カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Dammu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/05/03 21:00   >>

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 ボーヤパーティ・シュリーヌ監督、NTRジュニア主演のテルグ映画。
 ボーヤパーティ・シュリーヌといえば、デビュー作の【Bhadra】(05)以来、【Thulasi】(07)、【Simha】(10)と快調にヒットを続けており、トリウッドの重要な若手監督の一人だと言えよう。作風はかなり強烈なアクション物、と言うよりバイオレンス物で、私は嫌いとは言わないが、観るのに少々体力が要るという印象がある。前作【Simha】のバーラクリシュナに続いて、本作【Dammu】でもナンダムーリ家からの主演俳優起用となったが、年齢からして、エネルギーという点ではNTRジュニアのほうがバーラクリシュナより上だろう。【Simha】には腰を抜かすほどのインパクトを受けた私だが、本作はそれを上回る激しさだと予想され、本当にそうなら嫌だなぁと尻込みしなくもなかったが、やはり観ておくことにした。
 題名の「Dammu」は「力」とか「勇気」という意味らしい。
 (写真下:ボーヤパーティ・シュリーヌ監督。映画の凄まじさとは裏腹に、ほのぼのとした感じのお兄さん。カラオケでは「神田川」を歌い出しそうだ。)

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【Dammu】 (2012 : Telugu)
脚本・監督 : Boyapati Srinu
出演 : NTR Jr, Trisha, Karthika Nair, Suman, Nasser, Kota Srinivasa Rao, Bhanupriya, Venu Thottempudi, Abhinaya, Ahuti Prasad, Subhalekha Sudhakar, Tanikella Bharani, Ali, Brahmanandam, Sampath Raj, Kishore, Sridhar Rao, Rahul Dev, Chalapati Rao, Ashok Kumar, Praveena, Sandhya Janak, Rachana Maurya, Maryam Zakaria
音楽 : M.M. Keeravani
アクション : Ram - Lakshman
撮影 : Arthur Wilson
編集 : Kotagiri Venkateswara Rao
制作 : Alexander Vallabha

《あらすじ》
 ラーマチャンドラ(NTR Jr)は役立たずだが正義感の強い若者。彼は悪漢を懲らしめるのにやぶさかではなかったが、ただし、行き過ぎた暴力的手段は嫌っていた。
 ある日、ラーマチャンドラはサティヤ(Trisha)という女性と出会い、一目惚れする。サティヤもラーマチャンドラに興味を示すが、彼女の家族は裕福で社会的ステータスも高かったため、ラーマチャンドラは自分のステータスも高いことを彼女に見せる必要があった。ところが、ラーマチャンドラは孤児で、もとより資産なども持っていなかった。
 そんな時にラーマチャンドラは、とある村の地主家が跡取りの養子を探しているという情報を得る。彼は早速その家の長老(Kota Srinivasa Rao)に会い、面談した結果、養子になることが決まる。すぐさま養子縁組の儀式が行われ、彼は長老と共にその村へと行く。
 ラーマチャンドラは村の屋敷で母(Bhanupriya)や姉妹、親類たちから歓迎され、当主としてラージャ・ワーシ・レッディ・ヴィジャヤ・ドゥワージャ・シュリー・シンハという名前を戴く。ところが、彼らの話を聞くうちに、自分が家族から大変な期待を寄せられていることに気付く。つまり、ラーマチャンドラが跡取りとなったワーシ・レッディ家は、もう何十年も前から隣村の地主家(当主役はNasser)と敵対しており、ここ25年はその敵家にすっかり制圧されていた。ラーマチャンドラに託された期待とは、敵家との戦いに勝利を収め、村に平和をもたらすことであったのである。
 こりゃ、たまったもんじゃないと、ラーマチャンドラは屋敷を抜け出そうとするが、折悪しくサティヤが父(Subhalekha Sudhakar)を連れてこの屋敷にやって来たため、機会を逸する。彼はそれでも逃げようとするが、敵家の残虐非道な所業を見るに及んで、正義心に火が点る、、、。

   *    *    *    *

 【Simha】より激しかったら嫌だなぁ、と書いたが、あれれ、つるっと観られたぞ。何だ、この引っ掛かりのなさは!? もしや、【Simha】で感覚が麻痺してしまったか? などといろいろ考えもしたが、やっぱり作品そのものに今いちパワーが欠けていたのだろう。少なくとも【Simha】レベルの迫力を期待していたら、物足りなさを感じる。
 映画開始早々に「首チョパ」、NTRジュニアの登場シーンではド派手な車の破裂炎上があり、「これぞボーヤパーティ監督の世界」と喜んでいたが、その後、あまり盛り上がることもなかった。

 ストーリーがつまらなかったのだと思う。つまらなかったと言うより、ストーリーなどというものはなかった。テンポもとろい。
 ボーヤパーティ監督の過去3作は大きな回想シーンを入れたストーリー構成を持ち、それなりに凝ったものだったが、本作はそうではなかった。プレ・クライマックスに種明かしがあり、そこは面白かったが、後半開始からその部分に至るまでは退屈で、欠伸の連続だった。
 ストーリーはシンプルでも結構なのだが、ががっと押し寄せて来る迫力がなく、【Simha】と比べても、ストーリー密度といったものはぐっと低い。

 内容的には、ボーヤパーティ監督が示したかったのは、「非暴力」と「カリスマ的ヒーロー像」だったと思う。
 前者については、【Simha】ほどではないにせよ、本作でもこれだけ流血を見た後で「暴力はいかん」と言うのも滑稽だが、しかし、悪に対抗するためには最終手段(戦争/殺害)もやむなしというのは『マハーバーラタ』でも吟味された正義観。当初、過度の暴力を嫌っていたラーマチャンドラ(NTR Jr)が自分の義務に目覚め、武器を持つ男へと変容していく様は面白かったし、『マハーバーラタ』のアルジュナに重なるものも感じた。
 しかしながら、エンディングの平和的大団円を見たときは椅子からずり落ちそうになった。

 後者の「カリスマ的ヒーロー像」については、本作の場合、邦人南インド映画ファンの間で「お館様」と呼ばれているキャラクターのことを指す。つまり、封建的なシステムの中で村を治め、村人たちから神の如く尊敬され、行政・司法よりも実質的に権威を持つ領主的存在のことだが、これが近ごろ強力に勢力を増しつつある「近代的都市型核家族族」とでも呼べる人種とは正反対のもので、インド映画においてもこうした等身大的小市民的人間像が主人公として当たり前になりつつある潮流の中で、ボーヤパーティ監督は熱烈に前近代的な「巨人」を見せることにこだわったのではないだろうか。

◆ 演技者たち
 上の話の続きだが、「カリスマ的ヒーロー像を見せる」という作業は、実はそれを演じる具体的なスター俳優を持ち上げまくるというのと同じことで、本作の場合、まだ20代のNTRジュニアを「お館様」キャラとしてステップアップさせるということになるのだが、それには成功している。ジュニアのパフォーマンスはとても良かったと思う。ただ、注目のダンスの振り付けは特に目を引くものではなかった。
 (写真下:貫禄の増したNTRジュニア。)

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 ヒロインは一応トリシャーとカールティカになるのだが、この二人の対比は下のスチルがよく物語っている。まず、トリシャーはあまり輝いておらず、ここぞという場面だけで見せて、あとは手抜きといった、まったくアイドル女優の鑑のような仕事をしている。片やカールティカは徒に元気だった。

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 強面陣では、なんといってもナーサルの髭に注目。

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 コータ・シュリーニワーサ・ラーウとスマンは良い。
 悪役として、サンパット・ラージとキショールが配されていたが、無駄遣いだと言える。いくらNTRジュニアを持ち上げる作品だとは言え、これはひどい。もう一人、シュリーダル・ラーウというお若い方も剃髪までして頑張っていたが、迫力なし。ラーフル・デーヴも情けない役で、去り際の後姿が虚しかった。

 女性陣では、母親役のバヌプリヤが良かった。
 妹役のアビナヤは特に効果的な使われ方ではなかった。

 コメディー陣は、アリーはまあまあだが、ブラフミーは何もなし。むしろ、ヴェーヌ(ヴェーヌ・マーダヴではない)がけっこう良い空気転換の役割を担っていた。

◆ 音楽・撮影・その他
 M・M・キーラワーニの音楽は総体的に良かった。
 音楽シーンのうち、‘Ruler’はファンタジー風な作りで、良くできているのだが、後で振り返ってみて、映画全体からは浮いているように感じた。‘Vaastu Bagunde’はトリシャーとカールティカの他にアイテム・ダンサーが2名(ラチャナ・マウリヤとマリアム・ザカリア)も加わるという楽しいもので、私好みだった。

 撮影、アクション、特殊効果などは丁寧な仕事で、申し分ない。

 物語の舞台となった村がどの地方なのか分からず、残念だ(ラーヤラシーマか)。ワーシ・レッディ家の白亜の屋敷はやはりセットか?

 もう一つ気にかかったのは、ワーシ・レッディ家のトーテムは「獅子」だったが、これは【Simha】でも同じで、ボーヤパーティ監督は獅子にこだわる特別な理由があるのだろうか? 片や、ナーサル率いる敵家のトーテムは熊のような動物に見えたが、これも何か特別な意味・背景があるのだろうか?

◆ 結語
 私的にはやや物足りなく、退屈にも感じられたが、NTRジュニアのパフォーマンス、しっかり作られたアクション・シーンと音楽シーンのおかげで、一定の満足感はある。ボーヤパーティ監督がちょっと賢くなってしまった感があるのが残念だ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Endukante... Premanta!】 (Telugu)
 トリウッドのカルナーカランは私の好きな映画監督の一人だが、そう言えば、このお方の作品も今まで映画館で鑑賞したことがなかった。そもそもはDVDで【Ullasamga Utsahamga】(08)を観たのが縁の始まりだが、その後、同じくDVDで【Happy】(06)を観ていたく気に入ったものの、【Darling】(10)の公開時はヒロインがカージャルだという理由だけで見送ってしまった。しかし、同作はヒットし、後にDVDで観たら面白かったので、やはりカルナーカランの作品は劇場で鑑賞し、この... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/06/14 02:39

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
まず、こんなところからコメントですみませんが、
>ボーヤパーティ・シュリーヌ監督…カラオケでは「神田川」を歌い出しそうだ。
これに笑ってしまいました。

>エンディングの平和的大団円を見たときは椅子からずり落ちそうになった。
安心しました。「ぅへ〜!!」と感じたのは私だけかと思っていました。

Jr.NTRは今作で少し貫禄があったような気がします(太さも含めて)。

2012/05/05 02:27
何十年にもわたる積年の恨みは何だったんだ!と思いました。

ジュニアはこれぐらい太ってるほうが安定感があって良いです。
 
カーヴェリ
2012/05/06 02:20
昨日見ました。テルグ・バイオレンスは大好物ですがこれほど出来が悪いと途中で居眠りも出ます。ともかく後半一時間さえあれば他は別に要らなかったのではと思えてなりません。

言いたいことは山積みですがとりあえず一つだけ突っ込みを。スマンよ、二十年以上扉の向こうで何しとったんやお前は?
メタ坊
2012/05/06 09:42
出来はそう良くないとは思いましたが、そこまでひどいとお感じでしたか。ぜひどこかで問題点をご指摘ください。

>スマンよ、二十年以上扉の向こうで何しとったんやお前は?

「す、すまん!」
 
カーヴェリ
2012/05/07 00:11

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