カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Dandupalya】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/07/17 21:23   >>

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 2週間前に満員で観ることのできなかったカンナダ映画【Dandupalya】を観て来た。
 本作はほとんど前宣伝されていなかったため、私もノーマークだったのだが、公開直前に街頭に張り出されたポスターを見て驚いた。なんと、酒を食らい、ビーリーを吸うプージャー・ガーンディがいるではないか!

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 さらにはこんなセミヌードのスチルも!

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 プージャー・ガーンディは、一時はサンダルウッドの「ビューティー・クイーン」とまで呼ばれ、人気の高かったヒロイン女優だが、ここ2,3年はヒット作もなく、落ち目と見られていた。それが、こんな汚れ役にまで落ちるとは! こりゃ、観ずばなるまいと思った。

 いささか興味本位な入り方をしてしまったが、本作は実話に基づいた犯罪映画との触れ込み。
 題名の「Dandupalya」はバンガロールから東へ車で1時間ほど走った所にある小村の名前だが、1990年代後半から2000年代初めにかけて、この村出身のグループがカルナータカ州及びその近隣地域で盗難、殺人、レイプなどの凶悪犯罪を連続して惹き起こすという出来事があった(こちら参照)。本作はその「ダンドゥパーリヤ・ギャング」の所業を映画化したものである。

【Dandupalya】 (2012 : Kannada)
脚本・監督 : Srinivasa Raju
出演 : Pooja Gandhi, Raghu Mukherjee, Priyanka Kothari, Ravishankar, Makrand Deshpande, Ravi Kale, Jai Dev, Yethiraj, Petrol Prasanna, Muni, Kari Subbu, Danny, Swathi, Bhavya, Sudharani, Doddanna, Ramesh Bhat, Chitra Shenoy, Tabla Naani, Harish Roy, Sanketh Kashi, Srinivasa Murthy, Edakallu Chandrasekhar, Bullet Prakash
音楽 : Arjun Janya
撮影 : Venkat Prasad
制作 : Prashanth, Girish

《あらすじ》
 1990年代後半のカルナータカ州。ラクシュミ(Pooja Gandhi)とクリシュナ(Makrand Deshpande)を頭目とするダンドゥパーリヤ村出身のならず者たちが主にバンガロールを中心に凶悪犯罪を繰り返していた。彼らは10人前後で徒党を組み、日頃は日雇い労働者を装っていたが、まずラクシュミが強盗に入りやすい家を物色し、彼女が水を請うためにその家の住人にドアを開けさせたところを、クリシュナらが押し入り、住人を殺害した上、もしそれが女ならレイプし、金品を盗んで逃走する、という手口だった。シヴ(Raghu Mukherjee)もこのギャングに姉(Bhavya)と新妻スシーラ(Priyanka Kothari)を殺された被害者だった。
 警官のチャラパティ(Ravishankar)がこの件の捜査に当たるが、殺害の犠牲者が40人を超えても、手掛かりはまったく掴めなかった。
 ところがある日、ギャングの1人、ティンマ(Jai Dev)が盗難品を質屋に入れようとしたところをチャラパティに逮捕される。ティンマの供述から、チャラパティはもう1人のメンバー、ハヌマ(Ravi Kale)を逮捕する。さらに、警察署に現れたラクシュミも拘束する。チャラパティはこの3人を拷問に掛け、得られた情報から、残りのメンバーも芋づる式に逮捕することに成功する。そして、激しい拷問の末、彼らから自供を得、立件する。
 裁判は、被告側に同じダンドゥパーリヤ村出身の弁護士(Doddanna)が付いたため、チャラパティの期待通りには進まなかった。しかし、数少ない目撃者から決定的な証言が得られ、ダンドゥパーリヤ・ギャングに有罪が宣告される。

   *    *    *    *

 ショッキングな内容と映像を持つ作品なので、複数の団体から上映反対運動もあったようだが、実見すると、興味本位のゲテモノ映画ではないことが分かる。監督のシュリーニワーサ・ラージュという人についてはまったく知らないが、配役を見る限り、ギャングの一人一人にも、その他の脇役たちにも、名の知れた俳優を使い、きちんと芝居をさせようという意思が見て取れる。粗削りな出来だが、勢いがあり、私のようにプージャー・ガーンディのセミヌード目当てで足を運んだ人も、それ以上の満足感を得たことだろう。

 ダンドゥパーリヤ・ギャングが活動していたのは90年代後半から00年代初めにかけてなので、私はすでにバンガロールにいたが、彼らのことはこの映画を観るまでまったく知らなかった。映画では残虐なグループと設定されていたが、その怖さは「殺害→レイプ→盗み」というシンプルな3点セットの手口で一層際立っていた。数年に亘り、40人以上も殺しながら、足がつかなかったのは、一応、メンバーを見張りに立てる、被害者は殺す、という目撃証人を作らない作戦を取っていたからであろう。

 映画では殺害とレイプのシーンも生々しいものだった。殺害はもっぱらリーダー格のクリシュナの担当で、鎌で喉を掻っ切るというものだった。どうもクリシュナという男は、喉を掻っ切った時の血がほとばしり出る音に興奮を覚えたらしい。レイプは男たちの輪姦になるのだが、首を切った後なので、つまりは屍姦ということになる。
 さらに彼らの蛮行として、肉食が描かれていた。肉食といっても、彼らの場合はその辺にいる山羊や驢馬、野豚を捕まえて、丸焼きにして食らうというものだった。
 こういうシーンが連発すれば、本作に「A」指定が付くのは当然だし、インドというお国柄を考えれば、上映反対を叫ぶ人々がいても不思議ではない。(しかし驚いたことに、女性もけっこう観に来ていた。)

 腑に落ちないのは、ギャングたちがいかに用心していたとはいえ、これほどの事件を犯した連中を、どうして警察は数年間も逮捕できなかったのか、ということだ。事件はそう遠い昔のことではなく、インドでもすでにハイテク捜査の手法はあっただろうから、あっさり逮捕できてもよさそうなものだ。しかも、彼らを逮捕してからの捜査というのも、ひたすら「拷問」というのには笑ってしまった。(もっとも、あの激しい拷問シーンを見せられては、道で立ちションベンするのも躊躇われるが。)

 映画ではギャングのメンバーは11人(男8人、女3人)だったが、実際にはもっといたようである。うち、9人が裁判のシーンで法廷に立っていた。
 裁判は長引き、10年近く、つまり、つい最近まで続いていたようである。ギャングたちの犯罪の動機というのはよく分かっておらず、映画でもはっきり語られていなかった。実は、本作は始めからパート2を作ることが計画されていたらしく、もしかしたらそちらでそうしたことが明らかにされるのかもしれない。
 私的には、どうして彼らのような犯罪集団が現れるに至ったのかが気に掛かるが、都市と村落部の格差、村落部の組織化の遅れ、新興富裕層の増大などが穴となって、突発的にこうした人々の出現を許したのかもしれない。

◆ 演技者たち
 ラクシュミ役のプージャー・ガーンディについては、ポスターの衝撃を裏切らないパフォーマンスだった。親が見れば泣くような、インド女優ならほとんどが忌避したい汚れ役をよくぞ引き受けたものだ。特に難しい演技が要求されるわけではないが、潔く腹を括って演じていのが良い。もともと頭が良く、芝居のできる女優だとは思っていたが、うまく生かされたようだ。
 (写真下:映画本編とは裏腹に、涼しい顔で記者会見に臨むプージャー・ガーンディさん。)

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 他のギャング・メンバーもそれぞれ印象的だったが、クリシュナ役のマクランド・デーシュパーンデーイがルックスの異様さと共に身も凍るような演技をしていた。北インドの俳優さんで、南インド映画に出ることはほとんどないが、ヒンディー映画でのキャリアは長い。私が観た最近作では、プーリ・ジャガンナート監督のヒンディー映画【Bbuddah Hoga Terra Baap】(11)でコミカルなヤクザを演じていた。

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 逮捕者第1号、ティンマ役のこの男(ジャイ・デーヴ)も忘れがたい風貌。

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 警官チャラパティ役はラヴィシャンカル。この人はテルグ、カンナダで活躍するサーイ・クマールの弟で、兄と同様、迫力あるセリフ回しができる。マーラーシュリー主演のカンナダ映画【Durgi】(04)の監督をした人だが、テルグ映画【Arundhati】(09)のソーヌー・スードの吹き替えをした人ということで有名かもしれない。カンナダ映画では、【Kempe Gowda】(11)の悪役(オリジナルの【Singam】ではプラカーシュ・ラージが演じた役)で評価され、人気が出た。
 (写真下:スラムの住人に身をやつし、張り込みをかけるチャラパティ警官。)

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 被害に遭う新婚カップルを演じたのはラグ・ムカルジーとプリヤンカー・コーターリー。本作で唯一ソフトな部分だった。

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◆ 音楽・撮影・その他
 こういう実録犯罪映画であるが、驚いたことに、音楽シーンがちゃんと4曲ほど入っていた!
 ギャングのデカダンスを描いたこちらなどは見もの。(カメラはしつこくプージャー・ガーンディの腹を狙っている。)



◆ 結語
 カルナータカ州のローカルな犯罪を描いた本作は、インド映画としては衝撃作になると思うが、普遍的にアピールするレベルには至っていない。個人的には、このギャングと一度は道ですれ違ったかもしれないかと思うと、不思議な感慨を覚えた。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こわかったです。
強盗団も警察も。

インド映画では警察の拷問シーンってよく出てきますが、実際には取り調べ方法とかでニュースになったりとかはないのでしょうか。

マクランド・デーシュパーンデーイという女優さんが一人加わるだけで、不気味さがさらに増しましたね。

おやつ食べながらのんびり見る魂胆は一気に吹き飛びました。
やっほー
2014/04/21 14:43
警察の横暴とか、たまにニュースにもなっているようですよ。
警察は怖い、というのを体感的に感じていないと、インド映画は分かりにくいところもあります。
 
カーヴェリ
2014/04/24 01:01

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