カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Addhuri】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2012/08/11 01:47   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 3 / コメント 0

 先週末は世も末かと思われるほど碌な新作映画が公開されず、甚だ弱った。選択基準を下げて、とりあえずはS・V・ランガー・ラーウの孫がデビューしたというテルグ映画【Mr 7】でも観ておこうかと思ったが、それを祝福するほどトリウッドに対して思い入れのない私としては、迷った挙句、前から観たいと思いつつも後回しになっていたカンナダ映画【Addhuri】を観ることにした。

画像

 実は本作が公開されたのは6月15日のことで、すでに上映日数50日を越えるロングラン・ヒットとなっている。
 主演は新人のドゥルワ・サルジャー。名前から察せられるとおり、彼は主にタミル映画界で活躍する「アクション・キング」こと、アルジュン・サルジャーの甥っ子で、【Vaayu Puthra】(09)鑑賞記で紹介したチランジーヴィ・サルジャーの弟になる。
 題名の「Addhuri」は「雄大」といった意味。

【Addhuri】 (2012 : Kannada)
物語・脚本・台詞・歌詞・監督 : A.P. Arjun
出演 : Dhruva Sarja, Radhika Pandit, Tarun Chandra, Tabla Naani, Nagathihalli Chandrashekhar, Raju Thalikote, Bullet Prakash, Satish, Anushri
音楽 : V. Harikrishna
撮影 : Soorya S. Kiran
編集 : Deepu S. Kumar
制作 : Keerthi Swamy, Shankar Reddy

《あらすじ》
 バンガロールの鉄道駅でアルジュン(Dhruva Sarja)とプールナ(Radhika Pandit)が口論している。この二人は前日にレジスター結婚をする予定だったが、結婚登記所にアルジュンが現れなかったため、激怒したプールナが彼を捨てて、デリーの親元に帰ろうとしていたところを、アルジュンが引き留めていたというわけである。プールナは切符を買おうとする。だが、アルジュンが事前に切符窓口の係員(Tabla Naani)と示し合わせていたため、彼女は1週間後の切符しか取れなかった。アルジュンはこの1週間を利用して、プールナとよりを戻そうと考える。彼はプールナに、1年間の交際期間中に訪れた思い出の場所を再訪しようと提案する。プールナも、これはアルジュンに絶縁状を叩き付ける良いチャンスになると思い、受け入れる。
 1日目から3日目まで、アルジュンはプールナに罵られながらも、めげずに汚名挽回のチャンスを窺う。
 4日目に変化が起きる。プールナがアルジュンに父が決めた婚約者のタルン(Tarun Chandra)を紹介したからである。タルンはソフトウェア技術者で、実に好青年であった。プールナはこれでアルジュンに引導を渡せるとほくそ笑むが、アルジュンは逆にタルンに気に入られる。アルジュンはタルンに自分の失恋話(実はプールナとの顛末)を語る。それを聞いたタルンは感動し、「君の恋は成就するさ」と、アルジュンを祝福して去って行く。
 5日目に、プールナの女友達のアーシャ(Anushri)が、なぜアルジュンがレジスター結婚の日に現れなかったか、プールナに打ち明ける。実は、アーシャは妊娠していたが、男に逃げられたため、絶望していた。それを知ったアルジュンが、中絶を強く希望するアーシャを病院へ連れて行き、手術に付き合っていた、というわけであった。それを聞いたプールナの心に変化が生じる。
 そして、7日目の朝がやって来る、、、。

   *    *    *    *

 またまたカーヴェリさん泣かせの、不可解なカンナダ映画登場!
 あんまり面白くないんだけどなぁ、、、何ゆえヒット? 【Mungaru Male】(06)ほどの社会現象は生まないと思うが、こんな映画でOKなの?といった印象では【Mungaru Male】とよく似ている。

 監督のA・P・アルジュンは【Ambaari】(09)という作品でデビューした人で、本作が2作目だと思う。【Ambaari】は100日を越えるヒット作となったが、私が観た限り、あまり面白いとは思われなかった。単一のアイデアだけでストーリーを流すという点では、【Ambaari】も【Addhuri】も同じ。どちらも雑な脚本で、完成度は高くない。ただ、この人の作品には庶民志向の、人情に訴えるかけるようなものがあり、それがカンナダの大衆の琴線に触れた可能性はある。

 本作が好意的に受け入れられている理由として、音楽が大衆好みのものでヒットしているというのもあるが、作品全体の持つ「雰囲気」が心地よく感じられるのだろう。とにかく、「明るい」、「元気」、「単純」なのである。鑑賞後、優れた映画を観たという実感はないが、なんだかほんわかとした気分は残る。
 この、明るい、元気、単純というイメージは、主人公アルジュンのキャラクターにぴったり重なる。お調子者で、一見バカに見えるが、いざというとき頼りになる。周りから誤解を受けて苦境に立っても、言うに言われぬ事情からその誤解をじっと我慢する善いヤツ。そんな人物なのであるが、やっぱりこういうのがインド大衆の思い描く理想の「男子」なのだろう。

 本作は、ヒーローとヒロインの家族がまったく登場しないとか、二人が親の意思に反するレジスター結婚を試みるとか、女子大生の妊娠中絶の問題を扱っているとか、やや新しい線を狙った節はあるが、映画全体から受ける印象としては、野暮ったく、古めかしく、カンナダ映画らしい説教くささもある。だが、この野暮ったさが効果的に働き、カンナダ人に「安心感」をもたらした可能性はある。
 野暮ったく、垢抜けしていないという点では、映画を観る人々自体が野暮ったく、垢抜けしていなければ、問題ないだろう。バンガロールは、インドのシリコンバレーだ何だと言っても、所詮は田舎町だと思うし、カルナータカ州全体となると、基本的に農林水産業地域だ。そりゃあ、バンガロールのそこかしこにモダンな思考・行動スタイルを持った人はたくさんいるが、そんなのはまだ少数派にすぎず、近代化の波に乗っていない人々、近代化を快く思わない人々、または、そもそもそんな社会変化を実感できない環境にいる人々が大半を占めるのではないだろうか。カンナダ映画のターゲットというのはそういった人たちであり、本作がヒットしているのも、そんな彼らの最大公約数的な好みをうまく突いたからかもしれない。

◆ 演技者たち
 デビューのドゥルワ・サルジャーについては、愛嬌という点では高得点で、もしかしたらカンナダ人はこれを愛でるかもしれない。演技は上手いとは思えなかったが、アクションとダンスはカンナダ俳優の中ではまずまずなほうだろう。何よりカメラ怖じしないところが良かった。
 これに関連して、アルジュン監督は新人のドゥルワの緊張をほぐし、相手役のラーディカー・パンディット(キャリア的には上)に対して気後れしないようにと、クランクインに先立ち、アルジュンとラーディカーを1ヵ月間一緒に行動させた、というエピソードがある。この配慮は効果を上げていたと思う。
 この人についてはプラスポイントはいくつかあるが、主演級俳優としてやっていくには、結局、この顔じゃあなぁ、と思った。オーラなんかも全然なく、「スター誕生」といった印象は受けなかった。
 (写真下:どうもこの「力瘤」を売りにしたいらしいドゥルワくん。)

画像

 ヒロインのラーディカー・パンディットは、【Moggina Manasu】(08)、【Love Guru】(09)、【Krishnan Love Story】(10)でフィルムフェアー賞・主演女優賞3連覇を果たしたものの、その後はやや苦戦気味だった。本作のヒットで、やれやれ感がある。ただし、本作のプールナはぷんぷん怒っていれば済むような役柄だったので、ラーディカーにすれば物足りなかったであろう。

画像

 ソフトウェア・ガイのタルン役はタルン・チャンドラ。この人は【Love Guru】でもソフトウェア・エンジニアで、やっぱりラーディカー・パンディットに振られる役だった。おそらく、そういうことを踏まえて、パロディー的に彼を起用したものと思われる。

◆ 音楽・撮影・その他
 上にも触れたとおり、ハリクリシュナの音楽はヒットしており、本作のセールスポイントになっている。
 音楽シーンは、カンナダ映画の標準からすると、まずまず良くできている。

 基本的にラブストーリーであるが、強引な形でアクション・シーンが3場面挿入されていた。かなり危険な場面でも、ドゥルワはスタントマンを立てずに、自分でやったらしい。

◆ 結語
 これもなかなか日本人には理解しにくい、否、幅を狭くとって、日本の南インド映画愛好家でも理解しにくい作品だと思われる。私的には、一応ヒット作なので、カンナダ人とうまくやって行くために観ておいた。

・満足度 : 2.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Pattathu Yaanai】 (Tamil)
 この週末はカンナダ映画、タミル映画、テルグ映画にぜひとも観たい作品がなく、鑑賞作品選択に困った。こういう時こそマラヤーラム映画を観る良いチャンスなのに、それもマ映画サイドからの一方的な上映禁止措置により、目下バンガロールではマ映画が1つも上映されていないという事態になっている(こちら参照)。で、甚だ迷った挙句、タミル映画の【Pattathu Yaanai】にした。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/08/01 02:01
【Bahaddur】 (Kannada)
 ディーパーワリ以降の話題作公開を控え、先週末は特に目ぼしい作品の公開がなかったため、優先順位の低かったカンナダ映画【Bahaddur】を観て来た。私的には順位を下にしていたが、口コミでは面白いということで、ブロックバスターになりそうな作品である。  監督はチェータン・クマールという人で、新人らしい。(カンナダ俳優に同じ名前の人がいるが、別人。)  ヒーローは【Addhuri】(12)でデビューしたドゥルワ・サルジャー(アルジュン・サルジャーの甥)で、彼の2作目となる。ヒロインはラ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/10/23 20:49
【Raate】 (Kannada)
 いつの頃からか、ファッション雑誌の表紙を飾るようなゴージャスなインド女優に興味をなくした私は、ひたすら「隣の女の子」タイプの女優に愛の目を注いでいる。そんな私の美意識を満足させてくれそうなカンナダ映画が2本、このユガーディにめでたく公開されたので、どちらも観ることにした。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/03/24 21:23

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Addhuri】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる