カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Anna Bond】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/05/08 21:11   >>

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 スーリ監督、プニート・ラージクマール主演のカンナダ映画。
 スーリ監督の前作はやはりプニートを主役に起用した【Jackie】(10)だが、これはブロックバスターとなったため、本作【Anna Bond】も期待大の作品となっていた。私も本作の公開を楽しみにしていたのであるが、というのも、プニートの父である故ラージクマールには【Jedara Bale】(67)、【Goadalli C.I.D. 999】(68)、【Operation Jackpot C.I.D. 999】(69)、【Operation Diamond Racket】(78)など、イギリス映画「ジェームズ・ボンド」シリーズを模した一連のスパイ映画があり、本作も「Anna Bond」という題名から、もしや往年の人気シリーズの復活か、と予想されたからである。ラージクマールの「ボンド物」といえば非常にレトロな味わいのある名品で(特に60年代の白黒の3作)、私も大好きなので、これを21世紀風にどうアレンジするか楽しみだった。
 ヒロインはプリヤーマニで、ニディ・スッバイアがセカンド・ヒロインとなっている。

【Anna Bond】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Suri
出演 : Puneeth Rajkumar, Priyamani, Nidhi Subbaiah, Jackie Shroff, Avinash, Rangayana Raghu, Satish, Gurudutt, John Kokken, Petrol Prasanna, V. Manohar
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Satya Hegde
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Parvathamma Rajkumar

《あらすじ》
 バンガロールに「アンナ・ボンド」と呼ばれる謎の男が現れ、マフィア狩りを始める。市民はアンナ・ボンドの活躍を歓迎し、マスコミも大々的に報道する。ある映画監督(Satish)はアンナ・ボンドを主人公にした映画を撮ると宣言する。
 アンナ・ボンドの正体はボンド・ラヴィ(Puneeth Rajkumar)という男で、彼は麻薬とダイアモンドの密輸で知られたマフィアのドン、チャーリー(Jackie Shroff)を追っていたのである。ボンド・ラヴィはその映画監督を拉致し、自分の行為の理由を語って聞かせる。
 ・・・
 ボンド・ラヴィはとある村でエネルギーと暇を持て余している若者で、シンガポール・チャンドラッパ(V. Manohar)というアーユルヴェーダ師の仕事を手伝っていた。彼はまた空手に堪能で、村の子供たちにそれを教えていた。
 ある日、この村にドキュメンタリー映画作家のミーラ(Priyamani)とディヴィヤ(Nidhi Subbaiah)が取材にやって来る。ラヴィはミーラにすっかり惚れてしまう。仕事を終えたミーラは、村を去り際に、ラヴィに「あなたはもっとビッグなことがやれる」と言う。その言葉に啓発されたラヴィは、友人のチャパティ・バーブ(Rangayana Raghu)と共に、都会へ向けて旅立つ。
 しかし、その途上でラヴィは国軍の兵士に足止めされ、チャンドラカーント(Avinash)という退役軍人の隠居所まで連れて行かれる。チャンドラカーントはたまたまミーラの父であり、ディヴィヤの世話もしていた。ラヴィはここでチャンドラカーントの足の怪我を治療することになる。だが、この時マフィアのチャーリーがチャンドラカーントを襲撃する。チャーリーはかつてチャンドラカーントに妻を殺された恨みがあったからである。この襲撃はしかしラヴィが反撃したため、チャーリーは撃退され、チャンドラカーントは救われる。その後、この隠居所にミーラとディヴィヤも合流する。チャンドラカーントはラヴィに、実はディヴィヤはチャーリーの妻が死に際に出産した娘だと明かす。
 チャーリーはラヴィに復讐するために再び姿を現す。そして、たまたま遭遇したディヴィヤを射殺する。しかしチャーリーはチャンドラカーントからディヴィヤこそが実の我が娘だと知らされ、ショックを受ける。逆上したチャーリーはチャンドラカーントの足を撃ち抜き、ミーラを誘拐して逃走する。それを知ったラヴィは、ミーラを救い出すために、チャーリーの居所を探し始める、、、。

   *    *    *    *

 いの一番に言っておくと、本作は私が予想したようなラージクマールの「ボンド物」の再現ではなかった。プニートも親父と同様、チョビ髭にネクタイのダンディーな諜報員として現れ、怪しげな秘密兵器などを操ってくれればうれしかったのだが、まったく的外れだった。ラージクマールは「Annavru」や「Rajanna」のように「アンナ」という愛称で呼ばれることが多く、それに「ボンド」と来れば、本作が「ボンド物」に違いないと私が予想したのもでたらめではなかったと思うが、結局スーリ監督は客寄せのためにラージクマール・ブランドの看板を利用しただけか? セコいぜ、スーリ!

 で、どんな作品だったかと言うと、スーリ監督らしい、ローワークラスのやんちゃ坊主が活躍するアクション映画だった。ボンド物じゃなかったのは残念だが、一編のアクション映画としてはけっこう楽しい。
 ほとんどのレビューで、本作がヒット作【Jackie】の焼き直しであり、スーリ監督はちっとも進歩していないみたいな指摘がなされているが、それは確かに当たっている。しかし、【Jackie】そのものがテルグやタミルのアクション映画に媚びず、スーリ監督が独自性を発揮して作り上げたアクション映画だと私は評価しているので、そのフォーマットをもう一度繰り返したとて、なんら非難されることではないと思う。

 スーリ監督の作風といえば、友人のヨーガラージ・バット監督の作品もそうだが、「感覚主義」とでも呼べるものだろう。ストーリーやメッセージなどの言語性、論理性よりも、セリフの一瞬のきらめきや目を引くカット、印象的な音楽シーンなどの「感性的パーツ」のほうが重要で、しかも効果的にできており、ストーリー自体は貧弱なものなのに、観客は何らかの「感興」を得て、一定の満足感と共に劇場を出る。本作もそういう作品だった。
 (写真トップ:この「骸骨バイク」もスーリ監督のセンスか?)
 しかし、スーリ監督の場合、悪と闘うヒーロー映画の作り手として、反社会悪の視点は強い。【Jackie】ではマフィアの人身売買の問題が扱われていたが、本作では麻薬密売組織で、麻薬にふける西洋人ツーリストの様子などが気味悪く描かれていた。

◆ 演技者たち
 この種のアクション・ヒーローをやらせれば、いつの間にかサンダルウッドでダントツトップに立った感があるプニートだが、本作でも安心して見ていられる。しかし彼の場合、アクション・ヒーローとしての貫禄が増すにつれ、顔の「イカツさ」も増し、悪役よりヒーローのほうが顔が怖いという困った事態になってしまったが、これは映画的にちとまずいだろう。
 (写真下:このツラには本物のマフィアさえ震え上がるだろう。)

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 この頃カンナダ映画出演率が高く、もしや「バンガロールに男でもできたか!?」と疑りたくもなるプリヤーマニだが、幾分体重を増した点を除けば、彼女らしく快活なパフォーマンスで良かった。チャーリーのアジトで麻薬をぶち込まれ、朦朧とした表情の彼女もナイスだった。
 (写真下:このプリヤちゃんのTシャツが可愛かった。)

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 セカンド・ヒロインのニディ・スッバイアもOK。

 悪漢のチャーリー役はジャッキー・シュロフだが、このボリウッドのベテランも近ごろは南インドで悪役をやるしか仕事がないのか。ただし、本作ではなかなかスタイリッシュかつ怪異な悪役像で、良かったと思う。タミル映画【Aaranya Kaandam】(11)ほどではないが、まずまず記憶に残るものだ。ちなみに、彼のセリフは英語とカンナダ語のミックスだったが、セルフダビングしているようだ。

 脇役陣では、スーリ監督作品には毎度お馴染みのランガーヤナ・ラグがやはり効いている。
 アンナ・ボンドから話を聞く映画監督を演じたのはサティーシュ。それは重要ではないが、どうやらこのキャラクターはプレーム監督をパロったものらしい。

◆ 音楽・撮影・その他
 ハリクリシュナの音楽は総体的に良く、音楽シーンも面白く作られている。
 ‘Kaanadante Maayavadanu’という曲ではプニート自身が歌っているが、実はこの歌はラージクマール主演の【Chalisuva Modagalu】(82) という作品でまだ7つのガキだったプニートが歌い、大ヒットしたもののアレンジ。映像も同作品からちらっと引用され、身長1メートルぐらいのプニートが見られる。それにしても、この30年、背丈はずいぶん伸びたプニートだが、歌唱力はあまり伸びていないという事実には笑えた。
 参考に、振り付けを担当したのはイムラーン・サルダリア(Imran Sardaria)という人だが、彼はサンダルウッドにあってはずっとユニークな振り付けができる人なので、名前ぐらいは覚えておくべきだろう。

 その他裏方陣は、アクションはラヴィ・ヴァルマと‘ひと味違うぜ’ダニー、撮影はサティヤ・ヘグデ、編集はディープ・S・クマールと、スーリ監督作品にはレギュラーの面々だが、それぞれ良い仕事をしている。

 ところで、本作にはアフリカの黒人のような人々が何気に登場しており、非常に気にかかった。カルナータカ州の山間部には、イギリス統治時代に労働力としてアフリカから連れて来られた黒人の子孫が細々と暮らすコミュニティがあるという話を聞いたことがあるが、もしやそれなのだろうか?

◆ 結語
 作品に際立った力強さがあるわけではないが、スーリ監督のセンスが生きたカンナダ・アクション。毎度同じことを言っているような気がするが、プニートの顔にアレルギーを感じなければ、楽しめるだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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