カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Devudu Chesina Manushulu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/09/18 11:39   >>

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 仕事が忙しいやら、日本へ一時帰国するやら、体調を崩すやらで、この映画日記も間が空いてしまった。実際、ここ3週間ほどインド映画が観られない状況にあり、また映画関連のニュースにもまったく目を通していなかったので、この程度のブランクでもすっかり浦島太郎。観たい映画もここまで山積み状態となると、億劫な気分のほうが強くなるが、いつもどおり注目作を一つ一つ片付けていくしかない。

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 さて、今回紹介するプーリ・ジャガンナート監督、ラヴィ・テージャ主演のテルグ映画【Devudu Chesina Manushulu】は、8月15日の公開で、私が観たのが8月25日なので、ずいぶん昔のことのようで、記憶が薄れつつある。しかも、フロップに終わったらしく、AP州ではまだやっているだろうけど、バンガロールでは2週間で打ち切りとなった。そういう作品の鑑賞記を今さら書くのにも身が入らないが、なにせ過去に4作もヒット作のあるプーリ・ジャガンナートとラヴィ・テージャのコンビ作品だし、ヒロインのイリヤちゃんも良かったので、頑張って書いておくことにした。
 題名の「Devudu Chesina Manushulu」は「神様が作った人間」という意味。

【Devudu Chesina Manushulu】 (2012 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Puri Jagannadh
出演 : Ravi Teja, Ileana, Prakash Raj, Subbaraju, Ali, Brahmanandam, Kovai Sarala, M.S. Narayana, Fish Venkat, Jyoti Rana, Junior Relangi, Gabriela Bertante
音楽 : Raghu Kunche
撮影 : Shyam K. Naidu
編集 : S.R. Shekhar
制作 : B.V.S.N. Prasad

《あらすじ》
 ヴァイクンタではご機嫌斜めのラクシュミ女神(Kovai Sarala)の機嫌を直すために、ヴィシュヌ神(Brahmanandam)があるラブストーリーを語って聞かせる。それは二人の孤児、インドのハイダラーバードに暮らすラヴィ・テージャ(Ravi Teja)とタイのバンコクに暮らすイリヤーナ(Ileana)の物語だった。ラヴィ・テージャは雑多な問題を片づける示談屋、イリヤーナはタクシーの運転手をしていた。
 ・・・
 ある日、ハイダラーバードの片隅でパパイヤ(M.S. Narayana)がバナナの皮を路上に捨てる。その些細な行動が連鎖的な事象を惹き起こし、最後に警官のスッバラージュ(Subbaraju)がヤクザのサンディーを射殺するという事態に帰結する。サンディーはバンコクにいるマフィアのドン、プラカーシュ・ラージ(Prakash Raj)の片腕だったため、スッバラージュはプラカーシュ・ラージの手の者に脅迫されることになる。生命の危機を感じたスッバラージュは、プラカーシュ・ラージとの調停を示談屋のラヴィ・テージャに依頼する。ラヴィ・テージャは早速バンコクに飛ぶが、空港でいきなり詐欺タクシー運転手のゴーリ(Ali)に荷物をすべて盗まれてしまう。だが、おかげで美人タクシー運転手のイリヤーナと出会い、彼女のアパートに居候させてもらうことになる。ラヴィ・テージャはイリヤーナに惚れるが、イリヤーナのほうも彼に惹かれるようになる。
 荷物を盗んだ憎きゴーリだが、彼のおかげでラヴィ・テージャはプラカーシュ・ラージとの対面が実現する。ラヴィ・テージャはプラカーシュ・ラージにスッバラージュの事情を説明し、示談金で片を付けようとする。しかし、プラカーシュ・ラージはイリヤーナに惚れてしまい、金よりも彼女を要求する。憤ったラヴィ・テージャはプラカーシュ・ラージとその一味を蹴散らし、イリヤーナを連れてインドへ帰ろうとする。しかし、バンコクに留まりたいイリヤーナはラヴィ・テージャの頬に平手打ちを食らわす、、、。
 ・・・
 思いがけぬアンハッピーエンドに満足しないラクシュミ女神は、時間を過去に戻し、パパイヤにバナナの皮を路上ではなく「ゴミ箱」に捨てさせる。そこから別様に一連の事象が起こり、今度は警官のスッバラージュはサンディーを生きたまま逮捕することに成功する。サンディーはバンコクのドン、プラカーシュ・ラージの片腕だったが、組織の秘密が明るみに出るのを恐れたプラカーシュ・ラージは、サンディーを釈放させるために、スッバラージュとの調停を示談屋のラヴィ・テージャに依頼する。ラヴィ・テージャとスッバラージュは早速バンコクに飛ぶ。二人は空港で美人運転手イリヤーナのタクシーに乗るが、別の運転手ゴーリのタクシーに乗ったプラカーシュ・ラージの一味に襲撃され、イリヤーナの車は大破し、スッバラージュも足に怪我を負う。せんかたなくラヴィ・テージャとスッバラージュはイリヤーナのアパートに居候することになる。ラヴィ・テージャとイリヤーナは惹かれ合う仲となる。
 運転手ゴーリのおかげで、ラヴィ・テージャはプラカーシュ・ラージとの対面が実現し、サンディーの釈放金額を交渉する。しかし、その場でイリヤーナを目撃したプラカーシュ・ラージは彼女のことを「妹だ」と主張する。そして、プラカーシュ・ラージに執拗に迫られ、イリヤーナも彼のことを「兄さん」と認めてしまう。そんな時にスッバラージュが警官隊を率いて現れ、プラカーシュ・ラージを逮捕する。ラヴィ・テージャはバンコクに留まり、イリヤーナと結婚する。そして二人で獄中の「兄」プラカーシュ・ラージの出所を待つ、、、というハッピーエンドにラクシュミ女神は満足する。

   *    *    *    *

 ひと言で言って、コンセプトは面白いが、映画全体はつまらない作品だった。つまらないと言うよりも、脚本が破綻しており(特に後半)、プーリ監督は何がやりたかったのかよく分からない。

 公開に先立って、プーリ監督自身が「この映画にはストーリーがない」みたいなことを表明していたらしい。ストーリーよりも、アクションやコメディー、音楽シーンなどの娯楽的ガジェットを重視した作品という意味か、とも思ったが、どうもそのエンタティメント・パートも豪華ではなく、また豪華に作ろうとした跡も窺えない(むしろ、どこかやっつけ仕事みたいな印象を受けた)。
 すると、「ストーリーがない」という意味は、「通俗的な意味でのストーリーはなく、違った語り方を持つ作品」という意味になるのかもしれない。その新趣向の(むしろ、奇をてらった)語り方というのは、神の意思により、一つの出来事に対して別の可能的出来事を対比するというもので、パパイヤがバナナの皮を「路上」に捨てるか「ゴミ箱」に捨てるかで、ラヴィ・テージャとイリヤーナの運命がどう変わるかがユニークなスタイルで描かれている。これはなるほど面白いアイデアだが、プーリ監督がなぜこんなコンセプトを採る必要があったのかは分からない。また、構成上、前半と後半でどうしても繰り返しの部分が多くなり、上映時間は2時間4分と短いのにもかかわらず、退屈で、体感時間は長く感じられた。

 映画の冒頭に、「あなたが本当に神の存在を信じているなら、疑問を抱くことなくこの映画が鑑賞できるだろう」みたいな趣旨の字幕があったが、これも大真面目なものなのか、思わせ振りなことを言ってみただけなのか、真意をはかりかねる。これからすると、ヒンドゥー教の神々をほぼ信じていない私が本作の面白さを理解できなかったのは当然だったとも言える。それは問題ないとして、しかし、本作はフロップに終わったのだから、本作の良さを認めなかったテルグ人もほとんどが無神論者ということになるが、それは大問題だろう。(憶測だが、南インド映画では大衆的な娯楽映画であればあるほど神様をおもちゃにしてはいけない、という原則があるように思えるのだが、本作はこの辺で誤ったか?)

 というより、もごもご言うのはやめて、この際はっきりさせると、プーリ・ジャガンナート監督はもう終わったと思う。「終わった」という言い方が性急ならば、どこか間違った道を歩んでいる、と言ってもいい。【Pokiri】(06)の大成功以降、【Golimaar】(10)以外碌な作品がないという状況を見ると、心配の一つもしたくなるというものだ。

◆ 演技者たち
 そういえば、ラヴィ・テージャ主演の映画を観るのも久々のことだ。相変わらず独特の臭気を放ちながら、エネルギッシュに演技していたが、このパターンにもそろそろ飽きてきた(テルグ人は、まだまだ支持、かね?)。シリアス作品のラヴィ・テージャも適当なバランスで観てみたい。

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 イリヤちゃんは色々な点で良かった。
 まず、バンコクに暮らす威勢のいい女タクシードライバーという設定が面白かったし、それなりに「らしく」演じていた。(実際には、バンコクでテルグ語を話すタクシー運転手に遭遇するのは非常に難しいだろうけど。)また、バサッとしたショートヘアが私の目には魅力的に映った。(もっとも、インド人の間ではまだロングヘア崇拝が根強く、本作のイリヤちゃんのヘアスタイルを評価しない声も多いようだが。)プーリ監督にしては本作のヒロイン造形はうまく行っており、下のスチルのように、バンコクのピンクタクシーを洗うイリヤちゃんを見て、同じようにボディー洗いをしてもらいたいと思った男は私だけではないだろう。

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 ところで、イリヤーナといえば、近作の【Nanban】(12)と【Julayi】(12)はヒットしたものの、テレビのテルグ語チャンネルのビデオジョッキーにまで「フロップ女優」と馬鹿にされるほど当たらない女優なのであるが、本作も然りだった。ところが、先日公開されたヒンディー映画の【Barfi!】は評判が良く、大ヒットしそうである。順調なボリウッド・デビューを果たしたということで、脱南が危惧されるイリヤちゃんだが、まぁ、彼女がボリウッドに定着するということは100パーセントないだろう。

 脇役陣では、プラカーシュ・ラージは「ガジニ」のような記憶障害のあるヘンテコなドンの役だったが、これはマイナス・ポイント。
 ブラフマーナンダムとコーヴァイ・サララのヴィシュヌ&ラクシュミというのも笑えるが、この二人が並んでいると、ヴァイクンタがどこかのお茶の間にしか見えなかった。
 アイテム・ナンバーで踊っていたのはGabriela Bertanteというブラジル女。省略しようと思ったが、どうやら【Billa II】(12)にも出ていた人らしいので、今度は忘れないようにスチルを載せておく(下)。

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽を担当したのはラグ・クンチェーという人。まったく記憶にない名前だったが、【Bumper Offer】(09)や【Aha Naa Pellanta】(11)の次世代系の作品を担当した人だった。本作の音楽は大衆受けを意識した楽しいもので、なかなか良かった。今後期待が持てる音楽監督ではないだろうか。

◆ 結語
 本作は、コンセプトは興味深いものの、脚本の後半での積み上げに失敗したせいで、すべてがおじゃんになってしまった。プーリ監督には、猪口才なアイデア勝負ではなく、従来のような腰の強い娯楽アクションを期待したい。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
Barfi、アカデミー賞の候補作品になっちゃいましたよ。なんか「神様の呉れた赤ん坊」と「恋見るが弥」を足して2で割ったような映画にしか思えないんですが。
メタ坊
2012/09/23 09:27
イリヤちゃん、きっと今ごろ、家族と一緒にムンバイで高級アパート探しをしているんでしょうね。
カーヴェリ
2012/09/23 13:47
以前どこかで読んだ記事では、イリヤちゃんはポキリでファースとブレークした時にハイダラとチェンナイで投資目的で随分不動産を買い漁ったということですよ。
メタ坊
2012/09/23 23:41
なるほど、ポキリのイリヤちゃん、銀幕上ではいたいけなヒロインを演じていながら、実生活ではプラカーシュ・ラージ(ランドマフィア)をやっていたわけですね。
カーヴェリ
2012/09/24 10:04

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