カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Paramaathma】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/10/19 21:45   >>

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 ヨーガラージ・バット監督の待望の新作は、なんと主演にプニート・ラージクマールを擁した【Paramaathma】。同監督は【Mungaru Male】(06)以降ガネーシュかディガントを主役に起用し、今どきの等身大の若者像を提供してきたのだが、本作では‘Power Star’の冠タイトルを戴くサンダルウッドきっての「ヒーロー」を持ってきたということで、どんな作品となるか注目された。
 ヒロインは先日紹介した【Saarathee】でデビューしたディーパ・サンニディ。これにアインドリタ・レーがセカンド・ヒロインに付くという、ちょっと贅沢な配役。
 題名の「Paramaathma」はサンスクリット語で、インド哲学で「至高の我」などと訳される言葉。
 (写真トップ:Deepa SannidhiとPuneeth Rajkumar。)

【Paramaathma】 (2011 : Kannada)
物語・台詞 : Yogaraj Bhat
脚本 : Yogaraj Bhat, Suri
出演 : Puneeth Rajkumar, Deepa Sannidhi, Aindrita Ray, Anant Nag, Avinash, Rangayana Raghu, Dattanna, Ramya Barna, Raju Thalikote, Satish
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Santosh Rai Pathaje
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Jayanna, Bhogendra

《あらすじ》
 パラム(パラマートマ:Puneeth Rajkumar)は風変わりな若者。彼は大学の理学部を首席で出たものの、修士課程では試験に落ちる。その後、心の赴くままに、エヴェレストを登頂したり、ムンバイで証券取引業に携わったり、風力発電事業に関与したり、中国でカンフーを習ったりと、様々なことに挑戦する。しかし、それぞれにおいて目覚しい結果を残しつつも、彼は心満たされることなく、大学院に戻る。パラムの父ジャヤント(Anant Nag)は引退した心臓内科医で、パラムに「心(パラマートマ)の哲学」を教えていた。
 パラムは大学院で多くの友人を得るが、その1人、サンヴィ(Aindrita Ray)はパラムに惚れていた。しかし、パラムはそれに応えない。また、パヴィトラ(Ramya Barna)も密かにパラムに想いを寄せていた。
 ある日、彼らが映画館で映画を観ていたとき、爆弾騒ぎが起きる。観客は全員避難するが、居眠りをしていたパラムは逃げ遅れる。そこにもう1人居眠りしていた女性がいたため、パラムは彼女を抱きかかえて劇場を出る。その様子はニュースでドラマティックに放送されてしまい、2人はすっかり時の人となる。
 その女性はディーパ(Deepa Sannidhi)という名で、音楽家だった。パラムはディーパに惚れ、接近を試みる。しかし、ディーパの父シュリーニワース(Avinash)は、映画館に端を発した騒ぎを嫌って、ディーパを祖父のいるティールタハッリへと行かせる。それを知ったパラムも偶然を装ってティールタハッリまで赴く。
 ディーパの祖父アッパンナ(Dattanna)は村の名士だった。また、叔父のアンナイヤ(Rangayana Raghu)は碌でなしで、旧家に残る骨董などを売りさばこうとしていたため、しょっちゅうアッパンナと衝突していた。パラムはこの2人に近づき、懇意となる。
 パラムとディーパが川でボートに乗っていたとき、そのまま流されてしまい、やむを得ず一夜を過ごす。この時、ディーパもパラムに惹かれるようになる。
 翌日は村の祭りの日だった。ディーパは「泥競争」に出場したいと思い、祖父に申し出るが、アッパンナは夕べ無断外泊した件で彼女に平手打ちを食らわす。パラムはこの時ディーパの側に立ち、男らしさを示したため、祖父たちも二人の仲を認める。
 パラムとディーパの縁談がまとまろうとしていたときに、サンヴィらがパラムに会いにこの村にやって来る。ディーパは、サンヴィとパラムの経緯を知り、突然彼との結婚を止めると宣言する。
 しかし、バンガロールに戻ったディーパは後悔し、パラムを探す。そして、二人は結局結婚し、ディーパは子供を出産するのであるが、、、。

   *    *    *    *

 題名の「Paramaathma」は大げさな言葉だが、映画自体は実に軽く、フレッシュなロマンティック・コメディーだった。「パラマートマ」という言葉はウパニシャッド哲学では「至高の我」、「最高の実在」、「究極の真理」、「神」などの意味で使われているようだが、本作では「純粋な心」、「自然に逆らわない心」、「従うべき内面の声」といった意味だろうと思われる。

 ヨーガラージ・バット監督は【Mungaru Male】以降、終始一貫して若者の心に目を向け、彼らの共感を呼ぶような作品を撮り続けている。本作も、プニートのような大物スターを起用していても、ぴったりそうだった。しかし、主人公の人物像には若干変化があるようだ。【Mungaru Male】は別として、【Gaalipata】(08)、【Manasaare】(09)、【Pancharangi】(10)の3作では主人公はすべて「落ちこぼれ」、「ダメ人間」として登場する。ところが、本作のパラム(Puneeth Rajkumar)は大学を首席で出るほどの有能な人物なのに、自ら意志して「変わり者」、「例外者」への進路を取り、心の命じるままに、エヴェレスト登山やカンフーの修練など、「インド人の誰もが体験するわけではないこと」に挑戦する。
 これで思い出したのは、先日、某南インド女優と話していたときに、彼女がアメリカなどに比べた場合のインドのダメな点として、「親が子に期待するのは医者かエンジニアになることで、子は選択肢が2つしかない」と嘆いていたことだ。これは裏を返せば、先進的な層の中には価値観が多様化し、可能性が増えることを切望する者がいるということを意味し、それが映画に反映されるのは自然なことだろう。本作のパラムもそんな「自分らしい生き方を模索する」人物で、テルグ映画【Orange】(10)の主人公もそんな感じだった。

 しかし、数々のことに挑戦し、成果を上げつつも、パラムは納得できない。そんな時にディーパと出会い、彼女に「魂の落ち着き場所」を見出す。実はディーパは我がままで、感情の起伏が激しく、付き合いにくい性格なのだが、パラムはめげない。しかも、結婚・出産の後に悲劇的な別離が訪れるのだが、それでもパラムは後悔しない。なんとなれば、ディーパとの生活はパラムが自身の最も内奥の声(パラマートマ)に従ったものであり、これは「摂理」に従い、運命を受け入れるのと同義であり、後悔は発生しないものだからである。
 以上、「多くの可能性(選択肢)を模索する若者」と「愛において後悔しない」の2点で、ヨーガラージ・バット監督は今の若者たちに一定のメッセージを与えているように思われた。

 映画の作りとしては、ヨーガラージ・バット監督の従来の作品を踏襲したものだ。日常の生活世界から離れた異郷の地でのロマンスで、地方の自然風物をうまく織り込みながら抒情的な作品に仕立てている。映画の主体となっているのは饒舌なセリフのやり取りで、ストーリーらしいストーリーはない。しかし、個々の場面が活き活きとしているので、退屈な感じはない。クライマックスがこれまたヨーガラージ・バットらしく、あっけないものだったが、ここはもっと工夫がほしかった。

◆ 演技者たち
 主演のプニートは、これまでのヒーロー・イメージとはまったく違って、インドの「新人類」とも言える若者を演じたのだが、それでも上手かった。プニートが上手いという印象は5年前にはなかったが、作品ごとに進歩し、【Prithvi】(10)あたりで完熟したようだ。
 本作は比較的繊細なロマンス物なのだが、一応、3ヶ所でアクション・シーンがあり、まったくそつなくこなしている。
 (写真下:なかなか男らしい泥まみれのアクション・シーンだった。)

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 ディーパ役のディーパ・サンニディは、「もしや」と期待したとおり、前作【Saarathee】とはまるで別人のように魅力的に見えた。オーバーアクティング気味だったが、非常に良い雰囲気を出している。彼女の個性的なルックスが役柄に合っていたのも幸いしたようだ。それにしてもヨーガラージ・バット監督は女優の使い方が実に上手い。
 (写真下:もしかして、サンダルウッドの新アイドル誕生か?)

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 アインドリタ・レーは、本作ではヒロインではなく、終始振られ役に徹していた。非常に効いている。まぁ、アンディーはヨーガラージ・バット作品ではすでに【Manasaare】で成功を収めているので、今回は心置きなく脇役に回れたということだろう。(下)

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 アナント・ナーグ、アヴィナーシュ、ダッタンナ、ランガーヤナ・ラグらの脇役陣も活きている。【Pancharangi】にも出ていたラミャ・ヴァルナさんのみが勿体ない使われ方だった。

◆ 音楽・撮影・その他
 ヨーガラージ・バット監督作品の音楽といえば、マノー・ムールティが思い浮かぶが、今回はハリクリシュナの担当。彼は【Gaalipata】でも担当していたが、残念ながら、本作は【Gaalipata】ほどの面白みはない。しかし、BGMは良かった。

 撮影は良い。
 物語中、ヒロインの故郷はティールタハッリと設定されていたように思うが、実際のロケ地はどこか分からない(WikipediaにはSakleshpura、Udupi、Manipalの地名が挙がっているが)。どこであれ、毎度美しく撮られている。

 面白かったのは、主人公パラムの母は故人と設定されており、顔写真のみ出て来るが、それがベテラン女優サリタの写真だった。どうしてサリタなのかは不明だが、おそらくプニートが子役時代にサリタと何度か共演していたからだろうと思われる。

◆ 結語
 【Paramaathma】は、プニート・ラージクマールという大物スターを起用した影響で、ヨーガラージ・バット監督は作風を変えてくるかと予想されたが、そうではなかった。ストーリー・ラインが弱く、大きな満足感は得られないが、やはり従来のヨーガラージ・バット監督作品と同様、短編文学を味わうような感覚で鑑賞すれば、それなりに楽しめる。私的にはちょっとお勧め。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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