カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Rajapattai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/01/04 20:37   >>

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 タミルのスシンディラン監督は、これまで発表した【Vennila Kabaddi Kuzhu】(09)、【Naan Mahaan Alla】(10)、【Azhagarsamiyin Kudhirai】(11)の3作を観る限り、オフビートな映画の作り手と考えてもよさそうだが、そう簡単には断定できないかもしれない。というのも、本作【Rajapattai】では人気スターのヴィクラムを起用し、ヴィクラム自身が本作を「娯楽映画になるよ」と証言していたからである。
 ヒロインはディークシャ・セートだが、早くからシュリヤー・サランやリーマ・セーン、サローニを配した音楽シーンがテレビで流れ、これからすると、やはりタミル映画の王道とも言える本格的なアクション娯楽映画が出て来そうであった。それとも、スシンディラン監督はこの布陣でもやはりオフビートな映画を撮るつもりであろうか?
 ちなみに、題名の「Rajapattai」は「王様の道」という意味らしい。

【Rajapattai】 (2011 : Tamil)
脚本・監督 : Suseenthiran
出演 : Vikram, Deeksha Seth, K. Vishwanath, Sana, Avinash, Pradeep Rawat, Thambi Ramaiah, Aruldass, Saloni(カメオ出演), Shriya Saran(カメオ出演), Reemma Sen(カメオ出演)
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : R. Madhi
編集 : Kasi Viswanathan
制作 : Prasad V. Potluri

《あらすじ》
 ジムのインストラクターをしているムルガン(Vikram)は、映画の悪役俳優として有名になる夢があったが、現実には大部屋俳優としてスタントの仕事がもらえるだけだった。
 ある日、ムルガンは悪漢に追われている老人を救う。その老人はダクシナムールティ(K. Vishwanath)という名で、妻の遺志により孤児院を経営していたが、息子のチダンバラム(Avinash)が自身の政治的野心のためにその孤児院の土地を大臣のランガナーヤキ(Sana)に譲渡しようとしていた。その書類に署名するのをダクシナムールティが拒んだため、悪漢に追われていたというわけであった。事情を聞いたムルガンはダクシナムールティを自分のアパートにかくまう。
 ムルガンはダルシニ(Deeksha Seth)という名の女性と知り合い、惚れる。これを察したダクシナムールティがそれとなく仲介したため、二人は恋仲となる。
 ランガナーヤキは、表向きは善良な大臣として振る舞い、庶民から「アッカー」と呼ばれて親しまれていたが、実際はランド・マフィアのヴァーパ(Pradeep Rawat)と結託した腐敗政治家であり、それを指摘するジャーナリストもいた。ランガナーヤキはなんとしても孤児院の土地を手に入れるため、悪漢を使ってダクシナムールティを探させる。結果、ダクシナムールティの居場所が知れ、チダンバラムがひれ伏して懇願したため、老人は息子の許に戻ることにする。チダンバラムは早速父を役所へ連れて行き、土地譲渡の手続きをしようとするが、そこはムルガンとその仲間が来て、阻止する。
 しかし、ムルガンらの努力も空しく、ダクシナムールティは結局書類にサインをしてしまう。ところが、一度土地を手に入れるや、ランガナーヤキはチダンバラムを罠にはめて牢獄に放り込み、さっさと孤児院を取り壊しにかかる。これを見たムルガンとその仲間は徹底してランガナーヤキと闘う決意をする。
 ムルガンはある男からランガナーヤキとマフィアのヴァーパが結託している事実を聞き出す。ムルガンとその仲間はヴァーパを拉致し、中央捜査局(CBI)の一室としてでっち上げた小部屋に監禁する。そして、ムルガンが捜査官に扮してヴァーパの取調べを行う。その結果、ヴァーパはランガナーヤキとの関係を暴露し始める、、、。

   *    *    *    *

 スシンディラン監督の作品は、デビュー作の【Vennila Kabaddi Kuzhu】が田舎を舞台にしたスポ根物で、第2作の【Naan Mahaan Alla】はがらりと雰囲気を変えた都会の犯罪物、かと思えば、第3作の【Azhagarsamiyin Kudhirai】(11)は再びお伽噺のような田舎物と、田舎、都会、田舎と来ている。その流れからすると、第4作は「都会」となるのだが、果たしてそのとおり、本作【Rajapattai】はチェンナイを舞台とした政治犯罪物だった。この点、テーマや作風が振り子のように揺れ、同一監督が撮ったとは思えないほど分裂しているのが気に掛かる。もっとも、「無垢な田舎」と「腐敗した都会」というのは背中合わせとも言えるので、共にスシンディラン監督の映画的モチーフとなり得るのだろう。

 しかし、同じチェンナイを舞台にした犯罪物と言っても、【Naan Mahaan Alla】と本作とでは大きく違っている。【Naan Mahaan Alla】はリアルなほうにぐっと傾いた、「あり得そう」なドラマだったが、本作はいわゆるタミル娯楽映画のフォーマットに則った、「あり得ない」展開の、楽しいアクション・コメディーだった。
 悪役も、【Naan Mahaan Alla】は病んだ不良青年たちだったが、本作では悪徳政治家にマフィアと、古典的な設定になっている。
 そもそも主演のヴィクラム自身が、本作は【Dhill】(01)、【Dhool】(03)、【Saamy】(03)と同じ線だと言っており、これらからすると、スシンディラン監督はマジに従来型のタミル娯楽映画を作ろうとしたように見える。
 この辺、ウェンカット・プラブ監督の【Mankatha】(11)、あるいはサムディラッカニ監督の【Poraali】(11)でも若干その気配を感じたが、いわゆるタミル・ニューウェーブの監督たちが新作を発表していく中で、個人的な作風を離れ、より大衆を意識した娯楽映画に回帰し始めているようにも観察されて、興味深い。

 とは言っても、そこは新世代のスシンディラン監督のこと、やはり若干の変化は付けてきている。本作は過去のタミル・アクション映画のあれこれを手本としたようなオーソドックスな作りなのだが、アクション・シーンや音楽シーンなど、所々に「パロディー?」と思わせる場面があり、どこか真剣味のないものを感じた。この印象が本作の足を引っ張っているかもしれない。

 つまり、本作はコメディー基調の内容で、なるほど楽しく鑑賞できるのだが、観客を楽しませようとするあまり、緊張感が飛んでしまっているのである。また、従来の娯楽タミル・アクション映画の秀作を観たときのような、ぐっと来る満足感・満腹感がない。(まぁ、スシンディラン監督作品はいつもそうだが。)
 それはヒーローの描き方にも表れている。ヴィクラム演じるムルガンは、一見タミル・アクション映画のヒーローらしいヒーローなのだが、強すぎるというか頭が良すぎるというか、悪役との闘いにおいて常に余裕で上回り、はらはらするところがない。一応、ヒロインが誘拐される場面も用意されているのだが、これもいともあっさり奪還し、コミカルな終わり方で閉めている。「苦難」を味わわないヒーローというのも間抜けなものだ。

◆ 演技者たち
 とは言っても、本作のヴィクラムのパフォーマンスは余裕たっぷりで、見ていて気持ちが良い。【Deiva Thirumagal】で高評価を受けたヴィクラムだが、本作のほうを好むファンも多いことだろう。
 本作の事前の売り文句に「ヴィクラムが10変化をやる」というのがあり、楽しみだった。実際にやっていたのだが、それがストーリーと本質的に絡むものではなく、単にメーキャップ・アーティストとヴィクラムの技術力を証明しただけに終わったのが残念だった。
 ちなみに、ヴィクラムもついにドクターになったらしく、クレジットでは「Chiyaan Dr. Vikram」となっていた。
 (写真下:ヒロインのディークシャ・セートと。)

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 ヒロイン、ダルシニ役のディークシャ・セートについては、さして重要な役回りではなく、背が高い以外、特に語ることなし。

 印象的なのは、老人ダクシナムールティ役をやったK・ヴィシュワナート。本作にはコメディアンが登場しないのだが、この老師がせっせとヴィクラムあるいはタンビ・ラーマイヤと絡むシーンが笑いどころとなっていた。(下)

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◆ 音楽・撮影・その他
 ユワンくんの音楽は普通。
 テレビでよく流れているのはサローニが登場するアイテム・ナンバー。彼女の皮下脂肪のよく乗った腹に注目。
 もう1曲、シュリヤー・サランとリーマ・セーンを配したナンバーもポピュラーになっていた。これに釣られて劇場に足を運んだ客も多いと推測するが、実際にはエンド・ロールでおまけ的に使われているだけだった。これはわざわざイタリアでロケしたものなのに、こんな無駄遣いでいいのかなぁ?(下)

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◆ 結語
 【Rajapattai】はいま一つ緊張感を欠くアクション・コメディー。ヴィクラム・ファンなら観ておいてもいいと思うが、それも「わざわざ高価なDVDを買ってまで、、」という気はする。次回作では、どんなジャンル、テーマのものであれ、スシンディラン監督には「らしさ」を期待したい。

・満足度 : 2.0 / 5

(おまけ画像 : 風貌は鋭いが、映画はいまいち鈍かったスシンディラン監督。)
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