カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/03/01 22:02   >>

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 タミル・ナードゥ州とアーンドラ・プラデーシュ州より遅れること1週間、シッダールタ主演のタミル映画【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】(テルグ語版は【Love Failure】)がバンガロールでも公開となったので、早速観て来た。これは「バイリンガル映画」ということなので、どちらがダビング版というわけではなく、そうするとどちらを観るか迷ってしまうのだが、監督のバーラージ・モーハン(新人)がタミル人で、本作は彼の同名の短編タミル語映画に基づいているということなので、タミル語版を観ることにした。
 ヒロインはもちろん注目のアマラ・ポール!
 題名の【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】は「恋愛が失敗するのはどんなふうに?」といった意味らしい。

【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】 (2012 : Tamil)
物語・脚本・監督 : Balaji Mohan
出演 : Siddharth, Amala Paul, Suresh, Surekhavani, Arjun, Vignesh, Shyam, Pooja, Sriranjani
音楽 : S.S. Thaman
撮影 : Nirav Shah
編集 : T.S. Suresh
制作 : Sashikanth Shivaji, Siddharth, Nirav Shah

《あらすじ》
 アルン(Siddharth)は気楽な大学生。父は弁護士、母は主婦で、二人は仲睦まじい夫婦だった。
 アルンは同じ大学に通うパール(パールヴァティ:Amala Paul)と付き合っていたが、1年前に分かれていた。彼はどうしてこの恋がうまく行かなかったか理解できないまま、友人のヴィグネーシュ(Vignesh)やシヴァ(Arjun)と徒な日々を送っていた。ヴィグネーシュは同じ大学の女の子に惚れていたが、相手にされそうになかった。シヴァはそんなヴィグネーシュにせっせとアドバイスを与えるが、彼自身が全く女にもてないのであった。
 アルンがパールと初めて出会ったのは、第2学年が始まったばかりのころ、大学の食堂でであった。沈鬱な表情のパールにアルンが話しかけたのがきっかけで、二人の交際が始まった。アルンの両親と違って、パールの両親は離婚の危機にあり、パールは落ち込むことが多かった。彼女はアルンを当てにしようとするが、彼がパールの気持ちをよく理解していたとは言いがたかった。二人の仲はとてもハッピーに見えたが、ある時、アルンが激怒したパールにコップを投げ付けられ、万事休す・・・。
 アルンは友人たちとポンディシェリーへ行く。友人のジョン(Shyam)の婚約を祝うためである。そこでアルンはジョンのフィアンセ、キャシー(Pooja)と親しくなり、彼女にパールとの破局の経緯を語って聞かせる。話を聞き終えたキャシーはアルンに、もう一度パールに電話をかけるように言う。電話を通して久々に話すアルンとパールであったが、結局は意地の張り合いで、仲直りが実現せず。パールはアメリカ留学を決意する。しかし、この電話を通してアルンは一つの事実を知る。彼がパールを怒らせた決定的な理由は、彼が彼女からの電話を無視したためであるが、その無視した理由というのが、友人とフリスビーをするのに忙しかったからである・・・。
 パールの両親の離婚協議を担当していた弁護士は実はアルンの父であった。息子を通してパールのことを知っていたアルンの父は、パールの父アキラン(Suresh)にやんわりと離婚を思い留まるよう説得する。
 これが功を奏して、パールの両親はよりを戻し、離婚を取り止める。また、破局の危機にあったジョンとキャシーも仲直りする。ヴィグネーシュの件もなんとかなりそうだった。シヴァは相変わらず女の子からビンタを食らっていたけど、、、。これらの出来事を見て、アルンはパールとよりを戻そうとする。二人は大学の食堂で再会するのであったが、、、。

   *    *    *    *

 面白かったと素直に言ってもいいのだが、どうもしっくり来ないものも感じた。
 一番の違和感はタマンくんのパンパカした、いかにも「学園ラブコメです」を強調した感じの音楽だったかもしれない。いやいや、それよりも、、、
 そう言えば、私はかつてインドの若者恋愛映画を熱心に観ていた時期があったが、それと言うのは、別にインドのお若い方の好いた惚れたのドラマを楽しみたかったからではない。そもそも私がインド映画を連続的に鑑賞する理由は、「インド映画」の変化を追求したいからではなく、仕事柄、「インド人」の変化を知りたいからである。インド人は変化しているのか否か、変化しているのなら、どんなカテゴリーの人々がどのように変わりつつあるのか、それを知る上で、インド映画の「恋愛物」は一つのマーカーになると考えたわけである。それで、新しいタイプの恋愛映画・若者映画に遭遇したりすると、「ほ〜ぉ、インド人もこんなこと言うようになったか」と新鮮なものを感じたものだが、それが本作【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】のような、比較的若者の実像に近いものを描いた作品があっさり目の前に現れると、かえって「ああ、そうですか」という気持ちになった。つまりは、恋愛そのものを扱った若者映画というのはもうエポックなものではなく、わざわざ探し出して、俎上に上げて論じるといった類のものではなくなった、ということだろう。今後、南インドでもこの種の映画は当たり前のように作られ、楽しまれるだろうと思う。

 恋愛そのものをテーマにした映画というのは、興行的にもリスクが大きくて、まだまだ南インドでは多く作られていないが、しかし本作のような作品がなかったわけではない。意地の張り合いが恋愛の阻害要因になるというのはタミル映画【Unnale Unnale】(07)やテルグ映画【100% Love】(11)でも扱われていたし、関係を維持する秘訣が「お互いの我慢」だというのはテルグ映画【Konchem Istam Konchem Kastam】(09)のテーマだった。男の立場から見て、女は理解しにくいものというのは、タミル映画【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)でも強調されていた。
 内容面ではそれほど新しいものは感じなかったが、描き方の面で、フラッシュバックの多用、出演者がカメラ目線で語るセミドキュメンタリー・タッチの分析的手法など、ユニークだったと思う。

 実は、肝心なことだが、私は本作のメイン・プロットであるアルン(Siddharth)とパール(Amala Paul)の展開にあまり感銘を受けなかった。むしろ、ポンディシェリーのエピソード、つまりジョンとキャシーの関係、ジョンにキャシーを取られた陰湿な友人、キャシーとアルンの対話などに、いやにリアルなものを感じた。
 そして、私の一番のほのぼの感動ポイントが、パールの両親(Suresh & Surekhavani)のロマンスだったというのだから、まぁ、私も立派な実年世代だということだわな。

◆ 演技者たち
 まるで万年大学生のようなシッダールタは、さすがにこういう役をやらせれば様になる(というより、南インドじゃ、彼にしかできない?)。ただ、非常に上手いものを感じるのだが、上手さが目立ちすぎて、そこはかとなくアーミル・カーンの香りを嗅いでしまった。【Nuvvostanante Nenoddantana】(05)の頃のシッダは本当にひたむきな青年で、美しかったのだが、、、。
 (写真下:監督の指示を偉そうに聞くシッダくん。)

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 アマラ・ポールさんについては、今回も【Mynaa】に並ぶ衝撃はなかったものの、まずまずだろう。こてこての白塗りを避けたやや黒めの肌、地味めの衣装がナチュラルで、かえって可愛らしく見えた。シッダールタとの相性も良かったみたい。
 彼女のタミル語の吹き替えは、【Mayakkam Enna】(11)でリチャの吹き替えを担当したディーパ・ウェンカットさん。これまた自然な感じで、良かった。
 (写真下:不機嫌な表情が多かったアマラさん。)

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 他の脇役たちも、パールの母役のスレーカーワニ、アルンの母役のシュリーランジャニ以外、知らない人ばかりだったが、なかなか良かった。

◆ 音楽・撮影・その他
 上で触れたとおり、本作のタマンくんの音楽は、彼の多彩な才能が窺えるものの、私はあまり好きじゃない。なんと言うか、もっと不細工な曲を聴かせてほしかったのだが。

 ニーラヴ・シャーのカメラは、腕の良いコックが有り合わせで作ったお手軽料理みたいなものだったが、旨いものは旨い。

◆ 結語
 【Kadhalil Sodhappuvadhu Yeppadi】は、格好の新世代ラブコメ映画だと言えるし、若いバーラージ・モーハン監督のセンスの良さも窺える。私的にはもうひとパンチ足りないものを感じたが、これがヒットしているという状況は注目すべきだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。南インドのたくさんの言葉の映画を紹介されていますね。詳しいレビューがあるので思ったのですが、それぞれ吹き替えや字幕などがあるのでしょうか?突然の質問ですみませんが、教えていただけますか?
satsuki
2012/03/06 15:50
コメント、ありがとうございます。

現地の劇場で一般的に公開されている商業映画には、普通、吹き替えや字幕はありません。(ごく稀に英語字幕がありますが、特殊なケースです。)
それで、「南インドのそれぞれの言語がお分かりになるんですか」とよく聞かれるんですが、実はほとんど分かっていないんです。
それなのに、分かったふうにレビューを書くなんて、ほとんどウソつきですが、他にやってくれる人がいないので、やむなく私がひと肌脱いでいるって感じです。

しかし、映画というのは言語以外の要素にかかる比重も大きいので(例えば、カメラワークとか、ダンスの巧拙とか)、なんとかレビューは書けるものですよ。
 
カーヴェリ
2012/03/07 03:15

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