カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sri Rama Rajyam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2011/11/26 20:38   >>

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 南インド映画鑑賞の楽しさの一つに、やはり「神様映画」がある。「神様映画を観ずして南インド映画を語るなかれ」とは誰も言っていないと思うが、良い神様映画に接した後などには、どこからともなくこういう声が耳に響く。
 ところが、近ごろでは南インドでも神様物が現れることは稀になり、テルグとカンナダで細々と作られ、タミルとマラヤーラムではほとんど出なくなっているのではないだろうか。結局はDVD等で過去の名作を楽しむということになる。
 神様物が比較的盛んに作られて来たといえばテルグ映画界になるが、そのテルグでさえ、かつてほどの熱心さはない。ところが、ここにうれしい作品が登場してくれた。バーラクリシュナ主演の【Sri Rama Rajyam】である。

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 本作は『ラーマーヤナ』の第7巻「ウッタラ・カーンダ(後の巻)」を基にした物語で、いわば本格的な「ミソロジー映画」。本格的な神話物が作られるのも久々のことではないだろうか。3年前にカンナダで【Prachanda Ravana】という「ラーマーヤナ物」が公開されたが、低予算の小品で、まったく顧みられなかった。しかし、本作【Sri Rama Rajyam】のほうは、予算が3億5千万ルピーで、キャスト・スタッフも一線級と、気合いの入り方が違う。それもそのはず、テルグ映画史上の名作とされるNTR主演の【Lava Kusha】(63)のリメイクとあっては、恥ずかしいこともできないだろう。バーラクリシュナがお父ちゃんにどれだけ迫れるかも注目だ。
 監督のバープは、もう80歳に手が届こうかという大ベテラン。どんな業績のある方かまったく知らないが、この年齢だけで格調高い神話映画を期待していいだろう。
 シーター妃を演じるのはナヤンターラだが、こちらにも注目したい。
 題名の「Sri Rama Rajyam」は「ラーマ様の御国」、「ラーマ様の御代」といった意味。

【Sri Rama Rajyam】 (2011 : Telugu)
脚本 : Bapu, Mullapudi Venkata Ramana
監督 : Bapu
出演 : Nandamuri Balakrishna, Nayantara, Akkineni Nageswara Rao, Srikanth, K.R. Vijaya, Roja, Vindu Dara Singh, Murali Mohan, Sameer, Sudha, Siva Parvathy, Sana, Brahmanandam, Jhansi, Hema, その他
音楽 : Ilayaraja
撮影 : P.R.K. Raju
編集 : G.G. Krishna Rao
制作 : Yalamanchili Saibabu

《あらすじ》
 ランカー島でラーヴァナよりシーター(Nayantara)を奪還したラーマ(Balakrishna)は、シーター、ラクシュマナ(Srikanth)らと共にアヨーディヤに帰還する。王宮では母のカウサリヤー(K.R. Vijaya)をはじめ、一同ラーマらを歓待し、ほどなくラーマの戴冠式が行われる。やがてシーターが妊娠していることが分かり、ラーマはこの上ない幸福に包まれる。
 ところが、ラーマの耳に悪い知らせが入ってくる。アヨーディヤの住民がシーターの貞節を疑い、シーターの子は実はラーヴァナとの間の子ではないかと噂しているというのである。ラーマは苦悩の末、シーターをアヨーディヤから追放することにする。ラクシュマナはシーターを連れ出し、森の中に置き去りにする。
 付近に暮らすヴァールミーキ仙(ANR)はシーターを見つけ、自身のアシュラムに連れ帰り、彼女の身分を秘して、アシュラムの人々と共に生活させる。やがて彼女は双子の男児、ラヴァとクシャを生む。
 少年となったラヴァとクシャはヴァールミーキ仙より音楽と武術を習う。さらに二人は「ラーマとシーターの物語」も伝授され、師の指示により、アヨーディヤの人々に詠って聞かせる。
 ラヴァとクシャの朗誦はたちまちに街中の評判となり、二人はアヨーディヤの王宮でそれを披露することになる。ここでラヴァとクシャはラーマと対面する。ラーマは双子が自分の子であることを悟るが、胸に秘して表さない。他方、ラヴァとクシャは、ラーマ王がシーター妃を捨て去ったということを知り、憤慨して森のアシュラムに帰る。
 アヨーディヤでアシュヴァメータ祭が行われた際に、ラヴァとクシャは、森の中に進んで来たアヨーディヤの白馬を木に縛り付けてしまう。アヨーディヤの兵士たちは白馬を放すよう要求するが、ラヴァとクシャは応じない。両者の間で戦闘が始まり、ラヴァとクシャは自慢の弓矢で兵士たちを倒し、ラクシュマナさえ打ち負かす。この知らせを聞いたラーマは、自ら森へとやって来る。また、少年に姿を変えてシーターの世話をしていたハヌマーン(Vindu Dara Singh)も、彼女を森へと導く。
 森の中でラーマ、シーター、ラヴァ、クシャが対面する。ここでラヴァとクシャはラーマ王こそが自分の父であることを知る。非を詫びたラーマはシーターに王宮に戻るよう懇願する。だがシーターは、母である大地の女神(Roja)と共に、地中へと帰って行く。
 以来、ラーマは妻を娶らず、死後、シーターの許に赴く。

   *    *    *    *

 インド人にとって古くから愛されてきた馴染みの物語を、この現代においてバープ監督がどう再現するのか楽しみだったが、正攻法も正攻法、まさに「正調」ミソロジー映画だった。去年、50年以上も前に作られた神話映画の傑作【Mayabazar】(57)が見事にカラー化されてリバイバルされたのには驚いたが、逆にこの【Sri Rama Rajyam】を白黒化して、「50年前の作品です」と言われても、すっかり信じたと思う。さすがに特殊撮影の技術は進んでいるが、面白いことに、目に映る効果としては、昔の映画とさほど変わらないように感じられた(特に「弓矢合戦」の場面)。それほど古めかしく、驚きのない作品なのであるが、そもそも80歳近い監督にモダンな神様映画を期待するのが無理というものか。

 しかし、実は非常によくできた作品で、最終的には強く感動した。満足度も高い。何の衒いもけれんもない脚本と演出で、一見工夫がないようにも見えるが、かっちりと隙なく作られている。俳優たちの演技も音楽も高水準だ。ただし、プレ・クライマックスとクライマックスを除いて、映画全体の75パーセントは退屈だったと告白しておこう。上映時間が2時間55分と、「昔サイズ」なのも災いしているかもしれない。しかし、本作はあまりにもスローテンポだと感じたものの、オリジナルとされる【Lava Kusha】をYouTubeでチェックしてみたら、さらに悠長な感じだったので、実は十分スピードアップしていることが分かった。
 もっとも、この種の映画の場合、私のような異教徒の外国人と現地人とでは、まったく違って見えるはずで、私が退屈だと思えた部分も、現地人には味わい深く、意味あるものだったに違いない。

 私はNTR主演の【Lava Kusha】は観ていないので、どちらが良いとか、ここに変更点があるとか、全体的な印象の違いはどうかとか言うことはできない。それで、たんに【Sri Rama Rajyam】を観た限りの印象を言うと、非常に分かりやすい映画だった。分かりやすいと言うのは、バーラクリシュナ演じるラーマとナヤンターラ演じるシーターの愛情とか、それぞれの苦悩とかが感情移入しやすかった、という意味である。
 インドの二大叙事詩を比べると、私ははっきり『ラーマーヤナ』より『マハーバーラタ』のほうが好きなのであるが、インドの国内でも国外でも『ラーマーヤナ』の人気は非常に高い。で、なんでそうなのかと思うに、やっぱりその「分かりやすさ」、「親しみやすさ」があるのだろう。
 本作の分かりやすさ、とっつきやすさも、古代の叙事詩というより、ほとんど大衆芝居のレベルだったと思う。しかし、そんなふうに安心して観ていたら、クライマックスでシーターがずぶずぶと地中に潜って行くシーンに出くわし、やっぱりインド文化は深いと思った。

◆ 演技者たち
 バーラクリシュナのラーマについては、私などがとやかく言うことではない。やるべき人がラーマをやったというだけのことだ。
 お父ちゃんとの比較も私からは言えないが、バーラクリシュナのラーマも十分美しかったと言える。ただ、どうもセリフ回し、発音に俗っぽい響きを感じてしまった。
 ラーマやクリシュナといえば、ナンダムーリ・ブランドの十八番であるが、この後、誰が青塗り物をやるのか、ちょっと気にかかる。

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 シーター役のナヤンターラは非常に良かった。気合い十分、というより、「決意」といったものさえ感じた。
 彼女自身はキリスト教徒であり(正確には、元キリスト教徒と言うべきか)、プラブデーワとの熱愛(不倫)騒動もあって、貞淑なシーター役には相応しくないという非難の声もあったが、なんのなんの、本作のナヤンターラをご覧あれ!
 ちなみに、バーラクリシュナとナヤンターラといえば、【Simha】(10)で共演しているのだった。(えらく違った印象を受けるが。)

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 ANRについいては、役作りや演技がどうのというより、このお方のヴァールミーキ仙が見られただけでも良かった。(なにせ「米寿」ですさかい。)

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 シュリーカーント(ラクシュマナ役)もいつもよりハンサム度が2割増し。

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 子役も忘れてはいけない。ラヴァとクシャ役(写真下)の子たちは、悪くはなかったが、吹き替えがもろ成人女性だと分かり、違和感。ハヌマーンの変じた少年役の子はなかなか上手かった。

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 そして、私の注目点といえば、「女神様」。シーターの母、大地の女神(ブーデーヴィ)役のロージャさんにはやっぱり萌えた。

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は「マエストロ」イライヤラージャ。作品に相応しい曲が並んでいて、心地良かったが、全部で16曲もあり、多すぎるように感じた。(しかし、【Lava Kusha】のほうは37曲あったらしい。)

 美術・撮影・特殊効果は高水準。

 一応、現場レポートを記しておくと、予想されたとおり、観客の年齢層はぐっと高めだった。さすがにプラバースの映画とは客筋が違っているようだった。

◆ 結語
 【Sri Rama Rajyam】は、私の期待にはやや届かなかったが、手堅く、リッチな作りのミソロジー映画で、見応えはある。万人向けとは言えないが、ディープな南インド映画ファンなら観ておくべきだろう。

・満足度 : 3.5 / 5

(おまけ画像 : ナヤンターラ 「やっとここまで、、、辿り着いたわ。」)
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
このSRRとの関係を知らないまま、【Lava Kusha】を最近見ました。たしかこれテルグ映画初のカラー作品でもあったと思います。DVDのランタイムで3時間27分ありましたから、オリジナルはもっと長かったのかもしれません。自分がこれまで見たインド映画としては、もしかして最長のものだったかもしれないのに不思議と退屈しませんでした。主演は完全にシーター姫役のアンジャリ・デーヴィーであったように思いました。そこから類推すると、このSRRでもナヤンターラの活躍が期待できるということでしょうか。ディスクで見るのが待ちきれない一作です。
Periplo
2011/11/26 23:13
はい、ラーマが主人公でないように思いました。やはりシーター、そしてラヴァ・クシャの物語ですね。
私の目にはナヤンターラは抜群の出来に見えましたが、他の鑑賞者のご意見も伺いたいところです。
 
カーヴェリ
2011/11/27 01:43
リメイクだと知って慌てて【Lava Kusha】を観ました

ラーヴァナからの奪還以降のストーリーにも関わらず、
私も不思議なことにとても楽しく拝見しました。

本来37曲もあったのですね。
ディスクでは編集されていたかもしれませんが
非常に聴きごたえがありました。
(残念ながら歌と語り部分で字幕が出ませんでした、、、)

SRRもすべての役柄と音楽がとても楽しみです!

あいや〜
2011/11/27 10:59
Wikipediaに‘37 songs’とあったので、それをそのまま書きました。しかし、同じ項目に挙げてあるトラック番号は26番までしかなく、「?」です。(いずれにせよ、多いですが。)
 
カーヴェリ
2011/11/28 17:17

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