カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Mr. Perfect】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/05/04 15:12   >>

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 トリウッドの「ヤング・レベルスター」プラバースの新作は【Mr. Perfect】。
 前作の【Darling】(10)は、カルナカラン監督作品であるにもかかわらず、ヒロインがカージャル・アガルワールだという理由で私は見送ってしまったが、それが大ヒットしたために悔しい思いをした。【Darling】はその後DVDで鑑賞し、カルナカラン監督の一つ前の【Ullasamga Utsahamga】(08)に比べるとやや古風な作りだと感じたものの、それでも面白く、やはりヒロインが誰であろうと観るべき作品は観ておくべきだと痛感した。
 この【Mr. Perfect】のヒロインもまたまたカージャル・アガルワールで、しかもセカンドヒロインがタープシーだという、私にとっては苦しい取り合わせ。また、周りのテルグ人の口コミ評価も賛否が割れており、そんなことなら見送ってもいいかなと思ったが、アーンドラ・プラデーシュ州ではかなり客を集めているようなので、とにかく観ておくことにした。
 監督は【Santosham】(02)や【Swagatam】(08)など、ロマンティックな家族映画を得意とするダシャラド。脚本は【Bommarillu】(06)で有名なAbburi Ravi、制作はやはり【Bommarillu】や【Kotha Bangaru Lokam】(08)、【Brindaavanam】(10)などでお馴染みのディル・ラージュ、、、とこの面々が並べば、どんな映画になるか観なくても分かる???

【Mr. Perfect】 (2011 : Telugu)
脚本 : Abburi Ravi
監督 : Dasaradh
出演 : Prabhas, Kajal Agarwal, Taapsee, Prakash Raj, Nasser, Murali Mohan, Sayaji Shinde, K. Vishwanth, Brahmanandam, Raghu Babu, Master Bharath, Thulasi Shivamani, Pragathi, その他
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : Vijay Chakravarthy
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Dil Raju

《あらすじ》
 オーストラリア在住のヴィッキー(Prabhas)はゲームソフトの開発を専門とするエンジニア。彼は他人のために自己を犠牲にしたり譲歩したりすることが大嫌いで、自分の思ったとおりのことをやるのが正しいことだと信じていた。
 ヴィッキーは妹の結婚式のためにインドに帰省する。その折に父(Nasser)はヴィッキーに対して、出身村にいる幼なじみのプリヤ(Kajal Agarwal)との結婚を勧める。ヴィッキーはその話を拒否しないが、プリヤが自分にマッチする人物かどうか見極めるために、10日間くれるよう要求する。
 ヴィッキーとその家族はプリヤの家の客人となる。ヴィッキーとプリヤは当初反目し合うが、いくつかの出来事を経て、お互いに惹かれ合うようになる。しかし、両家の家長がいよいよヴィッキーとプリヤの婚約を発表しようかという段になって、ヴィッキーはプリヤと結婚しないことを宣言する。プリヤはヴィッキーの好みに合わせるために自分自身を変えようと努力していたが、ヴィッキーは自分の伴侶となる人は自己犠牲をするような人であってはならぬと考えていたからである。
 オーストラリアに戻ったヴィッキーはマギー(Taapsee)という活発な女性と出会う。彼女もヴィッキーのように自分のやりたいとおりのことをやる性格だった。二人はたちどころに意気投合し、結婚相手として意識する。
 マギーはヴィッキーを父(Prakash Raj)に紹介する。だが父はヴィッキーを嫌い、マギーには相応しくないと断言する。折りしもマギーの姉の結婚式が行われようとしていたが、マギーの父はヴィッキーにもそれに参加するよう要求し、集まった親類がヴィッキーのことをマギーに相応しいと認めたなら、結婚を認める、と挑戦状を叩きつける。ヴィッキーはそれを受けて立つ。ところが、思いがけないことに、その結婚式場にプリヤも現れる。実は彼女は、その結婚式を挙げる新郎の従妹だったのである。
 ヴィッキーはなんだかんだの末、マギー家の親類縁者の心を掴むことに成功する。
 プリヤはヴィッキーとマギーの関係を知り、二人を祝福してインドに帰ろうとする。ヴィッキーはプリヤを引き留めようとするが、彼女は去ってしまう。胸中に複雑なものを感じるヴィッキーであるが、その時、彼の携帯電話にプリヤからのビデオ・メッセージが入る、、、。

   *    *    *    *

 他人に対する「譲歩」や「犠牲」、他人との「調整」ということを愚かなことだと考え、自分の思うとおりに行動することが「完全」だと信じる若者が、自分が「不完全」だと思う事柄(つまり「譲歩」)を行ったときに、本当の意味で「完全な者」になるという、非常に教訓的な物語だった。
 この訓話のために監督は主人公のヴィッキー(Prabhas)をオーストラリア在住のソフトウェア・エンジニアと設定し、同類項にNRIのマギー(Taapsee)、そして対立項にインドの保守的な田舎娘プリヤ(Kajal Agarwal)を置く。
 ストーリー構成として、前半のインドの田舎のパートと後半のオーストラリアのパートがはっきりとした対構造になっている。どちらも結婚がらみの件でストーリーが動き、それぞれの最後に婚約発表の場面があり、ヴィッキーが決断を述べる。最終的に彼は、活動的で思ったとおりに生きるNRIのマギーより、インドの田舎在住の協調的・自己犠牲的なプリヤを選ぶという結論になっている。

 ちょっと分かりにくかったのは、監督の主張として読み取れるのは、「人は自分の思ったとおりに生きる、つまり『エゴ』を張った生き方をするのではなく、周りと『協調』しながら生きるべきだ」ということと、「欧米風の『モダンガール』より、インドの伝統的な『田舎娘』のほうが良い」ということだったと思われるが、実はこの2点は論理的に関係がないはずである。しかし、この2点を結び付け、インドの田舎とオーストラリアを突き合わせて描いたということは、監督の頭の中に「エゴ=欧米的=悪しきもの」、「協調性=インド的=善きもの」という固定観念があったからではないだろうか。
 しかし、その観念を整合的に描くためには、ヴィッキーのエゴイスティックな行動原理は欧米(オーストラリア)仕込みとしなければならないはずであるが、実は彼がそうした考え方に目覚めたのはインドの田舎に暮らしていた少年期のことであり、つまり欧米の影響というわけではないのである。私は、ヴィッキーのこの少年期のエピソードは要らなかったと思う。
 それに、監督はどうもエゴイスティックな欧米に対してインドの利他的な美徳を強調しているように思えるが、しかしエゴに関して、インドが欧米を批判できるほど協調的かなぁ?と、インド人のあっと驚くエゴイスティックな言動を日々体験している私などは思ってしまう。(私は、インド人にしばしば見られるエゴは必ずしも欧米の悪影響だけではなく、別の出処があるのでは?と推測している。)

 真面目な意図を持つ作品なので、あまり悪口は言いたくないが、しかし映画としては退屈で、つまらない部類に入る。多くのレビューで「脚本が弱い」、「ありきたりなストーリー」、「長ったらしい台詞」、「説教くさい」とコメントされているが、同感だ。「面白い」と私に口コミ情報をくれたテルグ人は「台詞が良い」と言っているが、そうすると、テルグ語の分からない私が本作をつまらないと感じても、それは私のせいになる。しかし、テルグ人の中にも「退屈だ」と言っている人が少なからずいるので、結局はそういった出来なのだろう。

 私が本作の評価をためらうもう一つの理由は、これがボリウッド映画っぽいということだ。
 そもそもダシャラド監督というのは、ボリウッドのスーラジ・R・バルジャーティヤ監督カラン・ジャウハル監督の作品の真似事とも言える映画を作っている人だが、本作も大規模な海外ロケといい、主人公の性格付けといい、そんな感じの作品だ。主人公のヴィッキーはプラバースではなく、サイフ・アリー・カーンが演じればぴったりくるようなキャラクターだ。
 インド映画80年の歴史ではどうだったか知らないが、ことここ数年に関する限り、南印4州の映画の中ではテルグ映画がもっともボリウッド映画との親縁性を示していると観察するが、この【Mr. Perfect】のような映画を観るとその感を強くする。私はボリウッド映画にはアレルギーはないのだが、こうして『南インド映画日記』の看板を掲げ、南インド映画の独特な面白さを日本の方々に紹介したいと考えている者にとって、南インドからボリウッド映画が出て来られてはちょっと困る。そんなことなら、直接ボリウッド映画を観ていれば済む話なのである。

◆ 演技者たち
 【Darling】で良い仕事をし、ロマンティック家族映画のヒーローとして当たった感のあるプラバースだが、本作も彼の努力は評価できる。ただ、上にも書いたとおり、本作のヴィッキーはプラバースの適役とは言えないと思う。例えば、役柄上英語のセリフが多いのだが、妙にネイティブっぽい発音が気持ち悪かった。これがサイフ・アリー・カーンなら適当に軽く聞こえて収まりがいいのだが、プラバースだとそうは行かない。

 対して、カージャル・アガルワールは、悔しいけれど、良かったと言っておこう。本作の最大の見どころと言ってもよく、特に後半の結婚式場での微妙な表情には感心した。田舎娘にしては垢抜けしすぎている嫌いがあるが、そこはタミル映画ほど写実に傾斜していないテルグ映画のこと、良しとしよう。

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 他方、マギー役のタープシーであるが、私はこういう一見して整形したことが分かる顔を苦手とするのだが、まぁ、NRIのお嬢様をそれらしくは演じていた。特記すべきは、彼女はテルグ語を母語としないにもかかわらず、自身の声でアフレコしていることだ。やっぱりおかしな発音らしいのだが、NRIという役には合っていたようだ。
 (写真下:プラバースとタープシー。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 デーヴィ・シュリー・プラサードの音楽はまずまず。前半のプラバースとカージャルを配した2曲が私的には心地良かった。

 映画中でMMSが効果的に使われていたが、これはグッドアイデアだった。

 ロケ地は、前半の田舎の場面は、設定ではAP州の村のはずだが、実際にはケーララ州で撮影が行われたようだ。(ポーラッチ辺りか?)

 制作費は、2億6千万ルピーとか3億ルピーとかいう数字が挙がっているが、このテーマ、ストーリーでこれは無駄遣いだろう。サンダルウッドなら5千万ルピーで撮ってしまう映画だ。

◆ 結語
 アーンドラ・プラデーシュ州で本作がヒットしているというのは喜ばしいことだが、面白さ、創造性、完成度という点ではあまり評価できない。愛や人間関係についてのインド的な講釈を聞くのも一興だが、プラバースによるエネルギッシュなラブコメを期待すると、失望するかもしれない。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
川縁さんがロンパリ娘を誉めるとはちょっと驚き。

因みにポーラッチは行政府上ではタミルナードゥですよ、細かいことをいえば(笑
メタ坊
2011/05/04 22:27
今回もしっかりロンパリでしたよ。

>因みにポーラッチは行政府上ではタミルナードゥですよ

おお、そうでした。
パーラッカードかな? よく映画に出てくる風景でした。
 
カーヴェリ
2011/05/04 23:45

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