カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【180】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/07/05 21:10   >>

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 シッダールタの話題の新作はテルグ/タミル・バイリンガル映画の【180】。
 シッダールタといえば、ルックスに才能を兼ね備えた、インドでもそう多くはない純二枚目俳優だと私は思っている。だが、彼のフィルモグラフィーを眺めてみるに、当たりに当たっていたのは(食当たりって意味じゃないですよ)【Bommarillu】(06)までで、それ以降は興行的に並みか並み以下、またはフロップが続き、現在6連敗中だと言える。ところが、この【180】はどうしたわけか早くから注目を集めており、実際、先に公開されたトレーラーでも気合いの入ったシッダールタの様子が窺え、今回はがっちり決めてくれそうな予感があった。
 監督はジャイェンドラという人で、長編商業映画ではデビューとなるが、広告フィルムの分野では著名人らしい。
 ヒロインはプリヤー・アーナンドとニティヤ・メーナン。始めに断っておくと、私はこのどちらも好きなので、モチベーションは異様に高い。ちなみに、シッダールタは【Bommarillu】でジェネリアに喰われて以来、大物女優と組むのを避けている節があるが、本作もおそらく注意深く二選級の2人を選んだものと思われる。ところが、【Alaa.. Modalaindi】のヒットのおかげでニティヤが当たってしまい(水当たりってことじゃないですよ)、テルグ語圏では「ニティヤの新作!」ということでも注目を集めることとなった。
 私が観たのはテルグ語版で、題名は【180】だが、タミル語版のほうは【Nootrenbadhu】となっている。ただし、これは単に「180」をタミル語読みしただけのものなので、実質的には同じと言える。(アラビア数字をタミル語に変えるだけで課税額が下がるらしい。)
 周知のとおり、タミル人シッダールタにとって、【Aayutha Ezhuthu】(04)以来7年ぶりのタミル映画出演となり、タミル語圏ではそれも話題だった。

【180】 (2011 : Telugu)
物語・脚本 : Subha, Jayendra
台詞 : Umarji Anuradha(テルグ語版)
監督 : Jayendra
出演 : Siddharth, Priya Anand, Nithya Menon, Mouli, Geetha, Sricharan, Tanikella Bharani, Janaki Sabesh, Lakshmi Ramakrishnan, M.S. Narayana, その他
音楽 : Sharreth
撮影 : Balasubramaniem
編集 : Kishore T.E
制作 : Kiran Reddy, Swaroop Reddy, C. Srikanth

《あらすじ》
 サンフランシスコで外科医をしていたアジャイ(Siddharth)は、さる仔細あってインドに戻り、ヴァラナシの沐浴場にいた。彼は絶望の淵に沈んでいたが、この沐浴場で出合った少年マノーのおかげで生きる勇気を取り戻す。
 アジャイはハイダラーバードに部屋を借り、新たな生活を始める。彼は大家夫妻(Mouli & Geetha)には「アメリカ帰りのソフトウェア・エンジニア、マノー」と称していた。しかし、マノー(アジャイ)は特に仕事はせず、近所にいる新聞配達やスナック売り、アイロン屋などをしている少年たちの仕事を手伝っていた。
 ここに新聞社に勤める写真報道家のヴィディヤ(Nithya Menon)が現れる。彼女は、どう見てもエリートにしか見えない男が貧しい少年労働者たちと交わっている姿に興味を示し、新聞ネタとして追っかけを始める。ほどなく彼女はマノーに惚れるが、マノーが彼女になびく気配はなかった。
 ある時、マノーは少年たちが教育を受けられない現状を知り、学資のための寄付金集めを思い立つ。彼はヴィディヤに少年労働者たちのことを記事にしてくれるよう依頼する。そして、ヴィディヤが仕立てた記事のおかげで、多額の寄付金が集まる。その寄付金授与セレモニーの日に、ヴィディヤはマノーに愛を告白する。
 だが、ヴィディヤの気持ちを知ったマノーは、突然部屋を払い、街を出て行く。ヴィディヤはスクーターでマノーの乗っているバスを追いかけるが、衝突事故に遭い、病院に運ばれる。
 ヴィディヤには脊椎手術を施す必要があったが、適切な医師がいなかったため、マノー(アジャイ)はアメリカにいる先輩医師を紹介する。マノーはヴィディヤを連れてサンフランシスコまで飛ぶ。だが、その飛行機の中で、アメリカ時代の記憶がよみがえる。
 ・・・
 外科医のアジャイは、自動車事故で入院してきたレヌー(Priya Anand)と知り合う。お互いテルグ人のNRIだった二人は惹かれ合い、とんとん拍子に婚約まで至り付く。そして、途中、アメリカにやって来たアジャイの母(Lakshmi Ramakrishnan)が急死する出来事などもあったが、二人は晴れて夫婦となる。
 アジャイとレヌーは幸福な新婚生活を送るが、ある日、アジャイが末期のすい臓ガンに侵され、余命6ヶ月だということが分かる。レヌーや友人サム(Sricharan)のサポートも空しく、アジャイの生活はすさみ始める。そしてとうとう、アジャイは遺言を残して家出をしてしまう。
 ・・・
 ヴィディヤの手術は成功し、リハビリの経過も良好だった。ヴィディヤはこの間もマノー(アジャイ)に対する愛を表明していた。だが、アジャイはかつての友人サムと遭遇してしまい、彼からレヌーに会うよう説得され、複雑な立場に陥る。その翌日、ヴィディヤとアジャイはインドに帰るために空港に向かうが、、、。

   *    *    *    *

 まず始めに、主要登場人物を演じた3人、すなわち、シッダールタ、プリヤー・アーナンド、ニティヤ・メーナンのパフォーマンスは良く(特にシッダールタ)、それぞれのファンの方は一定の満足を感じると思う。しかし、ストーリーはさほど面白くなく、映画作品としては退屈なものだった。テンポが緩慢で、上映時間は2時間20分程度のスタンダードサイズでありながら、優に3時間は座っていたかのように感じられた。

 一見して新しいことをやろうとしていることの分かる映画だった。特に、凝った映像と音楽は素晴らしく、技術面では目を見張るものがある。ただ、ストーリーが弱いので、その技術的努力も空回りしているように見えた。変に小細工の利く駆け出し監督のよくやるようなミスだと思った。近ごろ、こういう「技術は素晴らしいが、ストーリー・脚本は弱い」というインド映画をよく見かけるが、あまり歓迎したくない傾向だ。

 物語は、インドでのマノー(Siddharth)とヴィディヤ(Nithya)の展開が現在時の流れを構成し、これに回想シーンとしてアメリカでのアジャイとレヌー(Priya Anand)の展開が挿入される。上のあらすじでは大雑把に書いたが、この回想シーンは何度かに分けて小出しされる。監督はかなり気を付けて、両パートに同じぐらいの重さを配分したようだ。アメリカの場面とインドの場面でがらりと雰囲気の変わるのが面白かった。
 また、前半と後半とでも雰囲気が変わる。前半はユーモラスな、または小洒落たイメージの連発する展開で、ネタのいくつかは印象的。後半はぐっとセンチメンタルになり、物語が動き出して面白くなるのだが、残念ながら「感動のクライマックス!」というわけには行かなかった。

 内容的には、三角関係の恋愛物を予想したが、そうではなかった。自分の死期を悟った若者が、運命を受け入れ、諦観した生き方をするという、人生哲学的なものだった。好いた惚れたよりも、もっと次元の高いものを狙っており、その辺は好感が持てる。ただ、言ってしまうと、このコンセプトの映画ならクリシュナ・ヴァムシ監督のテルグ映画【Chakram】(05)のほうが面白い。また、哲学的なのはOKだが、カッコよすぎる嫌いがあり、何かしらウソ臭いものを感じてしまった。

◆ 演技者たち
 結局、本作はアジャイ/マノーという若者の運命が主題であり、演じたシッダールタの一人相撲、もとい、一人芝居を見せるのが最大の努力だったと思う。その責任に応えて、シッダールタのパフォーマンスは素晴らしかったと私は見ている。アメリカで医師として成功したセレブな若者が、絶望からすさんだ生活に堕ち、再び笑顔を取り戻すという、それぞれの局面を彼らしくよく考えて演じていたと思う。これまでのシッダールタより一段大人になったようで、一見の価値はある。

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 ヒロインは2人だが、どちらかがセカンド・ヒロインで、どちらかがサード・ヒロインということではなく、どちらにも等しい重さが与えられていた。というより、上で示唆したとおり、どちらもシッダールタの引き立て役に回っていたと言うのが正確なところだろう。どちらのヒロインにもそれなりに見せ場があり、展開次第では泣ける感動的なドラマになったはずなのに、そのチャンスを監督自らがくちゃくちゃっとちり紙に包んで捨ててしまったかのようだった。実に勿体ない。

 レヌー役のプリヤー・アーナンドはサプライズだろう。出だしはけばけばした感じのありがちなヒロイン像で、「こりゃ、完璧にニティヤの引き立て役に回る展開だな」と読んでいたら、後半にけっこう見せ場があった。演技的に上手いとは言えないが、観客の記憶に残るような見せ方となっていた。(下)

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 対して、ヴィディヤ役のニティヤは、相変わらず表情の作り方が上手く、納得できる場面がいくつもあった。しかし、あの学生風のルックスがちっともプロのフォト・ジャーナリストに見えないところが辛かった。また、ファンの1人としてあえて言わせてもらうと、体が弛みすぎ。もともと小ぶりでぷりぷりしているところが魅力だったのだが、ここまで脂肪が嵩むと女優にしておくのは勿体なく、いっそタンドーリ・チキンにして食べれば旨いだろうと思った。
 ちなみに、アフレコはニティヤ自身がやっている。
 (写真下:ヘルメットをかぶるニティヤ。この場合、スクーターと色を揃えている点がポイント。)

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 脇役陣では、マノーの大家を演じたマウリがいかにもミドルクラスの人の善いオヤジといった感じで、良かった。ほとんどお目にかかったことのない人だが、もっと見てみたい気がした。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はシャラットという人の担当。マラヤーラム映画界の作曲家らしい。
 かなり気合いを感じる曲が並んでいた。特にパーカッションの使い方が面白く、これなら音楽CDを部屋で聴いても十分楽しめる。
 音楽シーンの作り方は、そのシーンの中でもストーリーが展開されるというものだった。これは南インド映画界でも普及しつつあるやり方だが、本作の場合はもっと崩した形になっていて、一区切りの音楽シーンというよりは、ストーリー進行にかぶさるBGMみたいになっていた。

 撮影はさすがに素晴らしい。ただ、超スローモーションを使った場面がいくつかあったが(音楽シーンを含めて)、あまり効いているとは思われなかった。
 物語の舞台は、インドの場面はテルグ版ではハイダラーバードになっていたが、これがタミル版ではチェンナイで、撮影は両地でわざわざ別個に行ったらしい。

◆ 結語
 もしかしたら、ガウタム・メーナン監督の【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)と同じ線を狙ったものかもしれないが、あのようなセンセーションを起こすには至らないだろう。新しく気の利いた作りで、従来の南インド型映画によっぽど飽きた層には受けるかもしれないが、大衆はまったく反応しないだろう。私的にも、インド映画にはあまり期待していないタイプの映画だ。

・満足度 : 2.5 / 5

《 勝手トレイラー 》
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シッダ「♪、、あの、すば〜らしい、あ・い・をもう一度ぉ〜♪ グスッ、、、バーラトくん、、、オレ、7連敗や!」










 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ニティヤ=タンドーリ・チキン

私がこの半年恐くて口に出せなかったことを川縁さんがズバリ言ってしまったあ!

2.5評価はその辺も関係していますか?
メタ坊
2011/07/05 23:29
>私がこの半年恐くて口に出せなかったことを・・・

な、何を恐れてますのん!?

>2.5評価はその辺も関係していますか?

いえいえ、偉そうに言いますが、映画そのものは2.0がいいとこです。
ニティヤのおかげで0.5ぐらい上がりました。
 
カーヴェリ
2011/07/06 02:34
>な、何を恐れてますのん!?

口に出してしまうと今まで認めたくなかった事実(ニティヤ激しく膨張中)を直視しなければならなくなってしまう…

見た目よりはかなり実年齢が高いので、よほど節制しないとスリム化は難しいでしょうね。ストレスたまるぶん食いまくってるのではないかと案じております。

Urumiのような時代劇だと多少フクヨカな方が役に合うのですが、都会的なキャリアウーマン役だとやはりタンドーリ・チキンは不味いですよねえ←むろんこれは駄洒落ではありません。
メタ坊
2011/07/06 15:50
また私が要らんこと言うてしもたようですね。
こんなにマジなリアクションが来るとは思っていませんでした。
まぁ、いつものウケねらいの誇張表現ですので、あんまり気にせんといてください。
 
カーヴェリ
2011/07/07 03:14
>こんなにマジなリアクションが

普通の関西人ノリで大騒ぎして見せただけだったんですが、どうもお騒がせしました。

けっこうハラハラして見守ってることは事実なんですがね。最近のマスコミ相手の舌禍事件とか見ると…
メタ坊
2011/07/07 12:07
ニティヤに相当なストレスが溜まっていることは確かなようですね。
 
カーヴェリ
2011/07/07 22:10

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