カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vinayaka Geleyara Balaga】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/08/10 20:42   >>

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 先週末は観たい映画がない(あっても、物理的理由で観られない)という苦しい週末だった。こんな時はボリウッドの話題作を観ておいてもいいのだが、それならこのブログに感想をアップしないので、やっぱり南インド映画となる。それでカンナダ映画の【Kirataka】にしようかと思ったが、これはすでに観たタミル映画のリメイクなので、それよりかはオリジナルかなぁと、結局、特に注目していなかった【Vinayaka Geleyara Balaga】を観ることにした。
 監督はV・ナーゲンドラ・プラサードで、そもそもは映画音楽の作詞をしていた人らしい。主演はヴィジャヤ・ラーガヴェンドラだが、特にスターのいない低予算映画のようである。
 題名の「Vinayaka Geleyara Balaga」は「ヴィナーヤカ仲良しグループ」といった意味で、この場合の「ヴィナーヤカ」は「ガネーシャ神」のこと。

 ついでなので、カンナダ映画界の現況を記しておくと、今年のサンダルウッドは比較的グッドビジネスとなっているようである。特に傑作というのは現れておらず、相変わらずリメイクも多いのだが、ヒット作は順調に出ている。まず、昨年末に公開された【Super】と【Mylari】は今年序盤もロングランを続けたし、ダルシャン主演の【Boss】と【Prince】、サプライズヒットの【Olave Mandara】、タミル映画からのリメイクである【Kempe Gowda】、【Hudugaru】、【Kirataka】、ラミャ絡みの【Sanju Weds Geetha】【Johny Mera Naam】などが好成績を記録した。上半期を越した時点でのヒット作8本は近年のサンダルウッドでは珍しいだろう。

【Vinayaka Geleyara Balaga】 (2011 : Kannada)
物語・脚本・監督 : V. Nagendra Prasad
出演 : Vijaya Raghavendra, Meghana Gaonkar, Naveen Krishna, Petrol Prasanna, Kuri Pratap, Umesh Punga, Chi. Gurudutt, Shobharaj, Rangayana Raghu
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Safety Prakash
制作 : V. Nagendra Prasad, Pampapathy

《あらすじ》
 時は1985年、所はバンガロールのプラカーシュナガル。ヴィジャイ(Vijaya Raghavendra)、マンジャ(Naveen Krishna)、シッダ(Petrol Prasanna)、ランガ(Kuri Pratap)、ウメーシュ(Umesh Punga)の5人組は、仕事もなく、無為な日々を送っていたが、気の良い若者たちであった。
 ヴィナーヤカ祭の日が近付き、5人組は自分たちで祭りを執り行おうと、町内で集金活動を始める。ところが、ヤクザのボス、レーザー・ラージャ(Chi. Gurudutt)もこの祭りを行おうと、手下に集金をさせていた。ラージャは来る公団の役員選挙を有利に進めるために、売名工作としてヴィナーヤカ祭を主催しようとしていたわけである。2グループの間で諍いが起き、ラージャはヴィジャイら5人を脅迫する。
 激怒したヴィジャイらは策を練る。彼らは、同じ町内の土建屋として財を成していたバサッパ(Rangayana Raghu)を誘拐し、それをさもラージャが誘拐したかのように見せかける。バサッパの妻は警察に夫がラージャに誘拐されたと訴える。日頃からラージャの行状を苦々しく思っていた警察は、これ幸いとラージャを逮捕し、ブタ箱に放り込む。
 ところで、ヴィジャイは近所に住むカーヴィヤ(Meghana Gaonkar)と恋仲だった。ある晩、二人がいちゃついているところをカーヴィヤの父(Shobharaj)に目撃される。カーヴィヤの父はヴィジャイの父に抗議する。非を悟ったヴィジャイはカーヴィヤとの交際をきっぱり絶つが、この態度に感銘を受けたカーヴィヤの父は、逆に二人の交際を認める。
 いよいよヴィナーヤカ祭の日となり、祭りは5人組の主導の下、賑やかに行われる。ところが、バサッパ誘拐事件にはラージャがまったく関与していないことが明らかとなり、祭りの最終日に彼は釈放される。ラージャは5人組に復讐するために、祭りの行列に潜り込む、、、。

   *    *    *    *

 まったく期待せずに観たが、予想外に気持ちの良い映画だった。小品ながら、実に良い内容を持っている。

 まず興味深いのは、これが1980年代の無為徒食の若者たちを描いた物語であること。と来れば、タミル映画の【Subramaniyapuram】(08)が思い起こされるが、実際、本作を一見すれば、【Subramaniyapuram】にインスピレーションを受けていることが分かる。といっても、ストーリーもテーマも全然違っているので、リメイク、パクリの類ではない。ナーゲンドラ・プラサード監督の話によれば、当時の実際に起きた出来事を題材にしているらしい。
 傾向として、カンナダ映画界も最近のタミル映画界のトレンド、特に「田舎物」の影響を蒙りつつあるようだ。今年のヒット作【Hudugaru】と【Kirataka】はそれぞれ【Naadodigal】(09)と【Kalavaani】(10)のリメイクだし、オリジナル作品でも【Dushta】が話題になった。もう1作、題名は分からないのだが、タミル田舎映画風のカンナダ作品も待機中だし、【Mynaa】のリメイクもガネーシュ主演で進行中だ。
 もっとも、【Subramaniyapuram】はマドゥライ郊外の村が舞台だったので「田舎物」になるが、本作【Vinayaka Geleyara Balaga】の舞台はバンガロールなので、田舎物とは言えない。しかし、現代の都市から見れば、空間的隔たりと時間的隔たりは共に似たようなノスタルジックな感興を催すようで、25年前のバンガロールを描いた本作も田舎めいた味わいが強い。

 物語の舞台として設定されている「プラカーシュナガル(Prakash Nagar)」は実在する地名で、バンガロール・シティー・ジャンクション駅の北西に位置する町だ。映画中では鄙びた長屋町風に描かれていたが、現在のプラカーシュナガルはさすがにそんなことはない。ロケ地がどこか知らないが、25年前の風情を出すために、どこかの田舎町で撮影が行われたのだろう。
 プラカーシュナガルはカンナダ映画界の中心地とも言うべき「マジェスティック地区」からも近く、そのせいか、映画中の登場人物は非常な映画好き、特にラージクマール、ヴィシュヌヴァルダン、シャンカル・ナーグ、アンバリーシュのファンとして描かれ、彼らに対するオマージュも随所にあった。参考に、プラカーシュナガルには「Dr Rajkumar Road」という通りもある。

 それで、本作の意図は非常にはっきりしているように思われた。それは「ラージクマールの時代に帰れ」みたいなことだったように思う。映画の冒頭ではっきりと「インターネットも携帯電話もなかった時代のバンガロールの物語」と宣言され、バンガロールがインドのシリコンバレーとして近代化する以前の、ある意味「古き良き時代」の人々の様子が理想化されて描かれている。
 例えば、主人公の5人組は、役立たずのバカ者なのだが、道を踏み外すようなことはせず、折々の宗教行事を執り行うことに情熱を傾ける青年たちとして描かれている。彼らはヤクザのレーザー・ラージャから攻撃を受けるが、仕返しや復讐はしない。5人組はラージャに対抗するために「土建屋バサッパの誘拐」という違法行為に訴えるのだが、誘拐された当のバサッパは怒るどころか、かえって5人組の意図に感銘を受け、無職の彼らに職を与えるというオチになっていた。(悪役のレーザー・ラージャさえ、近年の凶暴な都市型マフィアではなく、どこかのんびりとした親分として描かれている。)
 主人公のヴィジャイとカーヴィヤのロマンス展開にもナーゲンドラ監督の意図が汲み取れる。ヴィジャイは、カーヴィヤと交際していることが彼女の父にばれたとき、父の願いを聞き入れて、彼女との交際を絶つ。カーヴィヤのほうはヴィジャイに駆け落ちを迫るのだが、逆にヴィジャイが彼女を説得する。この経緯を見たカーヴィヤの父がヴィジャイを認める、という展開になっていた。(ヴィジャイとカーヴィヤの意思疎通の手段がEメールや電話ではなく、「炙り出しのラブレター」というのが良い。)
 この5人組(特にヴィジャイ)の在り方というのは、都市に住む現代っ子からすれば間の抜けたもののように映るかもしれないが、実はこんなのがインドの庶民層の典型的なモラルだったのではないかと、私は興味深く鑑賞した。

◆ 演技者たち
 5人組の男たちのうち、リーダー格のヴィジャイを演じたのがヴィジャヤ・ラーガヴェンドラだが、好演している。彼は一応ラージクマール家の親類で、シヴァラージクマールやプニート・ラージクマールのいとこに当たり、子役時代に国家映画賞も受賞しているほどなのだが、成人してからの俳優としての格はやや落ちるようだ。
 他には、マンジャ役のナヴィーン・クリシュナが目立っていたが、彼は主役もやる実力若手俳優なので、こんなところで「グループの1人」をやっている場合ではない。ちなみに、彼は名脇役俳優シュリーニワーサ・ムールティの息子である。
 (写真下:5人組。真ん中がVijaya Raghavendraで、右端がNaveen Krishna。)

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 ヒロインのカーヴィヤを演じたのはMeghana Gaonkarという人で、まったく知らなかったし、詳細は何も知らない。女優としても何ともコメントしにくいタイプで、ここで華のある女優を使っていれば、もっと観客動員数が伸びただろうにと思う。ただ、最低限のことはこなしていた。
 (写真下:Vijaya Raghavendraと。)

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 脇役陣では、まずカーヴィヤの父を演じたショバラージが良かった。彼は、ケーララのスレーシュ・ゴーピほどではないが、警官の役をやることが多く、批評家から「毎週金曜日に制服を着て現れる男」と揶揄されているのだが、本作では常と違ったコミカルな役柄で面白かった。
 悪漢レーザー・ラージャ役のグルダット、土建屋バサッパ役のランガーヤナ・ラグもOK。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はハリクリシュナの担当で、歌詞はナーゲンドラ監督自身が書いている。
 音楽シーンは特に褒め上げる部分はなく、どちらかと言うと、しょぼい。それが本作の満足度を落とす原因となっている。しかし、BGMは良く、時代物の長閑な雰囲気をうまく醸し出していた。

 撮影は良い。
 テーマとなっているヴィナーヤカ(ガネーシャ)祭の再現も本作の見どころだ。

 劇中劇の形でラージクマールの映画の上映シーンがあったが、作品名は【Sampathige Savaal】(74)。ヒロイン、マンジュラの音楽シーンでは劇場内はかなり湧いていた。

◆ 結語
 【Vinayaka Geleyara Balaga】は、伝統的・保守的なインド的モラルがまるでサンプルのように詰まった、小品ながら興味深い内容を持つ作品。特にお勧めはしないが、私は好きだ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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