カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Cameraman Gangatho Rambabu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/10/28 21:09   >>

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 プーリ・ジャガンナート監督、パワン・カリヤーン主演のテルグ映画。
 パワン・カリヤーンはそもそも好きなテルグ俳優だったが、【Teen Maar】(11)でのパフォーマンスが鼻に付いて鼻に付いて(というより、キモくさえ感じた)、どうもアレルギーができてしまったようで、以来パワンの映画は敬遠していた。
 片やプーリ・ジャガンナートのほうは、「【Pokiri】を撮った名監督」、「トリウッド屈指の硬派アクション映画の作り手」という刷り込みがあり、敬意と共に観ていたが、ふと我に返ると、彼の映画で私が感銘を受けたのは結局【Pokiri】のみ、他の作品には「騙された」感が強い。その評価が前作【Devudu Chesina Manushulu】で決定的となり、苦手な監督の一人となってしまった。
 そういう訳で、このお二方による本作は観る予定になかったが、いざ公開されてみると評価が高く、大ヒットしそうな気配なので、第2の【Pokiri】を期待して観ておくことにした。ヒロインがタマンナーというのも押し要因だった。
 題名の「Cameraman Gangatho Rambabu」は「カメラマン・ガンガとラームバーブ」という意味で、ガンガはタマンナー演じるヒロイン、ラームバーブはパワン演じるヒーローの名前。

【Cameraman Gangatho Rambabu】 (2012 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Puri Jagannadh
出演 : Pawan Kalyan, Tamannaah, Prakash Raj, Kota Srinivasa Rao, Tanikella Bharani, Nasser, M.S. Narayana, Brahmanandam, Ali, Dharmavarapu Subramanyam, Gabriela Bertante, Surya, Scarlett Mellish Wilson
音楽 : Mani Sharma
撮影 : Shyam K. Naidu
編集 : S.R. Shekhar
制作 : D.V.V. Danayya

《あらすじ》
 修理工のラームバーブ(Pawan Kalyan)は社会的な悪が赦せない男。TVニュースで身近な問題を見つけては、解決に乗り出していた。ある時、大学でカーストを基にした学生同士の衝突が起きる。これは野党のリーダーで元AP州首相のジャワハール・ナーイドゥ(Kota Srinivasa Rao)の一派が煽った暴動だった。ラームバーブはこれにも介入し、落着させる。この一件をニュースで見ていたカメラマンのガンガ(Tamannaah)は、ラームバーブのキャラクターに惚れ込み、彼を自分の勤めるテレビ局のニュース・レポーターに起用することを思い付く。彼はこのオファーを受け入れ、「カメラマン・ガンガとラームバーブ」のコンビで次々と社会問題の取材に取り組む。
 このテレビ局のニュース番組でジャワハール・ナーイドゥの不正を暴露したため、担当のキャスター(Surya)が殺害される。殺したのはジャワハール・ナーイドゥの息子ラーナー・プラタープ・ナーイドゥ(Prakash Raj)だった。ラームバーブとガンガはラーナーを取材し、逮捕へと持ち込む。これに憤ったジャワハールはテレビ局に乗り込むが、逆にラームバーブに平手打ちを食らわされる。この模様をニュースで見ていた州首相のチャンドラシェーカル・レッディ(Nasser)はラームバーブに激励を言葉を贈る。だが、一連の出来事の帰結として、ラームバーブとラーナーの対立が決定的となり、ラームバーブはラーナーとその手下の襲撃に遭い、怪我を負う。
 怪我の癒えたラームバーブは、スミタ(Gabriela Bertante)というテレビ局のオーナーと親しくなり、彼女の番組にも協力する。その間、父ジャワハールより次期州首相候補に指名されたラーナーは、政治キャンペーンを行い、大衆を煽動する。ラームバーブはこの動きにも批判的活動を行ったため、再びラーナーの一派に襲われる。
 ラーナーは選挙活動を有利に進めるため、父ジャワハールを暗殺する。そして、マスコミの前では親孝行息子を演じ、大衆的人気を得ようとする。しかし、この暗殺の模様はガンガのテレビ局のスタッフがビデオで隠し撮りをしていた。そのスタッフとガンガはラームバーブにその映像を手渡そうとするが、そこへスミタが現れ、ビデオが横取りされた上、ラームバーブも彼女に銃で撃たれてしまう。
 病院に入院しているラームバーブを州首相が見舞い、激励の言葉を掛ける。ラームバーブはテレビカメラを通して、邪悪な政治家を倒すために集結するよう、大衆に語り掛ける、、、。

   *    *    *    *

 まず始めに、得意技の免責事項から入らせていただくと、インドの地方映画というのは高コンテクスト依存型であることが多く、特に本作のようにテルグ語圏で狂信的なファン層を持つ人気スターをヒーローとし、政治問題をテーマとした風刺劇の場合、私のようにテルグ映画界にもAP州の政治事情にも精通しているとは言えず、加えて言葉がよく分からないという大ハンディを背負った者が観ても、きちんと理解できるものではない。よって、私が本作に対して「期待したほど面白くなかったなぁ」という感想を抱いたとしても、本作を楽しみにされている方は私の評などまったく無視して、安心してご鑑賞いただきたい。

 私がつまらないと感じた要因は、結局、毎度のことだが、プーリ・ジャガンナート監督の語り口のまずさ(というより、不可解さ)だと思う。
 まず、ラームバーブという男がなんでヒーロー足り得るのか、さっぱり分からなかった。「市井人、転じてヒーロー」というのは南インド・アクション映画の常套だが、そのヒーローを創り上げるステップが脚本上鍵となる。そりゃあ、パワースターのパワン・カリヤーンが演じているのだから、アプリオリに「ヒーロー」となることが許されるのかもしれないが、ここはストーリー上しっかりとした基礎付けがほしかった。それが十分ではなかった(と私には見えた)から、壮大なクライマックスも「無理があるなぁ」と感じた。

 次にまずいと思ったのは、タマンナー演じるヒロイン、ガンガの扱いだ。このガンガというキャラクターは、カメラ「ウーマン」ではなくカメラ「マン」だと言い張るほどニュース・カメラマンとして強いプロ意識を持ち、がらっぱちでビールのラッパ飲みも厭わない女性として設定され、それをタマンナーが面白く演じていただけに、「ガンガとラームバーブ」のコンビでどんな痛快なことをやってくれるか大いに期待していた。ところが、後半に入って突然スミタ(ガブリエラ演じる)というキャラクターが登場し、ガンガが消えてしまった。これは、ストーリー展開を面白くするためのディヴィエーションとして導入したものだと思われるが、扱いが大きすぎたため、結局本道に戻れなかった。このガンガのキャラクターで押して行けば、作品のパンチ力が2割アップしただろうし、クライマックスの印象も変わったに違いない。

 ところで、本作は公開直後から政治的に物議を醸し出し、特にテランガーナ分離活動家から強い上映反対運動に遭ったというのは報道により知るところである(例えばこちら)。しかし、私が見たところ、本作は確かに政治的風刺ドラマだとはいえ、言っていることは「政治家は自らの政治活動のために大衆を分断したがるものだが、むしろ大衆は悪徳政治家を倒すために一つになるべきだ」ぐらいのことで、しかもそれを娯楽アクション映画の範囲内で常識的に語ったものであり、決して特定の政党/政治団体の翼賛映画ではない。ただ、誤解や言い掛かりを招く取っ掛かりを与えているのは確かなようだ。

 まずは登場人物の名前。映画中のAP州首相(ナーサル演じる)の名前がチャンドラシェーカル・レッディだったが、これは3年前に物故したY・S・ラージャシェーカル・レッディ(もしくは現職州首相のN・キラン・クマール・レッディ)を思わせる。この登場人物は非常に善人として描かれていたので、コングレス・サイドからは文句はないだろう。しかし、野党のリーダーで元州首相のジャワハール・ナーイドゥ(コータ演じる)及びその息子のラーナー・プラタープ・ナーイドゥ(プラカーシュ・ラージ演じる)が名前的に実在の野党のリーダー、ナーラー・チャンドラバーブ・ナーイドゥを連想させる。私の見たところ、チャンドラバーブ・ナーイドゥと映画中の2役とはまったく似ていないのだが、当事者にすれば、片や与党のリーダーが善玉で、自分と名前・肩書きが似ている野党政治家が悪玉として描かれているのを見れば、決して気分は良くないだろう。そんな次第で、本作はテルグ・デーサム党からも受けが悪いようだ。

 次に、映画中の悪役ラーナー・プラタープ・ナーイドゥが父を殺した後に行った「弔いキャンペーン」が、実在のY・S・ジャガンモーハン・レッディが父Y・S・ラージャシェーカル・レッディの死後に行ったそれを連想させるものがあり、YSRコングレスからも不興を買っているようだ。

 最後に、同じくラーナー・プラタープ・ナーイドゥの過激な「非テルグ民排斥」のアジテーションについては、プーリ監督はおそらくテランガーナ分離運動の中心勢力である「Telangana Rashtra Samithi」の首領K・チャンドラシェーカル・ラーウ(及び、その息子K・T・ラーマー・ラーウ)の言動を念頭に置いたものと思われるのだが、これがテランガーナ分離活動家を刺激した可能性はある。

 ただ、上にも書いたとおり、本作はありがちな娯楽アクション映画と見て差し支えなく、目くじらを立てるほどでもないと私には思われるのだが、それを赦さないのが今のAP州とテランガーナ地方の政治的状況ということだろう。

◆ 演技者たち
 パワン・カリヤーンについては、気合い十分で、徒に格好つけるところも少なかったので、彼のキャリアの中ではかなり良いほうだと思う。毎度この程度の落ち着きを見せてくれれば、アレルギーを感じることもないだろうに。
 それにしても、パワースターもこういう作品に出るようになったということは、兄上に続いて政界入りを狙っているのかな?(最も政治家になってほしくないキャラだが。)

 上に書いたとおり、タマンナーについては残念だった。彼女のパフォーマンスは問題ないのだが、プーリ監督が後半に殺してしまった。ガンガのキャラクターを最後まで活かすことができれば、【Oosaravelli】(11)のニハーリカーに匹敵するほどの役になったろうに。
 ちなみに、がらっぱちなキャラに合わせて、アフレコも男っぽい声のダビング・アーチストが付いていた(P. Priyankaという人らしい)。

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 極悪政治家父子については、コータ・シュリーニワーサ・ラーウは久々に迫力ある役柄で良かった。プラカーシュ・ラージについては、彼のパフォーマンス云々というより、プーリ監督の脚色が弱く、作品全体に力強さを欠く原因となっている。

 スミタ役のガブリエラ・ベルタンテは問題。彼女は【Billa II】(12)と【Devudu Chesina Manushulu】にアイテム出演していたブラジル女だが、アホのプリジャガがこんな何もできない素人を筋に絡ませたおかげで、タマンナーが死んでしまった。個人的な好みを言えば、ラテン女は十分私の守備範囲だが、この件に関しては怒りを覚え、この1点だけでも本作は上映反対運動に値すると思った。

 アリーとブラフマーナンダムのテレビ業界人というのは面白かった。アリーはキャスターの役をやっても顔がでかいということが分かり、納得した。

◆ 音楽・撮影・その他
 マニ・シャルマの音楽は平凡な出来だが、とても分かりやすく、良かったと思う。

◆ 結語
 アーンドラ・プラデーシュ州の政治情勢などに馴染んでいないと理解しにくい作品なので、一般的に日本人向けとは言えないが、我と思わん方は字幕付きでぜひご覧いただきたい。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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内 容 ニックネーム/日時
テランガーナ翼賛映画Jai Bolo Telanganaで牛賞撮ったN・シャンカルがパワースターから侮辱されたのを怨んでK・チャンドラセカール・ラーオのところへ走りあることないこと吹き込んだという噂が流れてますね。

私はパワン+プリジャガによるマッチポンプではないかと睨んでいるのですが…
メタ坊
2012/10/29 09:52
大ありですね、マッチポンプ説。
車の一つや二つ壊されても、それで映画がヒットすれば、大儲けですからね。
 
カーヴェリ
2012/10/29 22:16

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