カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Dhamarukam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2012/11/30 23:34   >>

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 タミル映画界が地味だったのに対して、今年のテルグ映画界は人気スター、著名監督による話題作が期待どおりの興行成績を上げ、賑やかだった印象がある。【Businessman】【Devudu Chesina Manushulu】で外したっぽいプーリ・ジャガンナート監督も【Cameraman Gangatho Rambabu】で逆転ホームランを放っている。
 多くのスターがヒット作をものにした中で、ボックスオフィス的に渋かったのがラヴィ・テージャとナーガールジュナだろう。ただ、ナグさんの場合は、昨年末公開の【Rajanna】【Shiridi Sai】が当たらなかったとはいえ、演技的には良かったので、存在感は発揮していた。

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 そのナグさん期待の新作がこの【Dhamarukam】。スチルからすると、テルグ映画界が得意(?)とするソシオ・ファンタジー映画だと予想された。実は、テルグのファンタジー物は近作では【Shakti】(11)、【Badrinath】(11)、【Anaganaga O Dheerudu】(11)と外れが続いているので、本作にも不安は感じた。しかし、ナグさんが三叉戟を振るうとなれば、観に行かずばなるまい。
 題名の「Dhamarukam」はシヴァ神が持つ鼓のような楽器のこと(上のスチルで三叉戟に結わえてあるもの)。

【Dhamarukam】 (2012 : Telugu)
脚本・台詞・監督 : Srinivasa Reddy
出演 : Nagarjuna, Anushka Shetty, Prakash Raj, Ravishankar, Ganesh Venkatraman, Jeeva, Devan, Pragathi, Abhinaya, Avinash, Brahmanandam, Krishna Bhagawan, M.S. Narayana, Raghu Babu, Duvvasi Mohan, Prithviraj, Thagubothu Ramesh, Charmi(特別出演), その他
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : Chota K. Naidu
編集 : Gowtham Raju
制作 : Dr. Venkat (R.R. Movie Makers)

《あらすじ》
 アンダカースラ(Ravishankar)は太古の昔に神々との戦いに敗れたアスラ族唯一の生き残り。長い眠りの時を経て現代に蘇り、世界の支配者にならんと目論む。また、厳しい苦行の末、シヴァ神より祝福される。
 マッリ(マッリカールジュナ:Nagarjuna)はそもそも熱烈なシヴァ神の崇拝者だったが、子供のとき、カーシーへ巡礼に行った際に猛獣に襲われ(実はアンダカースラの仕業)、両親は死亡、妹のサイルー(Abhinaya)も障害者となり、以来、マッリはシヴァ神を憎むようになっていた。
 マヒ―(マヘーシュワリ:Anushka)は占星術的に特殊な星相の下に生まれ、神的な力を宿すと考えられていた。ある時、マッリはこのマヒーに出会い、強く惹かれるものを感じる。
 入院していたマッリの妹の容態が悪化する。憤ったマッリは寺院へ行き、シヴァ神を激しく呪詛する。その帰り道、マッリは事故に遭って意識を失い、命を落としかけるが、それを密かに救ったのはシヴァ神(Prakash Raj)であった。以後、シヴァ神は人間の姿を借りてサンバイヤと名乗り、マッリの近くに出没する。
 アンダカースラは、日蝕の日にマヒ―と結婚し、直後に彼女を殺せば、五大元素をコントロールし、全世界を支配できる力が得られることを知る。アンダカースラはマヒーに接近する。しかし、カーシーにいたアゴーリの一団はアンダカースラの動きを察知し、マヒーとの結婚が実現しないように彼女を殺そうとする。しかし、この場はマッリがマヒーを救う。アゴーリの長(Avinash)はマッリを見て、この男は自分がその昔カーシーで命を救った少年であると気付く。
 そんな時にマヒーの従兄ラーフル(Ganesh Venkatraman)がアメリカからやって来る。アンダカースラは空港でラーフルを殺し、自らラーフルになりすまして、堂々とマヒーの家に入り込む。ラーフル(アンダカースラ)はマヒーとの結婚を望むが、マヒーの父ヴィシュワナート(Devan)は同意しない。憤ったラーフルはヴィシュワナートを殺そうとするが、ここはマッリがやって来て、救う。
 今やマッリを愛するようになっていたマヒーは、ラーフルにそのことを告げる。ラーフル(アンダカースラ)は大人しく二人を祝福すると見せかけ、罠を仕掛けてマッリの命を狙う。しかし、この場もシヴァ神が間一髪でマッリを救う。アンダカースラはシヴァ神に抗議するが、逆にシヴァ神はマッリを援け、妹サイルーの病気も完治させる。
 マッリはラーフルの所持していたビデオカメラ内の映像から、ラーフルが実は悪魔(アンダカースラ)であることを知り、マヒーの家族に暴露する。アンダカースラはマッリと格闘し、手ひどい傷を負わせ、マヒーを拉致して逃げ去る。それはちょうど日蝕の日で、アンダカースラはマヒーとの結婚の準備を進める。片や、アゴーリの一団に救われ、傷を癒されたマッリは、アゴーリの長に鼓舞され、アンダカースラの棲家に乗り込む、、、。

   *    *    *    *

 面白かったとも言えるし、あまり面白くなかったとも言えるし、評価の下しにくい作品だったが、ともかくも、テルグ映画ならではの楽しさが味わえる156分だった。

 面白かったと言うのは、占星術、羅刹、黒魔術、アゴーリ、ヒンドゥー教の主要神、迷えるヒーロー、不思議な力を内包するヒロイン、聖なる武器、宿命論的出来事展開など、テルグのソシオ・ファンタジー映画ならこういう道具立てを整えるんだろうなぁ、と予想される要素をびっちり詰め込んだような内容だったこと。一つ一つはありふれたイメージだったが、それを一段と進化したグラフィックスで表現し直し、アクション、ダンス、コメディーのテルグ型ハイパー娯楽映画のフォーマットで作品化しているのが良かった。

 にもかかわらず、「あまり面白くなかったとも言える」と書いたのは、物語や登場人物の設定が荒唐無稽だとか子供だましだとか言いたかったわけではなく、部分部分は良くできており、気合いも入っていたのに、ストーリーによる面白さがなく、結果的に盛り上がらず、鑑賞後にスカッともしなかったし、晴れ晴れとした感覚もなかった、ということである。なかなか【Yamadonga】(07)みたいなわけには行かないなぁ、と思った。

 どうしてこうなったのかはよく分からないが、結局は脚本に不備があったということだろう。脚本・監督を担当したのはシュリーニワーサ・レッディという人だが、ほとんど知らない。私が過去に観た映画では【Yamagola】(07)の監督がシュリーニワーサ・レッディとなっているが、これが同一人物かどうかは分からない。(テルグ映画に同名の人がよくチョイ役で出て来るが、まさかあの人じゃあるまい。)誰であれ、ストーリーにもうひと工夫ほしかった。例えば、アヌシュカ(マヒー役)はかなり物々しい(神々しい)登場の仕方をしたにもかかわらず、結局は何もないヒロインで終わってしまい、何とも勿体なかった。せめて剣の一つでも握らせれば、面白くなったと思う。やはりこの種の大作はS・S・ラージャマウリ監督ぐらいの演出力が必要ということか。
 しかし、シヴァ信仰をモチーフとしたファンタジーといっても、醒めた目で見ればアホくさい映画なのに、それを真面目に真面目に撮っている姿勢は評価できるし、感動的でもあった。シュリーニワーサ・レッディって、きっと好いヤツなんだろう。

◆ 演技者たち
 ナグさん、若いわ!
 息子のナーガ・チャイタニヤが【Ye Maaya Chesave】(10)と【100% Love】(11)で注目された頃は、息子に席を譲ってオレはそろそろ隠居さ、みたいな老け込んだ発言もしていたナグさんだが、本作では何のその、漲るエナジーに炸裂するカッコよさだった。きっと、チャイ太がその後まったくしゃきっとしないので、まだまだオレが、という気になったのだろう。持つべきものは不肖の息子だ。それはともかく、本作が腰砕けのB級映画または失敗作に堕ちなかったのは、ナグさんのパフォーマンスによるところが大きい。

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 ところで、ナグさんは【Shiridi Sai】と本作と、2作続けて宗教をモチーフとした映画に出演したわけだが、両作品はまったくテイストが違っており、どちらも完璧に演じたナグさんはやはり凄い俳優だ。来る12月8日に埼玉県川口市で【Shiridi Sai】の上映会があるようだが、これに【Dhamarukam】も加えて2本立てとすれば、非常に興味深い企画になるだろうと思う。(主催者さん、検討して〜!)

 上で触れたとおり、ヒロイン、マヒー役のアヌシュカは有効な使われ方ではなかった。やはりファンタジー系でアヌシュカと来れば【Arundhati】(09)を思い浮かべてしまうので、物足りないものを感じる。
 (写真下:アヌシュカさんの腹部フェチ画像。)

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 本作の見どころの一つは、間違いなくアンダカースラ役のラヴィシャンカル。近ごろカンナダ映画によく出演しており、このブログでも何度か紹介したが、テルグでは【Arundhati】のソーヌー・スード(パスパティ役)の吹き替えとして有名。グラフィックスによる造形も凄かったが、何よりこの人の持つギョロ目とセリフ回しの迫力が効いていた。
 (写真下:ちょっと中国風味の混ざる羅刹像だったが。)

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 加えて、シヴァ神を演じたプラカーシュ・ラージも超見どころ。これをどう評価するかで本作の見方が変わるだろう。つまり、プラカーシュのおっさんのシヴァを評価するなら、本作はシヴァ神へのデヴォーショナル映画となるし、笑ってしまえば、風変わりなコメディー映画に終わる。(私ゃ、マジで椅子からずり落ちましたが。)とにかく、インパクトはあった。

 大型新人と思われたが、今のところ大きかったのは図体だけといった感のあるガネーシュ・ウェンカットラーマンが羅刹に憑依される気の毒な役をしていた。しかし、けっこうオモロかった(下の奥)。

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 ごてごてっとしたメイクのせいで、アゴーリの長を演じているのが誰だかなかなか分からなかったが、よくよく見れば、なんとカンナダ俳優のアヴィナーシュだった。年のせいで垂れてきた乳首を見て、それと分かった。

 その他、アンダカースラの相談役マーイーを演じたジーヴァも持ち味が出ていた。
 マッリの妹サイルー役は聾唖女優のアビナヤちゃん。結局こういう役しか回って来ないのかね(泣)。

 多数登場したコメディー陣は悪くなかったが、どうってこともなかった。

◆ 音楽・撮影・その他
 デーヴィ・シュリー・プラサードの音楽はまずまず。BGMも良い。
 ところが、音楽シーンの挿入タイミングが悪かった。この辺がシュリーニワーサ・レッディ監督の首尾の悪さかな。
 チャルミーを配したダンス曲とアゴーリがわんさか出て来るシヴァ・ソングが記憶に残る。

 VFXは十分な水準。
 寺院のナンディー像が疾駆する(しかも、背中にリンガを乗っけたまま)シーンには拍手喝采だった。

◆ 結語
 傑作というには遠く及ばないが、あちこちに食い付きポイントがあり、楽しい。お勧め作としてもいいが、まぁ、テルグ映画ファンと称する日本人でこの手の映画が嫌いな人にはお目にかかったことがないので、私が勧めなくてもさっさと観るだろうて。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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