カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kumki】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2012/12/27 02:44   >>

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 前作【Mynaa】(10)の成功でやっとメジャーな存在になったと思われたプラブ・ソロモン監督だが、この方はやはりマイナーがお好きらしく、今回もまたオフビート度の高い作品を持って来た。なんでも動物(象)と人間の交流を描いたエコな映画だという前情報だった。「Kumki」というのは、飼い慣らされたインド象のうち、里に出て来て悪さをする野生の象を森へと追い返す用途に使われる象のことを指すらしい(こちら)。
 主役はヴィクラム・プラブという新人だが、この人はなんとタミル映画界の伝説的スターであるシヴァージー・ガネーサンの孫で、当代タミル映画界切ってのメタボ俳優であるプラブの息子。これもタミル映画ファンにとって話題の一つになっていた。

【Kumki】 (2012 : Tamil)
物語・脚本・監督 : Prabu Solomon
出演 : Vikram Prabhu, Lakshmi Menon, Thambi Ramaiah, Ashwin Raja, その他
音楽 : D. Imman
撮影 : M. Sukumar
編集 : L.V.K. Doss
制作 : N. Lingusamy, N. Subash Chandra Bose

題名の意味 : クムキ(飼い馴らされたインド象のこと)
カテゴリー : [U] [オリジナル] [ドラマ]
上映時間 : 2時間27分

◆ あらすじ
 ケーララ州との州境にあるタミル・ナードゥ州アーディ・カードゥ村では、野生の象が出没し、農作物を荒らすやら家屋を壊すやら村人の命を奪うやらの悪さを働いていた。業を煮やした村人たちは「クムキ」を使って野生の象を森へ追いやることに決める。
 ボンマン(Vikram Prabhu)は象使いの青年。彼には兄弟とも親友とも呼べる象のマニッカムがおり、叔父(Thambi Ramaiah)と助手(Ashwin Raja)の三人で、寺院の行事や映画撮影などにマニッカムを使って、お金を得ていた。
 このボンマンのところにアーディ・カードゥ村の象退治の依頼が来る。マニッカムはクムキとして訓練された象ではなかったが、やむにやまれぬ事情により、2,3日だけ村に滞在するつもりで、ボンマンはその依頼を引き受ける。
 ところが、村に到着したボンマンら三人とマニッカムは、村人たちから非常な敬意を以て歓迎される。さらに困ったことに、ボンマンは村長の娘アッリー(Lakshmi Menon)に惚れてしまい、村を離れるきっかけを失ってしまう。
 ここの村人たちは200年以上も前に当地に定住した部族で、外部との交流はほとんどなく、独自の慣習を守っていた。それからすると、よそ者のボンマンとアッリーが結ばれることは難しそうであった。だが、アッリーはボンマンとマニッカムに対して強い愛情を抱くようになる。そうこうしているうちに、お尋ね者の野生象が姿を現す、、、。

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◆ アナリシス
・またまた凄い、【Mynaa】以上のど田舎映画だった。舞台となった村の名前は「Adhi Kadu」となっていたが、これが実在する村かどうかは分からない。どこかのレビューに「in the region of Panimalai, Marthandam」と言及してあったのだが、「Panimalai」がどこだか分からない。「Marthandam」は確かにタミルとケーララの州境にある町だが、もうカンニャークマーリに近い所なので、どうも本作に描かれた山間の村というイメージには合わない。

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・この村はカンナダ映画の【Bettada Jeeva】(11)に出てきたような隔絶された僻村だが、一応電気は通っており、携帯電話のシグナルも届いていた。暮らしているのは小規模なコミュニティーとして固有の慣習(例えば落雷で朽ちた大木を崇拝しているとか)を守っている部族だが、心なしかリアリティーのないものを感じた。

・圧倒的に目を引くのは、山野、森、畑、滝などの、美しい村の光景だ。インドの田舎はどこも美しいものだが、ここまで紫雲たなびく桃源郷というのも珍しい。明らかに映画的に再構築されたもので、キー・スポットの滝はカルナータカ州にあるJog Fallsだし、花畑はAP州のAraku Valleyで撮ったものらしい。

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・そんなうっとりと酔える村の風景とは裏腹に、やっぱりプラブ・ソロモン監督はお人が悪い、楽天的なハッピーエンドを見せてくれないのである。同監督の過去作では、私は【Laadam】(09)と【Mynaa】しか観ていないが、これら3作に共通して言えることは、「殺しすぎ」(一応ハッピーエンドの【Laadam】でさえそう)。しかし、本作に限って言えば、このアンハッピーエンドは批評家受け狙いといったせこい次元のものではなく、冷徹に自然の摂理を見据えた末の、達観した悲劇なのではないかと思えた。つまり、人も動物も自然の一部である以上、自然の摂理を逃れることはできず、片や、自然の摂理のほうは人間たちの喜怒哀楽などまったく忖度せず、ただただ非情に生成消滅を繰り返しているだけ。そして、一見残酷に見えるこの摂理も、結局は神の意志の表れとして受け入れるしかない、ということ。

・しかし、自然の摂理が非情で圧倒的に強力であるからこそ、その中のちっぽけな被造物であるボンマンとマニッカム、アッリーらを巡る心の通い合いがより愛おしいものに感じられた。

◆ パフォーマンス面
・注目の新人ヴィクラム・プラブは、本作のボンマンを演じるために生まれて来たのではないかと思われるほどの野生児ぶりだったが、素顔は意外とスマートなハンサムガイのようである。シヴァージー・ガネーサンとプラブは全然似ていないと思うのだが、プラブとこのヴィクラム・プラブもまた似ていない。しかし、ヴィクラムはこの象使いの役を演じるために体重を30キロも落としたということだから、以前はそれなりに父に似ていたのかもしれない。演技的には疑問符がつくが、徹底して象使いのスキルをマスターしようとした努力は評価できる。

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・ヒロイン、アッリー役のラクシュミ・メーノーンは、おそらくタミル映画【Sundarapandian】(12)で注目されたケーララ女優。決して萌え系ではないのだが、ストレートに健康的な魅力はノーメイクでど田舎娘を演じるには向いていた。

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・タンビ・ラーマイヤのコメディー的パフォーマンスが秀逸。シリアスなドラマのはずなのに、このオヤジのおかげで劇場内には絶えず笑いが起きていた。本作をコメディー映画として鑑賞した現地人も多いだろうと思う。

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・村長(部族長)を演じた俳優は、名前が分からないのだが、なかなかカッコよかった。

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◆ テクニカル面・その他
・D・イマーンの音楽はやはり心の染み入るようで、良い。

・スクマールの撮影は【Mynaa】以上に美しいと感じた。特にJog Fallsの場面などは見どころ。

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・クライマックスのマニッカムと野生象のファイト・シーンは見どころ。ただし、象の動きなどのグラフィックスはいまいち。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2012年12月15日(土),公開第1週目
・映画館 : INOX (Jayanagar),15:45のショー
・満席率 : 60%
 

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