カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Katari Veera Surasundarangi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/05/17 02:15   >>

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 先週の【Anna Bond】に続いて、今週もカンナダ映画の話題作が公開された。
 本作【Katari Veera Surasundarangi】の話題点といえば、「カンナダ映画初の全編デジタル3D映画」ということに尽きるだろう。3Dのインド映画といえば、ボリウッドでは現在公開中の【Dangerous Ishhq】を含めてすでに4作ほど発表されているはずだが、南インドでは昨年公開のタミル映画【Ambuli】が唯一の例だと思う。もっとも、記録的には1984年に発表されたマラヤーラム映画【My Dear Kuttichathan】がインド初の3D映画ということで、しかも同作は昨年に再公開されたらしい。また、カンナダ映画でも昨年公開の【Jogaiah】が部分的(音楽シーンのみ)に3D技術を採用している。そうした先例があるにせよ、この【Katari Veera Surasundarangi】のフル3Dというのは、南インドでは先駆的な試みの一つになると言ってもいいだろう。
 もっとも、私の(そして、多くのカンナダ人の)関心はといえば、2Dか3Dかということよりも、本作がウペンドラ主演のソシオ・ファンタジーで、アンバリーシュがヤマ(閻魔大王)の役をやるらしいということだった。また、ウペンドラのかつてのヒット作【Raktha Kanneeru】(03)の続編という噂もあり、それもウッピ・ファンの期待を煽る一因となっていた。
 監督はなぜかタミル映画の【Annamalai】(92)や【Baashha】(95)でお馴染みのスレーシュ・クリシュナ。
 題名の「Katari Veera Surasundarangi」は「剣豪と絶世の美女(の物語)」といった意味。

【Katari Veera Surasundarangi】 (2012 : Kannada)
物語・台詞 : Upendra
脚本・監督 : Suresh Krishna
出演 : Upendra, Ramya, Ambarish, Doddanna, Sridhar, Ajay, Shobharaj, Muthappa Rai(特別出演), Suman Ranganath(特別出演), Rishika Singh(特別出演), Ramanithu Chaudhary(特別出演)
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : H.C. Venu
編集 : Harsha
制作 : Munirathna

《あらすじ》
 ウペンドラ(Upendra)は一般人だったが、生活にスリルを求めて暗黒街に身を投じようと、元マフィアのドン、ムッタッパ・ライ(Muthappa Rai)に会う。ムッタッパ・ライはウペンドラのその考えを諌めるが、しかしウペンドラはマフィア連中に挑戦を始め、あるドン(Ajay)に殺されてしまう。
 ウペンドラは冥界でヤマ(Ambarish)の審判を受けることになるが、チトラグプタ(Doddanna)の点鬼簿によると、生前のウペンドラの行状は善行と悪行がちょうど半々だったため、1ヶ月のうち15日を地獄で15日を天国で過ごすよう言い渡される。
 ウペンドラは地獄でモーハン(Upendra)という男(【Raktha Kanneeru】の主人公)に会い、それが自分の父であると知る。地獄の生活はスリリングであったが、居住環境は良くなかった。そこで彼は天国を覗いてみたいと思い、チトラグプタを脅迫して天国に侵入する。ウペンドラはそこでインドラ神(Sridhar)の娘、インドラージャ(Ramya)に出会い、一目惚れする。
 ウペンドラはすぐに地獄に戻されるが、なんとか天国に定住したいと考え、冥界で大混乱を惹き起こす。困惑したヤマはモーハンの意見を取り入れて、ウペンドラを天国へと追放することに決める。
 まんまと天国に舞い戻ったウペンドラは早速インドラージャにプロポーズする。当初、インドラージャは当惑するが、あろうことか彼女もウペンドラに惹かれるようになる。それを知ったインドラはインドラージャを他の神と結婚させようとするが、彼女はウペンドラとの結婚を選ぶ。
 大混乱の天界にブラフマーがやって来、調停する。まず、神と人間は天界では結婚できないため、インドラージャとウペンドラを地上界に降ろすことにする。そして、ヤマを見張り役につけ、もしウペンドラが3つ罪を犯したなら、彼を地獄に堕とし、インドラージャを天国に戻す、ということであった。
 ウペンドラ、インドラージャ、ヤマ、チトラグプタは地上界に降りて来る。しかし、復活したウペンドラはあの世での記憶が落ちてしまい、自分を殺したドンに復讐しようと動き始める、、、。

   *    *    *    *

 そういえば私は、ハリウッド映画であれインド映画であれ、3D映画は初体験だった。で、日常の光景は3次元で見ているのに、映画なら2次元というのに慣れ切った私の目には、必要以上に奥行きが深く、またそれを強調するために花びらやシャボン玉がちらちら舞い落ちる映像に非常に落ち着かないものを感じ、映画開始10分は鑑賞どころではなかった。昔々、私の父が4チャンネル・スピーカーのステレオを嫌ってモノラルのラジカセを愛用していたので、「なんでやねん?」と聞いたところ、「そんなん、音があちこちから聞こえたらうるさいがな」という返答だったが、あれに近い感覚かもしれない。
 しかし、見ているうちに目が慣れてしまい、最終的にはフレッシュな体験として楽しめた。

 ストーリー的には、残念ながらちゃちな部類に入るだろう。子供の学芸会の神様劇に毛の生えた程度とも言える。ストーリーはウペンドラ自身が書いているのだが、ウペンドラ製の割にはあっさりしたもので、感動を生むほどの力強さはない。(なお、このストーリーについては、ニランジャン・シェッティという人が自分の書いたものをウペンドラが盗作したと主張している。)
 また、映画通にとって不満なのは、本作があまりにも【Yamagola】(77)や【Yamadonga】(07)などのテルグ映画の神話物からパクりすぎているということだろう。本作はソシオ・ファンタジーを謳っているが、テルグ映画のそれほどにはファンタスティックではなく、どちらかというと神話物のパロディーっぽい。(もっとも、ウッピにあの世を重んじる意識を期待しても無駄なのだが。)
 しかし、そうは言っても、本作は展開が速くて、最後まで一気に楽しく鑑賞できる。また、カンナダ映画が苦手としているアクション・シーン、音楽シーンも、3D効果のおかげで、ある程度救われている。

 本作は、スレーシュ・クリシュナの監督作だとは言え、ストーリーと台詞をウペンドラが書いているということで、やはりウッピ色が濃い。
 まず、ウッピ演じる主人公の名前が「ウペンドラ」と実名を使っているのがウッピらしい。また、全編を通した基調は「ロジックか、マジックか?」ということだが、こういう言葉遊び的なテーマ設定もウッピならではだ。
 また、パフォーマンス的にも、ウペンドラの独壇場だった。まず、主人公ウペンドラのキャラが立っていたし、特別出演的に登場した【Raktha Kanneeru】のモーハンも非常に効いていた。【Raktha Kanneeru】のモーハンといえば、同作品を観た人なら忘れようにも忘れられないと思われるが、若き日のウペンドラが渾身の力を込めて作り上げたキャラクターで、今なおカンナダ人の間で話題となることが多い。この悔悟した大罪人が地獄で生き延びていた(ま、死んでいるんですけどね)という発想自体が面白いし、彼がヤマの権能を借りて、「大きな過ちより小さな過ちのほうが大きな過ちだ」と語る場面はかなりインパクトがあった。

◆ 演技者たち
 ウペンドラとモーハンの二役を演じたウペンドラについては、上に書いたとおり。映画の題名は「剣豪と絶世の美女」だが、別にウッピが剣を取っては天下無双の勇士を演じているわけではなく、看板に偽りあり。むしろ、相変わらずのマシンガントークでヤマやインドラをも丸め込む口撃的キャラクターだった。
 (写真下:ウッピのこういう扮装も珍しい。)

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 インドラージャ役のラミャも「絶世の美女」には遠く及ばないが、しかし、天女風のごてごてしたデコレーションとメイクできれいには見えた。演技らしい演技はしておらず、アフレコもしていない、にもかかわらず、観客ウケは良いという、ラミャにとってはお得な役柄だったろう。

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 期待の閻魔大王役のアンバリーシュは、どちらかというと期待はずれ。悪くはないのだが、チトラグプタ役のドッダンナのほうが体が大きく、並ぶと小さく見えるのがいただけなかった。これは配役ミスで、チトラグプタはサードゥ・コーキラにでもやらせるべきだったろう。
 (下:それでもホットガールズに囲まれて、うれしそうなアンバリーシュであるが。)

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 インドラ役をやったのはシュリーダルだが、ただひと言、、、踊ってほしかった。

 変わったところでは、元マフィアのドン、ムッタッパ・ライが本人自身で登場し、「ウペンドラ」にドン稼業の虚しさを説いている(下)。この人は現在暗黒街から足を洗い、「不動産関係」の仕事をしているらしい。ちなみに、撮影に使われた邸宅と護衛団も実際のムッタッパ・ライのものらしい。

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 その他、出演者とは言えないが、天国の住人として、ラージクマール、ヴィシュヌヴァルダン、シャンカル・ナーグ、MGR、NTR、クウェンプ(カンナダの文学者)、チ・ウダヤ・シャンカル(カンナダの作詞家)、サティヤ・サイババがデジタル処理でちらっと登場していた。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はこれまたハリクリシュナで、サンダルウッドには他に音楽監督がいないのかと言いたくもなるが、本作は作品の内容に合わせて古典風の曲も入れており、幾分新鮮味はあった。
 音楽シーンは良くできているとは言えないが、上に書いたとおり、3Dの恩恵を蒙っている。

 さて、目玉となった3Dについてであるが、なにせ初体験の私は他との比較ができないため、客観的な評価はできない。
 少しだけコメントしておくと、南インド映画では定番の、悪漢を乗せた4WD車が10台ばかり列を成してこちらに突進して来るシーンや、ヒーローが悪役の前で足を大振りに回して組むシーンなど、3Dだとさらに迫力アップだった。また、例えば下の写真のようなヒロインのお腹の肉の盛り上がりなども3Dだと立体的に鑑賞できるので、これはインド女優皮下脂肪オタクにとってはありがたいテクノロジーかもしれない。

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◆ 結語
 テルグ映画のソシオ・ファンタジーを期待して観るとがっかりだが、3Dという付加価値が付いて、まずまず楽しめるゾーンに入っている。ウペンドラ・ファンにはお勧めだが、やはり現地の劇場で3Dメガネをかけて鑑賞しなければ、意味がないだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
>ホットガールズに囲まれて、うれしそうなアンバリーシュ
ぎぎぎ、悔しい(笑)

ちょっと話題がずれてしまいすみません。
邦人ファンの間でアンバ様=ヤマ ジャゲーシュさん=チトラグプタによる
Yama in Bangkokが制作されるらしいと話題になったことがあったのですが、
その後消息がわかっておりません、、。

カーヴェリ様、何かご存じでしょうか。
アンバ様がヤマ役者として今後活躍されるのか気になっております。
あいや〜
2012/05/17 12:43
そういえば、そんな話がありましたねぇ。
あれ、どこ行っちゃったんでしょう?
現地人に聞いてみても、さぁ?と言っているので、きっとお蔵入りしたんでしょう。残念!

本作のアンバリーシュはやや不発気味なので、別の作品で期待したいです。
 
カーヴェリ
2012/05/17 21:16
現地のかたにお聞きくださいましてありがとうございます。
アンバ様のヤマ役、B級感漂っているタイトルにも心惹かれていたので
残念ですう。

また、別の作品でふたたびヤマ役をしていただきたいですね!
あいや〜
2012/05/18 08:41
冒頭の数分のスディープナレーション目的で見ました。
(私にとってはスディープ作品のくくりです。)

カーヴェリ川さんも書かれてる通り天上界でのラミヤがきれいでしたね。驚きました。

ウペンドラがちょこっと踊るチャンマクチャロ、シャールクとまた違った雰囲気で新鮮でした。
もっと踊ってほしかったです。
やっほー
2014/01/02 17:14
レス、遅くなりました。

>冒頭の数分のスディープナレーション目的で見ました。

なるほど、それで購入したんですね。

>もっと踊ってほしかったです。

ウッピ、ダンス下手ですからね、あれぐらいにしといて正解でしたよ。
 
カーヴェリ
2014/01/28 09:05

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