カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Golconda High School】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/03/18 21:03   >>

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 前回の【Traffic】評の冒頭で書いたとおり、おそらくクリケット・ワールドカップの影響で、現在バンガロールでは新作映画が不足しており、他州映画産業の作品でバンガロールでは未公開だったものが映画館の空きを埋めている。今回紹介するテルグ映画【Golconda High School】もアーンドラ・プラデーシュ州では1月15日に公開されたもの。
 監督は、前作【Ashta Chamma】(08)がヒットしたモーハン・クリシュナ・インドラガンティ監督。「Golconda High School」とは映画の題名としては風変わりなものだが、高校のクリケット部の活躍を描いた物語。原作はHari Mohan Paruvuという人の『The Men Within』という小説らしい。
 正確に言うと、本作はバンガロールでもAP州と同日に、シネコン1館・1日1ショーという形で1週間だけ公開された。今回は改めて複数の単館とシネコンで本格的な形での公開となったわけだが、このように復活上映が実現したのは、本作がAP州でヒットを記録したためであろう。と同時に、現在行われているクリケット・ワールドカップの熱気にあやかろうという魂胆もあるようだ。

【Golconda High School】 (2011 : Telugu)
脚本・台詞・監督 : Mohan Krishna Indraganti
出演 : Sumanth, Swathi, Tanikella Bharani, Subbaraju, Shafi, Ravi Prakash, Hema, Jhansi, Santosh, Sangeet, Farooq, Sai Srinivas, Lalit, その他
音楽 : Kalyani Malik
撮影 : Senthil Kumar
編集 : Shravan
制作 : Ram Mohan Paruvu

《あらすじ》
 ゴールコンダ高校はかつての名門校であったが、近年すっかり凋落し、苦しい経営状態が続いていた。この高校はクリケットの強豪としても知られていたが、それも過去の話、1994年の全州クリケット大会を最後に、ぱったりと勝てなくなっていた。
 理事のキリート(Subbaraju)は教員のマドゥ(Shafi)とつるみ、学内の運動場を売却してIT研修センターを建設する計画を提案する。この話を聞いた校長のヴィシュワナート(Tanikella Bharani)は憤慨し、もしクリケット部が全州大会で優勝したなら、運動場売却の話を撤回するようキリートに要求する。
 ヴィシュワナートは、この高校の卒業生でクリケットのエース選手だったサンパト(Sumanth)を探し出し、コーチに任命する。サンパトは当初この要請を断るつもりだったが、キリートの運動場売却案を知って、引き受けることにする。
 クリケット部には14名の部員がいたが、まったく士気の上がらない状態だった。サンパトは彼らに対し厳しい規律を与え、走り込みを中心とした激しい練習を課す。サンパトのこのやり方に対し、部員たちは反発する。また父兄たちも勉強の妨げになると言って抗議する。サンパトは、チームのキャプテンをシッダント(Sai Srinivas)からガウタム(Santosh)に変えるが、これも不信を買う一因となった。
 そんな中で、部員の1人マイケル(Farooq)が暴力事件を起こし、警察沙汰になりかける。この時、被害者に対して平身低頭で謝罪するサンパトを見て、部員たちは彼に対して信頼感を抱くようになる。そこからチームが機能し始め、練習の効率も上がるようになる。それと同時に、部員たちの学業成績も良くなる。
 全州大会の組み合わせが発表される。ゴールコンダ高校は1回戦で強豪と当たることになり、部員たちは意気消沈する。サンパトはそんな彼らを鼓舞し、目標として優勝を誓わせる。
 ゴールコンダ高校は、下馬評を覆して1回戦に勝つ。そこから彼らの快進撃が始まり、決勝進出を果たす。
 決勝の日の朝、部員たちは大張り切りで家を出る。父兄たちも大喜びで送り出す。だが、キリートとマドゥは裏で密かに陰謀を練っていた、、、。

   *    *    *    *

 頭脳派と思しきモーハン・クリシュナ監督のことだから、きっと一風変わった映画が来るだろうと予想していたが、実にシンプルでまっすぐな作品だった。この頃、鬱蒼としたスリラーだのホラーだのや、無理から変化を付けたような映画を観ることが多かったので、こういう明るく健康的な作品を観ると気持ちが好い。久々にスカッとした。
 「頭脳派」というのは私の思い込みで、そういえばモーハン・クリシュナ監督の作品は、【Mayabazaar】(06)にしても【Ashta Chamma】にしても、どこかほのぼのと心情に訴えかけてくるようなところがあり、「頭でっかち」という印象でもない。本作もそうだ。

 上のあらすじを読めば分かると思うが、本作にはまったくヒネリはない。「スポ魂物」として想像できるような設定・ストーリー展開を悉く踏んでいて、そういった意味で工夫や新しさは感じられない。しかし、それでも私は感動した。モーハン・クリシュナ監督は、「高校クリケット映画」を作るに当たって、あえて直球ど真ん中勝負を選択したのではなかろうか。監督にしてみれば、【Chak De! India】(07)の真似事と言われるのは心外なことだろう。

 もっとも、ストレートな作品といっても、本作が異色作であることには変わりはない。「スポーツを主題にしている」こと、「青少年(高校生)に焦点を当てている」こと、この2点で本作は珍しい部類に入る。
 スポーツ映画は、インドでは伝統的にあまり作られなかったジャンルであったようだが、今世紀に入ってコンスタントに現れている。特にボリウッドによく見られる傾向だが、南インドでもラグビーを扱った【Sye】(04:Telugu)、カバディの【Vennila Kabaddi Kuzhu】(09:Tamil)と【Kabaddi】(09:Kannada)、クリケットの【Chennai 600028】(07:Tamil)などがある。クリケットはインドで大人気のスポーツなので、もっと作られてもよさそうなものだが、ボリウッドでも【Lagaan】(01)、【Iqbal】(05)、【Dil Bole Hadippa!】(09)、【Patiala House】(11)、南インドでは【Chennai 600028】ぐらいしか思い浮かばない。【Chennai 600028】は「スポ魂物」というより、バカな若者を描いたスプーフ・フィルムなので、【Golconda High School】は南インド映画初の本格的クリケット映画になるかもしれない。(もっとも、これとて高校のアマチュア・クリケットなのだが。)

 モーハン・クリシュナ監督はインドの時代変化に非常に敏感で、それを簡潔明瞭に表現するのが上手い。例えば、【Mayabazaar】は「信仰」が経済成長によって「寺院ビジネス」として世俗化されてしまった様を風刺していたし、【Ashta Chamma】はインドの近代化に伴う都市と村落部のギャップを「マヘーシュ」と「ランバブ」という2つの名前で端的に表現した非常にシャープな作品だった。
 本作の監督の時代感覚は「青少年」である。
 「ハイスクール」というのは、インドでは日本の高校とは違っていて、AP州では第6学年から第10学年までを指すらしいので、日本で言えば小学校6年から高校1年に当たる。「中学校」としたほうが近いだろう。
 この年代を含めて、10代の子供たちを描いたインド映画というのもまた少なく、しかし、近年増えつつあるのではないか、というのが私の観察だ。これはおそらく、都市部のミドル・アッパークラスの成長と西洋化、その子弟たちを資本主義に適合した人材として育成するための教育のビジネス化、などという動きと関係しているのではないかと思われる。それで、モーハン・クリシュナ監督がこうした子供たちの生活に焦点を当て、物語の時間を現代から1994年に関連付けたというのは、実に理にかなったことのように思われる。

 本作でのモーハン・クリシュナ監督の問題意識もはっきりしている。「運動場は子供たちがスポーツをするためのものか、IT研修センターを建てるためのものか?」ということであり、その背景には「学校教育はビジネスか?」という問題、さらには「課外活動は学業の妨げになるものか?」という問い掛けがある。
 これに対してモーハン・クリシュナ監督は「勉強よりも大切なものがあり、教育は教室内に留まるものではない」という立場を表明している。この考え方が直ちに正しいかどうかは私には言えないが、少なくとも監督は、受験勉強に偏向しがちな近年の教育事情を疑問視し、クリケットの練習に専念し始めた部員たちが学業でも進歩する様を描いて見せている。

◆ 演技者たち
 主演のスマントは、なんとも捉えどころのない俳優だが、本作ではまずまずの見栄えだった。確信犯的なスポーツ・コーチをそれらしく演じている。やや演技に堅さが見られたが、そもそも彼はこんな芸風なのだろう。(写真下)

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 クリケット部員を演じた子供たちが良かった。全部で14人いるのだが、目立っていたのはキャプテン、ガウタム役のSantosh、反抗的ヒーロー、シッダント役のSai Srinivas、動物的バットマン、マイケル役のFarooq、おとぼけ担当、ワルン役のSangeetぐらいだった。(写真下)

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 ヒロインというほどではないが、サンパト(Sumanth)の良き理解者、英語教師アンジャリ役でスワーティが出演している。しかし、見栄えはさっぱりだったし、ミスキャストだと言える。わざわざ紹介する必要もないが、大判花柄のサリーというのも珍しいので、写真を載せておく。(下)

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 ネガティブ・ロールのスッバラージュとシャフィーはOK。 
 タニケッラ・バラニが「善き校長先生」の役で、好印象だった。(下)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はカリヤーニ・マリクの担当。私は【Alaa.. Modalaindi】(11)で初めて彼の音楽を聴いたと思っていたが、調べてみたら【Ashta Chamma】など、いくつか聴いていることが分かった。本作では2曲ほど良い曲があった。
 音楽シーンは数場面あったが、いわゆるダイナミックなダンスシーンはない。

 撮影はまずまず。

 なお、映画中の学生たちが参加していたクリケット大会の試合は「Twenty20」形式で行われていた。

◆ 結語
 本作の主眼は教育問題にあると思うが、実は私が感動したのはクリケットの「スポ魂」的側面だった。となると、クリケットのルールを知らなければ面白さが半減するかもしれない。それでも、私からはお勧め作としておく。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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