものだが、意外なヒネリと回想形式(登場人物の「手記」により提供される)を用いた巧みなストーリー構成で、観客はまんまとシッディク監督の罠に嵌められてしまう。あり得ないような物語なのだが、このセンティメンタルな深みに嵌って酔ってしまえば、感動できる。ということは、この仕掛けがタミル版でも機能していれば、映画作品として成功は堅いと思われるのだが、その点で【Kaavalan】はまずまず合格だったと思う。要因は、私はアシンがきちんと仕事をしていたからだと思う。

 マラヤーラム版オリジナルとの比較では、主人公が有力者のボディーガードとなるために屋敷に入るまでの過程が、タミル版リメイクではずいぶん簡略化されており、内容的にも違っている。しかし、それ以降は、特に主人公がヒロインのボディーガードになってからは、基本的に変わっていない。もちろん、タミル・ナイズ、ヴィジャイ・ナイズということで、ダンス・シーンやアクション・シーンは賑やかになっている。コメディー的役回りが、オリジナルのハリシュリー・アショーカンがヴァディヴェールに変わった分だけ、ずいぶん違った印象を受ける。
 基本的には大きな違いのないリメイクだったが、そうなってくると、タミル・ナイズとしてアクセントの付いたヴィジャイのアクション/ダンスやヴァディヴェールのコメディーが浮いて見えた。【Bodyguard】を観ていないタミル人なら違和感は感じないのかもしれないが、オリジナルを観ていた私の目には、「通常のヴィジャイ映画は作りたくないが、かといってヴィジャイらしいダンス/アクションを入れないというのもなぁ・・・」といったところでふらついた、部分改築的なリメイクに見えた。

 内容的には、インドでも今やすっかり一般人の生活必需品となった携帯電話がモチーフとしてうまく取り入れられている。顔も見たこともない相手に携帯電話での会話を通して愛情を抱いてしまうという物語は、カンナダ映画の【Taj Mahal】(08)でも使われたアイデアだが、本作でも「真実を知らない」ということからくる皮肉な状況がうまく物語化されている。なかなかよくできた脚本だと思うが、しかし本作が胸を打つのは、ストーリーの妙味というより、主要登場人物の一本気さや純粋さだということは忘れてはならないだろう。

◆ 演技者たち
 そもそも本作の最大のウリは「違うヴィジャイが見られるだろう」ということだった。【Thirumalai】(03)以来のマス・ヒーロー路線に行き詰まりを見せるヴィジャイが、「変化」を意識して取り組んだのがこの「ボディーガード」の役だったわけで、おかげさまでレビューの評価はおおむね好評のようだ。私もNGを出すつもりはない。ただ、またまたオリジナルとの比較で申し訳ないが、なんだかんだ言って演技力には定評のあるディリープの上手さには届いていないなぁ、と思ったし、ヴィジャイの「イメージ・チェンジ」という点でも、【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)のシンブほどのサプライズはなかった。ガウタム・メノン監督はシンブの親衛隊のことなどてんから無視してシンブにカルティクを演じさせたと思われるが、シッディク監督ももっと割り切ったヴィジャイの見せ方はできなかったものだろうか。
 (写真下:ヌンチャクを操るボディーガード・ヴィジャイ。)

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 対してアシンは、各レビューではあまり高く評価されていないが、私は良かったと見ている。オリジナルのナヤンターラとどっちが良かったかは言わないでおくが、終盤はかなり慎重に演技していたと思う。

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 ヒロインの友達で、重要な役回りを演じるマドゥ役はミトラ・クリヤン。彼女はマラヤーラム版オリジナルでも同じ役をやっており、それで注目されたようだ。
 (写真下:左端がミトラさん。)

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 ついでに、マラヤーラム版オリジナルと同じ役で出ているのは、主人公の息子役の子役、それにミーラたちのキャンパス・メイト役のギネス・パークル。

 ムットゥラーマリンガム役はラージキランだが、カリスマ的な地主という感じがしなかった。対して、その妻役のロージャさんは、年を取っても太っても、むちむちっとしたお色気が発散されていて、私的にはうれしかった。

◆ 音楽・撮影・その他
 本作の制作費は3億5000万ルピーだということだが、どこにそんな大金を使っているのか分からなかった。

 物語中の重要な役割を演じる携帯電話は、マラヤーラム版オリジナルは「Tata DOCOMO」が使われており、「ドコモ、ドコモ」の着信音が嫌味なほど繰り返し鳴り響いていた。本作ではどこのキャリアが使われていたのか分からない。

 物語の舞台はどこか分からなかったが、ロケ地としてKumbakonam、Karaikudiなどが使われたということだから、おそらくタミルナードゥ州南部の地方都市と設定されていたのだろう。
 撮影に使われたカレッジは、マラヤーラム版オリジナルと違って、本作ではピカピカの学校が使われていた。しかし、ヒロインたちが暮らしている下宿はマラヤーラム版でもタミル版でも同じ家屋が使われていた模様。

◆ 結語
 リメイク作品としては中途半端な作りだと思うが、鑑賞後感は悪くないクリーンな作品となっている。「違ったヴィジャイ」については、本作で新しいイメージが確立されたとも見えなかったので、今後の作品に期待したい。

・満足度 : 3.0 / 5

¶参照
Vijay has made a comeback: Siddique
http://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/regional/news-interviews/Vijay-has-made-a-comeback-Siddique/articleshow/7411372.cms
 

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