カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Raajadaani】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/06/10 21:08   >>

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 先週末はタミル、テルグ、マラヤーラムに目立った新作の公開がなく、対照的にカンナダでは3本が公開された。ところが、その3本がドングリの背比べといった感じだったので(前回紹介した【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】を含む)、こういう時は久々にボリウッド映画でも観ようと、サルマーン・カーン主演の【Ready】を観に行ったのだが、あえなく「満員御礼」の立て札に阻まれ、結局カンナダ映画の【Raajadaani】を鑑賞することになった。
 この勢いだと【Ready】はバンガロールでもヒットとなりそうだが、しかし、これはそもそもテルグ映画【Ready】(08)のリメイクで、同作品はバンガロールでも公開され、ロングランしているのである。しかも、オリジナル【Ready】はご当地のカンナダ映画にも【Raam】(09)としてリメイクされ、スーパーヒットを記録している。さらに、タミル版リメイクの【Uthamaputhiran】(10)もバンガロールで公開され、やはり多くの客を集めた。つまり、バンガロールに暮らすずいぶん多くの人がすでに同じストーリーの映画を楽しんだわけだが、その上さらにヒンディー語版も観たいか!?
 一体どんな客層がそれぞれの言語版を観たかは分析もできないが、バンガロールのコスモポリタンな一面が窺えて、面白い。

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 さて、【Raajadaani】であるが、K・V・ラージュという人の監督作品。この人は、よく知らないのだが、30年のキャリアを持つベテランらしい。
 主演は期待の若手、ヤシュ。プラカーシュ・ラージが警官役で脇に付いている。
 題名の「Raajadaani」は「首都」という意味だが、この場合はカルナータカ州の州都バンガロールのことを指している。

【Raajadaani】 (2011 : Kannada)
脚本・台詞・監督 : K.V. Raju
出演 : Yash, Sheena Shabadi, Prakash Raj, Chetan Chandra, Sathya, Sandeep, Ravi Teja, Ramesh Bhat, Thulasi Shivamani, Umashree, Achyuth Kumar, Raju Thalikote, Arun Sagar, Sharath Lohitashwa, Rajendra Karanth, Ramesh Pandit, Biradar, Mumaith Khan
音楽 : Arjun Janya
撮影 : H.C. Venu
編集 : Prakash
制作 : Sowmya Sathyan

《あらすじ》
 バンガロールの貧民街に暮らすラージャ(Yash)、ジャッギー(Sathya)、ダーム、ニティヤーナンド、チェータン(Chetan Chandra)の5人は大の親友。彼らは特に仕事もせず、バーで無銭飲食などを繰り返す不良グループだった。
 ある日、チェータンが女がらみの件でチンピラから暴行を受ける。他の4人はチェータンに代わってこのチンピラに仕返しをするが、この暴力事件のせいで4人は逮捕され、投獄される。彼らは弁護士(Raju Thalikote)の働きですぐに釈放される。この事件を担当した警官のアジャイ(Prakash Raj)はラージャらに更生するよう諭す。
 ところが、この事件のせいで5人に箔が付き、街でもちょっとした顔になってしまう。彼らは握り拳が金になることを知り、金欲しさにヤクザまがいの行動を取るようになる。
 ある時、5人はたまたまバーで知り合ったマノハル(Achyuth Kumar)という男から殺人の依頼を受ける。報酬は500万ルピーだった。学校教師の息子で、5人の中で最も真面目なチェータンはこの話に乗らない。しかし、他の4人はこの依頼を受け、首尾よくターゲットの男を殺害する。
 しかし、彼らが殺した男はマフィアの大物ドン、ベンキー・マハーデーヴだった。4人は容疑者として警察に追われる。彼らは以前に世話になった弁護士に弁護を依頼するが、弁護士は賄賂を使って裁判を有利に進める費用として100万ルピーを要求する。4人は新たに金を強奪し、弁護士に払う。その後、警官アジャイは4人を逮捕するが、弁護士の働きで、また腐敗した警察上層部の横やりで、4人は釈放されることになる。
 4人は他のマフィアのドンに飼われ、いよいよ本格的に暗黒街に転落する。彼らはビジネスも行い、大金を稼ぐが、それぞれの家族からは冷たいあしらいを受ける。この頃、チェータンも再び仲間として4人に加わる。
 ラージャらは街角で偶然マノハルを見かける。実は、4人はマノハルから約束の金額を受け取っていなかったため、彼を脅し、ベンキー・マハーデーヴ殺害の背後に大物政治家(Rajendra Karanth)がいることを知る。ラージャら5人組はその政治家を脅迫するが、政治家は逆に彼らを襲い、ジャッギーを殺害する。他の4人は復讐のために、弁護士の入れ知恵で、その政治家を暗殺することに成功する。
 ここに至って、内務大臣から4人の射殺許可が下りる。警官アジャイは4人を追及し、仲間の1人、ニティヤーナンドを射殺する。
 ラージャは逆上する。3人は再び弁護士と相談するが、さすがに弁護士もお手上げで、彼らに自首を勧告する。憤ったラージャは弁護士を撃ち殺す。
 ラージャ、ダーム、チェータンの3人は、いよいよアジャイに追い詰められる。この時、実はチェータンはアジャイに説得されて、警察のスパイとして行動していたことが知れる。しかし、気付いたときは遅く、ラージャとダームはアジャイに射殺される。遺体の身元検分のとき、ラージャとダームのそれぞれの親は「これは自分の息子ではない」とアジャイに告げる。

   *    *    *    *

 悪の道に走る者は必ずその報いを受けねばならぬという、非常に分かりやすいメッセージを持った映画だった。しかも、その悪に転落する者が将来のある若者だということで、同世代の青年に対して教訓を与えるものとなっている。

 若者が非行に走るというのも、個々人の人間性によるところも大だと思うが、有効な生活手段がなく、貧困に苦しむ人々の層が存在することや、彼らが暗黒街に転落しやすいようなマフィアと政治家と警察の癒着、司法の堕落など、やはりそういう事態を生み出す社会的背景がある。そして、そういった社会悪を許す器としての悪の街・バンガロールがある。こうした「バンガロール腐敗都市観」は【Majestic】(02)や【Kariya】(03)、【Jogi】(05)など、カンナダ・ノワール映画にしばしば見られるもので、私はこれは90年代後半以降に現れた傾向だと思っていたのだが、古いラージクマールの映画、例えば【Doorada Betta】(73)などを観ても同じようなことが語られているので、これはおそらくカンナダ人の伝統的な認識なのだろう。
 また、ちょっとした人生の狂いで若者たちが暗黒街に迷い込むという内容の作品には、【Om】(95)や【Deadly Soma】(05)、【Deadly-2】(10)、【Geleya】(07)などがあり、これもカンナダ映画お得意のテーマであるようだ。

 なかなか辛口のモラルを伝える映画で、こういう背筋の伸びるような生真面目な作品は好感が持てるし、私は好きだ。
 ただ、メッセージ志向の社会派映画として見るならば、政治家や警察、弁護士などの腐敗の描写が紋切り型で、真に迫ってくるものがない。また、反対に娯楽アクション映画として見るならば、明るさというか、リッチな面白さが全然足りない。結局、この帯に短し襷に長しな感じが本作の苦しいところだと思った。

◆ 演技者たち
 不良5人組はそれぞれ手頃に造形されていたが、リーダー格・ラージャ役のヤシュ、ストーリー上重要なチェータン役のチェータン・チャンドラ、ジャッギー役のサティヤが目立っていた。
 特にヤシュはかなり熱演していたと言える。彼はソフト・ヒーローを得意とするのだが、本作では打って変わって貧民街の悪ガキ。気合いが入っていたし、親子の情や友情との葛藤に苦しむ表現もよくできていた。彼の場合、もともと実力があり、ダンスもサンダルウッドでは上手いほうで、鋭角的なハンサム顔でもあるのだが、オーラのなさが禍していた。本作での挑戦的演技で役者としての度量を増したと言えるだろう。(下)

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 ヒロインとして、ほとんど目立っていなかったのだが、ラージャの恋人役としてSheena Shabadiという女優が出演していた。詳しいことはまったく知らないが、おそらく北インド出身の新人女優だろう。マラヤーラムのバーヴァナにちょいと似ていなくもない、アイドル顔のカワイコちゃんだが、女優としては苦しいと思った。(下)

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 誠実な警官アジャイを演じたプラカーシュ・ラージは、まったくけれんのない演技だったが、こういう渋いプラカーシュのオッサンもたまにはいいもんだ。(下)

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 音楽シーンの1曲にムマイト・カーンがアイテム出演していた。久々に彼女を見ることになったが、2,3年前に比べると、体をぐっと絞っているように見えた。(下)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はほとんど印象に残っていない。

 撮影とアクションは褒め上げるほどの出来ではないが、カンナダ映画の水準では平均以上のものだろう。

◆ 結語
 【Raajadaani】は、アクションと暴力シーンが頻発する割には地味な印象を受ける教訓的犯罪映画。カンナダ人以外、用はなさそうだが、それだけにカンナダ映画らしいカンナダ映画だと言える。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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【Raate】 (Kannada)
 いつの頃からか、ファッション雑誌の表紙を飾るようなゴージャスなインド女優に興味をなくした私は、ひたすら「隣の女の子」タイプの女優に愛の目を注いでいる。そんな私の美意識を満足させてくれそうなカンナダ映画が2本、このユガーディにめでたく公開されたので、どちらも観ることにした。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/03/24 21:23

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
本作とは全く異なる部分での意見で申し訳ありませんが、『READY』に関して

>その上さらにヒンディー語版も観たいか!?

という部分に笑いました。
Salman Khanのあのフェロモンがどうも苦手で観るのを渋っています。

2011/06/11 01:22
プラカーシュのオッサンが渋い警官役とくれば、
わたしのコレクションに加えなくちゃ!
あいや〜
2011/06/11 11:13
泉さん

私、昔はサルマーンが嫌いだったんですが、なんつうか、慣れるというか、今では好んで観てますよ。

まずはテルグ語オリジナルの「Ready」をご覧になったらどうですか。
 
カーヴェリ
2011/06/11 23:37
あいや〜さん

実は、あまり見応えのある役柄・演技でもありませんでした。ただ、プラカーシュのオッサンは、テルグやタミルでは要求されないような役柄をカンナダでやろうとしているようで、ちょっと興味深いです。

しかし、この映画、DVDが出ないと思うなぁ。
 
カーヴェリ
2011/06/11 23:38
カーヴェリさま

>テルグやタミルで要求されないような役柄をカンナダでやろうとしているようで
そうなのですか!私も興味が湧いてまいりました。

あらら、、、DVD出そうにないですか、、、
スチール写真で心を慰めます。
あいや〜
2011/06/12 10:22

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