カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aravaan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/04/12 21:45   >>

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 しばらく日本へ一時帰国していたので、この映画日記も途切れていたが、再開。
 まずはタミル映画【Aravaan】から。先月、帰国途上に立ち寄ったクアラルンプールにて鑑賞。

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 本作は【Veyil】(06)、【Angaadi Theru】(10)で好評を博したヴァサンタ・バーラン監督の新作ということで、注目作となっていた。予告編を見る限り、筋骨隆々の男たちが活躍する時代劇だと予想され、また、アンジャリ、アルチャナ・カヴィ、シュウェータ・メーノーンなどの私好みの女優たちも出演しているようなので、ぜひ観たい1本だった。
 原作はSu. Venkatesanという人の小説‘Kaval Kottam’。
 題名の「Aravaan」は、おそらく『マハーバーラタ』の登場人物、アルジュナの息子の1人で、カーリー神への生贄となった英雄アラヴァーンのことだと思われるが、違っているかもしれない。(サントーシュ・シヴァン監督の【Navarasa】参照。)

【Aravaan】 (2012 : Tamil)
脚本・監督 : Vasantha Balan
出演 : Aadhi, Pasupathy, Dhansika, Archana Kavi, Karikaalan, Singampuli, Thirumurugan, Kabir Bedi, T.K. Kala, Bharath(特別出演), Anjali(特別出演), Shruthi Prakash(特別出演), Shwetha Menon(特別出演)
音楽 : Karthik
撮影 : Siddharth
編集 : Praveen K.L., N.B. Srikanth
制作 : T. Siva

《あらすじ》
 18世紀のタミル・ナードゥ。マドゥライ地方のウェンブル村に暮らすコンブーディ(Pasupathy)は、泥棒をして生計を立てている一族の頭だった。彼はある時、単独で泥棒をしている男を発見する。それはワリプリ(Aadhi)という名の、非常に勇敢で能力のある若者だった。コンブーディはいたく彼を気に入り、自分の村まで連れて帰る。
 ある夜、コンブーディらはマルドゥル村の富裕家に忍び入る。しかし、手下のへまで衛兵に見つかってしまう。一味は逃走するが、コンブーディだけ捕縛されてしまう。しかし、そこはワリプリが救出することに成功するが、その際に衛兵の一人がワリプリのことを「チンナ!」と呼ぶ。
 実際にワリプリはチンナヴィーランパッティ村出身のチンナという人物だった。後日、マルドゥル村の衛兵がやって来、チンナ(ワリプリ)を捕縛する。チンナは人身御供として死を待つ身でありながら、逃亡したという理由である。村へと連行される途上で、チンナの回想が始まる、、、。
 ・・・
 チンナはチンナヴィーランパッティ村で衛兵をしている若者で、ワーナペッチ(Dhansika)という許婚もいた。平穏な日々を送っていたチンナだが、ある朝、一人の他殺体が発見されたことから、彼の運命が変わる。それは隣村マルドゥル村の青年(Bharath)の死体だった。チンナヴィーランパッティ村とマルドゥル村は長年対立関係にあったため、マルドゥル村の住民が騒ぎ始める。領主(Kabir Bedi)は騒ぎを鎮めるために、代わりにチンナヴィーランパッティ村の男を一人、生贄として差し出すことを命じる。そして、籤引きで決まったのがチンナであった。
 死の日を待つチンナだが、様々な関係者と会い、話を聞くうちに、青年殺害の真相が分かる。彼はそれを公にしようとするが、運命は皮肉な方向に進み、逃亡せざるをえない状況となる、、、。

   *    *    *    *

 予告編から血沸き肉踊る時代活劇を予想したが、そういうものではなく、どこか沈んだ感じの作品だった。

 物語は18世紀、まだイギリスの手が届いていないタミル・ナードゥのマドゥライ地方の村落部が舞台。映画の前半は、ここに生存するコンブーディ(Pasupathy)率いる盗賊コミュニティーの様子が描かれ、この時代に実際にこういう人々がいたという事実自体も面白いが、映画中の描き方も活き活きとしていて、見どころだと言える。しかし、この前半と後半のチンナ(Aadhi)の「人身御供」のエピソードが特に緊密に接合していないのが苦しいところだ。ただ、隣村の青年の死がミステリー仕立てで明らかにされていく展開はよく練られていたと思う。

 男っぽい時代劇の形を取りながらも、描こうとしたのは友情や家族愛、不倫や肉欲など、様々な愛の形だったように思える。人間の愚かさから、愛が悲劇をもたらすケースが幾重にも描かれ、それは例えば、盗賊が泥棒に入った館の若い女が首吊り自殺をしていたというような小さなエピソードにまで貫かれている。もちろん、中心となるのはチンナのストーリーで、愚かな権力者により、理不尽な経緯で死を命じられた男の命運がドラマティックに描かれている。クライマックスで、自身が吊るされる柱をチンナが担ぎながら丘を登るイメージは、おそらくゴルゴタの丘を登るイエス・キリストを念頭に置いたものだろう。

◆ 演技者たち
 主人公、ワリプリ/チンナを演じたのはアーディ。筋骨隆々のボディーと落ち着いた物腰で良かったが、なにせ顔が地味すぎるのが悲しい。監督のヴァサンタ・バーランは彼のことを「タミルのリティック・ローシャン」と評しているようだが、そこまでの華はない。私的には本作より【Eeram】(09)の警官役のほうが好きだ。
 (写真下:牛と格闘するアーディ。かなりの迫力。)

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 本作ではコンブーディ役のパスパティのほうが印象に残るだろう。この人がこんなに筋肉があるとは思わなかった。しかも、パスパティといえば薄毛というイメージだが、本作ではみっちりと頭髪に覆われ、別人かと思った。(下)

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 誰がヒロインと言うのは難しいが、チンナの許婚/妻を演じたダンシカさんがヒロインとなろう。エキゾティックで、きりっとした顔立ちがきれいに見えた。あまり注目されておらず、著名作としては【Peranmai】(09)ぐらいしかないようだが、もう少し使われてもいいと思う。(下)

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 アルチャナ・カヴィさんはコンブーディの妹役だった。古い時代の田舎娘役ということで、彼女の魅力が炸裂するのではと期待したが、出番も少なく、あまり映えてもいなかった。残念。(下)

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 バラト、アンジャリ、シュルティ・プラカーシュ、シュウェータ・メーノーンと、特別出演者が多かったが、どれもあまり効果的な使われ方ではなかった。強いて言えば、娼婦役でダンスを見せたシュウェータ・メーノーンが印象的か。
 バラトは「死体役」で、生きているシーンはほんのちょっとしかなかったが、「帰って来たボブ・マーリー」といったメイクで、笑ってしまった。(下)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は、プレイバック・シンガーとして活躍しているカールティクの担当。音楽監督としては初仕事らしい。今となってはまったく記憶に残っていないが、悪かったという印象はない。

 撮影はシッダールトという人の担当。概ね良かったと思う。
 時代物ということで、美術、衣装、メイクが重要となるが、美術監督はヴィジャイ・ムルガン、衣装はS・ラージェンドラン、メイクアップはサラットクマールとナーゲーシュワラ・ラーウという人がそれぞれ担当している。どこまで綿密に考証・再現されているか分からないが、絵的には面白かった。

◆ 結語
 ヴァサンタ・バーラン監督の新作ということで期待したが、あまりカタルシスを生まない悲劇的結末と長い上映時間(2時間48分)から、観るのに骨の折れる作品となってしまった。しかし、時代物というジャンル自体が珍しいのに加えて、内容的にも特殊なので、インド文化に興味のある方なら一見の価値はあると思う。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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