カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Oh My Friend】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/11/21 21:42   >>

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 シッダールタの新作はテルグ映画の【Oh My Friend】。
 彼の前作【180】(11)はテルグ語とタミル語の2言語版が製作されたが、今回は純粋にテルグ映画。(といっても、シッダをはじめ、2人のヒロインも音楽監督もテルグ人じゃないので、純粋なテルグ映画と言うには抵抗があるが。)
 監督はヴェーヌ・シュリーラームという新人。やはり今回も新人で来たか、シッダくん!という感じだが、制作はしっかりとディル・ラージュ。シッダ&ディル・ラージュといえば、名作【Bommarillu】(06)があるだけに、今回もフレッシュな作品を期待したい。
 ヒロインは2人で、シュルティ・ハーサンと「なんや、お前か〜」のハンシカさん。シュルティとシッダは早くも2度目の共演となる(【Anaganaga O Dheerudu】参照)。

【Oh My Friend】 (2011 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Venu Sriram
出演 : Siddharth, Shruti Haasan, Hansika Motwani, Navadeep, Tanikella Bharani, Lakshmi Ramakrishnan, Vinaya Prasad, Sana, Ali, Ragu Babu
音楽 : Rahul Raj
撮影 : Vijay C. Chakravarthy
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Dil Raju

《あらすじ》
 チャンドゥ(Siddharth)とシリ(Shruti Haasan)は、性別は違えど、子供の頃からの大の親友。チャンドゥはMBAの勉強のためにムンバイへ行ったはずだが、学業は諦め、ギタリストとなってハイダラーバードに戻って来る。息子には堅気の仕事をしてほしいと願っていたチャンドゥの父(Tanikella Bharani)はいたく失望するが、シリが間に入り、チャンドゥがミュージシャンとして成功するまで責任を持つ、と父をなだめる。
 ある日、チャンドゥは高校時代のクラスメート、リトゥ(Hansika Motwani)と再会し、惚れてしまう。また、シリも、インターネットで知り合ったアメリカ在住のウデイ(Navadeep)を恋人だと認識するようになる。
 チャンドゥはリトゥに接近する。初めはチャンドゥとシリが恋人同士だと思っていたリトゥは、二人の関係が「友達」であることを知り、チャンドゥの愛を受け入れる。シリは、チャンドゥとリトゥの仲が進展するにつれ、自分が除け者扱いされているように感じ、嫉妬心を抱く。
 シリはチェンナイの古典ダンス教室に参加するため、チャンドゥには告げずに、家を出る。それを知ったチャンドゥはバススタンドへと急ぎ、彼女をつかまえる。二人はその場で友情を再確認するが、ちょうどそこへアメリカ帰りのウデイが現れる。
 シリはチェンナイ行きを止め、親たちにウデイを紹介する。ほどなくシリとウデイの婚約式が行われる。
 チャンドゥはケーララ州のコーチンで行われる音楽コンテストに出場することになっていた。それにはシリもサポートする約束だったので、チャンドゥ、シリ、リトゥ、ウデイの4人でコーチンへ行く。ところが、現地でチャンドゥとシリの仲があまりにも睦まじいので、リトゥとウデイは不快感を抱く。
 コンテストでは見事チャンドゥのバンドが優勝する。そのニュースはハイダラーバードのチャンドゥの父にも届く。父はチャンドゥを認め、チャンドゥに買ってもらったものの、乗ることを拒否していたバイクに初めて跨る。その知らせはチャンドゥとシリの耳にも届き、二人は大喜びする。しかし、その二人の様子を見たウデイとリトゥは遂に爆発し、チャンドゥとシリは「友達」ではなく、「恋人そのものだ」と難詰する、、、。

   *    *    *    *

 私は仕事柄、インドのお若い連中が人間関係(主に恋愛や結婚)についてああだこうだと考察している映画は注目するようにしているし、けっこう好んで観てもいるのだが、今回は苦しいと思った。まずストーリーがつまらないし、人物関係の設定が実験的すぎて、リアリティーがないように思えた。

 強い友情で結ばれた男女(チャンドゥとシリ)がいて、それぞれに恋人/婚約者ができた後に、その友情がそれぞれの恋人/婚約者との関係を発展させる上で障害になる、という物語で、「友情と恋愛/結婚は両立するか?」というのがテーマだったように思う。
 こういう「友情 vs 恋愛/結婚」というテーマの映画は、友情は同性同士(たいてい男同士)のもので、その片方(あるいは両方)に恋人なり婚約者なりができて、さて友情と愛とどちらが大事?と来るものだが、本作はその友情が「異性間」というのが特殊だし、ややこしい話になっている原因だと思った。

 間違っているかもしれないが、私の観察によると、インド人は人と人を結び付ける強い力、つまり「愛」については、「決定論」的な観念を持っているように思われる。「愛」の筆頭は「家族愛」で、中でも「親子愛」と「兄弟愛」が最も強く、「夫婦愛」はそれより落ちるが、夫婦というのもやはり親や親類一同、果ては神仏や天体の運行まで巻き添えにして成立した関係なので、仮に心ときめく「恋愛感情」がなかったとしても、その「愛」は決定的で強い。これらに続くのが友達同士の「友愛(友情)」で、ここまでが決定的、運命的、先天的な愛、つまり、体にある「ホクロ」のように、その人に恒久的に存在するものだ。
 それに対して、インドで甚だ旗色が悪いのは、若い男女にあるような「恋愛」や、既婚者がひっそりと(あるいは公然と)行う「不倫」であり、これらは決定的なものではなく、一過的な病気のようなもの、いわば「ニキビ」のようなものだと考えられているのではないだろうか。(もっとも、インド人の間でも「結婚は義務、不倫は愛」と言うのをよく聞くが。)

 これからすると、インド映画で「友情 vs 恋愛」という対立が問題となったとき、友情があっさり恋愛を駆逐することになるわけだが、その恋愛というのが運命的なものと認識された場合、物凄い葛藤を含んだストーリー展開、結末となることが多い。
 それで、友愛が同性間のものだった場合、結局「どっちも大切」という結論となり、男女間のものだった場合、友愛が恋愛に勝り、友達だった二人が最終的に「実は愛し合っていたんだ」ということに気付き、結婚するという結末も多い。

 ところが、本作のチャンドゥとシリの場合は、最終的に夫婦愛へと転じることはなく、あくまでも「友達である」ことを貫く結末となるのだが、ここが理解しにくい点だった。「男女間に友情は成立するか」という古くからある問いにも繋がるが、結局、チャンドゥとシリのような男女は現実的に存在するのだろうか、という疑問なのである。

 現実的に存在するか、という点では、確かに存在はしているようである。誰が見ても恋人同士にしか見えない二人なのに、「単なる友達だ」と言い張り、その通りそれぞれが親の決めた相手と結婚する、、、しかし、結婚後も二人は仲良しで、誰が見ても不倫の関係にしか見えないほどなのに、やはり「友達だ」と言い張り、実際に不倫とかしているわけでもない。そんなペアが私の知っているだけでも2組おり、それからすると、インド全体では特殊とも言えないだろう。
 ただ、私はこうしたペアが「友達だ」と言うのは偽装であり、実は恋愛感情があるのではないかと見ている。上の例も、「不倫のプラトニック版」ではないかと私は考えている。一部の進歩層を除いて、まだまだ「恋愛」が「憚りながら」の行為であるインドの社会にあって、「友情に偽装した恋愛」というのは、意識的に、あるいは無意識のうちに、当人たちが編み出した安全策なのではないかと私は考えている。

 ところが、本作でのヴェーヌ・シュリーラーム監督の主張は、若者たちのために恋愛にそうした「安全地帯」を確保してやろうという意図ではなく、徹頭徹尾「男女間の友情は他の人間関係を損ねるものではない」ということで、チャンドゥとシリも純度100パーセントの「友達」と結論付けされている。
 そうなると、チャンドゥとシリというペアが俄かに虚構性の強いものとなり、かつてマラヤーラム映画の【Ritu】(09)を観たときと同様、リアリティーのないものを感じる。こんな男女は実際にいないか、もしいたとしても、極めて例外的なケースであり、そんな二人の物語を見せることに、大衆娯楽映画として、はて、どんな意義があるのだろう?

◆ 演技者たち
 シッダールタは相変わらず上手いと思った。役柄と実年齢のギャップが気にならないこともないが、無理はしていないし、監督のコンセプトをよく理解した役作りをしている。これで映画そのものが面白ければすんなりヒット作となったものを、彼の努力が報われていない感じで気の毒だった。
 シッダといえば、実際に自分で歌も歌うし、デビュー作の【Boys】(03)でもミュージシャンの役だったし、音楽的なイメージが強いが、本作もまさにそう。インド映画の俳優にギターを持たせてもてんで様にならないことが多いが、さすがにシッダはそういうことがなく、安心して見ていられた。

 シリ役のシュルティ・ハーサンもまずまずだった。私がこれまで見た中(【Anaganaga O Dheerudu】と【7aum Arivu】)では最も普通の人間っぽい役柄だったが、可愛らしく、十分お洒落で、街娘のアイコンになりそうなイメージだった。ただ、まだ大した芝居はしていないような気がする。
 今回は古典ダンスが専門という役で、子供たちにダンスを教えているシーンもあったが、実際にシュルティというのはどの程度古典ダンスの素養があるのだろうか。
 (写真下:シッダとシュルティ。)

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 他方、ハンシカさんについては、ますます苦しいものを感じた。とにかく、目に見えて増える皮下脂肪の量に、ハンシカといえば【Desamuduru】と考えているテルグ・ボーイたちからも失望の声を聞くが、まったく同感だ(写真下)。しかし、チャンドゥとシリの関係に嫉妬し、泣き顔になるリトゥに憐憫を覚えないこともなかったが。
 それにしても、【Kandireega】といい【Velayudham】といい、「今ならセカンド・ヒロインにハンシカが付いてきます」みたいな売り込み企画はこれが最後にしてほしい。(訂正:【Kandireega】はファースト・ヒロインでした。)

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 ちなみに、本作のヒロインにはアマラ・ポールさんやニティヤ・メーナンも候補に上がっていたが、結局シュルティに決まったという顛末に対して、ニティヤが「シッダのど腐れチ○ポが!」とまでは言わなかったにせよ、立腹した話は有名。

 もう1人、ウデイ役のナワディープは、【Arya-2】(09)の再現かと思わせるような、主人公に振り回される役回りだった。まずまず効いている。
 藪から棒に出て来るアリーのコメディーは、少なくとも眠気防止に役立っていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽を担当したのはケーララ人のラーフル・ラージ。テルグ映画ではデビューとなるが、マラヤーラム映画界ではすでに一定の評価を得ている人だ。本作の音楽も良く、若者層を映画館に呼び込む原動力となるかもしれない。私的には、テーマ曲とも言える‘Oh Oh Oh My Friend’と、シッダとシュルティが歌っている‘Sri Chaitanya’が好きだ(ただし、後者はラーフル・ラージの作曲ではない)。
 ちなみに、BGMはマニ・シャルマが担当している。

◆ 結語
 【Oh My Friend】は、現地人の目にはどう映っているか分からないが、私の目には実験的な要素の勝ちすぎたコンセプト映画に見えた。音楽や主要登場人物のキャラがお洒落な感じなので、いわゆる都市部の若者を呼び込む可能性はあると思うが、ヒットは難しいだろう。私的にはさっぱりだった。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私も最近理由あってインド人の間の「友情に偽装した恋愛」に就いて考えてるので川縁さんの論の展開にはたいへん啓発されました。ありがとうございます。

しかし、以前から懸念されていたことながら、シッドゥは「演技者としては優れているのにその表現を盛る器がない」という負のスパイラルに落ち込んでるようですね。フィジカル面ではなくてセンチメントの次元でヒロイズムを表現することは、インド映画のみならずかなりハードルが高いのではないかと懸念されます。

最後に一言。ニティヤはええとこのお嬢さんなので「シッダのど腐れチ○ポが!」とはいいませんよ、きっと。いや、個人的にはそう信じたい…
メタ坊
2011/11/22 00:31
>センチメントの次元でヒロイズムを表現することは、インド映画のみならずかなりハードルが高いのではないかと懸念されます。

なるほど、確かに「シッダ映画」は負のスパイラルに落ち込んでるように見えますね。

>ニティヤはええとこのお嬢さんなので「 ・・・ 」とはいいませんよ

そりゃ、言わないでしょう!
もしニティヤがこんなこと言ったとしたら、私、歓喜のあまり、彼女にリーラ・パレスのディナー券・5回分、プレゼントしちゃいますよ。
 
カーヴェリ
2011/11/22 09:55

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