カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Poraali】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2011/12/09 21:39   >>

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 先週末公開の話題の南インド映画といえば、サムディラッカニ監督、サシクマール主演のタミル映画【Poraali】と、ラーム・ゴーパール・ヴァルマ制作、ナーガ・チャイタニヤ主演のテルグ映画【Bejawada】になろうかと思う。片やタミルの田舎/リアリズム物、片やRGV印のバイオレンス物と、本編を観なくても中身が予測できるようなものだったので、どちらを取るか決め手を欠いたが、レビューの評価は前者のほうが良さげだったので、【Poraali】に決めた。

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 サムディラッカニとサシクマールの共同作品には【Subramaniyapuram】(08)、【Naadodigal】(09)、【Easan】(11)があり、特に前二者は大ヒット作であるため、本作も期待の1本に挙げられていた。
 ヒロインはテルグ映画界からスワーティが起用されているが、彼女は【Subramaniyapuram】でもヒロインを務めていた。むしろ、同じくテルグ映画界からアッラリ・ナレーシュが起用されているのが意外なキャスティングだと言える。
 題名の「Poraali」は「闘士」という意味らしい。

【Poraali】 (2011 : Tamil)
物語・監督 : P. Samuthirakani
出演 : M. Sasikumar, Allari Naresh, Swathi, Niveda, Ganja Karuppu, Parotta Suri, Vasundhara, Jayaprakash, Namo Narayana, Gnanavel
音楽 : Sundar C. Babu
撮影 : S.R. Kathiir
制作 : M. Sasikumar

《あらすじ》
 クマーラン(Sasikumar)とナッラヴァン(Allari Naresh)は職を求めて村からチェンナイへと出て来る。二人は安アパートに暮らす知人のプリクッティ(Ganja Karuppu)の部屋に転がり込む。そして、ガソリンスタンドで働くことになる。
 クマーランとナッラヴァンは勤務態度が良かったため、職場でも信望を得る。また、同じ職場にタミル(Niveda)という女性スタッフが働いていたが、彼女は深刻な家族の問題を抱えていた。クマーランとナッラヴァンは彼女の問題を解決するために、ちょっとした便利屋業を始める。
 クマーランとナッラヴァンの隣室には映画のバックダンサーをしているバーラティ(Swathi)が住んでいたが、彼女はクマーランの人間性に惚れ、プロポーズする。当初、クマーランはバーラティを無視していたが、後に彼女の愛を受け入れる。また、ナッラヴァンはタミルに想いを寄せていた。
 そんなこんなの日常だったが、ある日、どこからともなくヴァンに乗った男たちがクマーランの職場へやって来る。それを見たクマーランとナッラヴァンは慌てて逃げ出す。実はこの男たちはクマーランの村からやって来た連中で、クマーランを血眼になって探していたのであった。二人は友人たちと連絡を取りながら、申し合わせて避難場所を確保する。
 ナッラヴァンはタミルの部屋にかくまってもらう。ところが、彼はそこで発作に襲われ、倒れてしまう。回復したナッラヴァンはタミルに、実は自分は精神に障害を持つ者で、精神障害者収容施設から逃げ出して来たと打ち明ける。その施設で知り合ったのがクマーランだというわけである。
 一方、クマーランはバーラティと会い、連中がどうして自分を追いかけているのか、過去の経緯を説明する、、、。

   *    *    *    *

 つかみどころのない作品だった。
 面白くないことはなかった。ただ、良い映画というのは、観終わった後に「こういう映画を観た」というはっきりした印象が残るものだが、本作の場合、「何を観たんだろう?」という感覚が残った。(もっとも、言葉が分からないせいで、作品の肝心な部分を捉え損なっている可能性はあるが。)

 田舎リアリズム物だと予想したが、実際は映画全体の7割はチェンナイが舞台だった。前半はチェンナイの下町の貧乏アパートに暮らす人々の人間模様で、後半のクマーラン(Sasikumar)とナッラヴァン(Allari Naresh)の回想シーンの中で、田舎の荒っぽい物語が展開される。結局、この二つの場面が極端に違っていて、それが1本の映画として統一感のないものと感じられた原因だと思う。

 それは主人公クマーランのキャラクター造形にも見て取れる。
 回想シーンでの田舎のクマーランは、下の写真のように、野獣のような田舎男として描かれている。

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 ところが、現在のチェンナイの場面では、洗練され、機知に富み、外見的にも小ざっぱりとした善男として登場するのである(まぁ、髭が濃いのは仕方ないとして)。このギャップがなんとも理解しがたかった。

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 作品のタッチとしては、先行の【Subramaniyapuram】、【Naadodigal】と同様、きっぱりとした正義感に貫かれた、パンチ力のあるものだった。ただ、【Subramaniyapuram】と【Naadodigal】が単純明快に「友情」、「裏切り」、「信頼」をテーマに据えていたのに対し、本作のメッセージはやや分かりにくい(弱い)。
 タミルの田舎リアリズム映画は、田舎人の力強さ、健全性を称揚するものと、その後進性、残虐さを批判するものがあると思われるが、本作では、前者を体現するのがクマーランで、後者は田舎のクマーランの家族(身内)たちということになる。そして、前者が後者を成敗するというのがプロットだが、どうもこれが善きヒーローが悪いことをした連中を打ち倒すというだけのことに終わってしまい、それならこれまでタミルやテルグでさんざ作られてきたヒーロー中心アクション映画と変わらないし、しかもそれらほどの娯楽性(リッチなダンス、アクション、コメディー)がない。この種の映画は、娯楽性で落ちる分、斬新さやメッセージ性が勝負となるのだが、どちらの面でも弱いというのが本作の苦しいところかもしれない。

◆ 演技者たち
 主人公クマーラン役のサシクマールは【Subramaniyapuram】、【Naadodigal】とほぼ同じ人物像を演じている。パフォーマンスとしては特に問題ないが、新鮮味はない。ただ、本作では前2作以上に「ヒーローとしてのサシクマール」を確立しようとする意図があるようで、それはどうかなぁ、と思った。やはりこの人は本格的な俳優というより、監督やプロデュースの合間に役者もやる、というタイプだと思う。

 ナッラヴァン役のアッラリ・ナレーシュは、おそらく【Naadodigal】のテルグ版リメイク【Shambo Shiva Shambo】(10)に出演したのが縁で、サムディラッカニ監督に再び起用されたのだろう。まったく違和感なくこのタミル作品に同化していた。
 (写真下:アッラリ・ナレーシュとガンジャ・カルップのツーショットというのも貴重かも。)

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 バーラティ役のスワーティは、それほど重要な役回りでもなかったが、一応芝居はさせてもらっていた。彼女はテルグとタミルとではまったく使われ方が違うのが面白い。

 私的にびっくりだったのはタミル役のニウェーダという女優だ。彼女は実はマラヤーラム映画【Veruthe Oru Bharya】(08)にジャヤラームの娘役として出演していた人だが、当時子役だった彼女がこんな立派な娘さんになっていたとは!(下)

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 さらに驚きだったのは、回想シーン(村の場面)に出て来るマーリ役のヴァスンダラという女優。下のスチル(左)を見て分かるとおり、強烈な田舎娘で、私はてっきり本物の田舎女を起用したのだと思っていたら、実はミスコン上がりのモデル兼女優だということが分かり、腰を抜かした。

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は【Naadodigal】と同じスンダル・C・バーブの担当。曲のコンセプトも【Naadodigal】と同じように、弦楽器を使った緊張感のあるものだった。しかし、サシクマールの演技と同様、さすがに新鮮味はなかった。

◆ 結語
 【Poraali】は【Subramaniyapuram】や【Naadodigal】とほぼ同路線の作品であるが、出来としてはそれらより落ちる。タミル人なら、それなりに面白く鑑賞できるだろうが、日本人なら、無理して観る必要もないと思われる。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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