カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Rowthiram】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2011/08/17 22:26   >>

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 先週末も特にそそられる映画がなかった。まったく、独立記念日がらみの連休だというのに、南印4州の映画産業界もバカンスかい!と、憤怒のあまりディズニーの【くまのプーさん】でも観てやろうかと思ったが、気を取り直してやはり南インド映画にした。
 ジーヴァ主演のタミル映画【Rowthiram】にするか、ラーム主演のテルグ映画【Kandireega】にするかで迷ったが、ヒロインが前者はシュリヤー・サランで後者がハンシカ・モートワーニさん。と来れば、私的には勝負あったで、【Rowthiram】に決めた。
 主演のジーヴァは、有力プロデューサー、R・B・チャウダリの息子ということで、謂わば放っておいても映画出演の機会がもらえるという気楽な立場であり、「ボックスオフィスの道楽者」的な存在だったのだが、不思議なことに、ここ2,3年ヒット作に恵まれ、「ボックスオフィスの優等生」に変わりつつある。前作の【Ko】がバカ当たりしたせいで、本作も注目作となっていた。
 題名の「Rowthiram」は「憤怒」といった意味らしい。

【Rowthiram】 (2011 : Tamil)
物語・監督 : Gokul
出演 : Jeeva, Shriya Saran, Jayaprakash, Lakshmi Ramakrishnan, Babu Antony, Ganesh Acharya, Srinath, Sathyan Sivakumar, Rajendran, Prakash Raj(特別出演)
音楽 : Prakash Nikki
撮影 : N. Shanmugasundaram
編集 : Mathan Gundeva
制作 : R.B. Choudary

《あらすじ》
 8歳のシヴァ少年は祖父(Prakash Raj)より武術を習い、悪や不正には体を張ってでも立ち向かうよう教導される。
 それから20年、シヴァ(Jeeva)は父母(Jayaprakash & Lakshmi Ramakrishnan)、兄(Srinath)、妹とチェンナイに暮らしていた。祖父は他界していたが、シヴァは祖父の精神を受け継ぎ、街の不良分子らとしょっちゅう衝突していた。父はこうしたシヴァの行動を嫌い、なんとか平穏に暮らしてほしいと願っていた。
 プリヤ(Shriya Saran)は法律大学の学生で、父(Babu Antony)はチェンナイ警察の警視監だった。彼女の大学には不良グループがはびこり、女子学生に嫌がらせを働いていたが、野放し状態だった。だがある時、プリヤはシヴァがこの不良グループを叩きのめしているのを目撃し、彼に一目惚れする。彼女は確信犯的にシヴァに接近し、その結果、シヴァもプリヤを愛するようになる。
 シヴァに叩きのめされた不良の一人が、ガウリ率いるギャングにシヴァを殺すよう依頼する。しかし、ボスのガウリが服役中で、出所間近だったため、ここで問題を起こすことを嫌った一味はこの依頼を取り合わない。だが、後ほど彼らはシヴァ殺害の計画を実行し、失敗に終わる。
 シヴァの妹の婚約式が行われようとしているとき、シヴァは若い女が悪漢に誘拐されそうになっているのを目撃し、彼らを叩きのめす。だが悪いことに、この暴力沙汰が原因で、妹の縁談が保留になってしまう。
 シヴァが知らずに叩きのめした悪漢とは、実は出所したギャングのボス、ガウリだった。ガウリとその一味は本格的にシヴァを消そうと動き出す。
 ガウリのライバルにキットゥ(Ganesh Acharya)というヤクザがいた。キットゥはシヴァの腕っ節を知っていたが、シヴァとガウリの不穏な関係を知るに及んで、シヴァをサポートしようとする。キットゥはシヴァの家まで出向くが、その門前でガウリに惨殺されてしまう。
 一連の出来事を嫌ったシヴァの家族は、シヴァには内緒で妹の結婚式を執り行う。ショックを受けたシヴァは家を出て行くことにする。だが、プリヤはそんなシヴァに付き添い、二人は結婚する。束の間の平和な時が流れるが、その裏でガウリとその一味は着々とシヴァへの復讐計画を進めていた、、、。

   *    *    *    *

 完全な失敗作。というより、勘違い作。
 監督のゴークルという人は新人らしい。近ごろのタミル映画の環境では、ありきたりなマサラ映画を作ろうものなら、批評家からもファンからもそっぽを向かれる傾向にあり、そんな中で新人監督が違ったことをやろうと意気込むのは悪いことではないが、大衆娯楽映画には大衆娯楽映画なりの「分際」というものがあり、それを弁えず、俄かに「メッセージ志向」の映画を気取っても、観客は面食らうばかりだ。

 面白いことに、上のあらすじを読んで分かるとおり、本作品の道具立ては伝統的なタミル娯楽アクション映画のフォーマットに完全に則っている。にもかかわらず、本質的な点で崩しをかけており、観終わった後の印象は大きく異なっている。
 まず、テンポが超スローだった。アクション映画ならもっとスピーディーに展開するのが普通だが、ゴークル監督はじっくりとタメを作っている。しかし、それが裏目に出て、退屈極まりない。これだけスローテンポでも緊張の途切れない映画が撮れる監督は、現在のタミル映画界ではミシュキンかガウタム・メーナンぐらいだろう。
 次に、結末が常とまったく異なっている。ヒーローが復讐なり何なりを遂げて、スカッとハッピーエンド、というわけではなく、本作は悲劇的結末、しかもどよ〜んと観客に「メッセージ(=チェンナイという都市の救いがたい一面)」を投げ掛ける形で終わっている。しかし、本作を観に来た客の何割が「考えさせられる」映画を期待していただろう?
 おそらくゴークル監督は、伝統的な娯楽映画のフォーマットを取りながらも、まったく違ったアウトプットが引き出せるということを、実験的に示したかったのだろうと推測されるが、残念ながら失敗に終わっている。

 近年デビューした新人監督に共通のことだが、ゴークル監督も映像やアクション・シーン等の技術的な部分は実に上手くこなしている。脚本はよく考えられた部分もあり、決して手抜きではないことが窺えるが、混乱して分かりにくい部分も多かった。特に、悪漢の関係(ガウリの一派とそれをサポートする政治家・警官、及びそれに敵対するキットゥの一派との関係)が分かりにくく、後半の筋が辿りにくかった。

◆ 演技者たち
 ジーヴァの「怒れる若者」役というのもぞっとしないが、無難にこなしていたと言っていいだろう。演技の評価とは関係ないが、主人公のシヴァはカラリパヤットの使い手と設定されていたはずなのに、格闘シーンでは特にそれらしいことをやっていなかったのは勿体なかった。

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 ヒロインのシュリヤー・サランは良かった。まさにシュリヤーらしい活発な役柄設定と演出だったが、こんな彼女は何度見ても楽しい。私的には本作最大の見どころだった。彼女もアイドルとしてとうの立つ年齢となってきたが、まだまだ行けると思った。
 (写真下:なぜか本作の彼女を見て、「昭和」の文字が脳裏に浮かんだ。)

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 脇役陣は、、、主人公の導師となった祖父役のプラカーシュ・ラージは、出番は最初の5分だけで、後は壁に飾られた「遺影」のみでの出演だった。それでも不思議と目立っていた。
 ヒロインの父、警官役のバーブ・アントニーは、いかついガタイと鋭角的な顔の輪郭から、私は「バーブ・アントニオ猪木」と呼んでいるのだが、その個性に見合った使われ方をしていなかったのが残念だ。
 もう1人、ヤクザのキットゥ役はガネーシュ・アーチャーリヤ。この人はボリウッドの人気振付師で、俳優それに映画監督の経験もあるのだが、そんな彼がタミル映画に出演するというのも話題の一つだった。堂々たる体躯が見た目に面白く、印象的なダンス・シーンも1曲あったものの、しかし結果的には無駄な使われ方だった。
 (写真下:Ganesh Acharya氏近影。NTRジュニアは「踊るデブ」で有名になったが、この人の場合は「デブ」では済まない、、、。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はプラカーシュ・ニッキーという人の担当。聞かない名前だと思ったが、やはり新人であるようだ。曲的には特に印象に残るものでもなかった。

◆ 結語
 【Rowthiram】はチェンナイに巣食う悪に対する主人公の「憤怒」を描いた映画だが、残念なことに、本作を観た観客が別の意味で「怒り」を覚える作品となってしまったようだ。新人のゴークル監督には猛省を促したい。

・満足度 : 1.5 / 5
 

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【Kaashmora】 (Tamil)
 禿頭で甲冑姿のカールティと、ド迫力な王女姿のナヤンさんのポスターを見て、無条件に観るリストに入れていたが、監督がゴークルだと知って、心配になった。ゴークル監督は【Idharkuthane Aasaipattai Balakumara】(13)が当たったようだが(未見)、その前の【Rowthiram】(11)は私的にアカン作品だった。 ...続きを見る
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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
前略、ハンシカさんの映画を観たいのですが、どこでDVDが買えますか?
miyoronz@aol.com
ミヨロン
2012/01/23 11:35
インドにお住まいですか? インドにお住まいなら、大きめのディスク・ショップや大型書店のディスク・コーナーへ行けば、見つかります。
ハンシカはヒンディー、テルグ、タミル、カンナダとあちこちの言語の映画に出ているので、何かと手に入るはずです。
シンガポールやクアラルンプールのインド人街へ行けば、DVD屋があって、そこでも買えます。
日本を出ないなら、インターネットの通販サイトから注文するしかないですが、この辺の情報は私は疎いです。
 
カーヴェリ
2012/01/24 01:32
みよろん様 テルグ映画ならmaaTVでかなりみられますよ。これはハンシカさんでてます(たぶん・・・) http://www.youtube.com/watch?v=xxX41UIYWYA&feature=plcp&context=C3dc44acUDOEgsToPDskKNKKtMCIou41lSWKkLcwxj 
漁師N
2012/01/25 02:05

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