カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vettai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/01/25 21:24   >>

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 間があいてしまったが、サンクランティ公開の話題作・その2。
 本作【Vettai】の話題作たるゆえんは、【Run】(02)、【Sandakozhi】(05)、【Bheemaa】(08)、【Paiyaa】(10)などのヒット作でお馴染みのN・リングサーミ監督の作品だということだが、それ以上にキャスティングが目を引く。主演はマーダヴァンとアーリヤのツイン・ヒーローで、兄弟の役をやるとのこと。これは興味深い取り合わせだが、ややむさ苦しいというか、暑苦しいというか、息苦しい感じがなきにしもあらずなので、私はやはり女優のほうに注目したい。そのヒロインもサミーラ・レッディーとアマラ・ポールのツインで、これまた姉妹の役をやるという。このお二方が豪快にロイヤルエンフィールドをまたがるスチルや、

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こんなエロチックな結婚儀礼のスチルを見せられては、

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観ずば、カーヴェリ川長治の名が廃るというものだ。

【Vettai】 (2012 : Tamil)
物語・脚本・監督 : N. Lingusamy
出演 : R. Madhavan, Arya, Sameera Reddy, Amala Paul, Ashutosh Rana, Nasser, Thambi Ramaiah, Muthukumar, Srijith Ravi
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Nirav Shah
編集 : Anthony
制作 : N. Subash Chandra Bose, Ronnie Screwvala

《あらすじ》
 舞台はトゥートゥクディ。ティル(ティルムールティ:R. Madhavan)とグル(グルムールティ:Arya)は子供の頃から強い兄弟愛で結ばれていた。兄のティルは臆病者だが、弟のグルは腕っ節が強く、いつも兄を護っていた。
 ある日、二人の父が急死してしまうが、この家は祖父も父も警察官だったので、兄のティルは、弟の勧めもあって、警官となる。ところが、この町はアンナーチ(Ashutosh Rana)とマーリ(Muthukumar)という二人のヤクザが互いに抗争し、政治活動と違法ビジネスを展開する荒れた町だった。ティルは勤務初日から警察業の辛さを思い知ることとなる。しかし、それを察したグルが、ヤクザの惹き起こす事件を密かに解決し、それを兄の手柄としていた。おかげでティルは警察署内での評価が高まる。
 ティルはヴァサンティ(Sameera Reddy)という気丈な女性と結婚することになる。ヴァサンティには妹のジャヤンティ(Amala Paul)がいたが、グルはジャヤンティに一目惚れする。ジャヤンティもグルのことが満更でもないようだった。
 アンナーチの一味は邪魔なティルを襲撃しようとするが、成り行きでグルを拉致してしまい、逆にこてんぱんにやられてしまう。アンナーチは直接ティルの家に乗り込むが、これまた妻のヴァサンティに追い返されてしまう。
 ある日、アメリカからガウタムという男がやって来る。これはどうやらヴァサンティが選んだジャヤンティの婿候補のようであった。グルはヴァサンティの命令で、ガウタムとジャヤンティを車でドライブに連れて行く。しかし、その場でジャヤンティはグルにプロポーズする。
 アンナーチ一派は、自分たちの邪魔をしていたのはティルではなく、グルであること、そしてティルは実は臆病者であることを知る。彼らは祭りの夜、ティルを襲撃し、重傷を負わせる。そこはグルが何とか救い出し、病院へ運び込む。
 退院したティルはグルに付き添われてリハビリを開始する。しかし、ティルは本腰を入れてリハビリをしようとしない。そこへ、図に乗ったヤクザたちがティルとグルを襲いにかかる。グルは、ティルの勇気を奮い立たせるために、わざとヤクザたちにぼこぼこに殴られる。ティルはそれを見て奮起し、強い男になるためのトレーニングを開始する。
 怪我も癒え、今や勇気ある強い男に変身したティルは、警察署でアンナーチとマーリの一味を一掃することを宣言する、、、。

   *    *    *    *

 何を以って「タミル映画らしい」と言うかはさておき、堅実なテンポのストーリー展開、こってりとしたセンチメント、適度に爽快感の残る倫理的結末と、実にタミル映画らしい作品だと思った。リングサーミ監督の前作【Paiyaa】に比べるとやや緊張感を欠き、今の南インド映画のスタンダードでは古くさいとも言えるが、まずまず落ち着いて楽しめた。

 本作の良い点は、4人の主要登場人物の性格付けと役回りがはっきりしており、うまく機能していることだろう。
 まず、ティル(Madhavan)とグル(Arya)の兄弟だが、警官でありながら臆病者のティルと恐れ知らずのグルの対比が面白い。物語中、アーリヤがカッコいいアクションを連発するので、一見グルのほうが主人公だと錯覚するが、あくまでも主人公はティルのほうで、グルのカッコよさ、ストレートさは、単にティルのカッコ悪さの引き立て役でしかない。おそらくリングサーミ監督の狙いは、弱い男から強い男へと成長するティルの変わり目を見せることであり、「強い男、理想的な男とはどんなものか」を提示することだったのだろうと思われる。それは、ガウタムというアメリカからやって来たNRIのエンジニアが、やっぱり滑稽で風刺の対象として描かれているのを見るとよく分かる。(そういえば、【Paiyaa】でカールティが演じたシヴァも「タミル男たるもの、かくあるべし」という理想的な青年像だった。)

 同じような対比はヴァサンティ(Sameera Reddy)とジャヤンティ(Amala Paul)の姉妹の間でも見られる。姉のヴァサンティは物語の始めのほうでさっさと結婚してしまい、通常の南インド映画型ヒロインの可愛らしさ・お色気はジャヤンティのほうに譲っている。だからといって、ジャヤンティが本作のメインヒロインというわけではなく、これもやはり人妻としてのヴァサンティの気丈さを際立たせるための引き立て役と見たほうがいいだろう。

 これからすると、本作は「兄弟愛」や「夫婦愛」が感動ポイントでもあるのだが、それ以上に、「人間としての強さ」がテーマだったように思われる。そして、そのしっかりとした理想的な「タミル男・タミル女」の典型として、地方都市(トゥートゥクディ)の田舎者が取り上げられているのは、やっぱり注目すべきことだろうと思う。
 そんな訳で、本作は悪役の描き方が明瞭ではなく、悪を成敗するアクション映画として見れば拍子抜けだが、それには目をつぶることにしよう。

◆ 演技者たち
 まず評価すべきは、やはりマーダヴァンだろう。元二枚目俳優でありながら、すっかり太ってコメディアンの域に達したマーダヴァンだが、【Manmadan Ambu】(10)と同様、こういう不細工な役を確信犯的に演じさせると実に上手い。脚本上、強い男から弱い男へと変身する部分に無理があるのだが、その不備も彼の演技力でなんとかごまかせていた。しかし、どうせなら、ぷくぷく太った体からシックス・パックに変わるぐらいの努力を見せてもよかったと思う。

 対してアーリヤであるが、彼にとって非常に楽で、おいしい役だったろう。【Avan - Ivan】(11)に続き、引き立て役に回ってしまったが、印象度は高い。

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 ヒロインでは、まずアマラ・ポールさんから行くと、可愛らしく撮ってもらっていて、まずは目の保養になった。アーリヤとのコミカルなやり取りは記憶に残る。しかしながら、【Mynaa】(10)で一躍注目を集めるようになった彼女だが、私が観た限りでは、その後あまり良い役がもらえていないし、輝いてもいない。彼女を使い切れる監督がいないのか、適切な脚本がないのか、それとも、そもそも彼女が女優として使いにくいものなのか、、、とにかく、ファンとしては早く次の代表作を拝みたいものだ。

 そんな訳で、より感銘を受けたのはヴァサンティ役のサミーラ・レッディのほうだった。気丈な人妻をしっかりと演じていて、さすが伊達に年は取っていないと思った。
 ちなみに、彼女の吹き替えは今回もチンマイさんが担当している。

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 脇役陣では、タンビ・ラーマイヤはOK。ナーサルは無駄遣い。
 2人の悪役のうち、マーリ役のムトゥクマールというのは【Veppam】(11)でナーニの兄の役をやっていた人。アンナーチ役のアーシュトーシュ・ラーナーは北インドのベテラン俳優。

◆ 音楽・撮影・その他
 ユワンくんの音楽は平均的。
 音楽シーンも特に上出来だとは言えないが、ティル(Madhavan)改造計画の場面や、【Enthiran】(10)を意識したかのような、アーリヤとアマラさんが奇妙な衣装で踊る場面は面白かった。

 ニーラヴ・シャーの田舎の自然をほのぼのと捉えたカメラは美しい。

 物語中、グルが映画館で映画を見ているシーンが2箇所あったが、掛かっていた映画は【Ko】(11)と【Mankatha】(11)で、実際に同作の映像が引用されていた。

◆ 結語
 【Vettai】は、必見というほどの面白さはないが、ひと昔前の人間味ある娯楽アクション・タミル映画の味わいで、好感は持てる。何かの拍子に観るにはいいだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Ko Ko】 (Kannada)
 最近、仕事のほうが忙しく、「映画鑑賞&レビュー書き」に十分な時間が取れないでいる。そんな訳で、インドは「共和国記念日」も過ぎたというのに、当方はまだ「サンクランティ公開の話題作・その3」を書いている始末である。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/01/30 20:57

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