カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Dev S/o Muddegowda】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/04/26 21:21   >>

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 インドラジット・ランケーシュ監督のカンナダ映画。
 インドラジット・ランケーシュについては、前作の【Huduga Hudugi】(10)評の中でやや詳しめに紹介しておいた。本業はジャーナリズムのはずだが、こと映画監督業となると、ごちゃごちゃ難しいことは言わず、美人女優を配した趣味の悪い、もとい、きらびやかな作品を作りたがる人で、どうも道楽で映画を撮っているという印象を受ける。
 また彼は、単にカメラの後ろで演出に専念する職人監督とは違って、プロモート活動やインタビューの受け答えなども派手で、自身の作品にカメオ出演もしたりと、なにかと落ち着きがない。そんなせいか、彼には‘Star Director’という奇妙な冠タイトルが付けられている(おそらく自分自身で付けたのだろう)。
 主演はディガントだが、それよりもチャルミーがヒロインを務めていることに注目したい。チャルミーはカンナダ映画では【Lava Kusha】(07)以来2作目となる。最近、影が薄くなった感は否めないが、やはり才能のある女優、それなりのパフォーマンスは見せてくれるだろう。

【Dev S/o Muddegowda】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Indrajith Lankesh
出演 : Diganth, Charmi, Anant Nag, Sudha Belawadi, Sharan, Tabla Naani, Raju Thalikote, Swayamvara Chandru, Mithra, Suchendra Prasad, Rekha V. Kumar, Nathalia Kaur, Indrajith Lankesh
音楽 : Jassie Gift
撮影 : Santosh Rai Pathaje
編集 : K.M. Prakash
制作 : Shilpa Ramesh Ramani

《あらすじ》
 楽天的な大学生のデーヴ(Diganth)は、衣類製造販売会社を営むムッデーガウダ(Anant Nag)の一人息子。ムッデーガウダは若い頃貧しく、勤勉に勤勉を重ねて財を成しただけに、息子にもしっかり学業を修め、その後、家業を継いでほしいと願っていた。しかし、デーヴは勉学にもビジネスにも関心を示さず、映画俳優になりたいと思っていた。
 大学の創立25周年記念祭に、デーヴと友人たちはダンス・プログラムを出そうと、振付師を探す。彼らはカーヴィヤ(Charmi)という映画の振付師に依頼するが、彼女は学園祭のプログラムには関心を示さなかった。しかし、デーヴらの熱心さに折れ、引き受ける。
 大学の卒業試験となるが、ほぼ勉強していなかったデーヴは落第する。ムッデーガウダはそのことで強く息子を叱るが、デーヴはこの時、父に映画俳優になりたい意思を告げたため、家を追い出される。
 路頭に迷うデーヴを救ったのはカーヴィヤだった。彼女はデーヴを自分の部屋に住まわせる。カーヴィヤ自身、映画監督になるために切磋琢磨していたが、彼女はデーヴに俳優として成功することの難しさを教え諭す。カーヴィヤに啓発されたデーブは、ドラマスクールで演技とスタントを習い始め、また、資金を稼ぐためにレストランでアルバイトも始める。
 そうしているうちに、デーヴにチャンスがやって来る。カーヴィヤが振り付けを担当していた映画の主演俳優ディープ(Indrajith Lankesh)が怪我で降板したため、代役を探すことになったのである。カーヴィヤは監督(Tabla Naani)にデーヴを推薦する。初めはうまく行かなかったが、やがてデーヴの技量が認められ、撮影が続けられる。
 デーヴは初めてもらったギャラの10万ルピーの小切手を父に見せる。だがその時、父は病気で倒れてしまう。
 デーヴの主演映画は晴れてヒットとなる。病が癒え、映画を観たムッデーガウダはデーヴにサインを求める。また、記者会見の場でデーヴは、次の主演作品の監督はカーヴィヤで、題名は「ドリーム・ガール」だと発表する。

   *    *    *    *

 インドラジット・ランケーシュの作品にはほとんど元ネタがある(つまり、パクリ)わけだが、本作もヒンディー映画【Wake Up Sid】(09)から大枠を借りている。ただし、中身や主題は異なっており、リメイクとまでは行かない。
 インドラジット監督はストーリーを作るのが苦手、というより、彼が映画において重視するのはオーディオ・ヴィジュアルな快楽性であり、ストーリー性はどうでもいいようである。「映画にストーリーを見るな。ストーリーがお望みなら、小説でも読めばいい」とまで言い切っているのであるが、これが言えるには、本当に面白い「映画的」映画を作ってみせる必要がある。だが、インドラジット監督の場合、残念ながら本作も前作【Huduga Hudugi】も面白いとは言えない作品だった。
 持論は分かるが、本作ほど腰砕けの映画を見せられては、やっぱりこの人は素人なんだなぁ、という感を強くした。

 ただ、インドラジット監督の面白さは、ジャーナリストらしく、けっこう好き勝手に当てこすりとか皮肉を散りばめていることで、今回は映画産業界がターゲットとなっていた(参考に、前作【Huduga Hudugi】ではテレビ業界)。映画産業界といっても、豪華絢爛なそれではなく、ローカルでセコい業界(つまり、カンナダ映画界)の様子が面白おかしく描かれている。例えば、プロデューサーがいかにお金を出し渋るかとか、監督、プロデューサーの周りにいかに変人が集まるかとか、この辺のアホくささは「夢のスターワールド」というより、「お笑い業界」に近い。
 インドラジット監督自身が特別出演し、ディープという名の映画スターの役をやっているのだが、これはどうもカンナダのトップスター「スディープ」をパロったものらしい。
 また、本作の「Dev S/o Muddegowda」(デーヴ、ムッデーガウダの息子)という題名が「ウォッカリガ(ガウダ)・コミュニティーを侮辱するものだ」と、公開前に同コミュニティーからクレームが付くという出来事があった。蓋を開けてみると、特定のカーストを風刺・侮蔑するような部分も見当たらないのだが、インドラジット監督にしてみれば、元カルナータカ州首相のデーヴェーガウダを茶化すぐらいの意図はあっただろう。

◆ 演技者たち
 順調に主演作品本数が伸びているものの、まだ「ヨーガラージ・バット監督作品以外、当たらない」というジンクスを破れていないディガントくんだが、本作もヒットは難しいそうだ。ただ、ディガントのパフォーマンスそのものには進歩が見られる。もっと逞しくなって、女性ファンだけでなく、男性ファンも獲得できればいいのだが。

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 注目としたチャルミーだが、やはり良い。退屈な本作でも最後まで観通せたのは、まずチャルミーの豊かな表現力に負うところが大きい。映画監督志望の振付師という役柄だったが、彼女のダンス・スキルからして、これはうってつけだった。
 本作がチャルミーにとって幸運の1本になるとは思えないが、私的には、彼女が健在であることを確認できて、うれしかった。
 (写真下:本作を見て、「チャルミーも良い女になったなぁ」と思った。)

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 父親ムッデーガウダ役のアナント・ナーグはテーラーメイド。
 コメディアンでは、使用人役のミトラのボケ方が笑えた。

 さて、あろうことか、映画スター役で特別出演してしまったスター監督のインドラジット・ランケーシュだが、演技・セリフ回しの点では特に褒めるところはない。ただ、この人は長身で四肢が長く、またスキンヘッドにサングラスが特異な雰囲気を醸し出していて、サンダルウッドの幾人かの「スター」よりもカッコよく見えたのは事実だ。
 ところで、インドラジット・ランケーシュは女優に顔が利くのか、【Aishwarya】(06)ではディーピカ・パドゥコーネを銀幕デビューさせ、【Huduga Hudugi】ではイリアナをカンナダ映画デビューさせている。本作にチャルミーを引っ張って来たのにもパワーを感じるが、もう一人、ナタリア・カウルというモデル系美女をデビューさせたというのも話題になっていた。
 このナタリア・カウルについては、「田んぼ美女派」の私としてはまったく関心が湧かないが、Wikipediaの記事を読む限り、けっこう面白い。本作では映画ヒロインの役だったが、実質的にはアイテム・ナンバー担当だった。母親役に「うちの娘はアイテム・ガールじゃなく、ヒロインなのに、どうしてこんなに衣装が小さい(露出が多い)の?」と聞かれたプロデューサーが「予算が小さいから、衣装も小さいんよ」と答えるシーンは、妙に説得力があった。
 (写真下:インドラジットとナタリアのこなれの悪いツーショット。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はジェシー・ギフトの担当。まずまず楽しい曲が並んでいた。

 サントーシュ・ライ・パータージェの撮影はクリアで良い。

 ところで、アナント・ナーグ演じる父親の名前「ムッデーガウダ」の「ムッデ」は、まず間違いなく「ラーギ・ムッデ」のことだと思われる。「ラーギ・ムッデ」は南インド、殊にカルナータカ州でよく食される庶民料理であるが、非常に体に良い雑穀料理なので、皆さまも当地にお越しの際は、ぜひお試しあれ。
 (写真下:見てくれは不細工だが。)

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◆ 結語
 インドラジット監督の新作ということで、ちょっと期待したが、にべもしゃしゃりもない映画だった。チャルミー以外、見るところなし。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ムッデが名前の人とか、いるんですね…そういえば、ケララのプットゥーが名前の俳優さんがいますね。
yama_g きょへき
2012/04/26 21:48
きょへきさん、お久しぶりです。
食物名が名前の一部になるというのは、日本でもありますよね。
そういえば、きょへきさんはバンガロールでラーギ・ムッデを召し上がってますね。また遊びにいらっしゃってください。
 
カーヴェリ
2012/04/28 02:50
ラーギ・ムッデは教えて貰わないと食いそびれるところでした。感謝です。食べた後、やたら胃が爽快で身体に良いのが分かりました。また行きたい…
きょへき
2012/04/28 21:07

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