カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sanju Weds Geetha】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/04/08 20:59   >>

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 以前、デーヴァダーシの問題を扱ったカンナダ映画【Ijjodu】(10)の評の中で、「サウダッティのエッランマ寺院の参拝ぐらいはしたいと思っている」と書いたが、縁あってこのユガディ連休に参拝することができた。日頃ろくなことをしていない私としては、罪業滅却という目的もあっての聖地訪問だったわけだが、いやぁ、シャクティ系ヒンドゥー寺院というのはエロティックなもので、かえって煩悩を煽られる結果となってしまった(詳細省略)。くわばら、くわばら。
 それはさておき、エッランマ寺院へのアクセス都市としてフブリに滞在したのであるが、けっこう時間にゆとりがあり、結局現地の映画館で2本も映画を観てしまった。

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 そのうち1本がこのカンナダ映画【Sanju Weds Geetha】。主演はラミャだが、彼女はプロデューサーとしても関与しているようだ。かなりやる気を見せており、カンナダ映画では一度もセルフダビングしたことのなかったラミャが、本作では自身の声でアフレコしている。

【Sanju Weds Geetha】 (2011 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Nagashekar
出演 : Ramya, Srinagara Kitty, Sharan, Sharath Lohitashwa, Jai Jagadish, Suhasini Maniratnam, Rangayana Raghu, Arun Sagar, Umashree, Avinash, Tabla Naani, Bullet Prakash, Ramesh Bhat, Doddanna, Sadhu Kokila, Harish Roy
音楽 : Jassie Gift, Sadhu Kokila (BGM)
撮影 : Satya Hegde
編集 : John Harsha
制作 : Pramod Narayan, Murali Mohan

《あらすじ》
 時は1997年。サンジュ(Srinagara Kitty)はマイソール大学を優秀な成績で卒業し、就職先が決まるまでの間、クールグにある故郷の町ヴィラージペートに帰省する。
 サンジュはこの町でギータ(Ramya)という美しい女性に出会い、一目惚れする。ところがギータは男嫌いだった。サンジュはそれにもめげずギータに接近し、プロポーズした結果、彼女もサンジュを受け入れるようになる。
 ギータが男嫌いになったのには理由があった。彼女は少女時代にいとこの男から性的ないたずらを受けていたからである。その過去を知ったサンジュはますますギータを愛するようになり、二人は結婚を決意する。ギータの両親(Jai Jagadish & Suhasini Maniratnam)もそれを認める。
 過去の忌まわしい記憶に怯えるギータはサンジュに強く結婚を迫る。二人は翌日に寺院でひっそりと結婚式を挙げることに決める。
 サンジュは約束の時間に約束の場所で待つが、ギータはやって来ない。実はギータは、その場所に向かう途中で例のいとこ(Arun Sagar)に捕まり、レイプされていたのである。それを知ったサンジュは、憤怒のあまりその男を殺してしまい、投獄される。
 サンジュは、刑務所に面会にやって来たギータに対し、他の男と結婚するよう勧める。それを聞いたギータはひどく落ち込み、また事故から記憶喪失となってしまう。
 担当の医師は、ギータがかすかにサンジュに関する記憶を保持していることに気付く。医師はギータの記憶を呼び戻すために、サンジュとの思い出の場面をシミュレーションすることを提案する。サンジュは一時的に出所を許され、ヴィラージペートでギータが現れるのを待つ。ところが、やって来たのはギータの叔父プラカーシュ(Sharath Lohitashwa)だった。プラカーシュはサンジュに、ギータが行方不明になってしまったこと、また彼女が妊娠していることを告げる。
 サンジュは再び刑務所に戻されるが、この獄にはサーサ(Rangayana Raghu)というヤクザもいた。サーサは、犯罪弁護士のプラカーシュによって投獄された経緯があり、復讐を考えていた。サーサはサンジュとプラカーシュの関係を知り、サンジュを利用することを思い付く。彼はサンジュに対し、ある男(プラカーシュ)を殺すことを条件に脱獄させてやる、と提案する。サンジュはギータの身を案じるあまり、この提案を受け入れてしまう。やがてサンジュ脱獄作戦決行の時となる、、、。

   *    *    *    *

 映画中の2曲の歌、‘Gaganave Baagi’と‘Sanju Mattu Geetha’がすでにヒットしており、カンナダ語のテレビチャンネルで頻繁に流されているが、そのロマンティックな音楽シーンとは打って変わって、映画本編はかなり激しい悲劇的ラブストーリーだった。
 インド映画はハッピーエンド、とはよく言われるが、どうもカンナダ人は悲劇に対してアレルギーがないようで、こうした同情中枢をぐぐっと刺激するような作品も好み、最近では【Taj Mahal】(08)や【Krishnan Love Story】(10)などがアンハッピーエンドでありながらヒットした。おそらく本作もヒットを記録するものと思われる。

 ナーガシェーカル監督が本作で取り上げたテーマは「少女に対する性的ハラスメント」の問題だろう。本作の悲劇的展開はすべてギータ(Ramya)に対するいとこの性的いたずら(レイプを含む)に端を発しており、これがなければギータもサンジュもこんな運命を迎えなかったわけである。(伏線として登場するヤクザのサーサ(Rangayana Raghu)も、少女に対して淫らな性癖を持つ男として描かれていたように思う。)
 先日紹介したタミル映画【Nadunisi Naaygal】も子供に対する性的ハラスメント/虐待の問題を扱っており、これは南インド映画のちょっとした傾向かもしれない。

 ナーガシェーカル監督は【Aramane】(08)でデビューした人で、本作が2作目となる。【Aramane】は、私は好きだが、ヒットはしなかった。それで、本作ではしっかりと準備をし、ストーリーと脚本は2年がかりで練った、と監督はインタビューで語っている。しかし、その割には作品全体はがたがたしており、上に挙げた「少女に対する性的ハラスメント」の問題も見えにくい感じがした。

 いろいろと疑問点はあるのだが、一番の分からないのは、なぜドラマの時代を「1997年」に設定したのだろう?
 映画を見終わった直後は、おそらくこれは実話に基づいたものだろうと思ったが、どうもそうではないようで、ナーガシェーカル監督自身のオリジナルストーリーらしい。劇中で、サンジュが古い刑務所から新しい刑務所に移動させられる場面があるが、実際にバンガロールでは1997年に新しい中央刑務所が建設され、第1陣の250名が旧刑務所より転入している。これからすると、監督はぴったりと史実を意識するほどの念の入れようなのであるが、しかし、この物語と「性的ハラスメント」のテーマを14年前の出来事として描く必然性が分からないのである。
 いや、困ったものだ。

◆ 演技者たち
 本作を鑑賞したすべての人の賛同を得られると思うが、この【Sanju Weds Geetha】はヒロインであるラミャの映画。主人公はサンジュ役のシュリーナガラ・キッティということになるのだが、キッティよりラミャのほうが役柄の衝撃度、上手さ、存在感、品格と、すべての面で勝っている。デビュー当初のアイドル時代からどことなく腰の座ったところのあったラミャだが、良い女優になったものだ。(下)

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 ところで、ラミャといえば、年中行事のようにプロデューサーや制作スタッフと衝突してニュース・ネタを提供することでも有名だが、つい先月にも出演作【Dandam Dashagunam】の音楽CD発表セレモニーをボイコットし、プロデューサーのA・ガネーシュを激怒させるという事件があった。これに端を発して、KFCCがラミャに対して1年間のカンナダ映画出演禁止令を決定したり、ラミャ自身が女優引退宣言をしたりと、かなりスリリングな展開があったのだが、まぁ、こういう騒がしさも女優の資質のうちだろう。(その後、「出演禁止令」も「引退宣言」も両者により撤回されている。)

 ラミャに対して、サンジュ役のキッティは一定の評価は得ているようだが、結局はヒロインの引き立て役だった。もともと強い特徴のない俳優だが、本作でもなんとなく手堅く演じているという感じだった。
 (写真トップ:ラミャとシュリーナガラ・キッティ。)

 脇役陣は総じて適材適所といった感じだったが、特にコメントを付けるほどの人はいない。強いて言えば、サンジュの友人役のシャラン、ギータの叔父プラカーシュ役のシャラット・ローヒッタシュワ、ギータのいとこ役のアルン・サーガルが目立っていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 本作は音楽と映像が美しく、これだけでカンナダ人を惹き付けるものがある。
 音楽を担当したのはJassie Giftという人。主にマラヤーラム映画界で活躍している歌手・作曲家のようだが、カンナダ映画でも若干仕事をしている。
 上で触れたとおり、‘Gaganave Baagi’と‘Sanju Mattu Geetha’がヒットしているが、もう1曲、ラーマーヤナをパロった‘Ravana Seethen Kadda’もよく流されている。コミカルな音楽シーンだが、映画全体の雰囲気からは浮いていたように思う。なお、この曲はJassie Gift自身が歌っている。

 撮影はサティヤ・ヘグデの担当で、毎度良い仕事をしている。
 ロケ地はサクレーシュプルからクールグ、ウーティにかけての丘陵地帯で、物語の舞台となったヴィラージペート(Virajpet)でも実際に撮影が行われたようだ。本作を見ると、この地方特有の「緑と雨」が目に焼き付くが、他にこの地方に暮らすコダヴァ人の風俗もちらっと紹介されており、エキゾチックな印象を受ける。
 なお、‘Gaganave Baagi’の歌の背景となった遺跡はカルナータカ州北端にあるBidar Fort。片や、‘Sanju Mattu Geetha’ではカルナータカ州中部のBadami Caveが使われている。

 ところで、本作のオープニング・クレジットで、カンナダ映画界で非常に尊敬されている映画監督・俳優である故シャンカル・ナーグとその作品【Geetha】(80)に対して献辞が捧げられている。ナーガシェーカル監督はよっぽどこの【Geetha】という作品を愛しているようで、本作でもデビュー作の【Aramane】でも、ヒロインの名前をギータとしている。

◆ 結語
 クールグ地方の雨、演歌調のセンチメンタルな歌、悲劇的ラブストーリーと来れば、いかにもカンナダ人の好みそうな作品だ。かといって、例によって邦人鑑賞者にはお勧めしにくい内容・完成度なのだが、カンナダ映画をよく知りたいという方なら観ておいても損はないと思う。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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