カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Annayum Rasoolum】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2013/01/26 15:40   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 3 / コメント 0

画像

 ノーマークだったが、新年早々マラヤーラム映画の【Annayum Rasoolum】が面白いという口コミ情報を得、それがケーララ州より2週間遅れでバンガロールでも公開されたので、早速観てきた。
 監督はラージーヴ・ラヴィという聞かない名前だったが、実は撮影監督として有名で、調べてみたら、ヒンディー映画の【Chandni Bar】(01)や【Dev.D】(09)、【Gangs of Wasseypur】(12)、マラヤーラム映画の【Classmates】(06)などの秀作でカメラを回した人だということが分かった。映画監督としては初仕事となるらしい。カメラマンが映画を監督するというのは、有名なサントーシュ・シヴァンや、死んじゃったけどタミルのジーヴァ、それにK・V・アーナンドなど、それほど珍しいことではないようだ。
 主演は、昨年は当たり年だった感のあるファハド・ファーシル。ヒロインにタミルのアンドリア・ジェレミアが就いているというのが意表だった。

【Annayum Rasoolum】 (2013 : Malayalam)
物語 : Rajeev Ravi, G. Sethunath, Santhosh Echikkanam
脚本 : Santhosh Echikkanam
監督 : Rajeev Ravi
出演 : Fahad Fazil, Andrea Jeremiah, Sunny Wayne, Soubin Shahir, Shine Tom Chacko, Sija Rose, Srinda Ashab, Aashiq Abu, Ranjith, P. Balachandran, Joy Mathew, M.G. Sasi, Kulapulli Leela
音楽 : K (Krishna Kumar)
撮影 : Madhu Neelakantan
編集 : B. Ajithkumar
制作 : K. Mohanan, Vinod Vijayan

題名の意味 : アンナとラスール
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ロマンス
公 開 日 : 1月4日(金)
上映時間 : 2時間47分

◆ あらすじ
 コチのマッタンチェリーに暮らすラスール(Fahad Fazil)はしがないハイヤー運転手。彼には役立たずの兄ハイダル(Aashiq Abu)と、コリン(Soubin Shahir)とアブ(Shine Tom Chacko)という2人の友人がいた。ラスールはまた、自分の車に乗せた縁で、ヴァイピーン島に暮らすアシュリー(Sunny Wayne)という男とも友達になる。
 ある晩、ヴァイピーン島でキリスト教の祭りが行われた際に、ラスールと友人たちも遊びに行く。しかし、ヴァイピーン島のクリスチャン・コミュニティーの若者たちと衝突し、派手な喧嘩となる。ラスールはなんとか逃げるが、その途上で美しい女性(Andrea Jeremiah)を目撃し(実は、以前にも一度目撃していた)、たちまちに惚れる。
 その女性はたまたまアシュリーの家の向かいの住人で、アンナという名前だった。アンナはエルナクラムの有名サリー店で売り子をしていた。ラスールはせっせとアンナに接近し、彼女の携帯電話にもSMSを入れる。そして、とうとう自分の気持ちを伝える。
 実は、アンナもラスールに惹かれていた。しかしアンナは、自分がキリスト教徒なのに対し、ラスールがイスラーム教徒だったためため、彼との関係に不安を感じていた。
 ラスールと友人たちは例のクリスチャン連中と再び喧嘩をやらかす。そのクリスチャンの中にはアンナの弟もいたが、ラスールはそうとは知らずに彼を殴ってしまう。悪いことに、その現場をたまたまアンナが目撃していたため、彼女はラスールを避けるようになる。
 ラスールとアンナの関係修復をアシュリーが買って出る。しかし、折悪しく、アンナの弟たちが報復としてラスールをさんざんに痛めつけてしまう。
 この事件のほとぼりが冷めるまで、ラスールはポンナーニにいる父(Ranjith)の許に身を寄せることにする。しかし、その間に、アンナは親たちの意向でフランシスという男と婚約してしまう。その知らせを受けたラスールはコチに戻り、アンナを連れ出し、友人の伝手を頼ってある山間の村へと逃避行をする、、、。

・その他の登場人物 : 修道女リリー(Sija Rose),アブの妻(Srinda Ashab)

◆ アナリシス
・最近、怪しげな(?)動きを見せているマラヤーラム映画界だが、本作もニューウェーブと呼べそうな、違ったセンスを持つ映画だった。私は半ば冗談で「ことマラヤーラム映画を見て判断する限り、ケーララ州には15歳以上25歳以下の若者はいないようだ」と言っているが、その観察は本作には当てはまらない。【Malarvadi Arts Club】(10)や【Ustad Hotel】(12)を見る限り、マ映画界も年を追って若者が描けるようになってきているようだ。

・しかも、【Ustad Hotel】の主人公は清々しい陽性の青年だったのに対し、本作の連中は怠け者だったり、意固地だったり、喧嘩もすりゃあ、生活のために違法行為も働くといった、「暗」の側面も描かれている。理想化されていない分だけリアルさを感じた。

・撮影監督が監督した映画が押しなべてそうであるように、本作も映像的にはカッコいい。しかし、やっぱり「アート風」、「映画祭向け」に傾いてしまったようで、どこか勿体ぶったものを感じた。多くのレビューが指摘しているように、上映時間の長さ(2時間47分)とスロー・テンポはマイナス点だろう。

・あらすじを読んで分かるとおり、本作ははっきり現代ケーララ州コチ版『ロミオとジュリエット』となっている。そのため、ストーリーが読めてしまうのが弱点だ。

・ヒーロー(ラスール)のサイドとヒロイン(アンナ)のサイドが対立する要因は異宗教(イスラーム教徒とキリスト教徒)ということだった。実は、ラスールのグループは、ラスールとアブはムスリムだが、コリンとアシュリーはクリスチャンなので、必ずしもムスリム・グループというわけではない。しかし、大雑把にはイスラーム教徒とキリスト教徒の相性の悪さが前提とされているようだった。ただ、ラスールとコリンとアシュリーは特に宗教にはこだわらない人物として描かれていた。

・しかし、主筋のラスールとアンナの恋物語が悲劇に転じる直接の原因は、異宗教の問題ではなく、ラスールの友人アブの犯罪行為だった。この点、本作では、若者の純粋な恋愛を阻む要因を、コミュニティーの問題だけでなく、貧困問題など、幅広い角度から捉えようとしたようだ。

・ラスールがアンナへの愛を確信する根拠は、「水中に潜って目を開ければ、本当に好きな人の顔が見える」ということだった。

・ストーリー的には『ロミオとジュリエット』の翻案で、面白みがないとはいえ、脚本は意外に考えて書かれている。例えば、映画は警官が書類を準備し、ハイダルという男(ラスールの兄)を探すシーンから始まる。ここで観客は何か犯罪の匂いを嗅ぐのであるが、実はそれは単にハイダルのパスポート申請を受けて、警官が本人確認をしに来ただけであり、観客は「な〜んだ」と安心する。しかし、後々になって、このシーンがコチに住むローワー・クラスの若者たちの置かれた否定的な状況を描き出すためのトーン設定だったことに気付く。

・また、主筋の「ラスールとアンナの恋物語」以外に、「アブとその妻」、「アシュリーと修道女リリー」、「ラスールの兄ハイダル」のエピソードが効果的に絡められ、単調な主筋を補っている。特にアシュリーとリリーの恋物語は主筋を動かすモチーフともなっている。(参考に、アシュリーが本作全体の語り手となっている。)

・本作はラスールとアンナを巡る人々の群像ドラマであるが、「コチ」の町が間違いなくもう一つの主役になっている。というより、ラージーヴ・ラヴィ監督はロミオとジュリエットの話なんかより、コチをがっちり描くことが主目的だったのではないかとさえ思えた。どうもラージーヴ監督がコチ出身らしく、さすがにコチの独特の匂いと蒸し暑さが肌で感じられるようにカメラに収められていた。ヴァイピーン島のクリスチャン地区の路地裏も興味深く撮られている。

・コチのごちゃごちゃっとした町並みに対して、ラスールとアンナが逃避行した山間の村(どこか分からなかった)は、束の間の夢のようにフレッシュに描かれていた。

◆ パフォーマンス面
・蒸し暑いアレッピーの出身者とは思えないほど、どこか涼しげなファハド・ファーシルだが、本作では髭ごわごわでケーララ人らしく見えた。決して英雄的ではないが、意志の強いムスリム青年を好演している。
 (写真下:優男だが、喧嘩の場面もまずまずだった。)

画像

・ヒロインのアンドリア・ジェレミアについては、セリフが少なく、むっつりしていればいいような役だったので、演技的にどうだったとは言いにくい。ただ、悲劇的結末を見通しつつも、一歩踏み出さずにはいられなかった気持ちは表現されていたと思う。
 彼女は女優というより、プレイバック・シンガー、声優としての活動が目立っているが、調べてみたら、【Vettaiyaadu Vilaiyaadu】(06)のカマリニー・ムカルジー、【Aadukalam】(11)のタープシー、【Nanban】(12)のイリヤーナなどの吹き替えを担当していることが分かった。本作はタミル語じゃなくマラヤーラム語なので、アンドリア自身がアフレコしているかどうかは分からない。【Vinnaithaandi Varuvaayaa】(10)のヒロイン(チンマイの吹き替え)を真似たようなセリフ回しだったのが気に掛かった。
 (写真下:鑑賞中は気付かなかったが、ノーメーク?)

画像

・物語の語り手アシュリーを演じたのはサニー・ウェインという人。こいつがなかなか好印象だった。(写真下の左)

画像

・公開中の【Da Thadiya】が好評でハッピーなアーシク・アブ監督が俳優として登場し、ラスールの兄役を演じている。(写真下の左)

画像

・アーシク・アブを含め、本作にはなぜか5人の映画監督が役者として出演している。その中の1人、ランジットはさすがに存在感を見せていた。

画像

・ケーララ女優には絶えず目が離せないが、今回の「ちょっと気になるあの娘」は修道女リリー役のシージャ・ローズだった。彼女はカンナダ映画の【Magadi】(12)でデビューした際、「ラクシタ」という芸名でクレジットされており、ひと昔前に活躍した人気女優ラクシタと区別して「新ラクシタ」と紹介されていたので、私はてっきりカンナダ人だと思っていた。しかし、ケーララ人で、名前も全然ラクシタではなかった。ちなみに、古いほうのラクシタはカンナダ映画業界では「大鵬ラクシタ」と呼ばれている、、、なんて話はない。
 (写真下:このシスターのコスチュームにキュン! ピンボケなので、本作とは関係ない写真も載せた。)

画像

◆ テクニカル面・その他
・音楽はKこと、クリシュナ・クマールが担当しているが、これがまた良い。彼はミシュキン監督の【Yuddham Sei】(11)と【Mugamoodi】(12)で切ない音楽を提供していた人だ。

・映像は良かったので、てっきりラージーヴ・ラヴィ監督自身がカメラを回していると思ったが、そうではなく、マドゥ・ニーラカンタンという人の担当だった。

◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 2013年1月19日(土),バンガロールで公開第1週目
・映画館 : Vision Cinemas,16:00のショー
・満席率 : 2割
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi】 (M)
 先日、マラヤーラム映画がバンガロールで上映されていないという状況をお伝えしたが、その禁止措置もどうやら解かれたようで、この週末にはドゥルカル・サルマーン主演の【Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi】とクンチャーコ・ボーバン主演の【Pullipulikalum Aattinkuttiyum】が公開された(プリトヴィラージ主演の【Memories】はなぜか公開されていない)。どちらを観るかハゲしく迷ったが、ラール・ジョース監督の作品は本ブログでもよ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/08/15 15:16
【Ohm Shanthi Oshaana】 (Malayalam)
 この週末はマンムーティ主演の【Praise The Lord】を観るつもりだったが、隣のホールではナスリヤ・ナシーム&ニヴィン・ポーリ主演の【Ohm Shanthi Oshaana】もやっており、結局後者にした。というのも、先日の【1983】鑑賞記の中で、マラヤーラム映画界もヤング層をターゲットにした映画を作り始めている、といったことを書いたが、なるほど若者の描き方にはリアルなものが見られ、現実の若者たちの共感を得ているであろうことは観察できたが、この世代にとっては肝心のテーマ、すな... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/03/26 23:31
【Thondimuthalum Driksakshiyum】 (Malayalam)
 ディリーシュ・ポータンは、マラヤーラム映画の主にニューウェーブ系の作品で活躍するアクの強い脇役俳優だと思っていたら、【Maheshinte Prathikaaram】(16)で監督としてデビューし、それが大成功で、たちまちに注目の映画監督になった。【Maheshinte Prathikaaram】は日本でも1ショー公開され、好評だったようだが、私はインドにいながら観逃してしまったので、この第2作はぜひ観たいと思っていた。  主演は【Maheshinte Prathikaaram】と... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2017/07/05 21:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Annayum Rasoolum】 (Malayalam) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる