カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Saguni】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/06/29 02:59   >>

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 先週末は特にこれといって惹かれる映画もなかったので、仕方なくカールティ主演のタミル映画を観て来た。
 しかし、私が観る気がなかったというだけのことで、本作はデビュー以来5作連続でヒットを飛ばしているカールティの1年ぶりの新作ということで、宣伝にもかなり力が入れられ、はっきりと話題作の一つに挙げられていた。
 監督はシャンカル・ダヤルという新人だが、これが私を躊躇させた理由の一つ。というのも、最近の新人監督によるタミル映画というのは、趣向を凝らしてはいるものの、インド娯楽映画のツボを外したような作品が多いので、本作にも嫌な予感を感じたわけである。
 ヒロインはバンガロール娘のプラニータさん。【Udhayan】(11)以来、2度目のタミル映画出演となる。
 題名の「Saguni」は『マハーバーラタ』の登場人物「シャクニ」から付けられたものらしい。

【Saguni】 (2012 : Tamil)
物語・脚本・監督 : N. Shankar Dayal
出演 : Karthi, Pranitha, Prakash Raj, Santhanam, Raadhika Sarathkumar, Kota Srinivasa Rao, Nasser, Kiran Rathod, Roja, Manobala, Chandra Mohan, Andrea Jeremiah(カメオ出演), Anushka Shetty(カメオ出演)
音楽 : G.V. Prakash Kumar
撮影 : P.G. Muthiah
編集 : Sreekar Prasad
制作 : Antony Xavier

《あらすじ》
 タミル・ナードゥ州首相(Chandra Mohan)がスキャンダル事件を苦にして自殺する。それは同じ党の政治家ブーパティ(Prakash Raj)の仕組んだ陰謀であったが、ブーパティはその後何食わぬ顔で新州首相に収まる。
 相前後して、カマル(カマラカンナン:Karthi)がカーライクディの村からチェンナイに上って来る。彼は客引きにやって来た三輪タクシーの運転手アッパードゥライ、自称‘ラジニ’(Santhanam)と親しくなり、自分がチェンナイにやって来た経緯を語る。それによると、、、州政府の鉄道工事計画により、カマルの家族が先祖代々受け継いできた屋敷が取り壊しの危機にあった。カマルはその計画を中止・変更してくれるよう関連政治家に訴えるためにチェンナイまで来たのだが、まったく埒が明かなかった。さらに悪いことに、彼は叔母(Roja)の家に下宿していたが、その娘シュリーデーヴィ(Pranitha)と恋仲になりかけたところを叔母に知られ、家を追い出された、、、ということであった。
 カマルは幸い州首相のブーパティに会うことが叶う。前州首相がカマルの父の友人で、ブーパティも過去に選挙運動のためにカマルの館を訪問したことがあったからである。しかし、カマルはブーパティから冷淡にあしらわれただけでなく、鉄道計画を推し進めているのは実はブーパティその人であることを知る。
 カマルは目的のためにはブーパティを政界から引きずり下ろすしかないと考え、自らキングメーカーになる決意をする。彼はまず女ドンのラマニ・アッカー(Raadhika Sarathkumar)と懇意になり、彼女を政界入りさせる。そして、インチキ僧侶(Nasser)の助けも借りて、ラマニ・アッカーをあれよあれよと言う間にチェンナイ市長に祭り上げる。
 これにより政治勢力を削がれたブーパティは、カマルを危険視し、麻薬所持事件をでっち上げて、カマルを牢獄に放り込む。だが、災い転じて福となす、カマルは牢獄でブーパティの対立政党の大物政治家ペルマール(Kota Srinivasa Rao)と知り合いになる。カマルはなんなく釈放され、同じく釈放されたペルマールを州首相候補に擁立して、選挙に臨むことにする。当然ブーパティ陣営からの反撃に遭うが、カマルはその度に問題を片付ける。
 だが、ここに最大の難局がやってくる。選挙運動中に、ブーパティの政党の支持者で、副州首相候補のヴァスンダラ(Kiran Rathod)が爆弾テロで死亡する。ブーパティはこれをペルマール陣営の仕業だとマスコミに訴える、、、。

   *    *    *    *

 やはり新人監督らしい、不手際の多い作品だった。
 上映時間が2時間40分近くあり、トレーラーも気合いを感じさせるものだったので、タミル久々の本格政治ドラマの大作かと期待したが、なんだかほんわかとした他愛のないコメディー(?)だった。ガツンと来るような衝撃もパワーもほとんど感じられなかった。

 ストーリー自体が平板で直線的なものだったが、それに輪をかけて悪役(Prakash Raj)に凄みがなく、最後は「文句なしに成敗!」とは行かなかった。これじゃあ、スッキリ感が得られない。
 おそらく、監督ははっきり意図してアクション性、暴力性、復讐性を抑え、主人公のカマル(Karthi)にあくまでも知的戦術を採らせたものと思われるが、それならそれで、敵方の足を見事にすくうような鮮やかなストーリー展開が必要だ。

 近ごろのタミル映画はリアル志向なものが多く、あまり荒唐無稽なものは評価されなくなっているが、本作はその傾向に反するがごとく、全体的にロジック無視なものだった。あまりにそうなので、監督はわざとそうしたのか、あるいは彼の発想がそんなふうにしか回らないのか、分からなくなるほどだった。(だいたい、主人公の屋敷が鉄道工事計画で取り壊しの危機にあるという物語の出発点からして不可解だった。あんなだだっ広い平原にある一軒家をわざわざ狙い撃ちにして線路を敷く計画を立てるかね?)

 と、ボロクソ調で書いてみたが、本作は実に単純かつ明朗な楽しい映画で、そんなに悪い感じはしない。おそらく、監督のシャンカル・ダヤルは伝統的タミル娯楽映画をこよなく愛してきた人なのだろう(主要途上人物にわざわざカマル、ラジニ、シュリーデーヴィと名付けるほどだ)。タミル・ニューウェーブ映画が病的な様相を呈してきた中で、そんなトレンドに「物申す!」と言いたげな監督のスタンスには好感が持てた。

 「政治物」ということで、おそらく現実の政治状況を反映したネタが挿入されていたと思われるが、それはよく分からなかった。本作は企画当初からタミル・テルグ・バイリンガルで製作することが意図されていたようで、配役やロケ地など、どちらにも目配りされている。ただ、TN州とAP州では政治的状況がまったく違うのに、それをどうやってそれぞれのバージョンで表現しているのか、気に掛かる。(といって、タミル語版とテルグ語版の字幕付きDVDを買って、見比べようとまでは思わないが。)

◆ 演技者たち
 主演のカールティはまずまずだと言える。どうしてもこの人の「善い人すぎる」キャラと田舎くささは鼻に付くが、持ち味は十分に出していた。
 本作はハンサムなカールティを売り込もうという意図があるようで、また彼自身からも気合いが感じられたが、それは衣装面でもよく表れている。キングメーカー役として、こんな知的ルックなカールティは今まであっただろうか?

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 もっとも、カールティといえば【Paruthiveeran】(07)と【Aayirathil Oruvan】(10)の「ルンギ&汗くさ男」を思い浮かべてしまうが、こんな小ぎれいなお兄さんのほうがリアルライフの彼に近いのかもしれない。
 そうはいっても、サスペンダーに欧州の街並みは苦しかったかな。

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 ちなみに、カールティはテルグ語版のほうもセルフダビングしているらしい。

 ヒロイン、シュリーデーヴィ役はプラニータだが、特にコメントすべきことはない。バンガロール娘だということで、頑張っていほしいが、この人もカンナダ、タミル、テルグと渡り歩いている割には、決め手に欠くようだ。もっとばしっと印象に残るような一点がないと、ヒロインとして苦しいかな。

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 本作を救ったのは、オートドライバー、‘ラジニ’ことアッパードゥライ役のサンターナム。上手いコメディアンという印象もないが、主役の相棒として実に活きのいい働きを見せることがある。本作もそうだった。まぁ、ヴァディヴェールの出演機会を抑えているということだけでも、コリウッドにおけるこの人の貢献度は高い。

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 脇役陣では、プラカーシュ・ラージは彼にとって朝飯前の仕事だった。ナーサルは風変わりな役だったが、特に映えず。コータ・シュリーニワーサ・ラーウも彼の凄みが生かされていたとは言えない。
 ラマニ・アッカー役のラーディカー・サラットクマールはまずまず(下)。

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 アヌシュカ・シェッティがこれまた奇妙な役でカメオ出演していた。
 ロージャーさんが主人公カマルの叔母役で出ていたが、娘役のプラニータより色っぽいというのには困った。もし私がカマルみたいにこの家に滞在したなら、娘より母のベッドルームを覗いちゃうな。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はG・V・プラカーシュ・クマールの担当だが、特に面白味はなかった。
 音楽シーンもイマイチ。徒にヨーロッパへ行ったって感じ。ダンス的にも、カールティとプラニータのペアじゃあね。

◆ 結語
 スリリングな本格政治ドラマだったら儲けものかなぁ、と思いつつ観に行ったが、期待に届くものではなかった。観られないほどではないが、わざわざお金を出してまで、という気はする。カールティ・ファン限定と言える。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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【Biriyani】 (Tamil)
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カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/12/25 23:41

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内 容 ニックネーム/日時
この手のポリティカル・ファンタジーというのはインド映画にしかない特殊なジャンルなので絶滅しないで生き残って欲しいと常々思っています。

「良質の」ポリティカル・ファンタジーは、そんなアホなと思わす設定の上に次から次へと荒唐無稽が重なって二の句が継げなくなってるうちに主人公の目的が達成されついでにおねーちゃんの(ヒロインのことですよw)ハートもゲットして大団円というテンポの好さが必要とされますよね。

新人監督にこの「アホの波状攻撃」は高度すぎる技だったのでしょうか…
メタ坊
2012/06/29 09:11
はい、アホなのはアホだったんですが、「二の句が継げなくなる」というほどではなかったです。
この種の映画はライターも監督も相当な力量が必要とされるんじゃないでしょうか。新人が手を出すジャンル、スケールじゃなかったと思います。
 
カーヴェリ
2012/06/29 22:52

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