カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Only Vishnuvardhana】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2011/12/16 21:34   >>

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 先週末公開の話題の南インド映画は、タミル映画の【Osthe】、テルグ映画の【Panjaa】、カンナダ映画の【Only Vishnuvardhana】と【Shyloo】になろうかと思う。シンブ主演の【Osthe】はヒンディー映画【Dabangg】のリメイク、ガネーシュ主演の【Shyloo】はタミル映画【Mynaa】のリメイクだが、どちらも評判は良い。パワン・カリヤン主演の【Panjaa】はタミルのヴィシュヌヴァルダン監督の手になるもので、これまた異色のアクション映画との評判。どれも観たいと思ったが、しばらくスディープ主演の映画を観ていなかったので、【Only Vishnuvardhana】に決めた。

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 本作の監督はP・クマールという新人だが、カンナダ映画界の重鎮であるドゥワーラキーシュがプロデュースしており、主演のスディープの他にヒロインはバーヴァナとプリヤーマニ、敵役がソーヌー・スードと、けっこう豪華な配役となっている。
 企画発表段階の本作の題名は単に「Vishnuvardhana」で、これが物議をかもすこととなった。というのも、それが2年前に他界した名優ヴィシュヌヴァルダンを想起させるもので、客寄せの方便として故人の名前を利用しているとして、ヴィシュヌヴァルダンの妻バーラティから強いクレームが付いたからである。制作チームとバーラティ・サイドですったもんだした末、題名は「Only Vishnuvardhana」とすることで落ち着いた。しかし、公開された本編を観てびっくり、題字はどう見ても「Vishnuvardhana」としか書かれていなかった。この辺のドゥワーラキーシュの「腹」はどう解釈すべきだろう?

【Only Vishnuvardhana】 (2011 : Kannada)
物語・脚本・監督 : P. Kumar
出演 : Sudeep, Bhavana, Priyamani, Sonu Sood, Muni, Neenasam Ashwath, Dwarakish, Sangeetha, Arun Sagar, Kari Subbu, Ravi Chetan
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Rajarathnam
編集 : Gowtham Raju
制作 : Dwarakish

《あらすじ》
 ヴィシュヌ(ヴィシュヌヴァルダン:Sudeep)は洗濯屋の息子であったが、一攫千金を夢見ていた。ある日、彼は洗濯物の配達に行った家でキュートな女性を目撃し、一目惚れする。その家のメイドから、その女性はバーラティ(Bhavana)という名で、近々お見合い相手の医師に会いに病院へ行くという情報を得る。ヴィシュヌは先回りして病院に行き、偶然を装ってバーラティに会い、医者の振りをして話しかける。この作戦は当たり、バーラティはヴィシュヌに関心を示す。
 その病院から帰る際に、ヴィシュヌはヤクザの一団といざこざを起こし、一同は警察署に連行される。そのヤクザはアーディシェーシャ(Sonu Sood)というドンの手下で、アーディシェーシャ自身が警察署まで身柄を引き取りにやって来る。その際にアーディシェーシャは携帯電話を落としてしまうが、それをちゃっかりヴィシュヌが拾う。
 この携帯に他のマフィアから取り引きの電話がかかり、ヴィシュヌはうまく立ち回って、たちまちにして1千万ルピーの大金を横取りする。アーディシェーシャはなんとか携帯を取り戻そうとするが、ヴィシュヌはその度に煙に巻く。
 ヴィシュヌは相変わらず医者の振りをしてバーラティに接近し、彼女のみならず、彼女の父(Dwarakish)にも気に入られるようになる。
 アーディシェーシャが携帯を取り返そうと躍起になるのには訳があった。実はその携帯には秘密の動画が保存されており、それを失うとアーディシェーシャ自身が弱り、それが公開されると彼と結託している警視監(Muni)の立場が危うくなるからである。アーディシェーシャと警視監は一致団結して携帯を盗んだ男を追う。
 そんなこんなの時に、ヴィシュヌの例の携帯に謎の女から電話がかかってくる。その女はヴィシュヌが何者で、携帯を使って何をしたか、すべて知っていた。ほどなく彼女はヴィシュヌの前に姿を現す。ミーラ(Priyamani)という名のその女性は、ヴィシュヌにアーディシェーシャを殺害するよう依頼する、、、。

   *    *    *    *

 本作のストーリーは公開前まで秘密にされていて、一体、カンナダ俳優の故ヴィシュヌヴァルダンへのオマージュなのか、それとも、12世紀のホイサラ朝のヴィシュヌヴァルダナ王に関する物語なのかと、いろいろ推測されていた。しかし、蓋を開けてみると、そのどちらでもなかった。作品中に俳優ヴィシュヌヴァルダンへの言及はしばしばあったが、かと言って、本作が故人の伝記であるとか、代表作のどれかを意識しているとかいうわけではない。この点、制作チームがどうして「Vishnuvardhana」の題名にこだわったのか、理解に苦しむ。
 ただ、オープニングで【Aaptha Mithra】(04)のシーンが引用されており、スディープがヴィシュヌヴァルダンばりに扮してアクションしているシーンは面白かった。(スディープ自身、ヴィシュヌ翁の大ファンらしい。)

 上のあらすじに書いたのは前半までで、後半でミーラ(Priyamani)とアーディシェーシャ(Sonu Sood)、及び悪徳警視監(Muni)との関係、さらには携帯に保存されていた動画が何なのかが明らかになる。
 カンナダ映画にしてはけっこう凝ったストーリーで、伏線の張り方も効いている。この辺、新人のP・クマール監督はうまくやっている。
 作品のタイプとしては、私の好きな陽性のアクション・コメディーで、テルグ映画でよく見られるような、例えばスリーヌ・ヴァイトラ監督の一連の作品とか、ラヴィ・テージャ主演の【Kick】(09)などを連想させる。まさにラヴィ・テージャ主演で撮っても成功しそうな内容で、実際、まだ確定していないと思うが、本作はラヴィ・テージャ主演でテルグ版リメイク(しかも、監督はスディープで)作るという話もあり、実現すると面白いかもしれない。

 インド娯楽映画として、ストーリー展開も小気味よく、娯楽的要素もほどよく配分されている。緻密な完成度を問わない限り、まずよくできていると言えるし、全編を通して楽しく鑑賞できる。
 もっとも、脳ミソを使わないで観るべき作品で、あり得ない点を挙げればきりがない。しかし、バカらしさより面白さのほうが勝っている。例えば、バーラティの姉が妊娠中に交通事故に遭い、腹部に穴が開いて、そこから胎児の足がはみ出したところ、医者と勘違いされたヴィシュヌ(Sudeep)がある方法でその足を子宮内に戻すというシーンがあったが、これなんかはもうインド人にしか思い付きそうにないアイデアだった。(妊婦の出産時の危機を主人公が救うというネタは、タミル映画【Enthiran】やヒンディー映画【3 Idiots】にも記憶に残るシーンがあった。)

◆ 演技者たち
 本作の面白さはまったくスディープに負うところが大きい。元々セリフ回しが上手く、コメディーも難なくこなすスディープだが、ここまで笑いを意識した役柄、演技は初めてのことじゃないだろうか。エネルギッシュにしっかりドラマを引っ張っていて、非常に良い。「ヴィシュヌ翁の後継者はオレだ!」と言わんばかりのパフォーマンスだった。(写真トップ)

 本作のヒロインの使い方はやや変則的で、ツイン・ヒロインなのだが、パラレルという関係ではなく、前半はバーラティ役のバーヴァナ、後半はミーラ役のプリヤーマニがメインになるという、リレー方式だった。ケーララ出身の両女優、どちらも持ち味を発揮していて、悪くなかった。
 【Jackie】(10)が大ヒットして、カルナータカ州でも愛される顔となったバーヴァナ嬢だが、本作でも何ということはないアイドル的な役回りだった。(下)

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 他方、プリヤーマニのほうはやや芝居の見せどころあり。しかし、かなり太って見えたのが気掛かりだった。(同じ女優でも、他州の映画に出演したときよりも、カンナダ映画に出演したときのほうが太って見えるという法則がここにも当てはまる。)
 それにしても、プリヤーマニは今後もカンナダ映画に【Ko Ko】、【Lakshmi】、【Anna Bond】と3作も控えており、プリヤちゃんほどの女優がカンナダ映画に出ていただけるのは私的にはうれしいが、これってもしや、、、落ち目の印???

 悪役のソーヌー・スードはやはり男前すぎて、あまり恐ろしさがなかったのが本作の弱みか。いっそテルグ映画【Kandireega】(11)のように、コミック路線で攻めれば良かったかもしれない。ちなみに吹き替えはラヴィ・シャンカルが担当しており、これは【Arundhati】(09)と同じ。

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はハリクリシュナの担当。ここしばらくマンネリ化していたハリクリシュナの曲だが、今回は変えてきたようで、フレッシュに感じられた。なかなか良い。

 撮影と編集はかなり大雑把な印象を受けた。技術的なまずさを褒めるわけではないが、これが却って一昔前のインド映画を想起させ、心和んだ。そうなると、ダサいアイテム・ダンサーの踊るアイテム・ナンバーまで味わい深く感じられるから、不思議だ。

◆ 結語
 今年は比較的好調だったカンナダ映画界だが、1年の締め括りに本作のような楽しい映画が登場したのは喜ばしい限りだ。強くお勧めはしないが、カンナダ・ウォッチャーなら観ておいてもいいだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 
(オマケ画像 : ドゥワーラキーシュ「ヒットしたもんが勝ちや!」)
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