カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Ko Ko】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/01/30 20:56   >>

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 最近、仕事のほうが忙しく、「映画鑑賞&レビュー書き」に十分な時間が取れないでいる。そんな訳で、インドは「共和国記念日」も過ぎたというのに、当方はまだ「サンクランティ公開の話題作・その3」を書いている始末である。

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 今回紹介するのはカンナダ映画の【Ko Ko】。奇妙な題名だが、これは「Koli Koti」(意味は「雌鶏と猿」)からそれぞれ頭の「Ko」を取ったものらしい。
 カンナダ映画に馴染みのない人にとっては本作が話題作と言われてもピンと来ないに違いないが、監督が【Taj Mahal】(08)と【Mylari】(10)の2本のヒット作を持つR・チャンドルー、主演が昨年は当たり年だったシュリーナガラ・キッティ、ヒロインがなぜか最近カンナダ映画でも良い仕事をしているプリヤーマニ、加えて、テルグ映画界から中堅実力俳優のシュリーハリが客演しているとあっては、やはり話題作と言って間違いないのである。

 ただ、そんなことより、私個人として本作を格別に注目したい理由があった。それというのも、幸運にも昨年の8月に機会を得て、本作の撮影現場にお邪魔し、プリヤーマニとシュリーナガラ・キッティに会って話を聞くことができたからである。下がその時の生写真(削除済み)。シュリーナガラ・キッティはさておき、プリヤーマニという女優の人となりを窺い知る上で非常に貴重な経験となった。

【Ko Ko】 (2012 : Kannada)
脚本・監督 : R. Chandru
出演 : Srinagara Kitty, Priyamani, Srihari, Ravi Kale, Rangayana Raghu, Harshika Poonachcha, Bullet Prakash, Sadhu Kokila, Raju Thalikote, Mithra, Yethiraj, Honnavalli Krishna , Shobharaj, Sanjjanaa, その他
音楽 : Ramana Gogula
撮影 : K.S. Chandrashekhar
編集 : K.M. Prakash
制作 : Bhasker, Adhi

《あらすじ》
 キッティ(Srinagara Kitty)は警察官になるのが夢の若者。チェスが得意な彼はその競技会に出場し、決勝でカーヴェリ(Priyamani)を破って優勝する。カーヴェリは警視総監シュリーハリ(Srihari)の妹であるが、面子を失ったシュリーハリはキッティを逆恨みする。
 シュリーハリはたまたまカーヴェリとキッティが仲良くしている様子を見かけ、二人が恋仲であると疑う。彼は部下のケンパイヤ(Ravi Kale)にキッティの行動を監視するよう命じる。ケンパイヤはキッティとの間でひと悶着があり、彼に対して悪印象を抱く。ケンパイヤは、たまたまショッピングモールでキッティとカーヴェリが話しているのを見つけ、キッティに向けて銃弾を放ち、警視総監の妹に付きまとうなと警告する。
 要らぬ誤解を受けたキッティは、自分とカーヴェリが恋愛関係にないことを説明するために、シュリーハリの家まで出向く。しかし、ちょうどその時、カーヴェリが家の塀を乗り越えて、家出する場面を目撃する。実は、彼女にはアーナンドという恋人がおり、クッケ・スブラーマニヤ寺院で密かに結婚する計画があったのである。行き掛かり上、キッティはカーヴェリの後を追うが、そこをシュリーハリに目撃されてしまう。
 カーヴェリとキッティはマンガロール急行に乗ってクッケ・スブラーマニヤ寺院へと向かう。途中、ケンパイヤをはじめとするシュリーハリの部下に捕まりそうになるが、その度に蹴散らし、無事にカーヴェリを目的地まで連れて行く。その過程でキッティはカーヴェリに恋心を抱くようになる。
 寺院でカーヴェリはアーナンドと再会する。しかし、シュリーハリを恐れたアーナンドは彼女に結婚の破棄を伝える。憤ったカーヴェリは、勇気を持って自分を守ってくれたキッティと結婚すると宣言する。
 キッティとカーヴェリは帰途につき、カーヴェリは兄シュリーハリの家に戻る。キッティは警察署にシュリーハリを訪ねる。そこでキッティはシュリーハリから、彼がなぜケンパイヤにキッティを撃たせたかを説明する。それを聞いたキッティは激怒し、シュリーハリに挑戦状を叩き付ける。彼は友人たちに協力してもらい、警視総監を懲らしめる作戦を考える、、、。

   *    *    *    *

 警官になる志を持っていた「普通の男(common man)」が、ひょんな誤解を受け、警視総監を相手に闘いを挑み、勝利を収めるという話。一見、警察機構を風刺したドラマとも思えるが、実は本作の主題は「男の強さ」ということであって、主人公のキッティが闘う相手は大臣でもマフィアのドンでも、とにかく強大な力を持っている者なら成り立つストーリーだったと思う。

 キッティは警視総監シュリーハリの「考え」を間違っていると感じ、それで挑戦状を叩き付けることになるのであるが、その考えというのが題名にも示唆されている「雌鶏と猿(Koli Koti)」の話である。これはどうも農民が猿を手なずける方法らしいのだが、簡単に書くと、雌鶏と猿を一緒に飼い、両者が仲良くなった頃に雌鶏を殺せば、猿は飼い主を恐れて何でも言うことを聞くようになる、ということのようだ(このネタ元は中国の寓話だと説明しているレビューがあるが、当方は未確認)。この場合、猿が警視総監の妹カーヴェリであり、雌鶏がキッティのことである。つまり、シュリーハリは妹を手なずけるためにキッティの命を狙うという「ゲーム」をしたわけであるが、キッティはこれに激怒し、シュリーハリを正す行動を開始するわけである。

 こう書くと、シュリーハリはいかにも悪辣な人物のように思えるかもしれないが、物語中ではまた非常に正義感のある警察官とも描かれており、最終的にはキッティの勇気と力を認め、妹との結婚を許している。シュリーハリ自身が「男」であり、キッティの男らしさを理解したわけである。おかげで、本作は鑑賞後に肯定的な爽やかさの残る作品となっている。
 もっとも、キッティの強さ、男らしさを認めたのはシュリーハリだけでなく、そもそもカーヴェリがキッティに惚れたのも同じ理由であった。つまり、本作全体が「男の強さ」を称揚するものとなっているのである。たまたま前回紹介した【Vettai】も同じようなテーマだったと思うが、強い男を描くというのはインド映画では普通のことである。ところが、現実的には「男は強い」という事実はなく、あるのは「男は強くあるべし」という理想だけである。現に、インド映画でも最近のリアリズムに傾いた作品では情けない男が主人公としてよく登場している。そんな傾向があるにもかかわらず、インド映画がなお主流として「男は強くあるべし」と謳い続けているのは注目すべきことだと思う。

◆ 演技者たち
 昨年は2本の出演作、【Sanju Weds Geetha】【Hudugaru】が大ヒットし、ようやく映画俳優としての運気が上昇し、本作ではとうとう‘Diamond Star’の冠タイトルまで戴くようになったシュリーナガラ・キッティだが、しかし客観的に見て、【Sanju Weds Geetha】のヒットはラミャによるものだし、【Hudugaru】もプニートとヨーゲーシュのパフォーマンスによるもので、キッティはあまり目立っていなかった。俳優として演技面ではひと通りのことができるキッティだが、やはりアクション系の映画1本を引っ張って行けるようなカリスマ性は全然なく、スターとしての華やかさもない。本作でもそれがはっきりと感じられ、本作の興行成績はまだ把握していないが、もし並以下に終わるなら、それはキッティのせいになるだろう。本作のようなヒーローを持つ映画は、カンナダだとプニート、テルグではNTRジュニアぐらいのスターがやってこそ成功するものだと思う。

 対して、ヒロインのプリヤーマニは二重丸。カンナダ映画の前作【Only Vishnuvardhana】では妙に太って見えた彼女だが、本作では可愛らしく撮ってもらっていた。何よりも、音楽シーン以外ではアイドルっぽい浮いた見せ方はせず、自然に演技しているのが良い。
 絶対の自信はないが、私の耳には、カーヴェリのセリフはプリヤーマニ自身が吹き替えているように聞こえた。プリヤーマニはカンナダ人ではないが、バンガロールでカレッジの勉強をした関係で、カンナダ語が理解できるし、話せる(テレビのインタビューでは、7割カンナダ語、3割英語の割合で話している)。もしセルフダビングでなかったならば、かなり声質の似ている声優を使ったことになる。
 (写真下:キッティとプリヤちゃん。キッティの奇妙なヘアスタイルの理由は映画を観れば分かる。)

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 カンナダ映画デビューとなったシュリーハリだが、絶賛とまでは行かないにせよ、やはり存在感はあった。カンナダ映画の俳優陣に混ざると、Jリーグでプレーしているブラジル人選手のように見えた。
 その他、脇役陣では、コメディーを担当したブレット・プラカーシュが面白かった。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はラマナ・ゴーグラという人の担当。あまり聞かない名前だが、主にテルグ映画界で仕事をし、パワン・カリヤーンの初期の作品やマヘーシュ・バーブの【Yuvaraju】(00)、ウェンキーの【Lakshmi】(06)などを担当した人のようだ。本作の音楽はなかなか良かったと言えるが、どうやら彼自身のテルグ作品の曲をいくつか使い回ししているようだ。
 1曲目の音楽シーンが興味深い。キッティは学業も優秀だが、公立カレッジの学生と設定されており、キッティとその友人たちが私立カレッジの女の子たちにバカにされるのを、逆にやり込めるという内容になっている。

 ところで、俳優のシュリーナガラ・キッティはバンガロールにある「シュリーナガラ」という町で生まれ育ったので、「シュリーナガラ・キッティ」という芸名を付けているが、本作品中では「ケンゲーリ・キッティ」という役名になっていた。映画のラストでキッティとカーヴェリの結婚を認めたシュリーハーリが「お前は今やケンゲーリ・キッティからカーヴェリ・キッティになったぞ」と言うセリフが面白い。実はケンゲーリ(地名)には鼻ももげるような悪臭を放つドブ川が流れており、それからして、シュリーハーリのセリフは「お前はドブ川から大河になったぞ」という意味になる。こういうローカル・ネタが地方映画を観る楽しみではある。

 物語中、カーヴェリとキッティが訪れる「Kukke Subrahmanya Temple」はダクシナ・カンナダ県にある有名な寺院。

◆ 結語
 カンナダ映画らしく、大雑把な作りのアクション・ロマンスだが、鑑賞後の後味は悪くない。プリヤーマニの演技も新鮮。日本人インド映画ファン一般にはお勧めとしにくいが、カルナータカ州とバンガロールに馴染んでいる人にはなかなか面白い1本となる。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>絶対の自信はないが、私の耳には、カーヴェリのセリフはプリヤーマニ自身が吹き替えているように聞こえた。

本人に確認したところ、生まれて初めてのカンナダ語セルフダビングだと言ってましたので、川縁さんの耳に外れはなかったわけですね。
メタ坊
2012/03/04 15:28
ご確認、ありがとうございます。
実は、プリヤーマニの地声はいろいろな機会に聞いているし、本人を目の前にしてわずか2メートルの距離で生声も聞いているので、まず間違いないだろうとは思っていたんですが、忙しい売れっ子女優が母語でもないカンナダ語のダビングをするゆとりがあるのかなぁ、という疑問もあって、上のように書きました。(それにしても、プリヤちゃんの生声、デカかったですなぁ。)
 
カーヴェリ
2012/03/05 22:26
>それにしても、プリヤちゃんの生声、デカかったですなぁ。

デカいだけではなくドスも利いてます。あの地声でニャハハ…と笑うと笑顔が屈託なくて実に可愛いんですよね。プリヤちゃんの最大の魅力のひとつだと思います。
メタ坊
2012/03/06 12:14
同感です。
 
カーヴェリ
2012/03/07 03:06

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