カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【God Father】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/08/02 22:56   >>

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 ウペンドラ主演のカンナダ映画。
 本作はK・S・ラヴィクマール監督、アジット主演のタミル映画【Varalaaru】(06)のリメイク。同作品はアジットが一人三役を演じ、大ヒット作となった。その三役をウペンドラがやるということで、こちらも話題となっていた。
 【Varalaaru】の音楽はA・R・ラフマーンが担当していたが、このカンナダ版リメイクでも同じくラフマーンの担当。A・R・ラフマーンの名前がクレジットされたカンナダ映画は過去に【Sajni】(07)というのがあったが、これはオリジナルのタミル映画【Jodi】(99)からそのまま曲を持ってきただけで、特にラフマーンが何かをしたわけではない。ところが、本作ではラフマーンは新たに1曲書き下ろしており、またオーディオCD発売セレモニーにも出席したりして、実質的なサンダルウッドでの「初仕事」をしている。これも大きな話題点だった。
 オリジナルの【Varalaaru】には「History of God Father」という副題が付いていたが、カンナダ版ではその「God Father」が題名となり、代わりに「God Is Supreme.. God Father Is Extreme..」という、いかにもウペンドラ好みの語呂合わせな副題が付いている。

【God Father】 (2012 : Kannada)
脚本 : K.S. Ravikumar
監督 : Sethu Sriram
出演 : Upendra, Soundarya Jayamala, Catherine Tresa, Ramesh Bhat, Sudha Belawadi, Hema Chowdhary, Satyajit, Rekha Das, Gurudutt, Bhumika Chawla(特別出演)
音楽 : A.R. Rahman
撮影 : Sethu Sriram
編集 : G. Basavaraj Urs
制作 : K. Manju

《あらすじ》
 富豪のシヴサーガル(Upendra)はかつて交通事故で妻を亡くし、自身も障害者として車椅子で生活していた。一人息子のヴィジャイ(Upendra)は彼にとってすべてだったが、ヴィジャイはお気楽な若者に育つ。ある時、仲間と遊び呆けるヴィジャイに業を煮やしたシヴサーガルは、彼に仕事を託し、バーマープラという村落へ出張させる。
 バーマープラでヴィジャイはディヴィヤ(Soundarya Jayamala)という女性と出会う。ディヴィヤは娼婦だったが、ヴィジャイはその境遇に同情し、結婚を申し込む。だが、「娼婦」というのは真っ赤な嘘で、実は大学生のディヴィヤはヴィジャイとその仲間に一泡吹かせようとしただけであった。
 家に帰ったヴィジャイはひどく落ち込む。事情を察したシヴサーガルは、さっそく手を回し、ヴィジャイとディヴィヤの婚約を成立させる。
 だが、この時からヴィジャイのとんでもない悪行が始まる。まず彼は泥酔してディヴィヤの家に現れ、乱暴狼藉を働く。次にディヴィヤのいとこのプージャーをレイプしようとしたため、シヴサーガルはディヴィヤ家から婚約破棄を宣告される。さらにヴィジャイは父シヴサーガルの殺害さえ図る。これらの事件に対してヴィジャイが記憶にないと主張したため、父は息子を精神病院に入院させることにする。
 だが、これらの事件の犯人はヴィジャイではなく、ヴィジャイに瓜二つのアジャイ(Upendra)という男の犯行だった。
 アジャイは実はシヴサーガルの双子の息子の片割れだった。シヴサーガルのせいで母が発狂し、悲惨な生活を余儀なくされたと信じるアジャイは、父を心底憎み、復讐の機会を狙っていたのであった。
 アジャイは病院からヴィジャイを拉致し、辺鄙な場所に捨てる。そしてヴィジャイになりすまし、シヴサーガルの家に入り、父を殺そうとする。だが、目の前の男がヴィジャイでないことを察知していたシヴサーガルは、車椅子から立ち上がり、アジャイと戦う。そこへヴィジャイが戻って来たため、アジャイは逃走する。ヴィジャイは父に、自分と瓜二つの男の存在や、父が実は障害者でなかったことについて、説明を求める。シヴサーガルは苦渋に満ちた25年前の出来事を語り始める。
 ・・・
 地方の富豪の息子だったシヴサーガルは、早くに父とは死別し、母(Hema Chowdhary)の溺愛を受けて育った。彼はまた優れた古典ダンサーであったが、そのせいか、立ち居振る舞いが女っぽく、メイドからも軽蔑される有様だった。シヴサーガルは母の友達(Sudha Belawadi)の娘ワーニ(Catherine Tresa)との結婚が決まるが、まさに結婚式の当日、その女っぽさを嫌われて、ワーニに逃げられてしまう。母はこの出来事にショックを受け、急死する。鬼と化したシヴサーガルは、自分の男らしさを証明するためにワーニをレイプする。結果、ワーニは妊娠するが、シヴサーガルは生まれた直後の男児を引き取り、故郷を捨て、都会で身を立てることとなった。
 シヴサーガルは、自分が母に甘えすぎたことが悲劇的出来事を招いた原因だと考え、ヴィジャイを育てるにあたって、できるだけ父に甘えることのないよう、自分は25年間ずっとヴィジャイの前では障害者のふりをしてきたわけであった。
 ・・・
 ヴィジャイの汚名が晴れたため、彼とディヴィヤの結婚式が執り行われることになる。それを受けて、アジャイはシヴサーガルに挑戦状を叩き付ける。警察の厳重な警護の中、結婚式が始まるが、アジャイは巧みに式場に侵入する、、、。

   *    *    *    *

 ウペンドラ主演のリメイク作品の場合、ほとんどがオリジナルに忠実なコピーであるが、例えば【Budhivanta】(08)のように大きく改変が加えられたものもあるので、ちょっと期待したが、残念ながら前者だった。オリジナルの【Varalaaru】はいじり所の多い作品だけに、ウッピ自身が脚本を書いて、変化を付けてもよかったと思う。
 しかし、比較的しっかりと作られたリメイクなので、オリジナルが面白い分だけ、楽しめる。また、主役(三役)を演じたウペンドラがアジットとはまた違った雰囲気を出していたため、コピー作品とはいえ、うまい具合にカンナダ化されていたとも言える。

 【Varalaaru】自体が南インド映画らしい大胆な発想とトリッキーなストーリーラインを持つ面白い作品だし、これを観たカンナダ人もそう多くはないと思われるので、たぶんカンナダの観衆は本作を好意的に受け入れるだろう。レビューでの評価も高い。
 ただ、私的には本作に高得点を与えるのには躊躇いを覚える。なんといっても、あくまでも本作はオリジナルあってのリメイクであり、本作の面白いと評価されている部分は(ウペンドラのパフォーマンスも含めて)すべてオリジナルから持ってきたものだ。また、アジットはこの三役を完璧に演じていたが、それに比べると、ウペンドラは(かなり健闘しているとはいえ)落ちる。
 上映時間は、オリジナルが166分なのに対し、リメイクは148分と、18分も短い。それで、本作はさくさくっとスピーディーな感じで良かったが、その反面、雑に端折ってしまった部分もあった。例えば、クライマックスのシヴサーガル(オリジナルではシヴァシャンカル)が銃弾に倒れる場面で、撃ったのは警官なのだが、本作では2,3カットほど足りなく、オリジナルを観ていないなら、誰が撃ったか分からないかもしれない。

 それにしても、【Varalaaru】は、例えば女々しい古典ダンサーが一転して腰の据わった男に変じるとか、25年間も障害者の演技を続けるとか、母が息子を想うあまり発狂してしまうとか、極端な設定を持ち、また、濃密な父子/母子の愛憎がモチーフだったりして、伝統的なタミル映画の特色が色濃く表れている(まぁ、監督がラヴィクマールだということもあるが)。同作品の公開が2006年10月なので、タミル・ニューウェーブの作品が顕著に現れる前の話だと思われるが、当時はまだこういう古き良きタイプのタミル映画が作られていたかと思うと、懐かしい気持ちになった。

◆ 演技者たち
 上でも触れたとおり、ウペンドラのパフォーマンスは面白く、十分ファンを喜ばせるものだったが、個人的にはどうしてもオリジナルのアジットと比較してしまい、点が辛くなる。
 父と双子の息子(うち、一人は悪役)の「三役」ということだが、「父」が若き日と現在とではまったく別様になっているので、実質的には「四役」と言える。アジットはこの4相のバランスが良く、完璧に演じ分けられていたが、ウッピの場合は、父の2相は良かったが、子の2相が面白く演じ分けられていなかった。ウッピは父の2相のそれぞれにアクセントを置いて、個別に見ると上手く演じていたと言えるのだが、実はゴッド・ファザーと古典ダンサーは同一人物であり、ヴィジャイとアジャイは共にその息子であり、双子である、という設定を忘れているかのようだった。
 アジットとウペンドラのキャラクターの違いというのも大きいが、作品公開当時の年齢が、アジットが35歳、ウッピが43歳というのも、両作品を違ったテイストのものとしている要因だと思われる。
 しかしまぁ、なよなよとしたマザコンで、バラタ・ナーティヤムを踊るウッピというのは、やっぱり見ものであるに違いない。

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 ヒロインのディヴィヤ役は、オリジナルではアシンだったが、本作ではサウンダリヤー・ジャヤマーラー。この人は往年の有名女優で、KFCC(Karnataka Film Chamber of Commerce)の会長も務めたことのあるジャヤマーラーの娘さんで、本作がデビューとなる。
 はっきり言って、ここも本作がタミル版オリジナルより落ちる部分だ。実はアシンもそんなに良くはなかったのだが、サウンダリヤーさんの場合、そもそも女優というより、その顔立ち、体格から、女子プロレスラーに転向したほうがいいのでは?と思ってしまったほどだった。
 ところが、母ジャヤマーラーを憚ってか、レビューの評価はサウンダリヤーにずいぶん好意的。そりゃあ、ガンディナガルのヤクザ連中(映画ギョーカイ人のこと)をコントロールしていたジャヤマーラーさんの腕の太さ、ケツのデカさを見れば、批評家など震え上がって当然だろうけど。
 (写真下:オカンとツー・ショットのサウンダリヤー。よう似とる!)

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 ヴィジャイ/アジャイの母を演じたキャサリンは気の毒だった。本人は一生懸命頑張っていたのに、なにせこの役をやるには若すぎたので、ミスキャストと言われる結果となった(オリジナルではカニハーが演じた役だが、彼女も若すぎる嫌いがあった)。ただ、要所要所では可愛く見えたし、古典ダンスも意外に様になっていたし、レイプされるシーンはエロティックだったので、私的には満足。

◆ 音楽・撮影・その他
 さて、話題だったラフマーンの音楽だが、何と言うか、「カンナダ映画にラフマーンが来るわけない!」と信じ込んでいた私の耳には、どうもピンと来なかった。曲そのものの良し悪しではなく、カンナダ映画にはカンナダ映画のテイストがあり、まして本作はウペンドラという独特の臭気を発する男の主演作なので、結局は合っていないと感じた。私の感覚では、本作にはグル・キランを使うべきだった。
 なお、音楽シーンの1つになぜかブーミカが特別出演していた。

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 撮影は監督のS・シュリーラーム自身がやっている。

◆ 結語
 カンナダ人とウッピ・ファンにとってのみ大切な作品。観たら観たで楽しめるが、【Varalaaru】を未見のお方にはオリジナルを鑑賞することをお勧めする。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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