カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sri Kshetra Aadichunchanagiri】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/07/26 22:54   >>

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 DVDのおかげで、インド映画の精華ともいえる神様映画の名作が堪能できるわけだが、やっぱり新作も観たい。ところが、神様物といえば、近年では製作本数自体が多くないようだし、作られても極小規模公開だったりして、リアルタイムで劇場で鑑賞することは難しい。

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 で、カンナダ映画から神様映画の新作【Sri Kshetra Aadichunchanagiri】が公開されたので、まったく話題になっていなかったが、観て来た。
 監督のオーム・サーイプラカーシュは、【Sri Nagashakthi】(11)鑑賞記でも書いたとおり、人情物、神様物を得意としてきた人だが、【Devaru Kotta Thangi】(09)の失敗で自殺を図るという苦渋の過去を持つ人だ。三途の川からの復帰第2作の本作も懲りずに宗教物。前作【Sri Nagashakthi】のしょぼさと違って、今回はアンバリーシュをはじめとする著名俳優も参集しているので、期待が持てた。

【Sri Kshetra Aadichunchanagiri】 (2012 : Kannada)
脚本・監督 : Om Saiprakash
出演 : Sri Balagangadharanatha Swamiji, Ambarish, Sri Murali, Om Saiprakash, Shivakumar, Ram Kumar, Shruthi, Harish Raj, Ramesh Bhat, Nagathihalli Chandrashekhar, Anu Prabhakar, Jayanthi, Veena Sundar, Padma Vasanthi, Mohan Juneja, Muni, Karibasavaiah, Bullet Prakash, C.P. Yogeshwar, その他
音楽 : Guru Kiran
撮影 : Sundarnath Suvarna
編集 : M.S. Raj
制作 : B.V. Narasimhaiah

   *    *    *    *

 本作は神様映画といっても、特定の意図を持つローカルな聖地案内、聖者讃歌といったものだった。
 題名の「Sri Kshetra Aadichunchanagiri」は「聖地チュンチャナギリ」といった意味になるが、その「チュンチャナギリ」とはカルナータカ州マンディヤ県のナーガマンガラにある小高い岩山のことで、古くからシヴァ神に縁のある聖地として崇められている(写真下)。

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 この岩山はその昔シヴァ神が苦行をした所ということで有名だが、シヴァ神そのものというより、その権化であるバイラヴァ(もしくはカーラバイラヴァ)に関連付けられることが多い。この地の主寺院はカーラバイラヴェーシュワラ寺院で、新しい寺院が8億5千万ルピーの巨費を投じて2008年に完成している。

 この岩山にはまた5つのリンガがあり、それぞれに神様(ガンガーダレーシュワラ、チャンドラマウレーシュワラ、マレーシュワラ、シッデーシュワラ、ソーメーシュワラ)が祀られているので、「Panchalinga Kshetra(5つのリンガの地)」とも呼ばれている。

 さて、この地に‘Sri Adichunchanagiri Maha Samsthana Math’という宗教施設があり、そこの総主を務めるのがシュリー・シュリー・シュリー・バーラガンガーダラナータ・マハースワーミジーという偉い御坊様(写真下)で、本作の意図はこの御坊様を現代の聖者として讃えることにあったと思われる。ちなみに、上に記した名前は最高度の敬意を表してやたらと長くなっているが、普通はシュリー・バーラガンガーダラナータ・スワーミジーと表記される。それでも長くて覚えにくかろうという配慮からか、「Sri BGS」という短縮形も用意されている(ここまで圧縮せんでもなぁ)。

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¶参考
Sri Adhichunchangiri Mahasamsthana Math
 (このオフィシャルサイトには関連グッズのネット販売サービスもある。)
Adichunchanagiri - Dog is vehicle of Lord Shiva here
 (このブログから写真を2枚勝手借用させていただいた。)

 映画はまずこのスワーミジーの半生を描き、その後、このスワーミジー自身が登場し、観客に直接語りかけるという形で、この聖地にまつわる伝説が一つ一つ描き出される。

 内容を簡単に紹介しておくと、、、
 「チッカリンゲー・ガウダ(Ramesh Bhat)は子供に恵まれなかったため、チュンチャナギリのガンガーダレーシュワラ神に願を掛けたところ、男児を授かり、ガンガーダラと名付ける。聡明な青年に育ったガンガーダラ(Sri Murali)はバンガロールの大学で勉強するが、在学中の体験から出家を決意し、両親の反対を押し切ってチュンチャナギリの高僧ラーマナンダナータ・スワーミジー(Om Saiprakash)に師事する。尊師の死後、後継に指名されたガンガーダラは、老若男女貴賤を問わず広く人々の声を聞き、教育・医療の分野で目覚ましい貢献をなし、シュリー・バーラガンガーダラナータ・スワーミジーとして尊敬を集めることとなる。」

 次に、スワーミジーより、チュンチャナギリにまつわる伝説が語られる。
 「昔々、この地を治めていた王(Ambarish)には世継ぎがいなかった。王はシヴァ神の夢のお告げに従い、竹の揺り籠を作って奉納しようと、家臣に竹を切らせに行かせる。だが、家臣が切った竹からは血が流れ出る。実はそこでシヴァ神が苦行をしていたのであった。シヴァ神は王に、リンガを祀り、プージャを行うよう指示する。それに従った王は男児を授かるが、シヴァ神との約束を守り、息子を出家させる。」

 これらの話からすると、チュンチャナギリは「子授け」の霊験があるようだ。

 「チュンチャナギリ(チュンチャの丘)」という名前の由来については、、、
 「シヴァ神(Shivakumar)が苦行をしている頃、この地にはチュンチャ(Mohan Juneja)とカンチャ(Muni)という、漫才コンビのような名前を持つ羅刹の兄弟がおり、村人たちを苦しめていた。村人たちに助けを求められたシヴァ神はカーラバイラヴァの姿を取り、チュンチャ&カンチャと戦う。カンチャは死亡するが、チュンチャは降参し、黒犬に姿を変え、以後、カーラバイラヴァの忠実なしもべとなる。
 やがて苦行を終え、満足したシヴァ神は、この地に5つのリンガを現出させ、シッダ・ヨーギに監督させる。さらにパールヴァティもカンバダンマに化身して、この地に留まる。」

 興味深いのは、ここでの「村人」というのは実はウォッカリガ・コミュニティーのことで、チュンチャナギリは同コミュニティーの権威付けの働きもしているようだ。
 また、「黒犬」というのはバイラヴァ神の乗り物で、ここのカーラバイラヴェーシュワラ寺院にも像が祀られている(写真下)。

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 チュンチャナギリはシヴァ派の聖地とされるが、ヴィシュヌ派との関連付けも語られていた。
 例えば、『ラーマーヤナ』のラーマとラクシュマナもこの地をさまよったとされるし、『マハーバーラタ』のアルジュナも「追放期」にこの地にやって来て、カーラバイラヴァと親交を結び、羅刹女を退治したり、誤って我が子を刃物で切り刻んでしまった村女を救ってやったりしている。また、ヴィシュヌ神自身がティンマッパという男の姿を取ってやって来、カーラバイラヴァと対峙する場面も描かれていた。

 他にも小ネタがいくつか挿入されていたが、ここでは省略する。

 さて、映画作品としての本作の評価であるが、拍手喝采はできない。
 サーイプラカーシュ監督のベテランらしい手際の良さは見られたが、物語自体が短いエピソードの積み重ねなので、全体的に退屈な感じがした。また、登場人物の演出面も、羅刹の描き方など幼稚なものだった。特殊効果も、予算の都合もあるだろうから、多くは望まないが、お隣の州では【Enthiran】(10)や【Eega】(12)などが作られている時代に、かなり稚拙なものを感じた。
 こういう映画で描かれる説話というのは現地人にはお馴染みのものなので、それを映画的にどうファンタスティックに見せるかが勝負になるはず。相変わらずこの次元にとどまっているなら、サーイプラカーシュ監督の神様シリーズは今後も苦しいかもしれない。

◆ 演技者たち
 若き日のシュリーBGSを演じたシュリー・ムラリはちょっとした驚きだった。通常の商業映画ではぱっとしない活躍のムラリも、本作ではさっぱり頭を丸め、光っていた。

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 その師匠のラーマナンダナータ・スワーミはサーイプラカーシュ監督自身が演じていた。映画監督にしておくのはもったいないぐらい、どう見ても本物のバラモン僧にしか見えなかった。

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 映画の舞台はマンディヤだが、マンディヤといえば、やはり「Mandyada Gandu(マンディヤの男)」こと、アンバリーシュは外せない。大昔のマハーラージャーの役だったが、しかし、いまいちなスクリーン・プレゼンスだった(写真トップ)。

 神様・英雄陣では、シヴァ神を演じたシヴァクマールは貫禄だった。

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 しかし、主役のはずのカーラバイラヴァを演じた俳優が誰か分からないし、しょぼく見えた。
 アルジュナ役のラーム・クマールはまずまず。
 「ジャンピング・スター」こと、ハリーシュ・ラージがなんともカワユいナーラダ仙を演じていた(下)。

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 コメディー陣ではただ一人、ブレット・プラカーシュ氏が石に変えられる罰当たりな羊飼い役で出ていた。

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◆ 音楽・撮影・その他
 グル・キランの音楽は、ツボを得た感じで、良かった。

 本編とは関係ないが、映画の冒頭に、先日他界した往年のボリウッド・スター、ラージェーシュ・カンナーへ哀悼の辞が挿入されていた。

◆ 結語
 神様映画として特に出来の良いものではないので、特別な理由がない限り、見る必要もないだろう(というより、この時点でカルナータカ州にいない限り、未来永劫観るチャンスはないと思われるが)。私的には、バンガロールからだと日帰りで行ける距離だし、寺飯のサービスもあるようなので、一度は行ってもいいかな、という気にはなった。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
希少な作品をご紹介いただきありがとうございます。シヴァクマールとはスーリヤ&カールティ兄弟の父さんのことですよね? これは何とか見てみたいものだと思いました。
Periplo
2012/07/26 23:14
この作品についてはネット上のレビューが見当たらず、もしや私のこれが唯一のレビュー? 誤解・間違いはあるかもしれませんが、希少な資料になるかと思います。

>シヴァクマールとはスーリヤ&カールティ兄弟の父さんのことですよね?

いえ、たぶんカンナダの俳優さんで、この人だと思います。

http://popcorn.oneindia.in/artist-upcoming-movies/24068/1/shivakumar-kannada-actor.html
カーヴェリ
2012/07/27 10:18
なんと在地のシヴァクマールさんというかたがいらっしゃるのでしたか。 こちらのシヴァクマールさんのSri Naga Shaktiというのも面白そうですね。

さらにはもうひとり同名の監督らしい人ががいるのもわかりちょっと混乱してますが。
http://popcorn.oneindia.in/artist-upcoming-movies/10018/1/shivakumar.html
Periplo
2012/07/30 12:07
ありふれた名前ですからね、シヴァクマールなんて。
Surname併記を義務付けてほしいもんですね。
 
カーヴェリ
2012/07/31 01:06

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