カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sudigadu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/09/21 22:29   >>

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 インド人もパロディー(スプーフ)は大好きなようで、インド映画に愉快なパロディー・シーンが挿入されるのは普通のことだが、ほぼ映画全編がパロディーだというパロディー映画になると珍しい。2年前にタミル映画で、「タミル映画界初のスプーフ(パロディー)映画」を謳った【Thamizh Padam】が登場し、ヒット作となった。その後、他言語映画産業でも類作が作られるかなと思っていたが、特にそんな動きもなかった。しかし、ここへ来て思い出したかのようにテルグ映画界からスプーフ映画が、しかもその【Thamizh Padam】のリメイクである作品が現れた。

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 アッラリ・ナレーシュ主演の本作は、100を超えるテルグ映画のパロディーが散りばめられたスプーフ映画だという触れ込みだった。監督はビーマネーニ・シュリーニワーサ・ラーウという、リメイク映画を得意とする人らしい。【Thamizh Padam】のリメイクだというのが引っ掛かったが、タミル人以上に映画を愛するテルグ人のこと、きっと違った盛り上がりを見せるだろうと、とにかく観ておくことにした。ちなみに、本作の公開は8月24日のことで、興業的には大ヒットとなっている。

【Sudigadu】 (2012 : Telugu)
物語 : C.S. Amudhan
脚本・台詞・監督 : Bhimaneni Srinivasa Rao
出演 : Allari Naresh, Monal Gajjar, Kovai Sarala, Hema, Sayaji Shinde, Jayaprakash Reddy, Raghu Babu, Brahmanandam, M.S. Narayana, L.B. Sriram, Kondavalasa, Ali, Krishna Bhagavan, Venu Madhav, Chandra Mohan, Chalapathi Rao, Dharmavarapu Subramanyam, Posani Krishna Murali, Jeeva, Srinivasa Reddy, Melkote, Suman Setty, Narsing Yadav, Yadagiri Rodda, Rachana Mourya
音楽 : Sri Vasanth
撮影 : Vijay Vulaganath
編集 : Gowtham Raju
制作 : Chandrasekhar D. Reddy

《あらすじ》
 シーマプラムという村で、カメーシュ(Allari Naresh)とその妻(Hema)に赤子が生まれ、シヴァと名付けられる。シヴァは生まれたときからシックスパックのボディーを持ち、テルグ映画のヒーローのような人物になる運命を背負った赤子だった。時に、この村では二派のファクショニストが抗争を続けていたが、シヴァのちびった小便のせいで、ティッカル・レッディ(Jayaprakash Reddy)の身内が死亡してしまう。ティッカル・レッディは復讐に動き出す。それを恐れたカメーシュは、赤子のシヴァを祖母(Kovai Sarala)に託し、村を脱出させる。
 それから25年。シヴァ(Allari Naresh)は正義感の強い若者に育ち、祖母とハイダラーバードのスラムに暮らしていた。シヴァはローカルマフィアやティッカル・レッディの手の者に命を狙われるが、逆に彼らを蹴散らす。また、シヴァには何か秘密のミッションがあるらしく、悪者たちを一人一人片付けていた。
 そんな最中に、シヴァはプリヤ(Monal Gajjar)という女子大生に出会い、結婚を決意する。しかし、富豪のプリヤの父(Sayaji Shinde)はスラム民との交際を許さない。一念発起したシヴァは、身を粉にして働き、たちまちに大金持ちとなる。プリヤの父も娘との結婚を認めないわけにはいかなかったが、ここに重大な問題があった。シヴァがプリヤと結婚するためには、シヴァの両親を探し出す必要があったのである。
 シヴァはプリヤを伴い、両親を見つけるために生まれ故郷のシーマプラムを訪れる、、、。

   *    *    *    *

 生真面目にあらすじにまとめなければならないストーリーでもないので、いい加減なところで止めた。
 いわゆるオリジナルの【Thamizh Padam】もそうだったが、パロディー映画と言っても、辛辣な風刺や当てこすりのない、無邪気で、映画産業に対する愛情さえ感じられる作品だった。

 ストーリーの骨子は【Thamizh Padam】に負っている。もちろん、パロディー対象がタミル映画かテルグ映画かの違いだけ、あちこちで違った持って行き方になっているが、基本的には同じで、タミル版の不出来な箇所もご丁寧にコピーしている。とはいっても、両作品は根本的なところで違っており、リメイクと言うよりは翻案と言ったほうが適当だろう。
 そもそも、タミル映画の【Thamizh Padam】は、題名(その名もずばり「タミル映画」)の示すとおり、ずいぶんとタミル映画産業の在り方を意識したもので、伝統的にタミル映画界のスターが政界入りしたがることや、世襲的に映画界入りする2世タレントの群れが同映画産業の質を落としていることなどが揶揄されている。また、【Thamizh Padam】は明らかに実験的な意図を持つ低予算映画で、マーケティングの対象も新世代の若者層だったようだ。つまりは、【Thamizh Padam】は一種のコンセプト映画だと言えるのに対して、この【Sudigadu】はそんなモチーフはほとんどなく、最初から広範な大衆にアピールするコメディー映画としてデザインされたようだ。
 【Thamizh Padam】は、「衰退」とか「迷走」とかいう言葉が意識されていた時期のタミル映画界において、そんな同映画産業の現状を憂い、愛情を以て鼓舞するという意図があり、それなりに存在意義のあるものだったが、【Sudigadu】ではやはりそんな意図はなく、今のこの時期にテルグ映画界でこうしたスプーフ映画を作らなければならない特段の理由というのは見当たらない。
 【Sudigadu】はなるほど楽しい映画だが、個人的には、【Thamizh Padam】のとことん安っぽい味わいのほう好きだ。

 100以上のテルグ映画のパロディー、という触れ込みだったが、ぜんぜん100はなかったと思う。(もちろん、私がこれまでに観たテルグ映画というのも氷山の一角にすぎないので、パロディーに気付かなかったものもたくさんあったと思うが。)
 テルグ映画のパロディーといっても、ある作品の1場面、1台詞を直接引用したものや、テルグ映画で一般的な表現スタイル(例えば、殴られた悪漢が何メートルも宙を飛ぶ、等)を茶化したものや、テルグ映画に関する一点を基にコメディー・ネタを作ったもの(例えば、アクション映画でヒーローや悪役が使っていた武器の羅列、等)など、アスペクトの違いはあった。また、「テルグ映画のパロディー」というのも不正確で、ヒンディー映画やテレビ番組、テレビ・コマーシャルのパロディーもあった。
 そして、最大限に私を失望させたのは、テルグ映画のパロディーを謳いながら、あまりにもタミル・オリジンの作品が多かったことだ(例えば、シャンカル監督の一連の作品や、ガウタム・メーナン監督の【Gharshana】(04)や【Ye Maaya Chesave】(10)、等)。これらの作品は、リメイクだったり、バイリンガル作品だったり、テルグ語ダビング版だったりで、一応「テルグ語映画」に区分されるとは思うが、【Sivaji】(07)や【Robo】(10)を「テルグ語映画」と呼ぶのはまだ許されるとしても、ラジニカーントをテルグ・スターと見なすのは不可能だろう。
 パロディーの元ネタは比較的新しい作品が中心で、中には【Businessman】や【Gabbar Singh】、【Eega】など、ごく最近のものもあった。
 元ネタがタミル・オリジンのものや最近作が多いという点からすると、どうも本作は意図的にテルグ映画の「聖域」を避けたのではないかとも思われる。これは、テルグ映画においてはある特定の大スターのファンクラブというのは、親睦団体というよりは一種の政治団体みたいな性格があり、AP州の政治を左右するほどのパワーを持つという事情を考慮すると、妥当な戦略だったとも言える。しかしその分、本作が期待したほどのパンチ力のないスプーフ映画になってしまったのも事実だ。

◆ 演技者たち
 銀幕上でアッラリ・ナレーシュを見るのも久々だが、非常に勢いがあって良かった。何よりも、自ら十分に楽しんで演技しているのが良い。
 ナレーシュのキャリアとして、彼が初めて一人二役(シヴァと父のカメーシュ役)に挑戦するということだが、それはあまり重要ではない。むしろ、2時間ずっと出ずっぱりでも、ほぼ観客の興味を引き付け続けられたということのほうが重要だろう。
 (写真下:複数の映画のパロディーが組み合わさったようなスチルだが、はて、こんな場面、映画本編にあったっけ?)

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 ヒロインというほどのこともないが、プリヤ役はモーナル・ガッジャルという人(カタカナ表記は当てずっぽう)。デビューってことになるのかな? ローカルのミスコン上がりで、モデルという、近ごろ多いパターンだが、私的にはまったく反応せず。
 (写真下:この青いサリーは、そう【Ye Maaya Chesave】のジェシーですね。)

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 登場人物のやたら多い映画であるが(これ自身がテルグ映画のパロディーとも言えるわけだが)、特記すべき脇役はいない。
 主人公シヴァの友人で、年齢不明の若者トリオをやったのはM.S. Narayana、L.B. Sriram、Kondavalasaで、それぞれ「ランボー」、「レモ」、「ロボ」という役名だった。(写真下:ここまで平均年齢を上げんでもなぁ、、。)

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◆ 音楽・撮影・その他
 音楽を担当したのはシュリー・ヴァサントという人だが、初めて名前を聞いた。大した曲はなかったが、ナレーシュ自身が歌っている‘Inky Pinky Ponky’という歌(カメーシュ家のファミリー・ソングという設定だった)は親しみやすいメロディーで、きっと今ごろAP州のあちこちで口ずさまれていることだろう。

◆ 結語
 テルグ映画の迫力あるパロディーのオンパレードを期待すると、がっかりするが、難しいことを言わなければ、それなりに楽しめる。大ヒット作となっているのも頷ける。テルグ映画精通度を測るバロメーターにも良い作品、、、かな?

・満足度 : 2.5 / 5
 

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