カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Mouna Guru】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/02/13 21:20   >>

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 1月のお祭り期間も過ぎて、タミル映画の話題作リリースも一息ついたのか、バンガロールでは今ごろ【Mouna Guru】が公開された。この映画のタミル・ナードゥ州での公開は昨年の12月16日だが、監督は新人、俳優も目立ったスターはいないという地味な作品であるためか、バンガロールでは劇場に掛からなかった。ところが、本作は彼の地でヒットを記録し、その成功を受けて、晴れて私の目にも触れるところとなった。
 私が本作に注目していた理由は、主演のアルルニディをチェックしておきたかったからである。彼はパーンディラージ監督の【Vamsam】(10)でビューし、本作がまだ3作目の新進俳優だが、なにせ祖父が前タミル・ナードゥ州首相のカルナーニディ、従兄が現在コリウッドで非常に勢いのある映画プロデューサーのウダヤニディ・スターリンとダヤニディ・アラギリという、タミルの政治・映画界の一大有力家の一員である(ちなみに、本作をプロデュースしているM・K・タミララスはアルルニディの父)。こういうメジャー家のお坊ちゃまにはあまり関心はないのだが、近年デビューしたタミルの若手俳優の中ではやってくれそうなムードを漂わせているほうなので、やはり実見しておくに越したことはない。
 「Mouna Guru」は「物言わぬ先生」といった意味。

【Mouna Guru】 (2011 : Tamil)
物語・脚本・台詞・監督 : Santha Kumar
出演 : Arulnithi, Iniya, John Vijay, Uma Riyaz Khan, Madhu, Balakrishnan, Krishnamurthy, Anand Varma, Murugadoss
音楽 : S.S. Thaman
撮影 : Mahesh Muthuswami
編集 : Raja Muhammed
制作 : M.K. Thamizharasu

《あらすじ》
 マドゥライに暮らす大学生のカルナーカラン(Arulnithi)は、自分の気持ちに正直に行動するあまり、周囲の者から誤解され、衝突することもしばしばだった。ある時、彼はちょっとしたいざこざから警官を殴ってしまい、マドゥライからチェンナイに引越しせざるを得なくなる。
 カルナーカランはチェンナイにある美術大学に編入する。彼は兄の家に身を寄せるが、兄嫁に歓迎されていないのを察し、大学の寮に寄宿することにする。しかし、兄嫁の妹で医学生のアールティ(Iniya)はカルナーカランの率直な性格に好意を抱く。
 新しい大学でもカルナーカランは浮いた存在で、不良グループから目を付けられていた。
 ところで、4人の悪徳警官、すなわちマーリムットゥ(John Vijay)、ラージェンドラン(Madhu)、セルワム(Balakrishnan)、ペルマール(Krishnamurthy)は、バンガロールとチェンナイを結ぶ国道上で1台の車の事故に遭遇する。運転していた男は大怪我を負っていたが、車のトランクに大金があるのに気付いたマーリムットゥは、その男を殺害し、大金をネコババしてしまう。
 マーリムットゥが愛人マーヤーの部屋にいるとき、マーヤーは彼がこの事件について話しているところをビデオカメラで盗撮する。マーヤーはこれをネタにマーリムットゥをゆすろうと企てていたが、そのビデオカメラ自体が何者かに盗まれてしまう。その何者かは携帯電話を通してビデオの音声をマーリムットゥに聞かせる。
 慌てたマーリムットゥら4人の警官は、マーヤー(すでに死亡)の協力者2人を捕らえる。そして、ビデオカメラを盗んだのが美術大学の学生であることをキャッチし、大学寮を捜索した結果、カルナーカランの部屋にそのビデオカメラを見つける。カルナーカランはまったく身に覚えのないことであったが、連行されてしまう。
 ラージェンドランと他の2人の警官は捕らえた3人の男を森に連れて行き、始末しようとする。2人は射殺されるが、カルナーカランはなんとか逃走する。しかし、結局は捕まってしまい、密かに精神病院に放り込まれる。
 アールティは、精神病院での研修中に、偶然カルナーカランを発見する。家族が病院まで面会に来るが、悪徳警官らの言いなりになっている院長は、カルナーカランについてでっち上げの症状を伝える。
 国道上での男の交通事故死、及びマーヤーの死亡に不審なものを感じた女警官のパラニアンマル(Uma Riyaz Khan)は、精力的に捜査を開始する。そして、ビデオカメラの盗難とカルナーカランへの罪の転嫁に関して真実を得る。
 一方、カルナーカランは、患者の一人バブ(Murugadoss)に協力してもらい、精神病院を脱走することに成功する。彼は警官4人組の1人ラージェンドランを拉致し、美術大学の倉庫に監禁する。カルナーカランは身の潔白を晴らすために学園祭の場を利用しようとする。その情報をキャッチしたマーリムットゥら3人の悪徳警官は大学で張り込みを掛ける。また、真相をつかんだパラニアンマルもマーリムットゥらの逮捕状を持って現場に駆けつける、、、。

   *    *    *    *

 なるほど、ヒットも頷ける面白い映画だった。近ごろのタミル映画によく現れる、病める都市の犯罪を扱った緊張感のあるスリラーだった。

 本作は、物語としてはリアリズムと呼ぶにはほど遠いが、表現様式としてはやはりリアルなほうに傾いた劇画タッチの作品で、豪華な音楽シーンや派手なアクション・シーン、大仰なコメディー・シーンはない。あくまでもストーリー本位、脚本本位の作りで、タイプとしてはミシュキン監督の作品(【Anjathey】【Yuddham Sei】)に近い。以前、【Naan Mahaan Alla】(10)評の中で、タミル映画がここ数年試行錯誤しながら、新しいタイプのタミル型娯楽映画を生み出しつつあるのでは、みたいな憶測を書いたが、本作はその例証とも言えそうな作品だ。ハリウッドともボリウッドとも違う手法、テイストに注目したい。
 ちなみに、監督のサンタ・クマールについてはよく知らないが、新人の割にはしっかりした出来栄えの映画だった。

 本作で俎上に載せられたのは、警察、教育機関(大学と学生)、病院(精神病院)。そのいずれもが気味が悪いような形で腐敗していて、こんな世の中に生きているかと思うと気が滅入るほどである。その中で、馬鹿正直な主人公のカルナーカランが一直線に進み、結果的に悪を倒していく様は見ていて気持ちがいい。もちろん、カルナーカランはラジニカーントが演じるような超絶的ヒーローではなく、多くの困難を伴いながら、結果的にヒーロー的な行為を完遂しただけである。クライマックスで彼が採った戦法は「肉を切らせて骨を断つ」といったようなものだが、これは面白いアイデアだったと思う。

◆ 演技者たち
 アルルニディにとって、本作のカルナーカランは願ってもない嵌り役だろう。前2作でどんな役をやっていたかは知らないが、本作の「寡黙なヒーロー」というイメージには合っていた。もっとも、演技的には難しくなく、むつっとしていれば済むような役柄だったので、俳優としての評価はこれだけで問えない。また、タミルのトップスターとしてやっていくためには、ある程度ダンスとコメディーもできないとダメなのだが、その点では弱いかもしれない。ただ、この長身と侍的風貌は、近ごろデビューしたタミル若手男優の中ではぐっと頼もしいほうなので、本ブログでは注目株としておく。(下)

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 ヒロイン、と言えるほど重要な役回りではなかったのだが、一応のヒロイン、アールティを演じたのはイニヤさん(下)。キャリアはまだ浅いが、【Vaagai Sooda Vaa】(11)でぼちぼち注目され始めた人。【Vaagai Sooda Vaa】はバンガロールで公開されなかったので、私は未見なのだが、テレビでビデオクリップを見て、気に掛かる女優になっていた。決して美人とは言えず、「隣の娘さん」タイプなのだが、実際にスクリーン上で見ると、スチルよりずっと魅力的に見える。妙に私のセンサーに触れるなぁ、と思いながら見ていたら、やっぱり、彼女もケーララ娘だった。ちなみに、ミシュキン監督の【Yuddham Sei】にも主人公(チェーラン演じる)の妹役で出ていた。

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 女警官パラニアンマルを演じたのはウマー・リヤーズ・カーン。名前から察するとおり、俳優リヤーズ・カーンの奥さん。レビュー上での評価が高いのだが、なるほど、渋いと思った。
 悪徳警官のリーダー格、マーリムットゥ役はジョン・ヴィジャイ。どこかで見たことのある顔、名前だと思っていたら、マニ・ラトナム監督の【Raavanan】(10)でヘーマント役をやっていた人だということが分かった。本作でのかなりいやらしい警官像は印象に残る。
 もう1人、精神病患者バブの役を演じたのはムルガダースという名の俳優らしい。【Aadukalam】(11)で主人公(ダヌシュ演じる)の友人役をやっていた人だ。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はS・S・タマンの担当。テルグ映画では売れスジ音楽を聞かせているタマンなので、こちらでもがんがん賑やかなものを聞かせてくれるかと期待していたが、残念ながら本作は音楽の比重の低い作品だった。ただし、音楽そのものは悪くない。またBGMのほうも良かった(こちらはタマンの担当かどうか知らないが)。

 撮影はミシュキン監督の作品などを手掛けているマヘーシュ・ムットゥスワーミで、やはり上手い。

◆ 結語
 【Mouna Guru】はまずまずの出来の都市型犯罪スリラー。タミル映画の最近のトレンドを色濃く反映しているので、そちらに関心のある方なら観ておいてもいいと思う。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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