カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Govindaya Namaha】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/04/22 22:05   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 6 / コメント 0

画像

 コーマル・クマール主演のカンナダ映画。
 コーマル・クマールといえば、カンナダ映画界の著名喜劇俳優ジャッゲーシュの弟で、彼自身、ランガーヤナ・ラグ、サードゥ・コーキラ、ブレット・プラカーシュ、チャランらと並んで、サンダルウッド・華のコメディー衆の1人と見なされている。
 たいていはコメディー・パートを担当するだけであるが、【Mr. Garagasa】(08)辺りから主役も務めるようになり、【Chamkaysi Chindi Udaysi】(09)、【Vaare Vah】(11)、【Kal Manja】(11)など、好興行成績を挙げた作品もある。
 ルックスは黒豚、芸風はねちねちっとしていて、まったく日本人の好むタイプのコメディアンではないが、現地ではそこそこの人気を誇っている。
 本作はそんなコーマル・クマールの待望の新作だったわけだが、実は、もっと別のことで話題となっていた。それは、挿入歌の1つ‘Pyarge Aagbittaite’が公開前に大ヒット、それもタミル映画【3】の‘Why This Kolaveri Di’と同様、YouTubeを介してのヒットとなっていたからである(こちら)。
 題名の「Govindaya Namaha」はゴーヴィンダ(クリシュナ)神を称える句であるが、日常レベルでは大切なものが失くなったり、壊れたり、死んだりした時などに発せられる嘆息で、「南無阿弥陀仏!」みたいな意味になる。

【Govindaya Namaha】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Pawan Wadeyar
出演 : Komal Kumar, Harish Raj, Parul Yadav, Rekha Vedavyas, Madhulika, Anna Georgia, Dattanna, Mukhyamantri Chandru, Tabla Naani, Raju Thalikote, Vinayak Joshi, M.S. Umesh
音楽 : Guru Kiran
撮影 : Suresh Babu
制作 : Suresh

《あらすじ》
 ゴーヴィンダ(Komal)は自殺をしようと建設中のビルの屋上に登る。ところが、そこへもう一人の男がやって来、やはり飛び降り自殺を図ろうとする。その男はカールティク(Harish Raj)という名のソフトウェア技術者で、同僚の女に振られたのを苦にして、死を思い立ったのであった。カールティクの失恋話を聞いたゴーヴィンダは、そんなのは生やさしいと、自身の体験を語って聞かせるのであった。
 ・・・
 ゴーヴィンダは無責任で享楽的な若者だった。彼は故郷でヴァイデーヒ(Madhulika)という女性に色目を使う。だが、ヴァイデーヒの父(Mukhyamantri Chandru)は村一番の金持ちだったため、ゴーヴィンダのことを不快に思い、村から出て行くよう指示する。それを知ったゴーヴィンダの祖父(Dattanna)は、孫に10万ルピー渡し、この金でヴァイデーヒと駆け落ちするように言う。ところがゴーヴィンダは、大金を手にするなりヴァイデーヒのことはすっかり忘れ、単身バンガロールへ出る。そして、賭博をして警察に逮捕されてしまう。
 ゴーヴィンダは牢獄でイスラーム教徒の男と知り合い、彼の所有する自動車修理工場で働くことになる。そこはイスラーム教徒が多く居住するエリアで、ゴーヴィンダはムムターズ(Parul Yadav)という女性と知り合い、良い関係となる。ところが、仲間と酒を飲んでいるときに、ゴーヴィンダはムムターズをネタにした猥談を語ってしまい、偶然それを聞いた彼女に嫌われてしまう。
 ・・・
 ここまで話し終えたとき、ゴーヴィンダは毒を飲んでいたため、吐血して倒れてしまう。カールティクが速やかに病院へ運んだため、ゴーヴィンダは助かり、さらに回想を続ける。ところがその病院にはムムターズが看護婦として働いており、ゴーヴィンダの話をこっそり立ち聞きする。
 ・・・
 自動車修理工場のつながりで、ゴーヴィンダはある企業の運転手として働くことになる。彼はチェータン(Vinayak Joshi)という社員を乗せていたが、チェータンにはステイシー(Anna Georgia)という白人の恋人がいた。ところが、あろうことかステイシーはゴーヴィンダと恋仲になってしまう。だが、ゴーヴィンダのターゲットはステイシー自身ではなく、彼女がチェータンにもらった50万ルピーのダイヤの指輪であった。しかし、ステイシーがチェータンと分かれた際にその指輪も捨てたことが分かると、ゴーヴィンダは彼女を捨てる。
 ゴーヴィンダはそれから、ムムターズの件で腹を立てていたイスラーム教徒の連中にぼこぼこに殴られ、路上に倒れる。そんな彼を救い、介抱したのがシーラ(Rekha)だった。シーラは夫に先立たれた寡婦だったが、ゴーヴィンダは彼女の優しさ、慎ましやかさにすっかり惚れ、真剣に結婚を考える。だがある夜、彼女が別の男とベッドを共にしているのを目撃し、号泣する。
 ・・・
 ゴーヴィンダが自殺を決意したのはシーラの件が引き金だった。だが、それだけではなかった。彼はシーラの件で傷付いたことにより、自分がこれまでヴァイデーヒ、ムムターズ、ステイシーと3人の女性を傷付けたことを悟り、贖罪のために死のうとしたのだとカールティクに告げる。
 その話を物陰から聞いていたムムターズは、ゴーヴィンダが改心したことを確認し、彼の前に姿を現してプロポーズする。またカールティクも、病院で出会った女性と恋の予感を感じる。

   *    *    *    *

 上に久々に長めのあらすじ(しかも、結末まで)を書いたので、まぁ、これさえ読んでいただければ、本作が何を言わんとしている作品かが分かるだろう。
 コメディアンのコーマル・クマール主演ということで、コメディー映画には違いないが、お気楽なドタバタ・コメディーではなく、教訓と風刺の込められた生真面目なコメディーだった。実は、カンナダ映画では、グル・プラサードやラメーシュ・アラウィンド(監督兼俳優)などの作品のように、こういう風刺コメディーがコンスタントに作られ、それが同映画産業の一つの特徴ともなっている。

 一応、5つの音楽シーンと2つのアクション・シーンが配置されているのだが、どれも(サプライズ・ヒットとなった‘Pyarge Aagbittaite’でさえ)しょぼいもので、あくまでも本作の魅力は台詞にある。監督は新人のパワン・ワーディヤールという人で、どうもヨーガラージ・バット監督の助手をしていた人らしい。台詞重視のスタンスは師匠譲りかな、と思えないこともない。2時間程度の短尺で、見え見えの低予算作品なのであるが、しかし、けっこう面白い。これで、出演者がもっと豪華で、ダンス、アクションなどの娯楽要素がよくできていれば、一気にお勧め作となったのだが、、、悲しきかな、サンダルウッド。

 内容的には、「自殺の批判」という点では、タミル映画の【3】よりよっぽど面白く、インド映画らしくまとめられている。
 「男女関係の風刺」という点では、あくまでもゴーヴィンダ(Komal)の体験談がメインなのだが、私的には聞き役となったカールティク(Harish Raj)の失恋譚が面白いと感じた。カールティクは典型的なソフトウェア技術者タイプとして設定され、ゴーヴィンダからも名前ではなく、「ソフトウェアさん」と呼ばれる。この男が情けない性格で、また彼を振ることになった女というのも図々しい典型的な「ソフトウェア女」として描かれ、こういう男女のアホくさい茶番劇が実社会で頻発しているとすると、そりゃあ、インド映画も変わるさ、と思った。
 もう一つ興味深かった点は、本作ではイスラーム教徒の登場人物が重要なウェートを占め、ゴーヴィンダはヒンドゥー教徒のバラモンなのだが、最後はイスラーム教徒のムムターズと結ばれる。こういうストーリーはカンナダ映画では非常に珍しい。

◆ 演技者たち
 主演のコーマル・クマールは、私はそこそこ腕の良い喜劇役者だと思っているのだが、本作では力量が目一杯発揮されているとは思えなかった。ただ、「バカ男、改心す」という味はよく出ていた。

 カールティク役のハリーシュ・ラージは、「Jumping Star」というカッコいい冠タイトルと共に登場したのに、観客の爆笑を買っていた。つまりこれには裏があり、去年、彼が監督・主演した【Gun】が当たらず、2週間で打ち切られそうになったときに、彼がサントーシュ劇場の屋上に登り、「打ち切るなら、ここから飛び降りるぞ!」と騒ぎ、警察に逮捕された、という実話を踏まえたもの。
 ハリーシュ・ラージといえば、カンナダ映画界でも才能ある二枚目俳優のはずだが、お笑い芸人のレベルにまで落ちてしまったのは気の毒なことだ。

 ヒロイン(?)は4人いるのだが、これがまた予算の都合か、まったく知らない新人女優か賞味期限切れB級女優のオンパレードだった。
 その中でもまだ目を惹いたのはムムターズ役のParul Yadavさん。(写真下。下のYouTube動画も参照。)

画像

 こちらはヴァイデーヒ役のMadhulikaさん。どう見ても素人にしか見えんかった。

画像

 賞味期限切れB級女優は、シーラ役のレーカさん。

画像

 最後はステイシー役のAnna Georgiaさん。「ハンピでごろごろしてるところを、スカウトされました」って感じ。

画像

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はグル・キランの担当。最近、影の薄いGKだが、本作では久々に、本当に久々に、彼らしい仕事をしている。
 ただ、音楽シーン全体の出来はあまり良くない。
 その中でも出来が良いのは、やはりセンセーショナル・ヒットとなった‘Pyarge Aagbittaite’なのだが、皆さん、下の動画を見て、どうしてこれが話題となったか分かります?(私は分かりません。)



 曲と振り付けという点では別段すごいわけでもなし、、、やっぱり歌詞が面白いのかなぁ。この面倒くさそうに歌う歌い方がウケたのかも。ちなみに、歌詞はカンナダ語とウルドゥー語のミックス。ロケ地はカルナータカ州ビジャープルにある史跡が使われている。

 撮影はあまり良くなく、ある意味、カンナダ映画らしい。

◆ 結語
 コンセプトは面白く、実際にまずまず楽しめる作品となっている。ただ、私は好きだが、全体的なクオリティー、テイストからすると、やはり現地人限定の映画となるだろう。

・満足度 : 2.5 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(6件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Bachchan】 (Kannada)
 サンダルウッドで集客の期待できるスターといえば、今ではプニート、ダルシャン、スディープということになるが、なかんずくスディープはテルグ映画【Eega】(12)での成功により、スターとして、演技者として、一段厚みを増したかのようである。  そんな彼の気になる新作が本作【Bachchan】。題名は明らかにアミターブ・バッチャンを意識したもので、スディープが若き日のアミターブが体現していたような「Angry Young Man」を演じるとの噂だった。果たしてスディープはビッグBと肩を並べ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/04/21 14:51
【Victory】 (Kannada)
 9月6日から9日(祝日)の週末は、さして注目していた映画もなかったので、この間から気になっていたカンナダのコメディー映画【Victory】を観て来た。これは8月23日に公開されたものだが、ヒットしており、口コミ評価も上々。  監督はナンダキショールという新人。新人だが、父はスディールというカンナダ映画界の往年の著名悪役俳優なので、「どこの馬の骨」というわけではない。(このスディールはダルシャンの父トゥーグディーパと同時代に活躍した俳優。)  主演はコメディアンのシャラン。彼はコメ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/09/14 02:37
【Dyavre】 (Kannada)
 我が街バンガロールのご当地映画産業といえばカンナダ映画だが、残念ながらカンナダ映画は、年間製作本数こそ100本を超え、インドの主要映画産業の地位を保っているとはいえ、質的には南印4州の中でも低いとされ、「野暮ったい」だの「古くさい」だの「説教くさい」だの「リメイク王国」だのとボロクソに言われている(ほとんど私が言っているのだが)。  そんな中でも、オリジナリティーのある秀作、意欲作を発表してきた監督にヨーガラージ・バットとスーリ(この二人は親友関係)がいるが、最近ではこの二人の弟子、ま... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/12/13 10:23
【Rana Vikrama】 (Kannada)
 プニート・ラージクマールの話題の新作は【Rana Vikrama】。  プニートの作品はすべて観ていたが、2014年の2作(【Ninnindale】と【Power***】)はお休みし、先日観た【Mythri】はやや変則な役柄だったので、プニートの本格的主演作を観るのは1年半ぶりになる。  もちろん、プニートが楽しみということではなく、私の目当てはアンジャリとアダー・シャルマーなのだが、それは脇に置くとして、今回は監督のパワン・ウォデヤルに注目したい。ヒット作【Govindaya ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/04/15 21:17
【Jessie】 (Kannada)
 ちょっと夏バテ気味なので、気の張ることはしたくなく、映画もブログの書きやすそうなものを観よう、、、そうするとカンナダ映画になるわけで、ハリプリヤー出演の【Ranathanthra】にするか、パワン・ウォデヤル監督の【Jessie】にするかで迷ったが、前者がホラー映画っぽかったので今回はパスして、【Jessie】を観ることにした。と、ところが、こちらもホラーだったというオチが! ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/04/05 20:30
【Nataraja Service】 (Kannada)
 コメディアンと言えば、昔はインド映画において花形だったが、近年目に見えて重要度が低くなっている。南インドでも、タミルやテルグでさえ、10年前に比べるとずいぶんコメディー・シーンの在り方が変わってしまった。ところが、カンナダ映画ではまだ健在で、下手な主演級俳優よりコメディアンのほうが人気が高く、登場シーンの指笛も高らかだったりする。  そんな幸せなカンナダ・コメディー陣にあって、安定した人気を誇っているのがシャランで、彼は出演100本記念作品の【Rambo】(12)で主演を務めて以来、ジ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/11/23 20:50

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Govindaya Namaha】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる