カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Teen Maar】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/04/21 21:02   >>

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 先週末はマラヤーラム映画でモーハンラール主演の【China Town】とマンムーティ主演の【Doubles】が同日公開され、先日の【Christian Brothers】と【August 15】に引き続いてまたまたMMダービーか、こりゃ観に行かずばなるまいと思ったのだが、その直前に私はウィルス性感冒に罹ってしまい、病み上がりにラルさんとジャヤラームとディリープの3オヤジが並ぶ【China Town】はきついなぁ、やっぱりぴちぴち女優の出る映画にしたいなぁと思い、なら【Doubles】はどうかと調べてみたら、ヒロインはタープシーだった。「タープシーかぁ、、、がっかり」などと落胆し、さて、【China Town】にすべきか【Doubles】にすべきか迷っているうちに、なんだか面倒くさくなり、結局パワン・カリヤン主演のテルグ映画【Teen Maar】にした。
 そんな次第で、何も下調べせずに鑑賞したのだが、驚いたことに、これはイムティヤーズ・アリー監督のヒンディー映画【Love Aaj Kal】(09:サイフ・アリー・カーン、ディーピカ・パドゥコーネ主演)のリメイクだということが分かった。そういえば【Love Aaj Kal】のリメイクをパワン・カリヤン主演で作るというニュースは以前に読んだ記憶があるが、こんなに早く登場するとは思っていなかった。
 ちなみに、私は【Love Aaj Kal】は2年前にシンガポールの映画館で英語字幕付きで観ており、いたく感銘を受けた作品でもある。事前にリメイクだと分かっていれば、きっとこの【Teen Maar】は観なかったと思うが、観てしまったものはしようがない。

【Teen Maar】 (2011 : Telugu)
物語 : Imtiaz Ali
脚本・台詞 : Trivikram Srinivas
監督 : Jayanth C. Paranjee
出演 : Pawan Kalyan, Trisha, Kriti Kharbanda, Paresh Rawal, Mukesh Rishi, Sonu Sood, Tanikella Bharani, Sudha, Ali, M.S. Narayana, Danah
音楽 : Mani Sharma
撮影 : Jayanan Vincent
編集 : M.R. Varma
制作 : Ganesh Babu

《あらすじ》
 マイケル(Pawan Kalyan)は南アフリカ・ケープタウンのイタリア料理店でシェフをしていたが、アメリカの一流証券会社で働くことが目標だった。彼はガールフレンドに困ることはなかったが、一途な愛というものは信じず、真剣な恋愛よりは仕事上のキャリアを優先したいと考えていた。そんな彼は同じくケープタウン在住のミーラ(Trisha)と出会い、交際を始める。
 二人は親密な仲になるが、遺跡修復が専門のミーラはインドの古都マイソールで働くことが決まる。マイケルは遠距離恋愛は不可能だと考え、ミーラに別れ話を切り出す。ミーラも同意し、二人はブレイクアップ・パーティーまで開く。
 このパーティーの後、レストランのオーナーであるセーナパティ(Paresh Rawal)がマイケルに話しかける。マイケルはセーナパティの忠告に従い、空港までミーラを見送りに行く。
 実は、セーナパティがマイケルに接近したのには訳があった。セーナパティは若いころはヴァラナシに住んでいたが、当時の友人であるアルジュンという男がマイケルにそっくりだったからである。しかし、似ているのは容姿だけで、性格はまったく違っていた。セーナパティは、愛に関して浮ついた考えを持っているマイケルに対し、30年前のアルジュン(Pawan Kalyan)のヴァスマティ(Kriti Kharbanda)に対する一途な恋物語を語って聞かせる。だが、マイケルはセーナパティの話を適当にしか聞く耳を持っていなかった。
 マイケルはその後現地の白人女性ミシェル(Danah)と出会い、交際を開始する。また、インドにいるミーラも父の知人の政治家スディール(Sonu Sood)と親しくなる。マイケルはマイソールを訪れ、ミーラと再会する。その折にマイケルは、ミーラにスディールからプロポーズされたことを告げられる。
 ケープタウンに戻ったマイケルはミシェルと別れる。そうこうしているうちにミーラとスディールの結婚が決まり、マイケルは再びインドを訪れ、その結婚式に参加する。その折にマイケルとミーラは二人きりで話す機会を持つが、互いに惹かれ合うものを感じながらも決定的な言葉が言えず、マイケルは立ち去り、ミーラの結婚式は終了する。
 ケープタウンに戻ったマイケルは胸中に複雑なものを感じる日々だった。また、ミーラも結婚式後に後悔し、スディールに対して率直にマイケルを愛していることを表白する。
 そんな時にマイケルのアメリカでの就職が決まる。ミーラは自分の正直な気持ちを伝えようとマイケルに電話を入れるが、就職が決まって大喜びしている彼に対して、何も言えなかった。
 マイケルはニューヨークの証券会社で仕事を開始するが、なかなか思うとおりの業績を上げることができないでいた。ある時、彼は暴漢に襲われている若い女性を見かけ、彼女を救い出す。その後、業務上のノルマを達成できないことが確実となり、社長から非難される。しかしそこへ、以前に救った女性とその彼氏が現れ、感謝の印にとマイケルに5千万ドルの小切手を手渡す。この瞬間に、マイケルは真の愛というものを悟り、ミーラとの愛こそが自分に不可欠なものであると気付く。彼は、無意味なニューヨークでの会社生活に見切りをつけ、30年前のアルジュンのように、ミーラを力ずくででも奪うために、飛行機に乗る、、、。

   *    *    *    *

 例のごとく最初に大まかな感想を述べると、力強いラブストーリーで、なかなか面白かった。パワン・カリヤンのパフォーマンスに時に気合いさえ感じた。

 基本的にはオリジナルの【Love Aaj Kal】と同じストーリー構成で、現代の若者と昔の若者(これを同一俳優が演じている)の恋愛観を対比的に描くという趣向になっている。現代の場面が主筋だが、これに昔の場面が巧みに配置されるという仕掛けも同じ。長くなりすぎるので、上のあらすじでは昔の若者(アルジュン)のエピソードは割愛したが、実はテーマの上ではこちらのほうが重要で、現代の若者(マイケル)が結局は昔の若者の考え方・行動から学ぶという結末になっている。

 基本【Love Aaj Kal】と同じといっても、両作品とも観た人なら、【Teen Maar】からはずいぶん違った印象を受けるだろう。ヒンディー語のオリジナル作品から見事にテルグ映画化されている(むしろパワン・カリヤン化と言ったほうが適切か)。この印象の違いは、主演のサイフ・アリー・カーンとパワン・カリヤンのスターイメージの差もあるだろうが、むしろ何点か加えられた変更によるところが大きい。

 実は、私は【Love Aaj Kal】はイムティヤーズ・アリー監督が繊細に丁寧に編み上げた傑作ロマンス映画だと評価しており、そんな私の目から見ると、【Teen Maar】に加えられた変更は改悪にしか見えない。ロジックや整合性という点では首をかしげるところが多かった。

 主な変更点をまとめておくと、、、
 現代の若者(主人公)の設定で、オリジナルは「アメリカの建築会社で働くのが夢であるロンドン在住の建築家」だったが、リメイクでは「アメリカの証券会社で働くのが夢である南アフリカ在住のイタリア料理店シェフ」となっている。なんでウォールストリートで働きたいテルグ男がケープタウンのイタリア料理店で働いていたのだろう?
 ヒロインのほうは、オリジナル(ディーピカちゃん演じる)は「ロンドンでフレスコ画修復技術を学ぶ」という設定だったが、リメイク(トリシャ演じる)は「遺跡修復家」となっていた。似たようなものだが、遺跡修復家がなんでケープタウンをうろうろしていたのだろう?
 この2点は、結局は監督かプロデューサーがケープタウンで撮影をしたかったという、「まずロケ地ありき」があったのではないだろうか。

 昔の場面の設定では、オリジナルでは1965年の物語だったが、リメイクでは30年前(1980年ごろ)となっている。この15年の差は大きいだろう。
 また、この物語の語り手はどちらもレストランのオーナーだが、オリジナルでは自分自身の過去を語っているのに対し、リメイクでは「友人アルジュン」について語るということになっていた。この違いも大きいかもしれない。
 語られる昔の若者の人物像も異なっている。オリジナルでは「放蕩者」で、ある女性に出会って改心するという流れだったが、リメイクでは一直線な「学生リーダー」で、女性との出会いがこの男を変えるという契機はない。私はこの変更は改悪だと見る。つまり、【Love Aaj Kal】の真髄は、現代の若者からすると野暮ったいとも言える旧世代人の愛についての考え方が、結局は新世代人をも動かすということなので、両者のギャップがはっきりしているほうが面白いのだが、【Teen Maar】のアルジュンのような人物設定だと、時代的なコントラストが出てこないのである。もっとも、パワン・カリヤンのイメージからすると、アルジュンのような人物像になっても仕方がないのかもしれない。

 もっと深刻なのはプレクライマックスの重要な場面だ。上のあらすじで書いたとおり、リメイクの【Teen Maar】では、マイケルが暴漢に襲われている女性を救い、そこから展開する出来事によって愛を悟るという流れなのだが、これはオリジナルでは、暴漢に襲われるのは主人公自身で、彼が金品よりもミーラの写真を死守している自分に気付き、ミーラへの愛を悟るという展開だった。オリジナルのイムティヤーズ・アリー監督がこの場面で主人公に気付かせたかったのは「キャリアよりも愛のほうが大切」、「実は自分はミーラを強く愛していた」という2点だったと思われるが、これがリメイクのような展開だと、マイケルがどうしてここでミーラへの愛を自覚したのか、よく分からないのである。

 こうやって見ると、【Teen Maar】は「オリジナルの精神」を台無しにしたかのようなリメイク作品なのであるが、しかしパワン・カリヤン仕様の映画として見ると、それなりにうまくできている。【Love Aaj Kal】はAP州でもおそらくヒットしただろうから、今さらオリジナルのコピー映画を作っても意味がない。それよりも、テルグ人とパワン・カリヤンのファンを喜ばせようと頭をひねった結果、こういう内容になったというのも肯ける。
 面白いことに、オリジナルのイムティヤーズ・アリー監督自身がこの【Teen Maar】を観て「面白かった」と述べているので(こちら)、私がこれ以上ごちゃごちゃ言う必要もないだろう。

◆ 演技者たち
 パワン・カリヤンは、上手いのか下手なのかよく分からないが、とにかく彼らしい演技、というより、パワン流パフォーマンスを貫いていた。ヒーローのイメージとしては【Kushi】(01)に似ている。それにしても、【Kushi】から10年、パワースターもずいぶんオッサンくさくなったと思った。
 本作のマイケルは「南アフリカ在住のタミル系テルグ人で、イタリア料理店のシェフ」というややこしい設定だったので、パワンのセリフもテルグ語にタミル語、英語、イタリア語が混じるというものだった。
 (写真トップはヴァラナシのアルジュン、下はケープタウンのマイケル。)

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 ヒロイン、ミーラ役はトリシャ。彼女にすれば平均的な出来だろう。オリジナルではディーピカが演じ、鏡の前でしかめっ面する場面が印象的だったが、リメイクのトリシャも同じことをしていた。
 のっけにパワン・カリヤンとの大胆なキス・シーンがあり、驚いた。タミル映画の【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)でもシンブとの連発キス・シーンがあり、もしやトリシャは南インドの「キス女優」の地位を確立か?

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 セカンド・ヒロイン、30年前のヴァラナシ、アルジュンの恋人ヴァスマティ役はクリーティ・カルバンダという人。彼女は、家族の出自は北インド(おそらくパンジャーブ州)だと思われるが、バンガロール育ちのモデルとのこと(こちら)。カンナダ映画の【Chiru】(10)という作品がヒットしたため、カルナータカ州ではちょいとポピュラーな顔となっている。映画デビューはテルグ映画【Boni】(09)だが、フロップに終わったらしい。【Alaa.. Modalaindi】(11)でもちらっと顔を出していたが、観客に覚えられるには至らなかっただろう。幸い、本作での印象度は高そうなので、これからオファーが増えるかもしれない。

 脇役陣では、パレーシュ・ラーワルは重要な役どころだが、オリジナルのリシ・カプールのほうが印象的。ミーラに振られるスディール役はソーヌー・スードが演じていたが、珍しく紳士的な役だったので、笑ってしまった。

◆ 音楽・撮影・その他
 先日紹介した【Shakti】評の中で、音楽監督マニ・シャルマに対して不満を述べたが、あらあら不思議、本作のマニ・シャルマの曲は良かったと思う。BGMも常のテルグ映画とは違った雰囲気で、私は新鮮に感じた。

 撮影はベテラン、Jayanan Vincentの担当で、申し分ない。
 主なロケ地は南アフリカのケープタウンとインドのヴァラナシ、アラハーバード、マイソール、それにニューヨークと、地理的なスケールは大きい。マイソールでミーラ(Trisha)が修復していた遺跡がどこなのかは分からない。
 アリーがマイソールのタクシー運転手役でちょっぴり登場するのだが、彼のタクシーが黒と黄色のツートンカラーの、メーターが車外に付いているタイプの車両だった。このタイプのタクシーはマイソールを走っていないはずだが、何か意図があってこれを使ったのだろうか?(ナンバープレートは「KA(カルナータカ州)」となっていた。)

◆ 結語
 【Teen Maar】は、ボリウッド・ヒット映画のテルグ・リメイク作品として興味深いものだった。【Love Aaj Kal】を観ていない人なら楽しめると思うが、観た人でも、オリジナルとはまったく違った映画を観るつもりで鑑賞すれば、まずまず楽しめる。パワン・カリヤンにアレルギーのない人にはお勧めできる。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Cameraman Gangatho Rambabu】 (Telugu)
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