カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Muppozhudhum Un Karpanaigal】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/02/24 21:37   >>

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 タミル映画【Mynaa】(10)を観た人なら、アマラ・ポールが注目すべき大型新進女優であることは疑わないと思うが、彼女はどうも作品・役に恵まれていないところがあり、今のところまだ「マイナー娘」に留まっている。しかし、そろそろ本格ブレイクしそうな気配で、先週末(17日)は彼女の出演映画が2本公開されることとなった。テルグ映画の【Love Failure】(タミル語ダビング版は【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】)とタミル映画の【Muppozhudhum Un Karpanaigal】である。【Love Failure】はまだバンガロールで公開されていないので、仕方なく【Muppozhudhum Un Karpanaigal】を先に観た。
 監督はElred Kumarという人で、監督としてはデビューだが、プロデューサーとして【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)や【Ko】(11)などのヒット作を送り出した人のようだ。
 ヒーローは故ムラリの息子で、【Baana Kaathadi】(10)でデビューしたアダルヴァーくん。本作が2作目となる。
 題名の「Muppozhudhum Un Karpanaigal」は「いつも君の夢」といった意味らしい。

【Muppozhudhum Un Karpanaigal】 (2012 : Tamil)
物語・脚本・監督 : Elred Kumar
出演 : Atharva, Amala Paul, Jayaprakash, Anupama Kumar, Nasser, Santhanam, Ravi Prakash, Yashika
音楽 : G.V. Prakash Kumar
撮影 : Shakthi
編集 : Antony L. Ruben
制作 : Jayaraman, Elred Kumar, James

《あらすじ》
 ラーム(Atharva)はチェンナイのIT企業に勤めるエンジニア。彼は平日は会社で働いて、土日になるとバンガロールへ行き、そこで恋人のチャール(Amala Paul)とひと時を過ごすのを慣わしとしていた。
 ある日、ラームの会社にアメリカからCEOがやって来る。そのCEOはラター(Amala Paul)という名の若い女性だったが、ラターは出迎えに現れたラームの態度を見て驚く。実はラターとラームは、ラターがCEOになる前に一緒にプロジェクトをしたことがある仲なのに、ラームはまるで未知の人に会ったかのように振舞ったからである。混乱するラターだが、ラームの携帯に若い女性から電話がかかって来、それが彼の恋人チャールからだと告げられ、さらに混乱する。実はラターの本名は「チャールラター」であり、以前は「チャール」という愛称を使っていたからである。
 ラターはラームが事故にあった際に、精神科医の叔父(Jayaprakash)に協力してもらって、ラームを催眠療法にかける。そして、彼の記憶を牽き出す。
 ・・・
 半年前、ラームはあるプロジェクトを任され、バンガロールへ赴く。バンガロールではアパートの一室でチャールという女性と開発業務に携わる。ラームはチャールと意気投合する。そんなある日、ラームの最愛の母(Anupama Kumar)が死亡する。その時、チャールに慰めてもらったのがきっかけで、ラームは彼女を強く愛するようになる。しかし、プロジェクトのプレゼンを目前にして、チャールはある事件に巻き込まれ、誘拐されてしまう。3日後にチャールは戻って来るが、ラームは彼女を誘拐した不良グループに復讐し、体を張って彼女を守る決意をする。
 ・・・
 ラターはラームの記憶に辻褄が合わないものを感じつつも、自分(チャール)のことを覚えてくれていることを確認する。しかし、そのチャールがどうしてラターと結び付かないのか不審に感じる。ラターは叔父と共に、電話番号を頼りにラームの恋人「チャール」に会いに行く。しかし、目の前に現れた女性はチャールではなく、ラームとの電話にお付き合いをしていただけだということが分かる。
 ラターは叔父と共に、半年前にラームとプロジェクト開発に使ったバンガロールのアパートを再訪する。ところが、驚いたことに、そのアパートにラームもやって来る。さらに驚いたことに、ラターと叔父は、ラームが誰もいない空間を抱きしめ、「チャール」と語りかけるのを目撃する。
 この様子を見たラターの叔父は、ラームが妄想性人格障害に罹患していると断定する。そして、ラターと叔父は、ラームの病気の原因を探るために、彼の生まれ故郷の村を訪ねることにする、、、。

   *    *    *    *

 彼女の映画を2作続けて観て、ささやかな「アマラ・ポール映画祭」として楽しむはずが、ふぅ〜、のっけからとんでもない駄作にぶつかったもんだ。この日は本当はガウタム・メーナン監督の【Ekk Deewana Tha】(【Vinnaithaandi Varuvaayaa】のヒンディー語版リメイク)を観る予定だったが、同作があまりにも評判が悪いため、わざわざ【Muppozhudhum Un Karpanaigal】に変えたのに、結局は落胆の一日となってしまった。まぁ、アマラさんの顔が拝めただけでも、良しとするか。

 タミル映画の近ごろの作品にありがちな、典型的な失敗作だと思う。
 監督は新人、しかし、妙に力を入れて、凝りに凝った目を見張る映像を見せているのだが、脚本・演出がヘボいせいで、映画として見られたもんじゃない。同種の失敗作として、【Sarvam】(09)、【Kanthaswamy】(09)、【Nootrenbadhu】(11)などが挙げられる。

 とにかく中途半端。監督のやりたいことはある程度推測できるが、欲張りすぎたため、結局何がやりたかったのか分かりにくい。本作は公開前に「ロマンティック・スリラー」と謳っていたが、どこかにレビューに書いてあったとおり、ロマンティックでもスリラーでもないところが苦しい点だ。
 サイコ・スリラーとして見るのが一番救える見方だと思うが、ヒネリが多すぎてストーリーを追いづらく、緊張感よりイライラのほうが多く募る。そのくせ展開が遅く、まったく役立たずの音楽シーンが何度も挿入されて、ダレてしまった。

 頭で考えつつ本作を振り返ってみると、確かにアイデアそのものは面白い。
 田舎出の生真面目な青年ラームがチャールに恋心を抱いている最中に最愛の母を亡くし(この母子の関係も本作の重要なファクターなのであるが)、精神に異常を来たしてしまう。その誰も知らないラームの異常な状態をラター(チャール)と精神科医の叔父が明らかにしていくというサスペンスは、実は悪くない。ただし、上に書いたとおり、脚本を上手く仕上げる必要があった。
 また、本作全体のムードや映像美からすると、サイコ的側面はラームの「狂おしい愛」、「気がふれるほどの想い」の比喩的表現として用いてもよかったと思うが、それを表現しきるには経験の浅いアダルヴァーくんでは無理だろう。本作の「ラーム」はダヌシュあたりが演じれば、成功作となった可能性はある。

◆ 演技者たち
 主役のアダルヴァーくんはデビュー作の【Baana Kaathadi】に比べると格段の進歩なのだが、まだ映画1本背負えるほどの器量はない。本作のラームはそれほど難しい役ではないはずだが、泣かせる芝居ができないことには、「精神異常者」が単に精神異常者に終わってしまうので、ドラマとして成り立たない。さらなる勉強を。(というより、俳優以外の道を歩んだほうがいいと思うなぁ。)

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 対して、アマラ・ポールさんは良い。一人二役というわけではないが、ラームのイメージの中の「チャール」と現実の「ラター」と、違ったキャラクターを見せているので、こちらもそれだけ楽しめる。この監督もおそらく【Mynaa】のアマラさんを見て感銘を受けた一人に違いなく、なんとかこの女優をきれいに撮ろうと努力している点は評価できる。
 (写真下:こんな幻想的なアマラさんのスチルが公開されていたが、映画本編ではなかった。)

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 脇役陣では、ラターの叔父役のジャヤプラカーシュはいつものとおり渋い。
 ラームの母ラクシュミを演じたのはアヌパマ・クマールという女優らしいが、なんか凄いインパクトがあった。この母親役はまずシムランにオファーが行った(そして、断った)らしく、これを本当にシムランがやっていたなら、それだけで本作全体のポイントがアップしただろう。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はG・V・プラカーシュ・クマールの担当なのだが、あらあら、どうしたプラカーシュくん、といった感じの精彩を欠く音楽だった。音楽シーンの作り方、挿入のタイミング自体が悪いので、音楽もつまらなく聞こえたのかもしれない。

 しかし、撮影はきれい。
 ロケ地は主にチェンナイとバンガロール、音楽シーンでラスベガス、ニューヨーク、グランドキャニオンが使われている。タミル映画だが、バンガロールの私にとって馴染みのスポットが数多く映っており、親しみが持てた。

◆ 結語
 Elred Kumar監督は年齢的にそんなに若くもないようだが、本作には「美大生の卒業作品」といった印象を強く受けた。美学のみある、ヘボ脚本の失敗作だが、アマラ・ポールのプロモート・ビデオとして見るなら、まぁ、一見の価値はある。

・満足度 : 1.5 / 5
 

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内 容 ニックネーム/日時
今朝スレーシュ・クリシュナがスディープ主演のカンナダ映画で「バーシャ」の続編を撮るという記事を読みました。ああいうもっちゃりした筋運びの映画はタミルではもう受け入れられないのだなあと思うと少し悲しくなりました。

正直いってタミルで流行の「ひねった」設定や筋書きの映画には食傷しております。安定した映像表現のフォーマット崩したら業界全体が衰退するのは目に見えてるし、そこにハリウッドがつけ込んでくるのは火を見るより明らかなのに、こういうのは誰かがやり始めると歯止めが利かんもんなんですかね。

甘ちゃんも正宗ヒロイン路線でしばらく経験を積めばいずれ素晴らしい作品に巡り会えると思うんですがね。トリシャーですら完全に開花するまでには数年を要したのですから、今の段階で目先の変わった映画にほいほい乗っかるのはどうかと思ってしまいます。
メタ坊
2012/02/25 15:05
>ああいうもっちゃりした筋運びの映画はタミルではもう受け入れられないのだなあと思うと少し悲しくなりました。

いえいえ、タミル映画は今でも十分もっちゃりしていますよ。
「バーシャ」の続編をカンナダで撮るというのは別の動機があるはずです。「バーシャ」のカンナダ版リメイクというのがあり、それは故ヴィシュヌヴァルダンが主演だったんですが、ヴィシュヌヴァルダンの後継の座を狙うスディープが働きかけたものだと思われます。

>甘ちゃんも正宗ヒロイン路線でしばらく経験を積めばいずれ素晴らしい作品に巡り会えると思うんですがね。トリシャーですら完全に開花するまでには数年を要したのですから、今の段階で目先の変わった映画にほいほい乗っかるのはどうかと思ってしまいます。

娘の健全な成長を願う父親目線になっていますね。
そういえば、トリシャーもプリヤちゃんも、完全開花まで時間がかかりました。
長い目でアマラさんを見守りたいと思います。
ちなみに、本日「Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi」(Love Failure)を見ました。面白かったですけど、これまた厄介といえば厄介な作品でした。
 
カーヴェリ
2012/02/25 23:29
明日Love Failure見て川縁さんを追っかけますw
メタ坊
2012/02/26 00:14

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